エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~   作:RipoD

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120話 2025.1.14 無停止進撃

2205.1.14 12:19

 

スリュムヘイム 4層 ボス部屋

 

 

「バフ張り直し!」

前衛パーティがバフ効果切れたところに後衛から再度補助魔法がかけられる。

 

「木偶は木偶らしくさっさと壊れてくれないのかしら?」

リリエラはいつもの表情だが言葉からは苛立ちが見えていた。

 

「まだ終わんないの?お昼食べに戻りたいんだけど」

スリュムとの戦闘が始まってから既に30分以上経過していたもののHPバー3本のうち1本目が半減したところだった。当初の予定より時間がかかって不満の声も上がりだす。

 

「あなた余裕ってはっきり言ってたわよね。余裕とはなんのことだったの?」

「うぐっ・・・」

リリオに言われてヴァイリは目を逸らす。

ヴァイリの誤算は原作のキリト達との真剣さなど状況の違いにあった。キリト達は限られた時間の中でゲーム崩壊の命運をかけた極限状態にあったが、ヴァイリ達にとってはクエストの1つに過ぎない緩みがある。時間もお昼時に入って空腹からくる集中力低下も重なり、連携のミスも出始めていた。

フブキ隊が優勢であるもののスリュムの長大なHPバーを削るのに難航していた。

 

「私も戦います」

後ろに控えていたフレイヤが前に出てくる

 

(よし来た!やっぱトール無しだときつい)「何か手伝えることはあるか?」

ヴァイリはミョルニルのフラグを誘導する。

 

「この部屋のどこかに埋もれているはずの我が一族の秘宝、あれを取り戻せば私の真の力もまた蘇りスリュムを退けられましょう」

 

「宝物はどんなものだ?」

 

「このくらいの大きさの黄金の金槌です」

ヴァイリが聞くとフレイヤは両手を肩幅くらいの間隔にして大きさを示す。

 

(たしか原作だと雷系魔法で反の「それってこれのこと?」・・・)

ヴァイリが前世知識を思い起こそうとしている最中にアルシエが両手に金色のハンマーを持っていた

 

「早くそれをこの方に渡せ」

 

「えー、でもあたしがスリュムの財宝の山の中から漁って手に入れたものだし」

 

「つべこべ言わずはよ渡せ。打ち合わせで言ったボーナスNPC動かないだろ。戦闘勝ったら返ってくるから」

アルシエはゴネていたが、顔を引きつらせたヴァイリが急かしてフレイヤへ手渡しさせた。

 

ハンマーを受け取ったフレイヤはそのなよやかななりに反してハンマーをぶんっと大きく一回転腕で振り回す。すると背中を埋めると小刻みに震え出す。

 

「・・・ぎる・・・・漲るぞ・・・」

声が低くなって呟く彼女からバチバチと電気を纏い出す。

 

「おおおォォオォオ!!」

雄叫びを上げると筋肉質の体となり、スリュムと同程度にみるみる巨大化する。

 

スリュムに応戦していたメンバーも振り向いて唖然となる。

 

 

「卑劣な巨人めが、我が宝ミョルニルを盗んだ報い今こそ購ってもらおうぞ!」

 

「小汚い神め、よくも儂を謀ってくれたな!そのひげ面切り離して、アースガルズに送り返してくれようぞ!」

 

「私たちは何を見せられてるのかしら」

「髭面おっさん怪獣決戦?」

プレイヤー蚊帳の外で2体のNPCが城全体を揺るがしながらぶつかり合う。

 

トールの一撃が決まるたびに、これまで1本削るだけでも骨が折れたスリュムのHPバーは目減りする。

 

「これまでの戦闘必要だった?」

メンバーは繰り広げられる戦いを傍らから眺めていた。

 

トールの攻撃を受けてスリュムはよろめく

 

「今ならダメージ入りやすい頭部とか狙い易くない?」

 

「あいわかった。拙者らも雷神に続けー!」

リリオが助言をするとフブキは叫び、膝をついたスリュムに攻撃が集中される。

 

 

「ぬぅぅッ、小虫どもがッ」

スリュムはプレイヤーに注意をそらすとトールからミョルニルの一撃を食らう。

 

さらにトールの攻撃に連携したソードスキルの嵐がスリュムを袋叩きにする。

 

「地の底に還るがよい、巨人の王!」

最後にトールがミョルニルでスリュムの脳天をかち割るかのように振り下ろした。

 

HPバーを全損したスリュムは四肢などを氷塊に変えながら地響きを立ててフロアに倒れ込んだ。

 

「ぬっふっふっふ。今は勝ち誇るがよい、小虫どもよ。だがな・・・アース神族に気を許すと痛い目を見るぞ・・・彼奴らこそが真の、しん」ズムン!

スリュムがフブキ達に頭を向けて伝えようとするも、言い切る前にトールが頭を踏み砕いた。

 

 

「やれやれ、礼を言うぞ、妖精の剣士たちよ。これで余も宝を奪われた恥辱をそそぐことができた。どれ、褒美をやらねばな」

スリュムにトドメを刺した気迫を抑えたトールはそう言うと、握るハンマーの柄から人間が持てるサイズのミョルニルが現れ、アルシエの手に収まる。

 

「正しき戦のために使うがよい。ではさらばだ」

稲妻とともにトールの姿が消えた。

 

「やった、レジェンダリーだ。いっくらかなー」

 

「売るなよ。貴重な戦力なんだから。屋敷に戻ったらすぐリーゼロッテに渡して保管扱いだ」

我が物とはしゃぐアルシエをヴァイリは現実に戻させる。

 

「スリュムの歌のとおりヘイムダルの提案で女装したトールが敵地に乗り込むっていうわけね」

リリオはシナリオの内容に理解を得た。

 

 

 

 

 

───最下層

 

「はい、撮影準備オッケー。将軍が剣を引き抜いたら皆さん温かい拍手をお願いします。週刊ニュースにあげるので」

ヴァイリはエクスキャリバーの台座の前で記録結晶を持ってスタンバイする。

 

「拙者に西洋剣の扱い方は分からない」

 

「とりあえず引き抜いて。あとはこっちで使用者選定するから」

フブキは戸惑っていたが、リリオに言われるまま要の台座からエクスキャリバーを抜き上げる。

 

ちなみにヴァイリが命名したカンタベリー作戦とはカンタベリー大聖堂に由来する。

アーサー王伝説でアーサー王はカンタベリー大聖堂の前の石に刺さっていたエクスカリバーを抜いたという説がある。

 

パチパチパチパチ

フブキの後ろから賞賛の拍手が送られる。

 

しかし、すぐミキミキとひび割れるような音がすると、台座のあったところから大きな木の根が伸び出す。

最下層を固定していた柱は重みで千切れ、四隅の支柱も砕ける。40人近くを乗せた四角錐は落下し始めた。

 

「きゃああ!ヴァイリ、次はどうするの?」

 

「ゾウクラゲが来たら飛び移る」

 

「なにそれ聞いてないわよ!そういう大事なことは先に言っときなさい!」

カーラはヴァイリから聞いた初耳情報に怒る。

 

落下速度は早くないが、高度から落ちることに不安を抱えている人は少なくなかった。

 

クオォーン

 

「よし、ハイヤー到着」

ヴァイリが声のしたほうが見ると、5体の飛行邪神が低空から近づいてきていた。

 

邪神達はうまくバランスを取りながら落下している四角錐を支えて落下速度をさらに抑える。

 

「お前らめっちゃかしこい」

ヴァイリは手狭だった足場から自分の使役している邪神の頭に飛び移って頭部を撫でる。ヴァイリのパーティーメンバーも邪神へ移った。

 

タンッ

「急にダンジョンが崩落しだしたと思ったらアンタ達がやったの?」

上階から崩落してきた足場に乗っていたエクレール達がゾウクラゲの頭に飛び移る。

 

「お前たちは何やってたんだ?」

 

「変に陰湿な巨人を倒してきたのよ。よく分からない武器もドロップしたし」

 

「おいこれってレジェンダリーじゃないか」

グウェンが取り出した斧をヴァイリは即座にガシッと掴む

エクレール達は復路で見つけた隠し部屋でスィアチと対峙し、討伐報酬で“マムシ”を意味する名のレジェンダリー級両手斧武器ナズを獲得していた。

 

「では、その斧は本部預かりとしよ(ヒョイッ)・・・」

アルシエがホズに手を伸ばしたところをグウェンは引っ込める。

 

「あれれ~?遊撃はギルドとの資本共有なしって話じゃなかった?欲しけりゃ買い取れ」

グウェンはニヤつきながらナズをブラブラと振る

 

 

落下速度はゆっくりだが他に飛び移れるような足場は存在せず、真下にはニヴルヘイムへ繋がる大穴が広がる。

 

ゾウクラゲ5体が必死に浮かせようと下から押し返しているが徐々に落下していた。

 

 

「見事に成し遂げてくれましたね」

声とともにヴァイリ達の前にウルズが現れる。

 

「しかし、湖の水源は霜の巨人達に抑えられています。かつてのヨツンヘイムを取り戻すにはニヴルヘイムの水源を開放しなければなりません。もうひとつそなたたちにお願いしたい」

ウルズが言うと、フブキの目の前に《second quest》と○×ボタンが表記される。

 

「チェインクエスト?」

リリオはヴァイリを見るが彼は慌てて首を横に振った。

 

「このままニヴルヘイム落下してあたしたちが逆侵攻するってことか?」

 

「いいじゃん、やろうぜ。進むは吉!退くは凶ってね!」

シャサールとハティは乗り気だった。

 

「おいまて、ニヴルヘイムは偵察してないから何があるのかわからないんだぞ」

ヴァイリは未知のクエストの存在を不審がって止めに入る。

 

「何言ってるの。初見で行くからこそ楽しめるものがあるのよ」

 

「スリュムもトールが大部分倒したようなもんだし消化不良ね。」

アニエス、ヘルミーネもクエスト継続に同調する。

 

「ニヴルヘイムのマップ用意したわ」

リリエラは運営サーバーから抽出した地図を提示する

 

「おい、リリエラ何勝手なことしてるんだ」

 

「リリエラ、アナタって主人よりよっぽどイイ奴ね」

ヴァイリの怒声お構いなしに、アニエスはリリエラの背中をドシドシ叩く

 

「フロスヒルデのエリア自体解放されてないからヘイズルーン討伐もまだ先ね。わたし達はこのまま続けて大丈夫よ。寒そうなエリア攻略の慣熟にもなるだろうし」

トトナ隊から定員充足で参加していたアジュール達も了承する。

 

「補給はどうすんだ。スリュム戦でかなり消費しただろ。」

 

「ダンジョンで収集した素材から錬金術スキルで水薬類を作戦前とほぼ同じ本数で補充できます。アルシエさんが全部拾うように言っていたので十二分量ありますよ」

ヴァイリの指摘にレプラコーンのイナーシャが解説する。ミネルア率いる造船部門から一旦離れてクエストに参加していたが、あまり面白みを感じない建造に戻る気になれなかったので話を攻略継続へ誘導しようとしていた。

 

「ああそう。後はじゃあやりたい奴らでやってくれ。うちの班は撤収するから。エクスキャリバーをギルドホールに納めて終わり!」

 

「は?何を勝手に決めている」

クロンはヴァイリに異を唱える。

 

「えっ、逃げるんですか?」

リュミルは挑発する。

 

「あーあ、わたしもニヴルヘイム攻略参加したいのになー」

カーラがわざとらしく言う

 

「わたしの主はヤワね」

リリエラは冷笑を交えて言う。

 

「なんだよ、お前ら挑発かければ俺が行くと思ってんの。そんな短絡思考回路してないから」

 

「「「「・・・」」」」

4人は無言でヴァイリを見る。

 

「・・・・やってやろうじゃねえか!でももう俺はこれでエクスキャリバーロストしても責任取らんから」

ヴァイリはヤケになった

 

「御意」

フブキは○ボタンを押した。

 

「重ね重ね礼を言う。その剣はそのまま授けましょう」

エクスキャリバーは正式にフブキの所有武器として登録された。

 

「よーし待ってなさいよ、ニヴルヘイムのレジェンダリーウェポン」

アニエスは拳を上げて気合を入れる。

 

 

その後、ニヴルヘイムのセーフティエリアで昼休憩を取った後、3日間に渡る集中攻略でエリア制覇したフブキ隊はヴァフスニールとの決闘でレジェンダリー級大剣のヒートヘイズを手に入れた。

 

 

 

 

 

───同日

 

ケットシー領 首都フリーリア 領主館

 

「こちらが用意した出資金です」

ベティにドンと机に乗せられたアタッシュケースが開かれると、10万ユルドミスリル金貨が敷き詰められていた。

 

「これだけ資金援助してもらえれば最新装備の更新に充てられるよ。君達まだALO始めてひと月も経ってないよネ?」

領主のアリシャ・ルーはアタッシュケースの中を見ながら聞く。

 

「なに、浮遊城でひと財産築いてきただけだ」

対面の座席に座るミルローゼは当然のように言った。

 

「流石にリアルな命を懸ける度胸はないナー。で、タダでくれるってわけじゃないよね。見返りはなにが欲しいのかな?」

アリシャは試すように言う。

 

「ケットシーの誇るドラグーン隊、ワイバーンのテイム方法だ」

ミルローゼは静かに答えた。

 

 

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