エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
2025.3.18 10:00
六本木
SA:O 運営オフィス
「チーフ、ここまでデータが破損していると巻き戻しは不可逆です」
「はじまりの街の圏内設定だけでも再構築するんだ」
「メンテナンスモード移行できない。外部から邪魔されてる」
「ここの店員NPCも死んでる。補充データくれ」
「ああ、もうどこのSNSも炎上だ。収集つかない」
「はい、フィールド消失で街に戻れないということですね。復旧を進めている段階ですのでしばらく今いるエリアから移動できない状態となります。ご迷惑おかけして申し訳ありません」
「アカウント消失については現在調査中です。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんが調査が完了するまでお待ちくだ(ガチャン!)…そんな怒ってガチャ切りしなくてもいいでしょ」
オフィス内は致命的なシステム障害の復旧とクレームの嵐の対応に追われていた。
「問題の数が多い。すぐ解決できるところから優先してやってくれ」
運営の指揮をする伊佐田は全体に指示する。あがってくる障害の紙資料を見てトラブルシューティングしていた。
「大変そうですね」
ミルローゼこと舞と、カスミことすみれの二人がオフィスに入ってくる。
「今日会う約束はなかったはずです。見てのとおり取り込み中なので商談とかならまた後日にしていただけませんか?」
慌ただしい中、間が悪く訪問してきた二人に伊佐田は若干苛立ちながら言う。
「ええ、今頃大騒ぎだろうなと思って」
舞は素知らぬ顔で答える。
「ああ、そうだ。アインクラッドができるなんて想定外だ。そんな企画はないしこのままではオリジンの運営を中止せざるを得ない」
舞の態度に伊佐田も怒りを隠さず言う。
「わたし達が協力すれば綺麗に解決できるとしたら?」
舞の言葉に伊佐田は眉をひくつかせる。
「お嬢さん方、できないことを持ちかけるのは詐欺になるぞ」
「自信持ってできると言えます」
伊佐田が脅し気味に言うも舞はニコニコと答える。
(今の我々では対応のしようがない。聞くだけでも何か解決の糸口になるかもしれない)
行き詰っている伊佐田は以前と同じ応接室へ通した。
「さて、どこから話しましょうか。SAOサーバーを管理していたレクトにデータを違法コピーしていた者がいました。不祥事が明るみになる前にそいつが雲隠れして設立したのが協賛企業のパンドラです。ここがオリジンのどういった領域を担当していたかは存じてますか?」
ソファに座った舞は話し出す。
「主にマップデータの作成、モンスターのモーション・・・まさか」
アインクラッドの出現も未実装のモンスターの発生もできなくないところと伊佐田も思う。
「探ったところオリジンに提供したのもSAOのサーバーデータにあったものを切り売りしてたようですよ。一連の騒動はそこの仕業です。双子の巫女のイベントトリガーを利用してSAO時代のモジュールを起動させました」
「犯人の目星がついてるとしてどうするつもりだ?そいつをすぐ逮捕したとしても騒動が解決されるものではないだろう。アインクラッドを消してシステム障害でしたでは済まされないだろう」
「できてしまったものはしょうがない。ソードアート:オリジンなんてSAOを意識してつけられたゲームタイトルだしいいんじゃないですか?SAOを継承しても」
「どういうことだ?」
「パンドラの本拠地にも警察の捜査が入る予定です。押収したSAOのデータを流用すれば完全なアインクラッドをオリジンに再現できます」
「そんなツテがあるのか」
「まあいろいろと。なのでゲームの運用中止を決めるのはもうしばらく待ってください。良い落としどころに持っていきます」
「・・・・・・・」
伊佐田は目をつぶって腕を組む。
「時間もあまり残ってませんよ。巫女が演算処理終わらせて城墜としをしたらあの世界は完全に壊れます。SAOの再来を期待してたのにただのシステム障害でキャラロストしたトラブルも合わせればプレイヤーはゲーム、いや、VRから離れていくでしょうね」
「・・・君達にこのゲームの未来をかけよう」
伊佐田は腹をくくって頷いた。
「その代わり黒幕を撃退するのにお願いしたいことがあるのですが、直接紅玉宮に乗り込むのにアバター自由転移の権限が欲しいです」
「ああ、用意しておこう」
───
15:00 SA:O エンドワールドギルドホール 会議室
「と、いうことだ。お前たちには協力してもらうぞ」
ゲーム内でいつもの魔王ロールに戻ったミルローゼが話す。先日の騒動の中、ヴァイリがユイを餌にしてアイラの本性を暴いた件の説明のついでの集まりだった。会議室にはエリス、ヴァイリ、キリトとアスナとユイ、スリーピングナイツからユウキとタルケンが出席していた。
「アインクラッド最上階の紅玉宮に居座る暴走した巫女の無力化、巫女を狙う須郷とパンドラの排除。以上が運営からの依頼だ。紅玉宮の入り口に座標設定した転移結晶も用意されている」
アインクラッドをオリジンに導入する運営との取り決めは伏せておいて、表立ってはシステム障害の原因となったティアと須郷を倒す説明をする。
「ようするにアインクラッドの上にいるボスとそれを狙う悪い奴をボクたちで倒せばいいんだよね」
「ごっそり端折りましたね」
ユウキの物言いに隣に座っていたタルケンが苦笑する
「初めから大勢で巫女と戦闘すると須郷側に警戒される。パンドラと須郷が現れてから我々も加勢する」
ミルローゼは作戦段階を説明する。
「わたしたちに招待状のメールを送信したのも調べたところ須郷だったことが分かっています。SAOサバイバーを誘き寄せてデータを取ることが目的だったようです」
エリスもリリエラが調べてくれたことを話す。
「まさか須郷さんがそこまでするなんて」
顔見知りの犯行にアスナは動揺していた。
「実は俺に調査をするよう言ってきた依頼主からもパンドラという企業が胡散臭くなってきていると言われた。外国の軍需産業と連絡を取り合っているとか」
キリトもパンドラという企業を怪しく見ていたことを明かす。
「あ、あの、お願いがあります」
静かに座っていたユイが立ち上がる。
「どうしたんだ、ユイ。改まって」
「わたしも…紅玉宮に連れて行ってくれませんか?」
「…ユイちゃんを攻略戦に?理由を教えてくれるかな?」
アスナが驚きながらも理由を聞く。
「そこにいけば、アイラさんがいるはずですから。冒険した時間は短いですが、それでもわたしはアイラさんが完全に悪い人ではないと思います。本心を知りたいんです。だから、わたしも連れて行ってください」
ユイはアイラの詳しい事情があると思い、もう一度話したいと思っていた。
「…正直に言うと、ユイちゃんにはできる限り安全な場所でわたしたちの帰りを待っていてほしい。けどたった一人の娘が誰かのために頑張ろうとしてるのを止めることはできないよ」
「そうだな、アイラの本心を一緒に確かめに行こう。ユイの服も後で耐久値高くしよう」
「はい!パパ、ママ、ありがとうございます」
アスナとキリトもユイのやりたいことに背中を押すつもりでいた。
「子供同伴でも構わんが安全の保障はできんぞ。パンドラを始末するのが最優先だからな」
「分かっています」
ヴァイリが水を差すもユイの意志は固かった
───
同刻
アインクラッド 紅玉宮の一室
「システムコマンド!ペイン・アブソーバ、レベル8に変更!このポンコツが!」
「きゃぁぁぁっ!」
銀色の鎧を着た男がパンドラを剣で斬りつけていた。この男こそ須郷がVRにログインした姿、アルベリヒだった。ペインアブソーバのレベルを下げてパンドラを痛めつけていた。
「圏内でPKなんてシステム外なことしやがって!これで運営のセキュリティから目つけられた!」
「くっ、ふふふ…街から出てこない強いプレイヤー倒しまくればいっぱい取り込めると思ってさ。おおまかには指示に従ったまでだよ」
パンドラは痛みを堪えながらあざ笑うかのように言う。
「このポンコツが!」
「ああああぁぁぁっ!」
怒りのボルテージが上がったアルベリヒは更に斬りつけてパンドラは悲鳴を上げる。
「…まあいい。そろそろこのプラットフォームからも手を引く予定だった。締め出される前に取れるもん取っておくか。あとはボス部屋にいるNPCを食わせて試作段階として発表すればいい」
ひとまず気が済んだアルベリヒは計画を確認する
「そこのお前もだ!アイラとか言ったな」
「は、はい!」
アルベリヒに呼ばれたアイラは肩を震わせて返事する。
「MHCP1体まともに連れてこれないのか!もうお前はパンドラのお守りだけしとけ。ポンコツ人形がまたヘマしたらすぐ連絡しろ。わかったな!」
「わ、わかりました」
「柳井も連絡無視しやがって。ふん、どいつもこいつも無能ばかりだな」
彼はそう吐き捨てるとログアウトした。
「パンドラ、大丈夫?」
アイラはうずくまっているパンドラに駆け寄る。
「…あの男、いつか絶対細切れにしやるっ!」
そう言うパンドラの恨みがましい形相にアイラは一瞬背筋が冷えた。