GOD EATER3 ジ・エンド・オブ・エタニティ   作:レインメーカー

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第1話 イギリス支部

ー旧市街地戦闘区域 (夕)ー

 

「こちらヴァンガード1、ターゲットと接敵した」

 

一人の神機使いが無線で伝える。

彼はイギリス支部で最も功績の高いベテラン神機使い、サミュエル・ロックウェル少尉だ。

 

夕日が地平線に沈もうとしている今、彼の眼の前には、ヴァジュラが荒々しい息をしながら対峙する。

しかし、ヴァジュラは目の前の敵を睨むばかりで動こうとしない。

 

「了解。作戦通り、ポイントへ陽動しろ」

 

司令部から女の声が無線に入る。

 

彼とヴァジュラは、向き合ったままピクリとも動かない。風が砂を巻き上げながら、彼らに吹き付ける。風が止み、少しの間静寂が訪れる。

 

「……」

 

彼は身構える。戦うためでは無く、逃げる為に。

神機を握った手に力を込めて、思い通りに扱えるように敵の攻撃に備える。

 

ーーーヴォアアアアァァ!!

 

ヴァジュラが猛々しい唸り声をあげながら長い沈黙を破った。その咆哮は、市街地中に雷鳴の如く鳴り響く。

ヴァジュラは、鋭利な右爪をサミュエルに振り上げ、直後に一閃する。

サミュエルは一瞬で神機の装甲を展開し、アラガミの巨大な力を盾で受け止め、大きく後退してしまう。

だがその勢いは殺さず、空中ですぐさま真後ろに身体を向け、吹き飛ばされた勢いを利用し加速、そして全速力で走り出す。

ゴッドイーター…そしてその内のエース級である彼には焦りや不安の表情は無い。

その適合率2.9倍の身体能力から叩き出される速度は、一般神機使いですら追い付けない。

 

サミュエルは耳にはめている無線機を指で当てながら、陽動ポイントにいる戦隊長レノックス曹長へ無線を繋ぐ。

 

「レノックス、もうすぐそっちへ着く!」

 

レノックス曹長は「待ってるぜ」と返事をし、そして彼自身がまとめる部隊に目をやり、声を張り上げ命令する。

 

「いいか!!敵が見えても発砲するな!!サミュエル少尉が離脱してからだ!!」

 

レノックス曹長は、開けた廃公園に部隊を大きな扇状にして配置している。しかし、彼が持つ部隊とは、ゴッドイーターではない。

 

通称"ヘラクレス部隊"。

対アラガミの次世代対抗兵器として開発された戦闘部隊である。戦車、歩兵、装甲車…かつてはアラガミに対抗できた既存の兵器に大幅な改良を加え、尚且つ弾に特殊な機構を用いて、アラガミに対抗する。

イギリス支部兵器開発局が開発に成功し、神機の発明以降、二度目の人類の快挙とも評されている。

彼らは過去に何度もアラガミを撃退しており、新たな"アラガミ狩りの兵隊"なのだ。

 

ヘラクレス部隊員達に大きな足音が聞こえ始めた頃、司令部から無線がサミュエルに入る。

 

「指定ポイントに入ったのち、すぐに離脱しろ。さもなくば、銃弾と砲弾の雨だぞ」

 

彼の後ろにはヴァジュラがその巨大な体躯で地面を抉りながら、猛スピードで追いかけて来ている。

 

「化け物との追いかけっこは苦手なんでね。今すぐにでも離脱したいさ!」

 

サミュエルはヴァジュラとの距離を一定間隔を保ちながら、接敵した場所より大きく離れていた。

 

「あそこだな…」

 

サミュエルの眼先には大きく開けた場所がある。倒壊したビルの隙間や廃れた住宅街の細い道から、一気に広い廃公園へと勢い良く出る。

それと同時に、神機使いが得意とするステップを使って曲がり角で急な方向転換をして、ヴァジュラの視界からサミュエルは消えた。

しかしヴァジュラの勢いは止まらず、ドリフトをするように土煙をあげて滑りながら急旋回する。

 

「撃て」

 

刹那、戦車から指揮するレノックス曹長の一言で、旧市街地の静寂さと部隊の沈黙が一気に消え去る。

無数の銃弾、多数の戦車から砲弾が撃ち出された。

着弾と同時に爆発を起こし、黒い煙がヴァジュラを包み込んだ。

あれだけ地面を揺らしながら駆っていたが、黒煙の中からヴァジュラの姿は出てこない。

 

発砲命令から5秒もしない内にレノックス曹長は、撃ち方やめの合図を出す。

轟音が旧市街地の複雑な廃ビルに反射して、まだ遠くで鳴り響いている。

 

少ししてから司令部から無線が入る。

 

「ご苦労、ヴァジュラのオラクル反応は消滅した。作戦成功だ」

 

レノックス曹長が戦車から降りて部隊に帰投準備にかかれ、と命令する。

彼が向かったのはサミュエル少尉の所だった。

 

「ご苦労だったなサム、陽動だけとは申し訳ないな」

 

「気にするな、俺たちゴッドイーターも戦うより逃げる方が死なないしな」

 

「なぁに、強敵が現れようがお前くらいのエースは死なないさ」

 

冗談交じりにレノックスが笑う。

 

「馬鹿言え、俺だって転けて怪我もするし血も出る」

 

サミュエルも笑う。

そした、2人は軽く握った拳と拳をぶつける。戦闘後、お互いが生き残った時にやる、昔からの2人の風習だ。

 

ふと、ヴァジュラに目をやったサミュエルは何かを思い出した。

 

「おっと、捕喰するのを忘れるとこだった」

 

サミュエルは神機を肩に担ぎ、ヴァジュラの亡骸の元へ歩き始める。

 

「曹長!帰投準備整いました!」

 

一人のヘラクレス隊員がレノックス曹長の元へ駆け寄る。

 

「ああ、わかった。サミュエルが捕喰を終わったら帰投する」

 

隊員はレノックス曹長がヴァジュラを喰らおうとするサミュエルの姿を凝視しているのがわかった。荒れ果てた市街地を照らす夕日の陽光がサミュエルとその神機のシルエットを浮かばせる。

 

神機から裂けた大口(プレデター)が生え、ヴァジュラの肉をグチャ…クチャ…と喰らう。

血飛沫が吹き、強固な肉を噛み千切る。しばらく咀嚼した後、神機のコアが光った。

 

「まぁ、悪くない戦果だ」

 

サミュエルは呟いて、帰投準備が整った車列に向かい、レノックスが乗る戦車に同乗する。

 

「よし、足りない奴は居ないな!出発だ」

 

10輌の装甲車と戦車がエンジンを吹かせ、一列縦隊でアナグラを目指し始めた。

ヴァジュラの死体は各所から黒いオラクル細胞が霧散していく。しかし、それはやがて別の所で再結集して再びアラガミが形成される。

命を賭けて殺しても、いずれ蘇る…そんな終わりの無い戦いに彼らは身を投じていた。

 

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