エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
2024.12.16 11:58
アスカ・エンパイア
魏園 龍巳橋
メインストリートの四条通から北に入った石造りの橋がかかる川を隔てて北には毘沙門天、南にはエンパイアワールドが陣取っていた。
「むー」
ルチアは橋を睨んでいた。
「どうした、ルチア?」
後ろからフブキが近づく。
「さっき橋を渡ろうとして返り討ちにした敵の数が多かったので今こちらが攻め込めば橋を奪取できると思うんですが」
ルチアは対岸を指差す。30分前に毘沙門天が攻勢をかけて橋を渡ろうとしたところをエンパイアワールドは発砲で応戦し、何人か倒していた。
北から魏園へ侵入するにはルートが限られているため、エンパイアワールドの攻撃隊は魏園に入るための橋を全て抑えていた。
醞川ではエンパイアワールドの攻撃隊が渡ってきた奉原橋より北の橋は破壊工作や戦闘によりイベント開始直後にほとんど落とされていた。
毘沙門天は魏園を南下していくルートを塞がれ、渡河用に確保していた醞大橋を通って遠回りをしなければ六条院に辿りつけない状態に陥っていた。
「本部からは現位置の確保だ。我慢のしどころだろう」
魏園のエンパイアワールドの抑えつけ、醞大橋の守備、ギルドホールの守備と毘沙門天の戦力を分散させることを本部は画策していた。
「キル数稼げるのにもったいない」
ルチアは納得いかない顔をする。
「功を焦るものではない。戦は大局を見据えるもの。拙者らはここで目の前の毘沙門天のプレイヤーを釘付けにする。欺瞞も大局のための重要な戦いだ」
フブキはルチアの肩を叩いた。
13:06
二条器屋町
「二条大橋は橋板外してるか、徹底して防備をかためているの」
キヨモリは川岸から少し離れた場所で橋と対岸を眺める。
“たいらけ”はエンパイアワールドの要請で二条大橋の西側に陣取っていた
「お館様、あれを」
側近のアツモリが対岸を指差す。数人の女子プレイヤーが川の土手の影に隠れながら北上していた。
「ほう、あやつらそこから行くか」
キヨモリは無精ひげをさわりながら感心していた
13:59
───
立派な池、九重の塔を敷地内に持つ法翔寺。ここの本堂の柱に2時間前矢文が刺さっていた
“最後通牒
何度攻撃を仕掛けてきても返り討ちにする。諦めてはどうだ
今からでも鞍替えをするなら許してやろう。2時間待つ
エンパイアワールド ミルローゼ”
「強気じゃのう、
毘沙門天ギルマスのトクサガは池の鯉に餌を撒いていた。妖艶なカリスマ性を持つアバター、更には外見に劣らぬ実力を持っていた。午前中の攻勢で門破り一歩手前まで攻め込めたことに自信をもち、攻撃部隊のデスペナ明け次第、再編成をして次で勝負を決めるつもりだった。
「エンパイアめ!舐めた真似してくれる。誰が鞍替えなどするか」
“鞍替え”とはイベント中に一度だけ所属勢力を変えることのできるシステムのことである。ただし、変更前の勢力で稼いだスコアは反映されないため、だいたいイベント初日ですることが多い。毘沙門天は本イベント中、エンパイアワールドとギルドランキングで1、2位を争っている最中だった。ここで鞍替えしてスコアをリセットするなどありえなかった。
「こんなこと書いているくせにこちらに攻めては来れないだろう。我らにはまだ余裕が有る」
「魏園の
毘沙門天の幹部達も自分たちが優勢と確信していて強気だった。
「攻めてこれるものなら来てみろ!ここは鉄壁の守りを敷いている。」
六翔寺の地域は高い建造物に恵まれていて、遠くからの敵も狙撃できるように各塔の最上階では弓師系や術師系プレイヤーが四方八方に睨みをきかせていた。
ドォーン ドォーン
遠くから花火が打ち上がったような音が響く。
「何だ?」
(
「伏せろぉ!」
ドーン
ドーン
トクサガの言葉で周囲が伏せた直後に爆発が起こる。
ザバァ
池への着弾で水飛沫と共に錦鯉が跳ね飛ぶ。
「ガァー」
土煙の上がりだした六翔寺の上空を三股の鴉が旋回していた。
───
「ふっふっふ、我が神眼をもって放たれる爆裂に逃げ場なし!」
陰陽師ジョブのリリアは式神八咫烏の視覚とシンクロして六翔寺を観測していた。
「・・・リリアさん、決め台詞の前に目標指示お願いします」
「はぁーい。もう、ノリが悪いなぁ。じゃあ次に立派そうなここの塔!」
エリスがリリアに頼むとマップに座標地点がプロットされた。
鳥型式神を使った弾着観測砲撃で修正された砲撃は八角九重の塔1階に着弾し、根元からへし折った。塔の胴体は横倒しになる。
大砲部隊は補足されないよう
───法翔寺
「おのれぇ、エンパイア。被害状況は?」
砲撃が一旦収まったところでトクサガが立ち上がる。
「八角九重をはじめ、全ての塔をやられました!」
砲弾の雨にさらされた法翔寺敷地は土煙にまみれていた。
「砲撃でやられた人を確認するの(ザシュッ)・・・だ?」
トクサガは喋っている途中に彼の胸から刀の刃が生えていた。
刃が抜かれると風穴から血しぶきがはじける。クリティカル判定により突かれた毘沙門天のギルマスはHPを全損した。
その背後から黒いセーラー服に黒髪の長いポニーテールがなびく女子校生が現れる。
「諫山・・・黄泉?」
その姿に側近は連想したアニメキャラの名前を呟く。
「何の事ですか?」
女子校生姿のサナエは質問返しをするや否や回答を聞く間もなく側近を横薙ぎに切り捨てた。胴体は真っ二つに上半分と下半分にフレ/ンダされる
サナエはジョブ:辻斬りをセットして本部からの命により法翔寺へ乗り込んでいた。
彼女の装備している“喪服セーラー”は先月のぬらりひょんな漫画タイアップイベントでのボス討伐報酬である。
「おのれぇ」
薙刀のプレイヤーが上段に構え、振り下ろしたところをサナエは横っ飛びに避けて斜めに切り上げる。
薙刀のプレイヤーの両腕と首がボトリと落ちた
「化物だ、うわぁ!」
次々と逃げ出したプレイヤーにもサナエが追いつき、肉塊へと切り落としていった。
「ひぃぃ、待ってくれ、分かった。お前らの言うとおり鞍替えするぞ。ギルマス死んだ今サブマスの俺に裁量権がある。だから見逃してくれ」
壁際まで追い詰められた毘沙門天のサブマスはサナエを止めに入る。
「既に回答期限は過ぎてます。そう言えば、こんな時にヴァイリがこう言うと・・・アグニカポイント?が高いと言ってましたね。」
サナエはつぶやいた
「諦めてって、言ったでしょ」
サナエは一閃してサブマスの首を切り落とした。
「スカートはまだしもセーラー服はやっぱり動きづらいですね。動いて暑くなりましたし上だけ脱いでしまいましょうか」
サナエはセーラー服を脱ぎ捨てるだけでなく下のシャツのボタンにも手をかけ始めた。
───円翔寺
「トクサガ様討ち死に!」
「仇討ちだ。トクサガ様を討った賊を絶対逃がさないぞ」
法翔寺の毘沙門天プレイヤーにもトクサガがデスペナになったことが伝播する。
「だけど法翔寺荒らした奴一人だけじゃね?そんな奴倒せるのか」
「20人もいればそこらのレイドモンスターだって倒せるだろ。たかがプレイヤー一人敵じゃねえよ」
「エンパイアのギルドホール落とすのに日にちかけすぎるからこうなるんだろ。何やってたんだ攻略部隊は」
「念のため外に出ている連中にも戻ってくるように知らせ(バシュッ)」
ウィンドウを開こうとしていたプレイヤーの頭が吹き飛んだ。
「よーし、命中」
200メートル離れた瓦屋根からシャサールが伏せ撃ちで狙撃したものだった。
「くっくっく、モンスターばっかり狩るのも飽きてたし、このイベント人狩りも楽しめていいわねぇ」
白髪の人斬りジョブのユリスは口角を上げて集まってたプレイヤーの一人を斬る。
「獲物、ボクの分も残しといてくれよー」
ハティは逃がさないよう通用門の前に立つ。
「おいおい、勝てるのかこれ・・・」
毘沙門天のプレイヤーがハティ達を見て不安になる。少なくともレベル差が20以上離れていた。
円翔寺の毘沙門天プレイヤーは対峙するも狩る側と狩られる側どちらだったかは明白だった。
「こいつらこんな強いのか・・・」
これまで六翔寺に屯していたプレイヤーにとってはエンパイアワールドとの初戦闘だった。
「今更気づいても遅いんじゃない?」
つぶやいていた侍プレイヤーの前に青髪で泣きぼくろの女性が立つ。
「あっでもこの班のリーダーアタシだから倒せばワンチャン退くかもよ?」
ヘルミーネは挑発気味に言う。
「ならば倒すしかないだろう!」
侍プレイヤーは斬りかかるがヘルミーネは弾いて地面に倒す。さらに手足を切って欠損ダメージで身動きをとれなくする。
「くっ、殺すならひと思いに殺せ」
「だーめ」
プレイヤーにヘルミーネはぐりぐりと剣を刺して貫通ダメージをじわじわと与える
「ぐっ、悪趣味な(ボトリ)・・・・」
苦悶の表情を浮かべていたプレイヤーの頭が落とされる。
「“獲物”を甚振って殺すと
幾何学模様の入ったアットゥシを纏ったレアンはヘルミーネの遊びを遮って
「ふーん、エクレールから独特の宗教観あるとは聞いてたけどあながち間違ってないかもね。顔覚えられてリベンジにくるかもしれないから警戒しないと。まぁそれはそれで楽しめそう」
ヘルミーネは自分の刀の刃を舐める。
(どちらかといえばウェンカムイに近くなっているのは班長のようですが・・・)
レアンはヘルミーネを見て思う。
サナエと共に侵入していたのはアスカ・エンパイアに入ってから新設された狩猟班だった。レアモンスター探索、討伐の中核として編成された班だったが、班長のヘルミーネの嗜好もあってイベント序盤は初心者、低レベルプレイヤー狩りを繰り返していた。その影響で班全体がPKに積極的になりだしていた。
「あれ、もういなくなっちゃった」
「ふふ、こんな量で満足できないわよ」
円翔寺にいた毘沙門天プレイヤーを狩り尽くしたハティとユリスは物足りなさそうに言う。
「安心して、ここら近辺の寺にまだいるからお楽しみは残ってるわよ」
そう言ってヘルミーネは班員を引き連れて次の寺へ向かった。
法翔寺はギルドホールとしての機能が消滅するまで荒らされた。