エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~   作:RipoD

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今回のメイン曲 ナナニジより“僕は存在していなかった”

h ttps://www.youtube.com/watch?v=X1pg-wBqSxU



167話 "I Was There" 

 

ボクのギルドはみんなとても強くてモンスターからいつも守ってもらっていた

 

みんなとても勇気があってSAOをクリアしてくれた

 

みんな綺麗で戦っている姿もかっこいい

 

それに比べてボクは怖がりでモンスターもまともに倒せない

 

小さいころからぬいぐるみを作るのが趣味だったから、上げた裁縫スキルで皆の装備を作ってギルドを支えていた

 

今回のアイドルゲームでもきっとみんな輝いてボクは衣装づくりをして…

「このユニットのセンターはシルヴィーな」

 

(えっ…)

そう唐突に言われてボクの頭は真っ白になった

 

 

 

 

 

───

 

 

2025.3.15

エンドワールドVRルーム クレムリン

国立クレムリン宮殿 コンサート劇場

 

「ヴァイリ、どういうこと?」

需品班の班長、リーゼロッテが”22/7”と水色のロゴが入った資料を開きながら聞く。

 

「だから、リーダーはリーゼロッテだけどセンターはシルヴィー。リーダーとセンターが別なケースなんていくらでもあるし」

ヴァイリがめんどくさそうに言う。

 

「シルヴィーちゃん小動物みたいでかわいいからよし!」

曲選びとポジション決めに関わったナギサが親指を立てる。

 

「需品班は当日衣装管理がメインだけどスコア稼ぎのために出れそうなところはライブよろしくね」

ミルローゼが付け加える。

 

「シ、シルヴィー固まってるけど大丈夫?・・・座ったまま気絶してる」

コハルがシルヴィーの顔を覗き込むが、目が開いたまま失神していた。

 

【挿絵表示】

 

 

「きゅ、救急車!…VRにはない!」

ソラナがスマホを出そうとするがポケットは空っぽだった。

 

「こういうときはスタンポーション…ゲームじゃないからないよー!」

アーチがメニュー画面を開くがSAO等ゲームと異なるため勿論アイテムなど無い。

 

「こういうときはリラックスできる飲み物…気絶してるから飲めないんだった」

リートがVRショップで購入していたハーブティーを出したが飲ませ方がないことに気付く。

 

シルヴィーの失神に需品班では軽くパニックに陥っていた。

 

「これは大変なことになったわねぇ」

普段余裕ある様相のユウナギも難しい顔をしていた。

 

 

 

2025.3.24

 

クレムリン 団欒室

 

「ライブまであと一週間…上手くできるか心配…嫌だな…」

シルヴィーはバイオリンを弾くリスのぬいぐるみを縫いながらつい本心が漏れる。

 

「昨日の中間発表会はよくできてたじゃないか。自信を持っていいと思うぞ」

フルートを吹いている小鳥のぬいぐるみを縫っているラーチェがフォローする。

二人はルーティンでぬいぐるみ縫いをする仲だった。

 

「そうかな…いっぱいいっぱいでやってて…よく分からない」

シルヴィーはラーチェの言葉を真に受けられなかった。

 

 

 

 

 

2025.4.1 13:00

ポップスター・オンライン SWAN GARDEN

 

 

「思ったよりお客さん入ってる…」

 

「宣伝しすぎよ!」

ステージ裏の控室で、会場全体を映すカメラの映像を見ながらシルヴィーとリーゼロッテが驚いていた。1曲目の“理解者”に合わせて全員ストライプ柄の衣装で揃えていた。

 

(練習の時と…全然空気が違う)

Tシャツ姿の練習の時とステージ衣装の質感の違いにシルヴィーは戸惑っていた。

 

 

ライトの消えているステージの中央で頭を低くして密集し、曲の開始を待つ。

 

ギターのハイテンポな前奏が始まるのと同時に客席からの大きなコールが繰り返される。ゲーム内は夜の設定のためステージには強烈な照明が照らされる。

 

(知らない人ばかり…)

シルヴィーは右腕を上下に振りながらステージの向こうにいる観客を見て思う。

 

(あれ?あんなに練習したのに…歌詞が出てこない…)

歌い出しはシルヴィーから始まるが、場の空気に圧されて口がパクパクしてしまう。

 

(あっ、これヤバイかも)

シルヴィーの異変に気付いた隣のソラナがすぐフォローに入り、シルヴィーの歌い出しのパートをカバーした。

 

「あれ、なんか違くね?」

観客もパートの違いに違和感を持っていた。

 

 

(やってしまった…)

シルヴィーは失敗に動揺していた。あっという間に来たサビの激しい振り付けもこなしてるものの一人取り残された感覚になる。

 

曲が終わって拍手が起こるものの会場には微妙な空気が流れていた。

 

《ライブ評価:Bランク》

ライブのスコアは観客の盛り上がりなどから計算されていた。なにかしらミスなどがあると減点されるシステムが取られていた。

 

 

「歌い出しが歌えなかった…ごめん…」

ライブ後控室に戻ってきて、シルヴィーは縮こまって謝る。

 

「しょうがない、切り替えていこっ!」

「気にする事ないよ、がんばろ? ね!」

ソラナとアーチが励ます。

 

しかし、その後もライブの出来は芳しくなかった。

 

 

14:30

サードフォート

曲目:韋駄天娘

 

 

夜マップを照らす満月の下、海上に突出した砲台陣地がライブステージとなっていた。四囲を囲んだ土塁が観客席、360度囲まれたステージの上で頭の上に手でウサギの耳をつくって歌う。

 

《ライブ評価:Bランク》

 

 

 

15:55 

STAR STAGE

曲目:曇り空の向こうは晴れている

 

夜から朝にマップの時間が切り替わるタイミングでビルの屋上のステージに緑色の学院服衣装に変更して立つ。

サビに入るタイミングで昇ってきた日の光を浴びながら歌う。

 

《ライブ評価:Bランク》

 

 

 

18:00

プロムナード 花の広場

曲目:ヒヤシンス

 

紫色の花畑の中にあるステージで、花びらが舞う中一人一人がセリフを紡いでいった。

 

《ライブ評価:C》

 

「ああー」

「うーん」

リートとコハルからつい声が漏れる。

Cランクの表示が見えたときは全員落ち込みを隠せずにいた。

衣装合わせで立ち会っていた他のユニットがAランクを取っているのを見ているとどうしても自分達のライブは見劣りしてるのではないかと思ってしまうのであった。

 

 

PiPiPi

リーゼロッテの外部からの通信端末に着信が入る。

「はい・・・いや、まだ予約したステージがあるけれど・・・わかったわ」

着信に出たリーゼロッテが通信の相手に答える。

 

「このゲーム開催期間明後日まで延長だって。これから明日以降の対策会議もするから今日はもう切り上げてとクレムリンから言われたわ」

皆の方に向き直ったリーゼロッテが言う。

 

皆、未練が残っていたが衣装の片づけなど撤収準備を始めた。

 

 

(明日はうまくできるかな…)

シルヴィーは不安を抱えながらもログアウトした。

 

 

 

 

 

2025.4.2 10:00

 

パステルタウン

会場 ライブハウスZip  

 

 

「グループランキング1位のところのユニットか。推しのタイテ次だし待機ついでに見ていこうかな」

サイリウムを持った男性観客が言う。

トップグループのユニットということもあり1日目よりも更に注目されていて1階はほぼ満員の状態になっていた。

 

 

「ナギサも来てたか」

 

「一応割り当てした責任はあるからねー」

2階の一番前の席でヴァイリとナギサが様子を見に来ていた。

 

「昨日のスコアについては聞いてるんだろ?」

 

「もちろん」

 

「続けられそうにないならリーゼロッテ達のとこの後のテーブルはクロン達に任せることになる。もともと裏方組だったんだ。あまりこういうの向いてると思ってなかったし衣装担当を専任してもらったほうがいい」

ヴァイリの言うとおり、楽屋でクロン達4人がバックアップとして待機していた。

 

「そうかな?わたしはやってくれると信じてるよ」

対してナギサはまだ期待を持ち続けていた。

 

 

───

 

 

「みんな昨日は眠れた?体調変だと思ったらいつでも言ってね。今日の1曲目は“僕は存在していなかった”からだから」

ステージ裏ではリーゼロッテが声掛けををしていた。1日目では使用していなかった水色の衣装へ変更していた。

 

「あっ、ピアノもあるんだ」

ステージ裏に置いてあるグランドピアノにコハルが反応する。

 

「コハルはピアノ上手よねぇ」

 

「お母さんがピアノの先生だからSAO前は結構弾いてたかな」

ユウナギに褒められてコハルは照れる。

 

♪~

「あ、入場曲鳴ったよ。行こう」

リーゼロッテが言うとステージの最初の位置につく。

 

右手で右目を覆い、最初のセリフを言うと曲の演奏が始まる。

 

哀愁を漂わせるメロディーに合わせて客席からはゆっくりと白いサイリウムが振られている。

 

プツン

 

歌の二番目に入るところで音楽が途切れる。

 

「え?」

リーゼロッテ達も急な事態に歌うのを中断する。

 

『こちらのステージはオーディオのシステム障害が発生しています。復旧までしばらくお待ちください』

システムアナウンスが会場全体に流れる。

 

「ええーっ!そんなことってあるー!?」

「まだ運用2日目だからデバッグだけで見つからない不具合がなにかしら出る時もあるか」

2階席でナギサが立ち上がって叫ぶ。隣でヴァイリも半場諦め気味に言う。

 

 

 

(やっぱりだめだった)

シルヴィーは俯く。

 

 

「どうする?」

「あれ使えるかな?」

アーチと相談していたコハルはステージ裏のピアノを指差す。

 

「即興ってあまりしたことないけど・・・」

コハルが椅子に座ると鍵盤蓋を上げる。

 

「マイクをピアノのところに」

リーゼロッテが備品のマイクのスイッチを入れてピアノの譜面台に乗せる。

 

「諦めないで。まだ終わってないよ、シルヴィー」

コハルが中断した少し前からピアノを弾き始める。

 

リーゼロッテがステージの元の位置に戻り、コハルが抜けた状態で歌を再開した。

 

片足立ちでゆらりと回りながら手を伸ばして胸にあてる。

 

 

(でも、ピアノの音だけじゃ足りなそう)

ソラナの思った通り1階の前の人達には演奏が聞こえているようだったが後ろ側のサイリウムは止まったままだった。

 

その時、上の方から微かに曲が流れてきた。

 

「こっちならステージのシステム障害に関係ないからな」

コハルの機転に感化されてヴァイリが端末からインストバージョンの曲を流す。

 

ヴァイリに倣って二階席の他の観客もサイリウムから端末に持ち替えてスピーカーにする。

 

二階から聞こえてきた曲に一階の観客も気づいて同じように伝播していく。

 

今度は客席からの演奏がステージを包み込む。

 

 

【挿絵表示】

 

 

サビに入り、左手を背中に回して右手をゆっくり上げていく。

 

一歩一歩前へ歩みながら両手で花を形作り、上へと伸びていく。

 

 

客席からの伴奏も合わさり、会場はひとつになっていた。

 

 

《ライブ評価:S》

 

「やった!A通り越してS出たよ」

ソラナが喜びのあまりシルヴィーに抱きつく。

 

ステージ裏のコハルもシルヴィーに向けてVサインをつくる。

 

「うん、良かった…みんなありがとう」

シルヴィーはこのゲームで初めて笑みを浮かべることができた。

 

 

 

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