モテない軍師の非日常   作:虎武士

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モテない軍師と開戦と醜い修羅場

 ロウside

 

 あの衝撃発言から何日か経過した…俺は前々から練っていた計画を、少しずつ動かす事になる。

 

 愛馬──ジャックを携え、俺は今王城の北方──北の城塞へと走らせている。

 

 やがて城塞前に到着…ジャックを柱に繋げ、扉の前に赴く。

 

 そして軽くノックする…しかし誰も開けようとする気配がない。

 

 妙にいやーな予感を感じつつ、俺は静かに扉を開けた。

 

「こんち──」

 

「カ゛ム゛イ゛さ゛ま゛ああああああああ!!」

 

「ぐぶぅっ!?」

 

 俺は突然出てきた男に抱き付かれ、そのまま押し倒された。

 

「ああカムイ様!このジョーカー、とても死ぬような思いで心配しておりまし──」

 

 この男──ジョーカーは整った顔(俺より美形!)に綺麗な銀髪、執事服を着ている。

 

 そしてカムイ王子と間違えた俺と目が合った瞬間、眉間に皺を寄せながら立ち上がった。

 

「チッ…何だお前かよロウ、紛らわしい事すんじゃねーよ」

 

「其方から抱き付いといて酷くね?」

 

 敬語から急に口が悪くなり、此方に対して悪態をついてきた。

 

 此奴は90%程頭の中はカムイ王子の事でいっぱいだからな。

 

 元々は貴族出身だったらしいけど、左遷されて今はこの城塞でカムイ王子に仕える事になったっぽい。

 

「つーか王子は相変わらず帰って来ねぇんだな」

 

「当たり前だ。フェリシアやジジイは兎も角、何時でもカムイ様がお帰りになられるよう清掃はこなしているんだからな」

 

 そう…あの日以来、カムイ王子は城に戻っていない。

 

 後で聞いた話だが、無限峡谷の砦に白夜の兵士がいた為に一度は撤退しようとしていた。

 

 だがあのクソハゲが兵士を殺したのをきっかけに、戦闘状態になってしまったそうだ。

 

 そして暫くしてマークス王子達が駆けつけて援護に入り、カムイ王子達を先に行かせた。

 

 それから王子達の姿を誰も見ておらず、現在も捜索中らしい。

 

 エリーゼ王女は居館にショックで塞ぎ込み、カミラ王女は溺愛し過ぎている所為か一心不乱に探し続けている。

 

 レオン王子もマークス王子も表情に出さないが、心配してる様子が見受けられる。

 

「それで…一体何の用だ。暇だから来たわけじゃないんだろ」

 

「察しがいいね〜フローラちゃんに渡しておきたいものがあってさ──」

 

「私がどうかされました?」

 

 フェリシアと同じメイド服の少女が城塞の中から現れ、その少女──フローラちゃんに懐から出した封筒を俺は彼女に手渡す。

 

「これ。氷の部族の族長さんに渡してくれ」

 

 フローラちゃんは目を見開いて驚き此方に視線を合わせる、熱い視線を送られると困るなぁ。

 

「何故私に」

 

「知ってるぜ、君とフェリシアが此方で働く理由」

 

 彼女とその双子の妹──フェリシアは氷の部族の族長の娘、此方には奉公──つまり暗夜の為に人質として此方に連れて来られた。

 

 あの国王(老害)はその気になれば部族の人間を皆殺しに出来る、それを出来るだけ避ける為…族長宛ての手紙を送る事にした。

 

「…ありがとうございます」

 

「惚れるなよ」

 

「有り得ませんから」

 

 悪戯っぽく笑みを浮かべる彼女の顔を見て思わずニヤける、其処で何を思ったのかジョーカーが言葉を紡いだ。

 

「俺もついていくぞ」

 

「はっ!?」

 

 畜生…言うと思ったよ。

 

「もしもの事がある…証人として俺がフローラに同行し、反乱を止めさせるよう族長を説得する。タイミングはお前に任せる」

 

 元々そのつもりだ。

 

「そして、カムイ様がお帰りになられるまで…この国に戻るつもりはない」

 

 どうやら不満を抱えてるのは俺だけじゃねーか、そして相変わらずのカムイ王子への心酔っぷりなのな。

 

 

 

 

 

 あの二人を見送り、俺は眉間に皺を寄せながら下町を歩いている。

 

 決して羨ましくねーぞ、言い合う二人を見てジェラシーなんて感じねーぞ。

 

 …すいません、本当は羨ましがってまーす。

 

 だって端から見てもカップルにしか思えねーもん! 

 

 それを見せつけられて俺はリア充爆発しろ!って思ったよ。

 

 そんな叫びを心の底に仕舞い込み、俺は次の任務に備えてある程度の買物をしている。

 

 剣に魔道書、それから傷藥。

 

 買物を済ませて城に行こうとした時、一人の兵士が此方に向かって走ってきた。

 

「ぐ…軍師殿! 軍師ロウ殿!」

 

「君は…確か第十五騎馬部隊の」

 

 現れた兵士は女の子で、短い黄緑色の髪に真紅のルビーの瞳を持っている。

 

 急いで走ってきた所為か、その場で鎮座して呼吸を整えると彼女は俺に向かって敬礼した。

 

「はっ…! 部隊長のミーナであります…国王陛下直々の勅命をお伝えする為、参上致しました!」

 

 そうそう、ミーナちゃん…軍の中でも唯一の女隊長だったっけ。

 

 ってか…あの国王(老害)の言葉って時点で既に嫌な予感しかしねぇ…。

 

「んで…王の勅命って──」

 

「はい…明朝、無限峡谷を越えて──白夜王国へ侵攻すると」

 

 はい、嫌な予感的中〜。

 

「王子達もそれに参加する事となり、軍師殿には戦場での指揮を執るようにと承っております」

 

 ミーナちゃんは浮かない顔で語り、俺にそう伝えてくれた。

 

「ミーナちゃん…個人の意見としてどう思っている?」

 

「個人的には…王のお考えは常軌を逸しております。まるで何かに身を委ね、白夜を…そして暗夜(この国)…両国の滅亡を望まれてらっしゃるかのように」

 

 そうだよな、あのおっさんはあの御方──シェンメイ王妃が亡くなってからおかしくなった。

 

 それ以前は自ら戦場に赴くようなはっちゃけた性格だったらしいが、今の様子を見ても全然想像がつかん。

 

 ま…それは考えねぇ方がいいか。

 

「お言葉は以上です。では自分はこれで失礼します」

 

 ミーナちゃんは去っていった、俺もさっさと寝ようかね。

 

 

 

 

「全軍、出撃!」

 

 明朝、マークス王子の号令の下…俺達は白夜王国に向けて出発した。

 

 無限峡谷を越えて進軍していき、気付けば陽が傾き始めていた。

 

 夜のない茜色の空…暗夜の人間ならば、誰しもが憧れる光景だった。

 

 ──世の中が戦争じゃなかったらな。

 

「ロウ」

 

 黄昏れてる俺にマークス王子が声を掛けてくる、何で美女じゃなくてむさい野郎なんだよ…空気読めよ。

 

「今更聞く事だが…王命に従わぬのだな」

 

「勿論っす」

 

 そう…俺は最初っから命令なんて聞く気はない、昔から堅苦しいのには若干抵抗がある上、俺の性格には似合わん。

 

 それをマークス王子達は堅くなる必要はないと促し、公私を分けて口調を変えている。

 

 なんて話をしていると崖に差し掛かる、下には微風が吹く草原に大勢の白夜王国の兵士達が。

 

 侍と天馬武者と言った兵種を中心にして、和を重んじる白夜王国。

 

 その中心に赤い鎧を身に付けた一人の侍が立ってた。

 

『──突撃!』

 

 マークス王子と赤い侍の号令の下、両軍は戦闘を開始した。

 

「我こそは白夜王国第一王子、リョウマ! 暗夜軍の将よ、一騎打ちを所望する!」

 

 侍──リョウマ王子の言葉に呼応するかのように、マークス王子は鞘から黒い剣を手にする。

 

 暗夜の王族に代々伝わる神器の一つ、暗黒剣ジークフリートだ。

 

「暗夜王国第一王子マークス…その一騎打ち、受けよう。我が剣の露として消えるがいい…!!」

 

 馬を走らせてマークス王子は斜面を下り、リョウマ王子も刀を持って走り出す。

 

 両国の第一王子が正に向かい合って激突し、剣戟の音が戦場に響き渡る。

 

「暗夜の王子よ!何故この白夜に攻め入った…!?これまでの卑劣な策も貴様の差し金か!」

 

 言い返したいが、間違いじゃないので否定出来ない。

 

「敵に語る言葉は持たぬ…降伏し支配を受け入れよ」

 

 あくまで父親(老害)を信じるのか、マークス王子は止まろうとしない。

 

「さもなくば──死ぬがいい!」

 

 王子単騎で何とかなるかも知れないが、一人じゃちょっと分が悪いな。

 

 俺達は河沿いを沿って合流を目指すが、橋が壊れて困難な状況になっている。

 

 普通の人間ならば断念してしまうだろう…そう、()()()()()ならば。

 

「…姉さん、竜脈を?」

 

「ええ、私に任せて」

 

 飛竜に跨ったカミラ王女が竜脈を発動させると、一瞬の内に河が干上がっていった。

 

 これで合流しやすくなった、そんな事を考えていると向こうから声が聞こえてきた。

 

「──気を抜くなカムイ、彼等は危険だぞ」

 

「…へ?」

 

 聞き捨てならない名前が出てきたので、俺や王子達は呆気に取られた。

 

 声の主──赤髪の天馬武者の女性に導かれる形でカムイ王子…そして弓を持つ少年と祓串を持つ少女、純白のドレスを着た少女が現れる…って。

 

「シェンメイ王妃…!?」

 

 いや…似ているが違う、そもそも王妃は既に故人だ。

 

 そう言えば王妃には娘がいると聞いた事がある、だがその娘は何者かの手によって白夜に連れ去られたと言う。

 

「まさか、アクア王女…!」

 

 それでやっと確信を得た。

 

「無事だったかカムイ…!よく生きていてくれた」

 

「マークス兄さん!何故こんな戦争を!?」

 

「さあ行くぞ。お前も戦いに加われカムイ、お前がいてくれれば戦争は直ぐに決する。無駄な犠牲を出さずに白夜王国を征服出来るだろう」

 

 カムイ王子の言葉に応えず、マークス王子は剣を構える。

 

「気を付けろカムイ、この男は暗夜王国の王子だ」

 

 やっぱりカムイ王子は白夜の王族だったか…通りで暗夜(此方)白夜(彼方)が手を取り合う、なんて言い出すわけだ。

 

「ああカムイ…生きていたのね、良かった…!」

 

「悪運強いね、カムイ兄さん」

 

「良かったよ〜!カムイおにいちゃん!」

 

 他の王族の方々から歓喜の声が上がる、特にエリーゼ王女なんか塞ぎ込んじまってたからなぁ〜。

 

 そんな思い出に浸っていると、向こうから批判の声が上がった。

 

「何を言う、弟を攫った暗夜の者め…!カムイは私の弟だ!」

 

 …あれ?

 

「いいえ…カムイは私の弟、誰にも渡しはしないわ」

 

 あの…なんか主旨変わってんすけど。

 

 つーか唯の弟を取り合うお姉さん達だ、個人的に羨ましい! 

 

「騙されるなカムイ!お前は俺達の大切な家族だ!」

 

 此方も酷え言い争いじゃん、目が腐る。

 

「戻って来い、カムイ!また兄弟姉妹(きょうだい)一緒に暮らそう!!」

 

 ちょ…いい加減。

 

『カムイ!!』

 

 聞けやぁぁぁあああ!?

 

 このバカ王族達はどれだけ言っても勝手に話を進めやがるし!頭ン中花畑か!?

 

 もう無理矢理黙らせようと思ったが、カムイ王子の言葉に耳を傾けるのだった。

 

 続

 

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