エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~   作:RipoD

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ゆく河の流れは絶えずして


幕間
129話 2025.2.2 フローチャート


 

2025.2.2 9:50

 

新宿区 須崎興産所有のビル 7階 空きフロア

 

 

 

興平の親が持つビルで防犯カメラ、ネット回線に繋がれた通信機器が一切無いレンタルオフィスの中、東京近郊範囲内に住むエンドワールドのメンバーが集められていた。

 

「スマホは電源切ってテーブルの上のアルミ缶に入れて」

スマートフォンがすっぽり入るサイズのアルミ缶が一席一つ置かれていた。アンジェラこと鳴川(なるかわ) (あん)が言うと各々座った順に缶の中へしまっていた。

 

 

「資料は1部取ったら右に回して」

左端列からリリオこと莉緒が積み重ねた平綴じ冊子を置いていく。

 

「全員に回った?じゃあ初めに10分間自由に見て。」

ミルローゼこと舞はパンパンと手を叩いて読むのを促す。

 

冊子の1枚目には2種類の年表が書かれている。

表の一番上には《小説版》、《ゲーム板》と振り分けがされていた

 

2022年から現在の2024年のSAO内で起きた出来事のリスト、2025年1月ALO事件、2025年11月死銃事件、2026年1月マザーズロザリオ、2026年4月オーディナルスケール、2026年7月アンダーワールド大戦、更に2027年、2028年と下っていく。

それぞれの出来事にページ番号が割り振られていて、該当ページに詳細が掲載されていた。

 

 

「なにかの未来予想?」

 

「AIで予測したとかかしら?だけどこれまでのことも少し日付のズレがあるわね」

ルチアこと光とアネットこと亜美は時系列に目を通す。

 

 

「この冊子ができたのは一昨年の5月、SAOの最中よ。ちなみに作ったのは彼」

舞は書画カメラでスクリーンに書類を映す。ついで興平を指さした。

 

「信じる信じないは任せるが俺には前世の記憶がある。」

後ろの壁に寄りかかって立っていたヴァイリこと興平が前に出てくる。

 

「その前世では、あのビーターを主人公にして話が展開する小説があった。年表はその小説の内容から作ったものだ」

 

「ヴァイリさんの言うことが本当だとしても、実際は2通りの時系列とも事件が起こるタイミングにズレが生じてませんか?」

エリスこと英梨は疑問点を言う。

 

 

「確かに的中は7、8割ってとこかしら。案外書いてある筋書通りにはいかないとこね」

舞は興平の原作知識がどのくらいあてになったかを感覚で言う。

 

「原作と剥離しすぎると今後の展開が読めなくなる。あまり変化が出ないよううまく立ち回ろうとはしているところだ。書類には今後数年間でSAOサバイバーが巻き込まれる事件のリストが書かれている。まずは優先しておきたいブラックリストの紹介だ。身の安全上現実でも遭遇しないようにしておきたい。2ページ目から載せている」

興平はスクリーンを切り替える。

 

 

「金本敦、ラフィンコフィンのジョニーブラックのリアル。SAOをやる前から傷害、恐喝、複数の前科持ち。今は一旦関東を離れて地方に潜伏中。SAOクリア後は電話通信でザザと連絡取り合ってるのを確認している」

監視カメラからの映像を抜き取ったような写真で髪を染めたラフな格好の男が映される。

 

興平がリモコンのボタンを押してスライドが切り替わる。今度は目の下に隈のあるやつれた男と、帽子をかぶった内気そうな少年が映される。

「新川兄弟、ザザと兄に感化された弟が今春サービス開始されるGGOで殺人事件を起こす予定だ。今は自宅から遠出せず過ごしてるが、金本と連絡とっているから事を起こすのは確実と見ていい。実家が総合病院で救急用の電子錠解除用マスターキーを使えるから簡単なセキュリティくらいは突破してしまう。」

 

次に顔の右側に刺繍の入ったヒスパニック系の男の写真が出る。

 

「ヴァサゴ・カザルス、ラフコフのギルマスだったプーのリアルだ。こいつは今海外にいるからしばらくは無視できる。だがプロの殺し屋だから一番関わりあいたくないな。」

 

 

そして、眼鏡をかけスーツを着た男の写真がでてくる。

「須郷伸之、SAOサバイバーをモルモット扱いする研究者。あの“閃光”の元婚約者だったがSAO事件中に不正アクセスの不祥事が発覚して海外逃亡中。原作ならもう捕まってるはずだったから今後何をするか分からない。神を名乗ったり野心だけは並外れてるからアクションを起こすことは間違いないだろう」

 

さらに、若い男と中年の男の写真に切り替わる。

「この二人がオーディナルスケールで殺人未遂を起こす。若いほうが後沢鋭二、オーディナルスケールでビーターのライバルになる奴。SAO事件被害者の会・遺族会の名簿にも入ってたから所在は掴めている。

中年のほうが重村徹大。こっちは東都工業大学の教授で今も在職中だがAR機器の開発を進めているようだからオーディナルスケールはほぼ確実に起こる。」

 

日本地図の画面に切り替わると各地に赤いドットが点々とついていた。

「国内にいるラフコフの残党とかは全部追跡、監視下に置けている。警察が導入している顔認証システムにリリエラが侵入して市街地にいるブラックリストを24時間マークできている。歩紋認証もできるので整形されても追跡できる。いずれスマホアプリとして配布していくつもりだ」

隣国は既に天網を導入して、市内での軽犯罪、交通違反取締りに実用されている。日本もここ数年で大都市圏を中心に監視カメラを利用した顔認証システムを運用していた。

 

 

「コウ、ハッキングしていること父に言ってないだろ」

クロンこと瑠希は怒り交じりに言う。彼女の父はSAO事件があってからサイバー犯罪対策部門を担当していた。

 

「言ったら逮捕される案件じゃないか。ちょっとシステムを借りるだけだから。リリエラなら痕跡残さずに侵入できるし。犯罪は発覚しなければ成り立たないの。」

 

「自供の真っ最中だがな」

興平は言い訳をするが瑠希は機嫌を損ねたままだった。

 

「・・・コホン、まあ敵は犯罪者達だけとも言えない。政府はSAOサバイバーを医療ケアが必要とうたって通院させて管理下に置こうとしているし、防衛省、総務省のほうにもVR事件を利用しようとしている部署がある。俺たちは今や、まともな人生から踏み外した犯罪者予備軍のレッテルがつけられてるようなもんだ。」

 

「現実にせっかく帰ってこれたのに悲しいけど脅威はそこら中に潜在してる状況。そこでギルマスとしての提案なんだけどいっそエンドワールドを法人組織化してみないかなって考えてるの。ギルドに残るかは自由意志よ。ただし、抜けたあと偏見ばかりの社会に受け入れられる場所があるとは思えないけど。その度胸があるなら勝手にしたら?」

もはや脅迫まがいな勧誘を舞はする。

 

 

「社会の居場所は私たち自身で作る。あとはまた好きなように資料読んでいいわよ。」

舞が言うと、思い思いに資料がめくられていった。

 

(思考出力装置も開発されているから情報が外部流出しないようアミュスフィアにプロテクトパッチも必要だな)

スクリーンに映していた資料を片付けながら興平は思った。

 

「ヴァイリのアプリって危険人物の接近を警告するなら私たちの場所だって追跡してるんじゃない?」

イブこと前川 明美が気になってることを言う。

 

「プライバシーの侵害~」

リノこと堀之内 智子が嫌そうに言う。

 

「コウが何か変なことしたら私に伝えてくれ。父に通報する」

 

「それは安心」

 

「流石クロン!旦那の手綱をちゃんと握ってる」

 

「もう泣いていいですか」

脅威からの対策をあれこれ練っているはずの興平の株は下がり、瑠希のほうが周りから称賛されてることに彼は打ちのめされていた。

 

 

「わたし、死んじゃってるー!」

ロッサこと智絵理がショックで叫ぶ。彼女はガールズオプスのシナリオを読んでいた

 

「ロッサが生きてて本当に良かったー」

涙目でルクスことひよりが抱きかかえる。

 

「なんか原作のわたしの方が生き生きしてない?」

グウェンこと芽衣美は不満げに言う。

 

 

「最後はシュレッダーに入れるから持ち帰るなよ。欲しい情報は今頭に詰め込んどけ。」

(高度な通信社会になった今、どこで何が見ているかわからない。ハッカーかもしれないし、公安関係者かもしれない。こういうときはアナログが一番信頼できる)

監視カメラ、スマホのカメラはネットワークにつながっているものが大半であり、情報流出に興平は用心を重ねていた。

 

(来年の7月には太平洋に浮かぶ人口島の技術を・・・)

 

 

ゲームにエンディングはあっても現実世界にエンディングは無い。

生き残った者もまた今後のために行動に移していた。

 

 

「まずは先の先を見据えて技能研修でもしましょ」

舞はヤシの木が描かれた本を持っていた。

 

 

 

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