GOD EATER3 ジ・エンド・オブ・エタニティ 作:レインメーカー
ーメインフロア ラウンジー
フェンリルイギリス支部、メインフロア…ゴッドイーターを始め整備係、オペレーター、研究者、ナースや清掃員まで様々に人が行き交う場所。
メインフロアは広い範囲で様々な施設がある。
階段を上った二階と一階は吹き抜けとなって、一階にはターミナルが並び、そしてミッションの受注やアナウンスをするフロントがある。
また出撃ゲート、神機保管庫、支部内居住区、作戦司令部、戦車や装甲車が並ぶ倉庫へと繋がる。
二階では転落防止用の柵に持たれながら、一階の大勢の人間の繁忙な様子を眺める人も少なく無い。主にラウンジや、消費アイテムは携行品、雑多や本などの商業施設が二階に並ぶ。昼間は多くの人が行き交い、民間人の立ち入りも許可されているが午後21時の今は、数人がいるばかりで閑散としていた。
『ヘラクレス部隊に、新たな戦果です。今日の夕方頃、旧オックスフォード市街地にてヴァジュラと交戦。損害は皆無で圧倒的勝利を飾りました。また、ヘラクレス部隊が大型アラガミを討伐したのは今回で37回目ということです』
アナグラのラウンジにある大型のテレビモニターから、ニュースキャスターが報道をしている。
外部居住区でも放送される民間放送だ。画面には『ヘラクレス部隊 完勝』というテロップもある。それだけヘラクレス部隊の活躍は注目の的なのだ。
「勝つ度に報道してんのか、これ。もう50回は聴いたような気はするぞ、なぁ?」
ニュースで件の作戦に参加したサミュエル・ロックウェル少尉は缶ビールを片手にソファに座っていた。その横には金髪のポニーテールの女性が座って爪を切ったり磨いたりしている。
女性の名はシルヴィア・ウィンスレット、イギリス支部第一戦隊"ヴァンガード隊"の副隊長を務めている女だ。
「新たな戦力だから注目されるのは当然ですよ。それより、今日のミッションも陽動係だったんですか?」
シルヴィアは爪を磨きながら問う。
「あぁ、お陰様で追いかけっこも楽しくなってきたかもな」
ハッハッハと大袈裟に笑うサミュエルを横目にシルヴィアは表情を変えずに話す。
「ヘラクレス部隊が実戦投入されてから出撃がめっきり少なくなりましたね、世間では"ゴッドイーター不要論"さえ出てるそうです」
「ゴッドイーター不要論ねぇ…まぁ、俺としちゃ、戦わなくて済むなら日が来るならそれはそれで良いんだがな」
「ヘラクレス部隊は確かに革新的で新戦力なのは確かなのですが…そろそろだと思うんです」
シルヴィアもゴッドイーターである。ゴッドイーターは、敵が何であるのかを知っている。彼らの敵は"常に進化をする"敵であることを。
「ヘラクレス部隊が無力化されるのも時間の問題かと」
爪を手入れする横顔を見ても憂う表情が伺える。
サミュエルの内心で思ってた事を彼女もそれと同じ事を感じていた。ゴッドイーターであるが故に、敵に最も近く、敵を最も知らなければいけない立場である二人は、ヘラクレス部隊がいつまでも対アラガミ兵器として使える事は無いと思っていた。
「まぁ、俺達は討伐命令が来れば出撃するだけさ。ヘラクレス部隊には今の内に働いてもらわなくちゃな」
サミュエルはテーブルに置いてある、スライスされたじゃがバターを一枚口へと運ぶ。
シルヴィアは、咀嚼するサミュエルを不思議そうな表情で見つめる。
「それ、あんまり美味しく無いですよね」
「バターが不味いがじゃがいもで相殺されて妙な味だな…だが、このご時世食えるだけでありがたいんだぞ?」
サミュエルは、フォークに取った一枚のじゃがバターをシルヴィアの方へやる。
「食うか?」
シルヴィアは要りません、と拒絶した。
あっ、と言って何かを思い出した様に咄嗟に腕時計を見たシルヴィアは席をおもむろに立ち上がる。
「お肌に悪いのでそろそろ寝ますね。隊長もビールばっかり飲まないでください。私の分も取ってもう3本目でしょう?二日酔いだと戦闘に支障をきたしますので」
シルヴィアは返事を待たずして、ラウンジを立ち去ろうとした。だが、また何かを思い出したように、サミュエルの方を振り返る。
「あ、あと明日は補充の新人が来ますから。面会は昼食後だったかな。休暇だからって昼間まで寝るのはやめてくださいね、もう起こしに行くのは嫌ですから。そもそも隊長起こしても起きないし」
そう言ってシルヴィアはサミュエルの元を去る。
愚痴にも似たシルヴィアの言葉が突き刺さり、サミュエルは返す言葉も出なかった。
サミュエルは溜息をついてビールを勢いよく飲み干す。
『…とのことです。続いて、新種のアラガミについての報道ですーーー』
ニュース番組から聴こえてきたワードに思わず反応し、サミュエルはモニターを見上げる。
『昨日の深夜3時頃、博物館廃墟で新たなアラガミが目撃されました。設置された暗視カメラに映ったのはボルグ・カムラン種ですが、各所に原種との差異が見られます。専門家の映像分析によりますと、片方の盾は変形しており、もう片方は刀や槍に変異している、とのことでした。』
真っ暗の廃墟で暗視カメラに不気味に白く映る新種の映像が流れる。
ズームした映像だからか、画質が悪く見えにくいが確かにボルグ・カムランの特徴的な風貌をしていた。5秒程の映像あったが、サミュエルはしっかりと脳に焼き付けた。
これから、近い内に戦うであろう敵であるからだ。
ー展望室ー
外部居住区やその奥にある防壁を見渡せる展望室。
節電の為に外部居住区に灯してある光は弱く、空には満天の星空と満月が浮かんでいた。
その景色は、心を洗われるらしく、カップルや撮影に来る人などがそこを利用する。
また、聴こえる音は時計の針と足音くらいの静寂さで落ち着きを求める人なども、戦闘後はここでビールを飲む人だっているそうだ。
しかし今日は違った。展望室に来ていた数十人の人間が、一箇所を囲っている。
その中に三人の男がいた、内一人は大の字になって床に倒れ、そのすぐそばで二人は腕ひしぎ十字固めで固められている人がいた。
「参ったか?ゴッドイーターはあんたらみたいなただの人間じゃねぇんだよ」
十字固めをしているオールバックの男が言う。
「わかっ…た…離せ…!」
固められている男が空いている手でオールバックの男の足を叩く。参った、参った、と。
「功績上げてきたからって調子に乗ってんじゃねぇぞ、いっそこの腕折っちまうか?」
周りに野次馬が出来ているが、男は気にしない。
すると、野次馬の間を縫うようにレノックスが割り込んできた。野次馬の中で起こっていたものを見たレノックスはすぐに近寄り、固めを解こうとする。
「おい何の騒ぎだ!離れろローレンツ!」
オールバックの男…ローレンツ・カルゼン=ブラッカーはそう言われても固めた足を解こうとしない。
「レノックス…あんたの部下はどうなってんだ?人を噛む犬にはぐつわを付けてなきゃダメだろ…」
「何があったかはわからんが、兎に角離れろ!」
半ば力押しでそのローレンツの固めを解く。
「良かったな、クソ野郎。飼い主が助けに来てくれたぞ」
そう言うとローレンツは自ら固めた脚を解き、立ち上がった。固められていたレノックスの部下は、絡んでいた腕を肩を回して正常かどうか確かめる。
レノックスは近くに倒れているもう一人の部下の方へ行き、脈があるかどうかを確かめる。
ただの気絶だと確認すると、立ち上がったローレンツの方へ目をやる。
「ローレンツ、何があったんだ」
「あんたの部下が俺のいる前で愚痴を言ってたのでな。"ゴッドイーターは働かない癖に金は俺達より貰う"ってな、だから噛む犬には躾が必要だろ?」
「そうか…すまない。部下にはちゃんと言っておく」
「ヴァジュラやクアドリガ倒せて調子乗るのはいいが、勝手にゴッドイーターより上だとは思うなよ。お前らは下っ端だ」
ローレンツの言葉を聞きながら、レノックスは部下を背負って立ち上がる。
「俺は、いつも神機使いには敬意を払え、と言ってるんだがな…。すまなかった」
レノックスはそう言い、散り散りになった野次馬の隙間を通ってエレベーターへ向かった。
「ったく…新戦力新戦力っつってもガンナーよりも遠距離から弾撃ってるだけのチキン野郎達じゃねぇか」
ローレンツは独り言を周りに聴こえるように、わざと大きめに言ったが、終わった喧嘩沙汰に野次馬は殆ど無くなっていた。
「…またか…お前」
背後で呟くその声にローレンツは肩をビクっとさせた。それは声で驚いたからでは無く、その声の主に。
ローレンツには、その冷たい声が誰の声か一瞬でわかる。
「…女王様…かよ」
ローレンツは、振り返る間もなく首を掴まれあっけなく女王様とやらに連れて行かれる。
ゾーラ・スチュワート、イギリス支部作戦司令部司令官の女。また、ゴッドイーター、ヘラクレス部隊を管轄する。その、淡白な性格と厳格な性格が畏怖され、"女王様"と恐れられる。
元ゴッドイーターである彼女の力は、さっきの男達とは明らかに天と地の差があった。
その女に首を掴まれ、抵抗も出来ず、力のままエレベーターへと押し込まれる。
ゾーラは、エレベーターのボタンを押す。
「そろそろ懲罰が必要か?」
そして、明らかに怒っている眼でローレンツを睨みつける。
「ゾーラさん、だってヘラクレスの奴らが…」
激昂している女王様を前にローレンツは、話す言葉を全て話せず途中で詰まる。
しばらくエレベーターの中に静寂が訪れた。
それは、無口な彼女と、怖気づいたローレンツの沈黙が重なった結果だった。
エレベーターが目的階に着いたことを知らせる。
扉が開き、
「来い」
ゾーラのその一言でローレンツは、後悔するのであった。