GOD EATER3 ジ・エンド・オブ・エタニティ   作:レインメーカー

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第3話 空の脅威

ーヨーロッパ大陸 上空(朝)ー

 

「ねぇ!緊張してるの?」

 

ヘリの中だと言うのに彼女の声は無線無しでも聴き取れるくらいに大きい。

軍用ヘリの中、荷物や人を乗せる後部スペースで、彼女は神機を片手に開いたドアから外に身を乗り出して周囲の警戒をしている。

彼女は、ルチア・ジュランナー。イギリス支部から派遣されたゴッドイーターだ。肩まである短い赤髪を風で揺らしながら、壁にもたれかかっている男に話しかける。

 

「いや、緊張してない」

 

新人ゴッドイーター、ジェレミー・ウォーカーは壁にもたれかかったまま答える。さも、自分は落ち着いている、というかのように虚勢を張る。

横にある解放されたドアから心地のいい風が身体に当たる。

そこから身体を捻って外の景色を見てみるが相変わらず砂で茶色く、所々に倒壊したビルや廃墟が埋もれているのが見えるだけだ。

緊張する気持ちを落ち着かせる為に外を眺めていたが、ただただ流れていくだけの大して変わらない風景ばかりで楽しめもしない。

 

「外、つまんないね。砂漠ばっかじゃん」

 

ジェレミーは、内心を覗かれてるような気がして少しドキッとした。

 

「ねー、話相手になってよ。外にアラガミなんていないしさー」

 

ルチアはヘリの神機を床に置いて哨戒をやめる。

 

「ちょっと、ここで戦えるのはルチアしかいないんだから真面目にやってくれよ」

 

「うるさいなぁ。こっちの任務はあんたをイギリス支部に連れて行くことなの。アラガミの討伐が任務じゃ無いし。そもそも戦うアラガミがいないじゃん」

 

ルチアもジェレミーと同じように壁に背中を預けて座り込む。

 

「それに、上空にアラガミが出現したら管制塔が知らせてくれるし。目視なんてやる意味ないじゃない」

 

新人であるジェレミーは、ゴッドイーターがこんなに緩い意識なのかと内心驚く。そしていつの間にか緊張も無くなっていた。

ヘリに乗り合わせる前から仲が良くなったルチアと話したからだろう、と自問自答する。

 

「それにしても支部長直々の命令とは珍しいなぁ」

 

「何が?」

 

「支部長がドイツ支部から貴方を連れて来いって命令。何?あんた凄い人なの?新人なのに?」

 

「いや…知らないよ。俺も今の神機よりも適合する神機がイギリス支部で見つかった、って言われたから付いて来たんだが」

 

「あーでも、一ヶ月前に神機使いが亡くなっちゃったからかなぁ?その埋め合わせかも」

 

やはりそういう運命のゴッドイーターも少なく無いのか、とジェレミーはこれからを憂う。

 

「その人の神機を使うのか?」

 

ルチアはさぁね、とだけ言って欠伸をする。

暫く会話が途切れ、風が通り過ぎる音とヘリのブレードが空気を切り裂く音が鳴り響く。

外を見てみると、下はもう砂漠では無く青い海だった。

ヘリはドーバー海峡に差し掛かっていた。

 

「イギリスって…襲撃少ないんだっけ?」

 

「んー、最近はそうでも無いよ。少し増えたくらいかなぁ?」

 

「確かヘラクレス部隊?とか言ってたっけ。次世代の兵器とかなんとか…。ドイツ支部でも格好報道されてたんだけど」

 

「そんなに有名なの!?まぁヴァジュラとか普通に倒せるしあんたと同じくらいじゃない?」

 

ジェレミーは、皮肉なのかどうかも分からず話を続ける。

 

「ドイツ支部の人達も言ってたよ、ヘラクレス部隊の技術が欲しいってね。それとインド支部や極東支部なんかも」

 

「ヘラクレス部隊大人気じゃん、やばいね。でもさ、逆にヴァジュラ一体にアレだけの人数が必要だとねぇ」

 

ジェレミーが会話を続けようとしたが、操縦席の方から聞き慣れないアラートが鳴り始める。二人はそれが何かの警告音なのがすぐにわかった。

直後に無線に通信が入る。イギリス支部の航空管制塔からだ。

 

≪ロンドン近郊から対空ミサイルの発射を確認した。発射源はクアドリガ種だ。方向と高度からして目標は当機だ≫

 

ミサイルアラートは鳴り止まない。ルチアは無線が続いてる間に神機を銃身に切り替え、命綱のフックを手摺にロックする。

 

≪迎撃ミサイルの発射は間に合わない。当機に乗っている神機使いに迎撃させるか、回避機動をとってくれ≫

 

操縦士はルチアが既に迎撃の準備をしているのを確認する。

 

「こっちはいつでもオーケー!ミサイルが来てる方角と距離、推定着弾時刻を教えて!操縦席、調整よろしく!」

 

ルチアは耳の無線機を押しながら、相変わらず大きな声で話す。

操縦士は親指を立てて了解の合図をする。

 

≪方角、当機から3-2-0、距離約40マイル、着弾は43秒後だ。同高度の為、調整は不要≫

 

操縦士はヘリをルチアが迎撃しやすいように向きを調整する。

ジェレミーは揺れる機体の中で手摺を掴んで、ミサイルを待つルチアを見る。

目が合ったルチアは戦えない新人に声をかける。

 

「うわっ不安で今でも泣きそうな顔してんじゃん!」

 

こんな状況にも関わらずゲラゲラと笑うルチアを見てジェレミーは不安よりも逆に頼もしさを感じた。

 

「うちの銃身はガトリングだから、精密射撃は苦手なんだよねぇ」

 

「大丈夫かよ…」

 

「まぁ、見てなって!どーにかなるよ!」

 

「……」

 

ルチアは銃身を構え、ミサイルが見えるのを待つ。

背中に施されているフェンリルマークが異様に頼もしく見える。

ジェレミーは神機が無いだけとは言え戦えない自分に歯がゆさを覚えた。

 

≪着弾まで20秒だ≫

 

管制塔からの無線が入る。ジェレミーがルチアの奥を覗くと遠くでミサイルのジェット噴射が光っているのと、白煙が通り道を作っているのに気がつく。

 

「おい!なんで撃たないんだよ!」

 

邪魔をしてはいけないとわかっていながら、あまりの不安に声をかけてしまう。

当然、ルチアは

 

「うるさい!黙ってて!」

 

とジェレミーをすぐに黙らせた。

 

ルチアは静かに目視でミサイルとの距離を算出する。

 

…3

 

ルチアとジェレミーから見たミサイルは、真正面で小さく丸い的にしか見えない。

 

…2

 

ルチアは静かにミサイルが射程内に入るのをジッと待つ。ジェレミーはそれを黙って見るしか無かった。

 

…1

 

ルチアがトリガーを引く。ヴゥゥゥ…と音を立てながらガトリングの銃身がゆっくり回り始め加速し、それはすぐに次々と火を吹いた。

 

ドドドドドド…とオラクル弾が発射される。

次々と放たれる射撃の反動で暴れる銃身をルチアは抑え込む。それと同時に徐々に大きくなる的に狙いを定めながら。

 

ジェレミーは、瞬きもせずそれを眺めていた。

確かに数発は当たっているが、ミサイルはものともせずヘリめがけて直進してくる。

 

ルチアは尚も、撃ち続ける。

ミサイルが近づくに連れて、当たる弾丸の数が増えていく。

 

≪着弾まであと10秒だ!何をやっている!≫

 

「うる…さい!」

 

ルチアの声はガトリングの音でかき消され、ジェレミーには聴こえない。

 

そして、それから3秒間ほど、ルチアが放つ弾丸は連続で当たり、ミサイルは激しい爆発を起こした。

その衝撃波がヘリに伝わり、機体が大きく揺れる。ルチアも爆風で思わずよろけてしまい、手摺にしがみつく。

 

ミサイルの迎撃に成功した直後から、操縦席からさっきとは別のアラートが鳴り始めていた。

 

「ふぅ…なんとかしてみせたよ!…けど、これヤバイかも??」

 

ルチアはミサイルの脅威が去った今でもアラートが鳴り止まない事に気が付き、外に身を乗り出しヘリの後ろを見る。

 

「あちゃー…テールローターがやられたみたい、多分破片かな?」

 

ヘリのテールローターから黒煙が吹いてる事にジェレミーも気が付く。

だが依然としてヘリは安定していた。

 

「テールローターが損傷した。飛行は続けられるがいつ被害が拡大するかわからん。兎に角、急いでイギリス支部へ向かう」

 

操縦士が二人に言う。それと同時に、管制塔から通信が入る。

 

≪ミサイルは消失。ご苦労だった。発射源であるクアドリガはヘラクレス部隊が交戦を開始した。対空ミサイルはもう大丈夫だろう≫

 

ジェレミーは、緊張なのか恐怖なのかわからない感情が解かれ、大きく息を吐いた。

 

「あんた、ビビりすぎー。そんなんじゃアラガミの前でチビるんじゃない?」

 

ルチアは緊張していた素振りを一切見せなかった。

 

「はいはい…」

 

どっと疲れが肩にのし掛かって返事する気力は出なかった。

 

ゴッドイーターを乗せたヘリは、尻尾から黒煙を吐きながらイギリスを目指す。

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