ソードアート・オンライン ~輝きの向こう側へ~ 作:zipoc
読む人すべてに楽しんでもらえたらうれしいです!
「ハッ!!」
「グァァァ…」
俺がソードスキルを発動させ、掛け声とともに目の前にいるモンスターを斬ると奇声を上げてポリゴンの欠片となり消滅した。
「おっ、レベルが上がったか…。今日はこれくらいにして帰るか」
俺は誰もいないこの場で声を漏らし帰り支度を始める。
今日の《攻略》の終わり。今日もどうにかノルマを達成することができた。
そのことに安堵しつつ俺は彼女が好きだったあの曲を口ずさみながらダンジョンを後にする。
「あれからもう2年か…」
自然と頭に出てきた曲に俺は2年前のあの日を思い出した。
***
「おい真姫!ついに…ついに今日から始まるぞ!俺の冒険が!」
テンションが高い俺に真姫は溜息を吐く。
「分かってるわよ。そのセリフ、もう何度目っていうくらいに聞いたわ」
「いいやわかってない!なぜなら分かっているならそんなテンションじゃいられないはずだからだ」
「はぁ…。イミワカンナイ」
呆れたようにつげる真姫はいつも通りだ。
「でも本当に珍しいわよね。大翔がゲームに興味をもつなんて」
「まぁな。俺もただのゲームならここまで興味は持たなかったと思う。ただこのソードアート・オンラインはただのゲームじゃないんだ」
「『これはゲームであっても、遊びではない』、でしょ?それも何度も聞いた」
「その通り!…なのにお前と来たら…ハァ…」
「仕方がないじゃない。私ゲームとか興味ないもの。それに勉強だってしなくちゃいけないわ。頭のいいあなたとは違ってゲームなんてしてる時間はないのよ」
真姫は嫌味ったらしくそんなことを告げた。
息抜きぐらい必要だと思うんだけど…
昔から真姫は全然変わらない。
「俺も最初は興味なかったんだからプレイしてみればその考えも変わると思うんだけどなぁ…。勉強だってお前充分できるだろ?」
「確かに周りよりはできるかもしれないけど、あなたには一度も勝ったことないんだから!少なくとも大翔に勝つまでは私は勉強をおろそかにできないわ」
「じゃあずっと勉強をおろそかにできないな」
俺は真姫を見てニタニタと笑いながらそう告げた。
「ッ!見てなさいよ!絶対大翔にギャフンと言わせてやるんだから!」
「はいはい。気長に待ってますよ」
憤慨してる真姫は俺の言葉にまたもや溜息をもらすと先ほどとは表情を変え、俺の顔色を伺うように尋ねてくる。
「それで明日のことなんだけど…」
「分かってるよ。クラシックコンサートだろ?待ち合わせは4時くらいに真姫の家でいいか?」
そう明日は真姫の頼みでクラシックコンサートに行くことになっている。
真姫からの頼みなんて珍しいから俺は二つ返事で了承した。
「ええ。でも私の家でいいの?大翔の家からだとそれなりに距離あるでしょ?」
「気にすんな。女の子がそんな心配をするなよ」
真姫のやつ…
今日俺をここに呼び寄せたやつがそんなことを言うのだろうか?
「なんだかちょっと気にくわないけど…分かったわ。家で待ってるわね」
「おぅ!じゃあ俺そろそろゲームしたいから帰るわ」
そう俺は早く帰ってゲームをプレイしたいのだ。
今から急いで帰ればサービスが始まる午後1時に間に合うかもしれない。
「そう…。分かったわ。明日会ったときにゲームの感想聞かせてね」
興味がないと言いつつもそんなことを言ってくる真姫。
ったく…素直じゃないな、なんて思いながらも真姫に笑顔で
「もちろん。じゃあまた明日!」
そう告げ、俺は真姫の家を後にする。
明日が楽しみだなと思いながら……
***
俺は借りているアパートに戻ると、準備してあったナーブギアを装着する。
自転車を飛ばしただけあってなんとか午後1時に間に合うことができた。
始めにやることは決まってる。
これから始まる冒険に俺は思いをはせながら
「待ってろよ、俺の冒険!リンクスタート!!」
と声を発し、フルダイブした。
***
「ハッ!」
アインクラッドに来た俺は真っ先にフィールドへと出ていた。
このゲームにおいてレベルという概念は何よりも大切であると感じているからだ。
それに俺はどんなやつにも負けたくはない。
たとえそれがゲームであったとしてもだ。
「ようやくレベル5か…。そろそろ次の街に行ったほうがいいな。この辺のモンスターじゃもう効率が悪いし。どんどん強いモンスターと戦わないとレベルも上がらないしな」
「にしてホントすごいよなこのゲームは。とてもじゃないがゲームの中だとは思えない」
俺は周りを見渡しそう呟く。
「じゃあそろそろ…」
次の街へ向かうとするか、と言いかけたところで視界が歪んだ。
「な、なんだ!?」
突然のことに驚き俺は慌てる。
そして周りを見ると俺のほかにも多くのプレイヤ―が集められていることに気づく。
俺はあまりの数に何か重要なことでもあったのかと考えを巡らす。
「やっとGMが動いたか。ログアウトできない不具合なんて今後のゲーム運営にかかわる話だもんな」
と隣で話すカップルらしき人物の声を聞き俺はなるほど、と理解する。
念のためメニューを開きログアウトの存在を確認するが隣で話していた人物が言うようにログアウトボタンは存在しなかった。
俺はまだログアウトするつもりがなかったからよかったけど何か用事がある人からすれば大変だよなぁ、と俺は他人事のように心の中で思っていた。
そんなことを思っていると急に上空に得体のしれない存在が姿を現していた。
出現したのは身長20メートルはあろうかという、真紅のフード付きローブをまとった巨大な人の姿だった。
そんな人の姿をした化け物は、
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
と告げ、このゲームについての説明を始めた。
――――曰く、このゲームはログアウトできない。
――――曰く、これは仕様である。
――――曰く、100層まで到達すれば自動的に全プレイヤーがログアウトできる。
――――曰く、このゲームでHPが0になれば現実世界でも死ぬ。
そんな説明を巨大な化け物――茅場晶彦は淡々とプレイヤーである俺たちに告げた。
そんな説明を受けた俺は、
「面白れぇ…!」
笑っていた。
『これはゲームであって、遊びではない』とはこのようなことだったのかと。
現実世界でただただ生きることに意味を無くしていた俺は茅場晶彦の行ったことに、怒りや恐怖などを抱かずただただ歓喜していた。
ここは俺がいるべき世界だと俺はしっかりと認識した。
と、なればする行動は一つ。
「一番になる!」
俺はそう心の中で宣言するとすぐさま次の街へと駆け出した。