銀髪スタンド使いの転生者はSAOの世界で第二の人生を過ごす 作:Haganed
『2026年6月 ウンディーネ領主館』
「………」
……俺は何時もと似合わず、領主館で仕事をしていた。全ウンディーネの状況や領内で起こった事件等の確認をしていた。事件の殆どはkaimuがストレアに追っかけられていた事だが。
しかし今回ばかりは、こんな下らない事も懐かしく感じられる。可愛く感じられる。笑顔でいられる。笑いあえる日になる。そんな気がする。
そんな感情に浸っている時、領主部屋のドアを叩く音。漸く来たかと待ち望んだ感情と、来てしまったのかという少し絶望感に似た何か。
ドアが開かれる。現れたのはクリスハイトだった。
「やぁシヴァ君、遅れてすまない」
「男を待つのは嫌なんだけどよ、渋々だ」
「『邪険に扱われてるんだお』って被害届け出してやる」
「やってみろドアホ。ここの領主は俺だ」
「じゃあ職権乱用で」
「お前も似たようなモンだろ」
談笑……とは言い難い底知れぬ雰囲気が俺とクリスハイトの間に流れているのが分かる。クリスハイトは用意されているソファーに座り、それを見た後俺もクリスハイトに向かい合う様に座る。
「……準備出来たんだな、菊岡」
「まぁね。約束通り和人君たちを巻き込ませない様にしておくよ」
「それはありがたいな」
「それで……君はどうするつもりだ?」
「考えはある」
キセルを持ち、煙草を小さく丸めてキセルの穴に入れる。火は自動的に着火する仕組みなので、そのまま吸う事ができる。
キセルで一服した後、クリスハイト/菊岡に話す。
「治療と称して使えば良い。勿論治療はしてもらうぜ、何せ本気でやるからよ」
「……本気、か。なるべく重体にしないでくれよ」
「それはフリか?」
「フリじゃあないんだけど」
ハハハッと微笑む。その後の表情は険しいものとなるが。
「……本当にやるのかい?」
「今さら何言ってんだテメエは?怖じ気付いてんのか?」
「まぁ近いね。まさか、まだ道徳心があるとは思ってなかったし」
「お前が道徳心ねぇ………気持ち悪ッ!!」
「そこまで本気で言わなくても良いよね!?」
前言撤回。険しい表情はしているけど何時もの光景だ、本当に何時もの光景だ。何かしらツッコミは野暮だから無しな。
「ふぅ………んじゃあ、明日だな」
「あぁ………明日だ」
クリスハイトはそれを伝えた後、この部屋から出ていく。俺は領主部屋に設置されているベッドからログアウトし、現実世界に戻る。
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『銀先の部屋』
目覚めると1人だった。ベッドから降りてリビングに向かう。しかし誰もいない。
確か……この時は何故か予定が重なって俺1人だったのか。
リビングのソファーに座り、一息つき天井を見上げる。
「…………久々に自主練しとくか」
立ち上がって何時もの稽古場へと行こうかと考えた。……そういえば、和人が居たなと思い和人家に行く。
そんでもって行ったが……案の定和人が出てくる。
しかし後ろからもう1人、和人の後ろからひょこっと出てきた。明日奈であった。一先ず剣道場に行って話をする。
「……んで、お前らは2人してイチャついてたと」
「ちょ!!そ……銀さん!!」
「あ、総督呼び無くなってる。まぁリアルの名前なんてゲームの中に2年も居れば覚えづらいわな」
はぁ……と俺は溜め息をついた後、持ってきていた木刀を片手に持ち立ち上がり2人から距離を取る。
「オイ和人」
「……久々にやるのか?」
「あぁ。明日奈も見ていけよ」
2人の方に振り返り、木刀の刀身を肩に乗せながら喋る。
「俺たち人外のお遊戯をよ」
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~明日奈side~
「ッアアアァアァアア!!!」
「セァァァアアアアア!!!」
木刀と木刀がぶつかり合って、その度に風圧が出てくる。耐えるに耐えがたいその風圧は、人間が出しているとは思えない程の風圧だった。
これが総督のお父さんに稽古をつけてもらった和人君。昔から鍛えられていた総督。実力はほぼ互角の状態、拮抗試合というのだっけ?こういうの。
ここで総督が和人君から距離をとって居合い?の構えをとった。和人君も同じ居合いの構えをとって、総督に向かって走り出す。
十分近付いた和人君は木刀を横凪ぎに振ろうとした。
それよりも前に総督は木刀を素早く振った。その直後、和人君が木刀を振るう。しかし、何かに弾かれたかの様に木刀ごと和人君の体が仰け反る。
その隙を突いて総督が接近し、木刀の柄で和人君の腹部を狙い当てる。
尻餅を着きながら着地した和人君。木刀を納める様に行動した。その後和人君に歩み寄って手を差し伸べる。
「お疲れ、久々に楽しめた」
「……久々に運動した感じだ。ありがとな」
「いや、態々彼女さんとの時間削ってまでやってくれた和人にありがとうって言いたいね。俺はよ」
「…………」
和人君は目を見開いて、パチパチさせながら尋ねた。
「お前……何か変なモン食ったか?」
「どういう意味だよそれ?」
「そのまんまの意味」
「……はぁ、まぁ良いや。じゃあな和人」
「いやお前ん家と俺ん家隣」
そう言って総督は帰ってしまう。中々楽しめた!!というか凄いの一言しか出なかった!!
でも、私たちは直ぐに気付くべきだった。総督の背中に、また大きな重荷を背負わせていた事を。
それから10日後。総督は……意識不明の重体のまま、何処かへ搬送された。左腹部に『鋭利な物で斬られた傷』を負って。