GOD EATER3 ジ・エンド・オブ・エタニティ 作:レインメーカー
≪レノックス、ルチア達の乗るヘリと周波数を合わせた。無線を使って連携しろ≫
ゾーラ・スチュワートは、ヘリの座標とコンゴウの位置を司令部のモニターマップで確認する。
ヘリにはGPS、コンゴウ達アラガミには、オラクル反応を探知するレーダーで居場所を特定できていた。
≪ヘリは南東から、コンゴウはそれぞれ北西から接近中だ。先にヘリが到着するだろう≫
≪了解した。あー、あー、新人を乗せたヘリへ、回収地点をチェックしたい。応答せよ≫
レノックスがヘリの方向を見ると、青空に黒い点がポツンと遠くに見える。
テールローターから黒煙を吐きながら長い糸を作ってやって来る、レノックス達はそれが彼女達が乗るヘリだとすぐにわかった。
≪はーい。その声はレノックスだよね!今そっちへ向かってるよ≫
≪司令部から聞いたかと思うがコンゴウが接近してる。時間はそう長くは取れない、こっちは接敵次第交戦に入るから、お前らは砲撃に巻き込まれないように後ろから来てくれ≫
≪了かーい≫
ヘリはフラフラと揺れながら徐々に高度を下げてやってくる。高度も維持出来ないくらい被害が増大したのか、レノックスは不安と後ろめたさを感じた。
ーヘリ内部ー
「今からクアドリガを倒したヘラクレスの人達と合流するんだけど…あんたは戦えないから隠れててね」
ルチアが少しバカにしたようにジェレミーに忠告する。
「…分かった。このヘリは放棄するのか?」
「そんな訳ないでしょ!?廃墟の屋上に留めて、また後日修理班を連れて回収する、まったく…ヘリがどれだけ貴重かも分からないなんて…」
ルチアは、また心底バカにしたような素振りを見せる。
「…ぐぬぬ…」
仲が良いとは言え、ここで言い返せる訳もなく、ヘリは高度を下げ廃アパートの屋上に近づく。
操縦士がヘリを滞空させながら位置を調節する最中に通信が入る。
≪司令部より、ヘラクレスとヘリへ。2体のコンゴウのうち1体が別の方向へ向かった。このまま放置するのも危険だ。両方倒せ≫
通信が切れる頃には、ヘリは着陸していた。
ルチアとジェレミー、そして操縦士がヘリから降りる。
「今からレノックス達の所へ送るから、アラガミ見つけても素手で挑まないでね」
「挑むかよ…。レノックスってヘラクレスの隊長のことか?」
「そそ。わかったら、さっさと操縦士さんをおぶって、ここから飛び降りて」
そう言うとルチアは屋上から飛び降りてジェレミー達の視界から消え失せる。
ゴッドイーターは一般人の数倍の衝撃は耐えられる。また、傷を負ってもある程度なら回復するし、身体能力が向上し、屋上から飛び降りようがガラスが突き刺さろうが大丈夫なのだ。もちろん限度はあるが。
ジェレミーは、操縦士を背負い朽ちて飛び降り禁止用のフェンスが倒れたとこから飛び降りようと縁に立つ。
下を覗き込むと結構な高さに、操縦士は思わず動揺を隠せなかった。
ジェレミーは飛び降りたが大の大人を背負っているからか衝撃が思ったよりも強く尻餅をついてしまう。
「ダサッ!早く立ち上がって付いてきて!」
言い返す間も無くルチアは走り出した。
わ
ジェレミーと操縦士もそれについて行く。
ーーー
「レノックスー!」
ルチアが走りながら叫ぶ。キューポラから顔を出すレノックスは声がする方を向いた。
「よぉルチア、そいつが新人か?」
レノックスとジェレミーの目が合う。
「初めまして。本日付でドイツ支部から転属してきました、ジェレミー・ウォーカーです。よろしくお願いします!」
ジェレミーは走ってきた為か少し息を荒くしながら自己紹介をする。
「ヘラクレス部隊隊長レノックス・S・ヒューイットだ。…すまない、詳しい自己紹介は後にしよう、先に奴らをぶっ倒す」
「はい…わかりました。俺たちはどうすれば?」
レノックスは薄ヒゲを手で撫でながら少し考える。
「うーん…そこにいてくれ。俺達もここで戦うから、お前達は戦車の後ろにいてくれ、近寄るなよ?轢き殺すのは趣味じゃ無いしな」
ジェレミーは了解の返事をするとルチアが居ないことに気が付く。
「そう言えば、ルチアの奴どこに行ったんですか?」
「確かにいないな…」
レノックスとジェレミーが辺りを見回すがルチアの姿は無い。
「神機使いなら、方向転換したコンゴウの討伐行くから、レノックス隊長に伝えてて、と伝言が…」
他の戦車の搭乗員がルチアから預かった伝言を伝えた。
「なるほど…あっちはルチアに任せよう。一体に集中出来る」
≪司令部よりヘラクレス部隊へ、コンゴウは予定通りそっちへ向かっている。会敵はおおよそ20秒後≫
「了解!」
6輌の戦車の砲に弾が装填される。
≪各車輌へ、狙いは何処でもいい。兎に角、殺せ≫
レノックスはそう言って、ヘラクレスの新たな餌食を待つ。
ーーーー
キィィィィン…!!
鼓膜を突き抜けるような鋭い爆発音が鳴り響く。
ルチアは、逸れたコンゴウを呼び寄せる為に音響グレネードを地面で炸裂させた。
遠くで地面を殴るような重たい足音が微かに聴こえる。
それは秒単位で徐々に大きくなって、近づいて来るのがわかる。
「ほんっと、アラガミってバカだなぁ」
小声でそんな事を言っていると、ドス、ドス、ドス…とコンゴウが音の発信源にやってきた。丁度ピンポイントで音響グレネードが炸裂した場所だった。
しかし、コンゴウの視界にルチアはいない。
不思議そうに辺りをキョロキョロするコンゴウ。
一方、ルチアは壁に身を潜めていた。
「さてと…すぐにやっちゃうよ」
ルチアは、地面を蹴る。ひびが入って凹むくらいの衝撃が地面に伝わる。ゴッドイーターのその卓越した身体能力が可能にするステップだ。
コンゴウは後ろから猛スピードで近づいてくる凶刃に気が付かない。
ルチアはステップの勢いのまま、軽く跳ぶ。
コンゴウの背中をそのショートブレードで突き刺し、一気に身体を捻って回転する。
ブレードは、アラガミの肉の抵抗を受け、深い所で勢いが止まる。そうすると、ルチアは捻った身体の勢いを利用して刃を抜き、そしてまた別の箇所を刺す。
その要領で、コンゴウの尻尾から頭まで一気に回転しながら刺し進んだ。
コンゴウを裂いた傷口から血が大量に噴き、服や顔に付着するがルチアは気にも止めない。
コンゴウの眼の前で着地したルチアは、拳を振り上げる素振りを見せたコンゴウの額にブレードを突き刺す。
ブレードが肉で固定されると、そこを支点にジャンプをした。神機は握ったまま、ルチアの身体が宙を浮く。
そして銃形態に切り替え、裂けた額目掛けてガトリングを撃つ。コンゴウが煙に包まれても、まだ撃ち続けた。ルチアの軽い身体は、銃撃の反動で少しの間浮いたままだった。
オラクルが切れるまで撃ち尽くしたルチアは、空中で近接形態に切り替え、プレデターを作る。
そして重力で身体が落ちるのを利用して、神機を下方向へやり、プレデターの大顎がコンゴウの背中を喰らう。
あまりの衝撃にコンゴウは、腹を地面に着けてダウンした。
コンゴウのオラクルを飲み込んだ神機は、腕輪を通じてルチアをバーストモードにする。
よっ、と言ってルチアはコンゴウの背中に乗った。呼吸をしている為か、背中が上下に動くのをバランスをとって相殺する。
「まだ生きてるよね?ゴッドイーターって早いでしょ?いや、私が強いだけかなぁ?」
コンゴウの顔を背中から見下ろす。
と、遠くからタタタンッ!という炸裂音が聞こえた。
「ヘラクレスの戦車の音かな?」
ルチアが聞こえた方をコンゴウの背中から背伸びして見てみるが、廃墟の曲がり角の先なのか何も見えなかった。
コンゴウはダウンしたまま背中のパイプから空気の吸引を始める。
スゥゥゥゥ…という微かなその音をルチアは聞き逃さず、さっきの捕喰で取得したアラガミバレットを少し跳んでから空中で撃ち放った。
アラガミバレットが命中すると、パイプの中でエアが暴発したのかコンゴウの意図せぬタイミングでパイプが爆発する。背中のパイプが結合崩壊を起こした。
アラガミバレットの反動でコンゴウから距離を取ったルチアは、神機を再び近接形態に戻し、戦闘ポーチから何かを取り出す。
「もうカタをつけるね。ちょっと疲れてきちゃった」
取り出したアイテムを地面に乱暴に置く、カチッと音がしてその周囲へ黄色いオラクルを放つ。
「ほらほら、ホールドトラップだよ、かかってきなさい」
ホールドトラップを挟んでコンゴウはルチアを睨み付ける。
一方ルチアはお尻ペンペンでコンゴウを挑発する。
コンゴウはルチア目掛けて走り出した。当然、ホールドトラップには目もくれない。いや見ても何かはわからないだろう。
勢いよく近づいてくるコンゴウに、ルチアは全く動じず、ホールドトラップの前でプレデターを発生させ、喰らう準備をしていた。
「いただきます!!」
コンゴウがホールドトラップを踏み、全身に痺れが回る。その瞬間にルチアは、プレデターを伸ばしてオラクルの肉を噛み千切る。肉を喰らった神機は、それを飲み込み、腕輪を通じてゴッドイーターを強化する。ルチアのバーストモードLv.2が開放された。
「さぁ行くよ!!」
動けなくなったコンゴウをルチアはその刃で斬る。斬る。斬る。何度も。
血が噴いて顔に掛かりそうになると、ステップで回り込み別の箇所も斬り刻む。突き刺し、引き裂き、捻じ込み、一瞬たりともその手は休まず、その刃は肉を断つ。
ショートブレードの軽快さとルチアの身体能力、そしてバーストモードの強化でかれこれ100回は斬りつけたであろう。
そうしてる間にホールドトラップの持続時間が切れる。
コンゴウはそのまま立つ力も失われ、崩れ落ち、その巨体の重量に砂煙が舞う。
「やっと力尽きた…久しぶりに激しく動きすぎたかな?」
ルチアは捕喰をして、コアを剥奪した。その後神機を払って、付着した血を弾く。
≪2体のコンゴウの反応は消えた。ご苦労、帰投しろ。昼食後は面会だ≫
「はーい」
ルチアが返事をする。別の方向から大きなエンジン音が聴こえた。振り返るとヘラクレス部隊の戦車が一列で帰投するのが見えた。
そう言えば、とルチアは砲撃音は1度しかなかったのに、と思い返す。
6輌の戦車とは言え今まで全く対抗出来なかった兵器でヘラクレス部隊はコンゴウを瞬殺出来たのか、とその強さと技術の進歩を誇らしく感じざるを得なかった。
「ルチアー!!おーい!!」
ジェレミーが戦車の砲塔に座って、ルチアを呼ぶ。
ルチアは車列に走って、ジャンプして軽々とレノックスが乗る車輌の車体に乗った。
「お疲れさん、早いな。さすがゴッドイーターだ」
レノックスがそう言うとルチアは胸を張る。
「いやーうちが強いからじゃない?」
ジェレミーがはいはい、と流す。
レノックスは微笑んだ。
「さーて、ミッションは終了だ!帰って飯だ!飯!」
彼らは神に抗う者たちの戦いがこれから厳しさを増す事を知らない。