ボブの聖杯戦争 ~F/sn Unlimited Lost Works~   作:黒兎可

12 / 61
ボブ「……」慌てて逃げるシンジを鼻で笑う
臓硯「ほぅ、かような小物は相手にするほどではないか」
凛「で、何かしら? 間桐の元締めさん。貴方たしか、冬木の地を離れていたかと存知ましたけど」
臓硯「カカ、なに、老骨をいじめてくれるなよ、遠坂の」


Oh! 魔術師の行動原理 その3

 

 

 

 

 

 職員室から会議を終えて出てくる先生たち。会議が終わったのは、ホームルーム七分前。

 平然と外に出てくる先生たちと違い、何故か周囲をきょろきょろと野生動物がするように見回しているのが藤ねえこと藤村大河。そのレーダーにひっかかったらしく、藤ねえは俺たちの方に急ぎ足で来た。

 

「あら衛宮君、こんな時間に職員室に居るなんて珍しいわね。遅刻するわよ?」

 

 藤村先生は鏡の前で十回くらいその言葉を唱えるといいんじゃないですかね。

 

「ちょっと用事だよ。加えて、私的な用事でもある」

「ん、なになに士郎? お姉ちゃんも士郎も時間、あんまりないけれど?」

「そりゃそうなんだけど、こと切嗣に関わる話だからな。俺もおいそれと、軽くは扱えない」

「切嗣さんの? んー、どゆこと?

 っていか、その子、知り合い?」

 

 うちの生徒じゃないわよね、とセイバーをさして頭を傾げる藤ねえ。俺の口調が砕けているのに注意が来ないのは、あくまで学生の衛宮士郎ではなく、衛宮家の衛宮士郎としての用事だからか。そして背後のセイバーも、こくり、と頭を下げた。

 

「転校生なんて訊いてないし、道に迷ったヒトとかだったら、わざわざ連れてくることもないし?」

「いや、それが俺もちょっと弱ってて……。端的に言うと、親父を尋ねて来たんだ、あの子」

「切嗣さんの? んー、つまりどういうこと?」

 

 むむむ、と難しいことを考えてるような藤ねえ。一応、まだ教師の体裁を保ててはいる。

 とりあえず、セイバーが考案したでっちあげを話す。と「あー、まぁ切嗣さんだからね~」と、訳知り顔で頷いた。よし、ここまでは成功だ。

 問題は次のステージへ。

 

「なるほどなるほど? で、流石に家に一人で置いておくのは気が引けたと士郎らしいかなー。後のことあんまり考えてないあたり、余裕ない感じ?」

「あー ……、まぁ、そんな感じ。

 で、とりあえず――――」 

「んー、ネコのところにでも預けちゃえば?」

「いや、コペンハーゲン、バイト先だから。ネコさんに突然、誰だかわからない子預けるって暴挙して、普通にバイトの時顔を出す勇気ないから……」

「んー、そうなると難しいわねー。授業見学とかも今日じゃないし」

 

 お、おお? 話が何かおかしな方向に動いている。このままセイバーを衛宮家に泊めるというように話を持って行きたかったのだが、藤ねえの頭の中では、セイバーを日中どうするかというところに焦点が絞られていた。

 

「んん~、申し訳ないんだけどセイバーちゃんには帰ってもらうしかないかな~?

 あ、でもそのまま帰るっていうのもアレじゃない? ほら、お小遣い! これで新都の方で遊んでも来れば? あ、でも変なヒトにはついていっちゃ駄目よ?」

「シント?」

「そうそう。セイバーちゃん日本語、多少できる? なら大丈夫。冬木って結構、外国語できるヒトいるし。

 いざとなったら、ここの名刺のところに行って、藤村大河の紹介だーって言えばなんとかしてくれるから」

 

 とか言いながら、藤ねえはセイバーに万札と、自分の実家&コペンハーゲンの名刺を手渡す。すごい、手馴れてる。まるで空港で混乱している外国人に、観光先でも案内するガイドさんのようなそつなさだ。外国語教師としてのタイガーの実力を、衛宮士郎は甘く見積もっていたのかもしれない。いや、この場合は普通に教師としての性能かもしれないけど。

 

 シロウ、とセイバーの目が俺に訴えかけている。

 悪いと頭を下げる他ない。もともとそういう話だったし、セイバーには一度帰ってもらうほかないだろう。見ればタイガーが短時間とはいえ、懇切丁寧に学校から家までのルートと、新都までのルートを教えている。

 

「……まぁ日中なら大丈夫か」

 

 そう思ったりしながら、セイバーを学校から出し、気が付くとホームルーム一分前。

 急いで教室に向かいながら、ああこれは、家に帰ってから一波乱残ってしまった……、と少し頭を抱えた。

  

 後、シンジは今日休みだった。

 

 

 

   ※ 

  

 

 

 昼休み。一成と昼食をとろうと生徒会室へ向かっている途中。中から書記の、可愛らしいけれどちょっと愛想が不足している感じの子にお辞儀されて、その向こうに一成が見えた。どうやら

 軽く手を上げると。

 

「げ゛ッ」

 

 何だ、そのリアクション。

 

「な、何故に遠坂と一緒にいるのか衛宮士郎!」

「え?」

「はい、どうも。カエルでもふみつぶしたような声で、随分とご挨拶ね」

 

 振り返ると、いつの間にか遠坂凛がそこに立っていた。手にはビニール。ひょっとして、俺と前後して購買で買っていたのだろうか。

 

「く、こっちに来い衛宮! 遠坂の近くにいたら毒がうつる、毒が!」

「え? あ、ちょっと――――」

「あら、それは困るわね。私、衛宮くんに用事があるんだけど」

「と――――!?」

 

 腕を引かれる俺の腕の反対側を捕まえる遠坂。状況的には腕に抱き付かれているようなものなのだが、不思議と今の俺の心境は警察に連行でもされるような何かだ。というか、突然のその言動に頭が真っ白になる。

 赤面するのを抑えられている自信が無い。

 空回っている俺を無視して、遠坂と一成は言葉の刃で小競り合い。

 

「な――――――、何を企んでいるこの女狐め!」

「あら嫌だ、企むなんて人聞きの悪い。私、ちょっと朝のことで聞きたいことがあるんだけど」

「今朝……? セイバーさんのことか」

「あら、知ってるのなら話が早いわね。彼女、私とも知り合いなの。で、衛宮くんに色々聞きたい事が出来たから、ちょっと貸して欲しいんだけど」

「貸す貸さない、ではない。衛宮は道具ではないのだ。

 全く、だから貴様のように、そこのところをわからず、便利屋のように使い倒すような輩が出てくるのだ」

「憤ってるところ悪いけど、結構真面目な話。だから、行くわよ士郎(ヽヽ)

 

 へ? と。聞き慣れない呼ばれ方に変な声を上げると、一気に遠坂の引っ張る力が強くなる。

 バランスを崩しそうになるのを矯正して、無理やり遠坂は俺を引っ張って行く。背後で一成が色々文句を言っているのが聞こえるけど、それも長くは続かない。遠坂の表情が、事の他真面目だったからだろう。

 

 屋上に付くと、遠坂は「こっち」と慣れた様子で人目に付かない、風があんまり来ない位置へとガイドしてくれる。周囲を見渡せば他の生徒はおらず、そっちの――――魔術とかの話をするには、確かに持って来いのところであった。

 

「で、何だよ遠坂、聞きたい事って」

「んー、その前に少しいい?

 今朝は色々お疲れ様って感じだったわね。クラス別でも、一時間目明けた後の騒ぎはこっちまで聞こえたわよ?」

 

 くすくすと。手で顔を覆って浮かべる笑みは、極上に悪い笑顔だ。むっとする俺の様子を見て楽しんでいやがる。

 そう、裏口からセイバーを送って、藤ねえと一緒に全力疾走して教室に入った後。授業開けに周囲から質問攻めにされること必須といった状態だった。のらりくらりと交わすのも、まぁ色々限界があって、とりあえず親戚のヒトだという話だけを広めるに留められたのが、我ながら意外と言えば意外だ。

 

「自業自得なんで、何も言う事はない。というか、友人の後藤くんに至っては今朝の記憶を忘却していたらしい」

「あら、なんで? その後藤某くん」

「人間、信じられない、信じたくない現象を目の前にすると自分の記憶をうんたらかんたら」

「そこまで衝撃を受けるようなことなのかしら……? まあ、それくらいセイバー美人ではあるけれど。

 でも、途中までとはいえサーヴァントを連れてこようとはしたんだ。へぇ~ ……」

「……何だよその顔」

「別に?

 案外冷静に状況を把握してるんだなーとか、連れてきても魔術師としての実力不足でどうにも誤魔化せなかったんだなーとか、そんなこと思ってないわよ?」

 

 なら口に出して言うなよ。まぁ、その表情からおおむね、そんなことだろうとは思っていたけど。

 

「意外と言えば意外かしら。貴方、平和ボケかましてサーヴァントを家に置いてくるくらい言いそうなものだったけど」

「平和ボケっておかしいだろ、平和ボケって。魔術師は昼間、目立つようなことはしないだろ? それに今朝の様子見ればわかるけど、セイバー、目立つ」

「まあ、そりゃね。普通の輩なら」

「だから本当は家で留守番して欲しかったんだけど……」

「んー ……、まぁ、言いたい事はあるけど黙っておくわ。同盟組んでいる訳でもないし、あんまり言うとアーチャーがまた拗ねるから」

「拗ねる? ……、そういう遠坂のアーチャーはどうしてるんだ?」

「いるわよ? 今は敷地内を調べてもらってるけど。基本的にサーヴァントは霊体で活動できるんだから、身辺警護は当たり前よ」

「見えないボディーガードみたいなものか」

「どっかで聞いたようなたとえね、それ。

 それはともかく……。士郎。貴方、放課後はどうするつもり?」

「どうするって……。とりあえずセイバーに、学校を案内するつもりだけど」

 

 露骨にため息をつく遠坂。こう、出来の悪い教え子を持ったスパルタ教師みたいな、そんな感じの態度だ。

 

「……あのね、一応私たち、休戦してるとはいえ敵同士なんだから、おいそれとそういうことを答えない」

「あ、いや、悪い。ついクセで」

「別に悪くはないわよ。無警戒ってだけ。あとクセって何よ、クセって」

「いや。何か遠坂の聞き方が、頼みごとでもしようとしているような感じに思ったから……」

 

 きょとんとした顔になる遠坂。口元を押さえながら「そういう訳じゃないわよ」と言って、そして俺にとって衝撃的な事実を語りだした。

 二日前から、この学校に結界が張られている。人間の体に影響を与えるようなもので、今でもみんなから元気を吸い出している。

 

 言われて確かに、二日前から感じている違和感に思い至った。セイバーも魔力の残滓がどうのこうのと言っていた気がする。

 

「つまり、学校にマスターがいる?」

「そういうこと。学内に魔術師が、って意味では知らないわけじゃないけど、貴方みたいな素人がマスターになる場合もあるから、簡単にイコールで結び付けられないけど。でも今回は確証はとれてるし」

「いや、俺が素人だって言い分には異論があるんだが……。

 って、待った、遠坂? 魔術師がいるって、うちの学校にか!?」

  

 驚く俺に、指を三本立てる遠坂。と、何か思い出したように、その指を一つたたむ。

 

「私の知る限りでは二人よ。うち一人は間違いなく無関係だけど。

 で、昨日もう一人と戦ったわ」

「は!?」

「驚くことないじゃない。聖杯戦争中なんだから、夜出歩けばサーヴァントに当たる確率も高いわ。

 まぁ、あれだけ杜撰だったから簡単に見つかったっていうのもあるけど」

「杜撰?」

「人間を襲わせてたのよ。サーヴァントを強化したかったのか、未熟なのかは知らなかったけど。特に結界らしい結界もはらずに通り魔じみた方法で」

 

 苦笑いを浮かべる遠坂凛に、衛宮士郎は躊躇いがちに。

 

「……誰なんだ、そいつ」

 

 遠坂は果たして、興味もなさそうに言った。

 

 

「シンジよ。間桐慎二。

 どういう訳かライダーのマスターだったわ」

「っ――――――」

 

 

 その言葉に、俺は気が付くと手が震えていた。

 頭が麻痺しているような――特にその光景を見たわけではないにも関わらず。俺の頭の中には、遠坂とアーチャー。そして半笑いを浮かべてこちらを見てくるシンジの映像が浮かんだ。

 

「――――殺したのか、あいつ」

「衛宮くん?」

 

 手を握りしめる。精神が凍結する。目の前でその蛮行が行われたわけでないにも関わらず、怒りを感じる理性がとびかけている。

 こちらの様子を見て、遠坂は苦笑いとため息をついた。

 

「本人はそのつもりだったみたいだけど、幸い私達が間に合ったから。

 大丈夫、被害者の女性は生きてるわよ。目覚め一発目であの似非神父と対面になる不幸はあるだろうけど」

 

 面倒だったからアイツに投げたし、と遠坂は肩をすくめる。ほっと一息つく俺に、でも遠坂は訝しげな視線を向ける。それ以上何も言わないまでも、その目は何か気になる。

 

「何だよ」

「……別に?

 そうね。せっかくだから教えておくわ。間桐は魔術師の家系で――――」

 

 遠坂の説明を聞いているうちに、少し。ほんの少し違和感を抱いた。

 

 

 桜が、昨日の夜に衛宮家に来れないと連絡を入れていたことに。

 

 

 

 

 




「おお……!」大判焼き*4個
「くっ……、」激辛麻婆豆腐*1皿
「ふむふむ……」醤油ラーメン*3杯
「なるほど、速い」牛丼*2杯
「これは……、雑……、」ハンバーガーセット*1セット
「ライスボールも中々」おにぎり*10個
「斬新な……」アイスクリーム4段*4個
「シロウも作れるのでしょうか?」ドーナッツ*30個
「酒かすですか? タイガも飲むのですね」甘酒*6杯
「な、何故、ほとんど変わらないように見えるのにガウェインの調理とここまで異なるのか……!」ポテトサラダ*3箱
 
 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。