エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
パトカー走行競技の一例
ドラマ「罠の戦争」見てると上級国民シーン書きたくなる
2025.3.8 10:57
プライベートVRルーム クレムリン 赤の広場
キィィィ
ブォォォォ
赤い城壁で囲まれた広場にタイヤの摩擦音と排気音が響く。
黒塗りのセダン車が赤いカラーコーンでできたコースをスラロームしたり縦横無尽に走行していた。
オリジンの攻略は休みの日で見物人も多く集まっている。
「あちゃー、コーン6つ倒してるな」
停車した車から降りてきたヴァイリは走ったコースを見渡す。
「チューン違う車両だしこんなもんか。リセット」
ヴァイリがウィンドウに設定したボタンを押すと倒れていたカラーコーンが初期位置に戻る。
「次あたしやってみたーい」
見物していた中のノエルが手を上げる。
「・・・ノエル、運転の仕方わかりますか?」
「みくびっちゃ困るね。VRカートで何度もマッチ優勝してるんだよ」
「それと一緒の感覚で運転しちゃダメなものじゃないですか?」
一応聞いてみたエリスにノエルは自信満々に言う。
「ペダルとかの位置同じだしだいじょーぶ、だいじょ-ぶ。じゃあ車借りるね~」
シートベルトをしたノエルはそのまま車を急発進させた。
「また賑やかにやってるじゃない」
ヴァイリの後ろからやってきたミルローゼの周りにはVRショップで購入したのであろうハイブランド品で着飾った取り巻きで囲まれていた。
(おーおー、今日はパトロンをぞろぞろと)
ヴァイリは顔ぶれを見てたじろぐ。
パトロンとはSAO時代からミルローゼが保護下に置いていた財界の娘達のことを非公式に指す。前線貴族のトトナやはみだし者のグウェンと異なり彼女たちは普段本部付きの事務方で、進んで戦闘には参加することはない。ただ、彼女らの企業がスポンサーになっているので丁重に扱われている。
「親父の会社のクラアス車検に出したらディーラーがVRデータくれたんだって」
「へぇ、わたしのところも何かもらってるかもしれない。探してみるわ」
「家のヘリとかもVRデータあるのでしょうか」
大企業の社長令嬢のメリサが言う。
「さあ?あるんじゃないか」(ヘリと来たか。車と桁が違いすぎててそんなの分からん)
ヴァイリは適当に答える。
「で、そっちの大名行列はなにしてたんだ?」
「これ作ってたのよ」
ミルローゼはバインダーを取り出す。綴じられたページにはメダルのようなデザインが並んでいた。
「どうかしら?今度導入する記念章のデザイン案。モチベアップになるかなって」
アインクラッド全景が彫られた浮遊城解放記念章、大蛇に剣が突き刺さった八岐大蛇討伐記念章、五重塔と桜の花と“義”の漢字の暴仁の乱記念章、その他ゲームの大きなイベント関連でそれぞれ数案デザインが用意されていた。
「それよりもヴァイリ、わたくしたちに危害及ばないうちにとっととパンドラというの倒しておしまいなさい」
ヴァイリはエニットから催促を受ける。彼女らがデスゲームが終わった後もエンドワールドに残っている一番の理由はラフコフ残党など残っている脅威から身を守るためだった。
「へいへい、お姫様。目下対応中ですとも。パンドラについてはリリエラの視覚情報のログの通りの奴でございます。ボス並みに強いから出現したときに戦力を集めて倒す見込みとなります」
ヴァイリはパンドラとの戦闘経験のあるリリエラの視点データを動画で共有していた。
「そういえば、パンドラという名前の会社がオリジンの研究協賛事業者一覧に入っています」
「セブンが言うにはオリジン内のVR実験に参加している事業者は70以上あるらしいから
変なのが混じっていてもおかしくないわ」
「同じ名前をした企業・・・あまりにも単純すぎてブラフかもしれんが関係ないとも言えないな」
メリサが関係先企業のリストに載っているパンドラという会社名に丸で囲む。ミルローゼもセブンから聞いていたオリジンの内部事情を言う。
「同じタイミングでこちらに近づいてきたアイラもほぼ黒と見ていいようね」
ミルローゼは推考する。
「リリエラはアイラをどう見る?」
「あの木偶が現れるところまで彼女に誘導されてたわ」
ヴァイリの傍らに控えていたリリエラが答える。
「まあ、やることはオリジンの件だけじゃないのよ。今、ある企業からこういうの招待されてるし」
「なんだそれ?」
ミルローゼはヴァイリにタブレットを見せる。タブレットの画面には青いグラデーションのPOP文字で“PopStarOnline”と書かれていた。
ヴァイリがタブレットを受け取って下にスクロールして続きを読むとイベントの概要が書かれていた。
大まかには4月1日のエイプリールフール企画としてアイドルVRゲームのベータテストを実施するということだった。アイドルとしてだけでなくファンや観客としてのプレイヤーも参加できるものらしい。
「歌って踊るアイドルVRとは戦いに明け暮れてたこれまでより随分と平和的だな」
「アイドルって言った?」
「まだ参加するか検討中よ。それにライブバトルがあるからしっかり対人ゲームだし」
オタク気質のナギサが車の観衆から抜けてきて話に入ってこようとするのをミルローゼは制止する。
「歌やダンスはアシスト機能あるらしいけどある程度は練習期間用意した方がいいよね」
「マジで参加するのか?」
「ビジネスよ。VR参入の足掛かりに大手の音楽プロダクション数社でセッティングした企画なんだから。他にも地下アイドルやアマチュアのアイドルに声かけしてるそうよ」
「面倒そうな営業で」
「私たちはゲームだけをやってるわけにはいかないの」
「歌う曲の割り当てとか決めないとな」
「選曲なら年代別のランキングとかどうかな?ランキング入ってる曲なら当時聴いてなくても知ってたりすることもあるよ」
すっかりアイドルVRのほうに興味が移ってるナギサが提案する。
「なるほどね。あと、ダンスやってる子いたよね。誰だったっけ?」
ジッ
ミルローゼが言うと一同心当たりがあるのか一人の少女に視線が集まる。
「えっ、えっ、わたしですかぁ?確かにダンスはやりますけど、教えるとなるとまた違ってくる気がしますが」
ダンス経験のあるリアーナは急に白羽の矢が当たって慌てていた。
「スコア稼ぐのに観客も必要か」
「でしたらこの方達に頼ってはどうでしょうか?」
カスミが表示したのはエンドワールド関連のファンクラブのリストだった。SAO時代から勝手に作られていたものが今でもSNSなどを通じて活動を続けている。
「アネットさんやエンチャントの皆さん単推しのファンクラブの他、グループ推しでのコミュもあるんですよ。あ、もちろんまおーさまのファンクラブもあります」
「わたしのもあるのね・・・彼らにあらかじめセトリを流しておいて呼び込めばいいサクラになりそうね。練習の時間取るためにもオリジンのほうはさっさと片付けてしまいましょう」
ドゴン
「おいおい・・・」
大きい衝突音がしてヴァイリは振り向く。
VRなので車体のヘコミはないが、ノエルの運転していた車は城壁に真正面からぶつかって車内はエアバックが膨らんでいた。
「きゅ~」
近くで見ていた人から車外へ運び出されたノエルは目を回していた。