エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
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2024.12.16 10:26
アスカ・エンパイア 弊闇京 六条院
閉め切られていた屋敷の扉が再び開く。そこから飛び出したティールは火薬の詰まった布袋を背中に二つ背負っていた。
「あいつ何をする気だ」
「止めろ!誰か術でも矢でもなんでもいいから当てろ」
危険を察知した毘沙門天のプレイヤーはティールに攻撃を集中する。
(この死になにかしら意味があるのかしら)
走馬灯のように敵の動きがゆっくり見える中、ティールは身を呈した自爆に何か意味があるのかを考えあぐねる。
「もう少しで魔王気取りの奴の首を取れるというのに、邪魔するなあ!」
ティールが目と鼻の先まで迫っていた毘沙門天のプレイヤーは阻止しようと槍を突き刺す。
(ああ、そういえば崇拝対象はあるわね)
ティールは突き出された槍をスライディングで下に入りながら納得した顔になる
「我らが王の為に!」
ティールが叫んで着火用の摩擦紐を引っ張ると大きな爆発音と共に毘沙門天の盾プレイヤー達を吹っ飛ばした。辺りを爆煙が包む。
塀の上に陣取っていたエンパイアワールドのメンバーも自爆の衝撃に体が強張る。
「ティールが死んだ・・・」
トトナの隣にいたシエルが唖然として言う。
(ティールの死を生かさないと、このままでは士気が下がってしまいます)
トトナは次の言葉を考える。
「皆さん、ティールのせっかく作ってくれたチャンスを無駄にしてはいけません。敵の防御が崩れているうちに押し返しますよ」
トトナはそう言って塀から飛び降りる。その彼女に続いてシエルとリーネが飛び降りる。
「よくもティールを」
シエルは手近にいた毘沙門天プレイヤーに刺突する
「死ねっ!死ねっ!」
リーネは怒りのままに銃床で繰り返し殴りつける。
「みんな、トトナ達をフォローするよ」
アジュールがそう言って屋根から飛び降りると続々と飛び降りて守備の崩れた毘沙門天へ肉薄し、混戦と化した。
「数ではこっちのほうが多いんだ。近接に持ち込めた以上消耗戦で勝てるぞ」
毘沙門天の隊長は叫ぶがその中に煙玉が投げ込まれる
「けほっ、けほっ。何だ、何が起こったんだ」ザシュッ ボトン
咳き込む隊長の首が落とされた。
「いい感じに混乱してるじゃない」
グウェンは煙に紛れて暗殺術で楽しみながらプレイヤーを狩る。
「見つけたぞぉ、ネズミィ!」
グウェンの後ろから刀が振り下ろされる
(やばっ、もう煙が薄れてきた)
ダァン!
「っ!」
しかし発砲音とともにグウェンに刀を振り上げていたプレイヤーは頭が吹っ飛んだ
「ヒット」
家屋の屋根で伏せていたクロ(ルクス)はグウェンを狙うプレイヤーを石火矢で狙撃していた。
シュッ
「どうせ雑魚しかいないくせに。わたしの技はこんな低俗な戦いのために鍛えたものじゃないのよ」
プライドの高いイブは文句を言いながらも矢を放ち、敵プレイヤーを仕留めていた。
「別働隊が来たわ」
「よしっ!これで挟み撃ち!」
増援の存在に守備隊は士気を取り戻した。
「やべえ、このままじゃ全滅だ」
「俺たちだけでも逃げよう」
一部プレイヤーが脇道にそれて戦域から離れようとする。
しかし目の前に僧兵が立ち塞がる。
「ここは通せん坊よ」
ウルリカは八角棍棒をプレイヤーの脳天へ振り下ろした。
───
形勢が崩れた毘沙門天プレイヤーは倒され尽くし、残ったのは道端にばら撒かれたドロップ品だけだった。
「ティールが死んじゃった」
「ぐすっ、そんな・・・」
戦闘後の後片付けでティールがデスペナドロップした班の腕章を拾い上げたシエルは涙を流し、リーネは顔を両手で覆っていた
「あのう・・・お二人とも、デスゲームではないのであくまでもゲーム内で死んだだけですよ。リアルのティールは生きてます」
トトナは困惑しながら言う。
「あっ、そっか」
「恥ずかしい・・・」
泣いてた二人は顔を赤くした。
(まだSAOの感覚が抜けきってないようですね。解放されてから一ヶ月と少しなので無理もないことですが)
トトナは火遁術で燃えた家屋が水遁術で鎮火されているのを眺めながら思った。
───
プライベートVRルーム
クレムリン
激しくなった六条院攻撃で流れ弾に当たらないよう本部人員はログアウトし、VRルームのクレムリンの指揮所で戦況確認をしていた。
「初デスが出ました」
戦果報告を纏めていたレイルが言う。
「誰?」
ミルローゼは弊闇京のホログラムマップからは視線を離さずに聞く。
「ティールです。爆薬を持って自爆しました。15人程道連れにしたようです。」
「数だけ見れば良いキルレートね」
アンジェラはメガネを直しながら言う。
「トトナのところ、デスゲーム終わってからてっきり牙が抜けたかと思ってたけどなかなかガッツあるじゃない」
ミルローゼは満足そうに言う。
「SAOでは無かった経験なので、ギルド内で多少の動揺は広がってるようですが」
「どうせ六時間経てば戻ってこれるのに。無駄死にじゃない意味合いでなにか勲章でも作りましょうか」
ミルローゼは特に意に介した素振りもなく言う。
「アインクラッド生活が長すぎたせいかどうも死なないように戦おうとしてしまったり刺し違えを躊躇う傾向はあったわ。ティールの死は良い薬になるでしょう。これからがMMOゲームの戦いよ」
キーナはうすら笑いを浮かべる。
「でも、こう繰り返し攻撃を受けてるのも解決にならないのでは。敵の拠点を潰したほうがいいんじゃないですか?」
カスミは毘沙門天拠点の六翔寺を指差す。
「六翔寺の塔群には毘沙門天の弓兵や術者がいて監視してるわ。むやみに近づくと集中砲火を浴びるような配置にしてるし」
リリオが塔から放った場合の射程エリアを緑色の円で表す。
「人手はあるギルドなのでこちらの大砲を警戒して射程に入るエリアも巡回してます。攻撃は現状難しいですわ」
ベティがさらに六翔寺周辺で毘沙門天プレイヤーが確保しているエリアを黄色いゾーンで示す。
「街中が警戒されてるなら郊外から攻撃すればいいんじゃないですか?例えばここを通っていけば・・・」
リナリアはプロジェクションマップに赤いレーザーポインターでルートをなぞる。行き着いた先は六翔寺南東の裏山だった。
「確かに、そこなら向こうの目が届いてない場所になるようね」
ミルローゼは頷く。
「大砲はそこから撃てるけど、初日にバカスカやったから大分残弾減ってきてるのよね。倒しきれるかな。何人か強い人を拠点に侵入させられない?」
アルシエが備品帳簿を確かめる。
「ふふ、だったらここを通っていけば人目つかずに懐に入れるはず」
エリナが青のラインでとあるルートを書く。
「いいわね。浸透部隊を選抜するわよ。フブキに連絡繋いでちょうだい」
ミルローゼは攻撃部隊の名簿を取り出した。
───
ティールは強制的な意識の喪失に不快感を感じながら目を覚ます
“待機時間 5:58:24”
目の前にタイマーが映る待機エリアに立っていた
「これがVRでの死・・・」
デスゲームでは体感することのなかったゲームでの死を初めて感じていた