エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
2024.12.18 02:20
アスカ・エンパイア 弊闇京
シュタッ
「酷いものね」
深夜の通りに降り立った銀髪のくノ一は惨状を目の当たりにして呟く。板戸が地面に倒れたり折られたりして室内が荒らされた家屋、乱雑に道端に転がる食器や布切れ、ひっくり返され中身の抜き取られた箱や箪笥などが見られた。
イベント前は生産職プレイヤーが集い、活気のあった市場通りは荒れ果てていた。皇太子派親王派関係なく生産職狩りによる略奪の結果である。
エンパイアワールドの保護下に入った愧園とは対照的なありさまだった。
「お、べっぴんさんがいるじゃん」
「深夜にお嬢さんが歩き回るもんじゃないぞ~」
「肌白いし外国人プレイヤーじゃね?アメリカだとちょうど昼間なんだろ。ナイストューミートュー」
(厄介なのに見つかったわ・・・)
忍者ジョブのアネットは偵察で単身街の見回りをしているところだった。本来は深夜帯人数が減るので六条院に篭城しているが、大規模な襲撃集団がいないかを哨戒する当番を少数で回している。しかし、今回は運悪くも3人の盗賊プレイヤーに絡まれていた。
(どうしようかしら・・・あれ?)
対応を悩んでいたアネットだったが盗賊達の後ろからさらに一人近づいてきていることに気づく。
近づいてきた詰襟の男は左手を前にして右手に握っていた刀を水平にして前に向ける
「牙突」
「あべしっ」「ひでぶっ」「たわばっ」
男がそう言ってソードスキルを発動させると盗賊3人を串刺しにしてデスペナに送った
「どう?モーションカッコよくね。先週のるろうコラボイベントで取ったソードスキルなんだけど」
深夜テンションのヴァイリは焦点の合わない視点のまま自慢げにアネットに言う。
「ヴァイリ、あなた大丈夫なの?」
アネットは引き気味ながらも心配する
「んー?お昼1時から仮眠してたけど上手く眠れなくて、シフト前にエナドリ2本飲んでログインしたー」
ヴァイリはどこかぽけーとした感じで答える。彼はイベント期間中午後10時に起きて深夜帯アスカ・エンパイアにログイン、午前6時からは九龍家の道場の稽古に通って午後1時に就寝するサイクルになっていた。
「日が高い時に眠らないといけないのは難しいわね」
アネットは多少事情を察する
「アネットは昼夜逆転平気なのか?」
いつもどおりのアネットを見てヴァイリは聞いてみる。
「わたしは父の帰省で白夜に慣れてるから。眠れないときは本を読んで過ごしてるの。しっかり寝たい時は窓をしっかり遮光しておくことね」
「しんどいなあ」
「わたしも冬の帰省の方が暗く静かで好きよ。六条院のほうは?」
「今日は静かだな。1日2日目より落ち着いてる。」
「掲示板で夜な夜な六条院周辺を徘徊する髑髏武者がいると噂になってるからあまり寄って来ないでしょうね。攻撃してもうんともすんとも反応しない。六条院攻略で返り討ちにあった毘沙門天プレイヤーの怨念が集まった祟りとか言われてるし」
アネットはアスカ・エンパイアの掲示板を確認する
「エルミラか。ノックバック防止スキルも持ってるから通常攻撃程度じゃ本人も攻撃されたことに気づかないな」
ヴァイリはウンウンとうなずく。エルミラはワシが育てたと言わんばかりに
「あとはこれかしら。夜の六条院に近づくと鴉の群れに襲われる噂」
「ラーミルの式神だ。一度に15羽操れるとかすごいマルチタスク能力だな。親王派の大体の強豪は潰れたし、SNSでもだいぶ戦果誇張拡散されてこっちへ手が出にくい印象与えてそうだ」
「わたしの班で上手くいった戦いのことだけをどんどん拡散するように言われてたわ。そのうちアスカエンパイア古参の検証班とかいうのが第三者視点で親王派敗北予想を発表してから炎上したようだけど」
「ああ、本部がその古参プレイヤーに幾らか金掴ませて書かせたから」
「そんなことまでしてるの?」
「経験値ブースト課金一人分にも満たない額でこれだけ反響あれば費用対効果絶大だ。とくにこれのリプライすげーわ。“貴族屋敷前の攻防戦 デスゲームの英雄忠義の玉砕”見出しまでできてるし」
SNS上で発表されている戦況でティールの自爆攻撃がトレンドに上がっていた。
「・・・程程にね。やりすぎるとボロが出るわよ」
「はいはい。ともかく情報で人はコロコロと動きを簡単に変える。おかげで風はこちらに吹き出した。さて、偵察交代の時間だ。」
ヴァイリは時刻が2時30分になったのを指差す。
「わたしは六条院戻るからあとはよろしく」
「任された」
アネットは六条院方向へ飛び、ヴァイリは魔京へと潜っていった。