エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
Departure聞きながら書いてた
2025.2.9 20:30
成田空港
キイィィィ
ゴオォォォ
ウミガメのラッピングが施された二階建て旅客機が滑走路の誘導灯に照らされて離陸した。
ポーンという音とともにシートベルトサインが消える。
「ん~、やっと外せますね。CAさんりんごジュースください」
「ちょっと、身を乗り出さないでよ」
シートベルトを外して伸びをした流星は通路側の蘭華を遮って、キャビンアテンダントに手を挙げて呼ぶ。
「夕食後30分経ったら先に寝かせてもらう。」
興平の隣に座る瑠希はアイマスク、耳栓などの準備を始めていた。
「おう、分かった。にしても全員身内で席埋めたのか」
通路側に座っていた興平は機内を見回す。機体中央列にギルドメンバー、左右窓側列に保護者兄弟姉妹付き添いが座っていた。
「もちろん、この便は貸し切りにしたのよ。」
機首側の通路から舞が歩いてくる。
「舞は席2階じゃなかったか?」
「機内全体歩いて挨拶回りをしてるところよ。興平も来る?なかなかに重鎮いるわよ」
「じゃあ顔並み拝見させてもらおうかな。」
興平は舞についていく。
「ここのショッピングモール行きたいわね」
「お土産はここの店のキルトタオルを考えてるの」
「アクティビティ何選んだ?」
二人が通路を歩いていると旅行雑誌を開いて賑やかに会話が弾むのが見れた。
「うーん、眠れるかな~」
機体後部まで来ると不安そうにカウチシート3席分に寝転がってブランケットを広げるヘルミナこと
「今日凌げば現地は五つ星ホテルだぞ」
「うん、頑張る。よくみんな座って眠れるよね。」
興平が声をかけると美波は顔色悪くも言った。
「明後日は同じコース回るようで。よろしく」
「シーサイドのプレイ楽しみましょう」
「先日はどうも」
「いえ、またよろしくお願いします」
二人が機体の後部階段を使って2階へ上ると親御さん同士ゴルフキャップを被って握手していたり、名刺交換が行われるのが目に入る。
「横のつながりもできているな」
システム外スキル習得の他に各業界有力者揃いの父兄同士の交流構築も二人の狙いだった
ビジネスクラスまでくると紅茶の香りが漂い、そちらを見ればエリザベスがティータイムに入っているのが見て取れた。
「おじいちゃんと射撃するの、楽しみ」
「儂もクレー用のしか撃ったことないけどね。上手く撃てるか分からないよ、麻奈ちゃん」
「かっ!・・・」
通りかかった座席を見て興平は出かかった言葉を飲み込む。
「どうも臼井君、孫娘がお世話になってるね。そちらの彼は?」
大仏のような顔をした老齢の男が須崎を品定めするような視線を向ける。テレビにもよく映る与党民自党幹事長、入間茂雄の姿があった。
「彼は須崎、組織のオブザーバーみたいなものです。」
「イルマーナが幹事長のお孫さんだったのか」
「…言わなかったので」
「政財界ともパイプできれば法務も怖くないな」
「そういうこと」
「あんたたちホント企むことが好きね」
その二人の後ろからファーストクラスエリアとの仕切りのカーテンを開けてグウェンこと芽衣美がメイドを伴って来る。
「最近テレビCMで知ったけど鶴咲家って確か…」
「財閥系クレイン・ホールディングス創業家ね」
「え、知ってたのかよ?」
「いいえ、最近。わたしだって知らないことあるわよ、末っ子の存在なんて」
二人は小声で確認しあう。
「SAOで芽衣美お嬢様がお二人にとてもお世話になったとか」
付き添いのメイドは興平と舞を睨みつける。
「軟禁状態にされたしホントどうしてくれようかな~、二人の家の会社ウチで潰しちゃおうかな~」
芽衣美はニヤニヤと笑う。
「おいおい、マジやりかねないぞ。なんとかしろ証券屋」
「嫌よ。目つけられるならあなたのところが潰されてよ不動産屋」
興平と舞はお互いを身代わりにしようとする。
「どうかしましたか?」
「奈津助けて~、芽衣美が財閥圧力かけてくる~」
芽衣美の更に奥からの声に舞はすぐ反応して声の主に泣きつく。
「鶴咲さん、家の権威を乱用するのはいけませんよ」
トトナこと
「うっ、分かってるわよ。冗談に決まってるでしょ。そいつだって嘘泣きだし」
「実際お嬢様の作法が外に出しても大丈夫な段階になっていてSAO前に一度でも社交界に出ていれば、臼井様の知るところで多少はましな待遇になったかと」
「この機に乗じて何貶してるのよ。あんたはわたしの味方なの、敵なの?」
「事実を述べたまでです」
メイドから素行の悪さが暴露される。
ポーン『ご案内いたします。まもなくご夕食をお持ちいたします。』
「席に戻って食うか」
「そうね、時間空けると冷めるし」
アナウンスが流れると、興平と舞は席に帰っていった。