エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
2029* .12.20 AM2:00
ガシャン
乗ってた自転車の後輪がカラカラ回っている
頭が痛い 心拍数が異常な数になってる 今日はアルコール入ってない
いやでも昨日のがまだ体に残ってるかも まあ身内は隠蔽してくれるだろう 寒い 寒い さむい しびれる いきがくるしい
2022.6.5 17:20 剣道場
夏至も近くなり、日が伸びる夏の始まり頃、
「というわけで一度死んだのに生きているわけだ」
少女の素足にテーピングをしながら俺、
「と言われてもなんと感想を述べればいいのか」
剣道場の縁側に座る剣道着の少女はしかめっ面をしている。彼女の名は
テーピングが終わって瑠希が立ち上がる。蚊の音がした。
すかさず瑠希は竹刀を振った。竹の刃先には蚊の羽が付いていた。
「お見事」
「蚊が風圧で飛ばされないよう調節すれば造作もない。」
うん、ごめん。俺には真似できない。瑠希のずば抜けた空間把握能力は俺には備わってないから理論は分かってもいざ実行に移すことは俺にはできない。
瑠希の剣道は計算で動いている。筋肉の動き、予測される軌道、相手の精神状態を把握し、ほぼ完璧な対応を見せている。留姫が負ける時の敗因は筋力差による力負けがほとんどだ。それも大体大人達との試合の時の場合で。
技術を入れ込んだのは道場師範の瑠希のおじいさんと俺が興味本位で教えてしまった物理学によるものなのであるが・・・
この瑠希の剣道の才能に俺は惚れ込んでしまっている。前世通じて彼女を越える人は見たことがない。
「ん、どうした?」
「いや、瑠希には俺じゃ追い付けないなと思ってね。」
「あなたの剣を参考にして今の私がある。あなたは私にとってかけがえのない人だ。」
「俺だけだと新しく得ることにも限界がある。他の人たちの技術もちゃんと見るんだぞ。」
「無論、明日の私は今日よりもさらなる高みを目指していく。」
道場の掃除が終わり日も暮れたところ、九龍家で夕食をご一緒に頂くことになった。
『続いては、めざましく発展しているVRのニュースです。』
ニュースを見ると白衣を着ている人のテロップに茅場晶彦の文字が見えた。
『これはゲームであっても遊びではない。』
死んだ際、神様とは会わなかったが前世でラノベで読んだソードアート・オンラインの世界に自分がいることを初めて知った瞬間だった。
「剣の世界、私の剣だとどこまでいけるか」
剣道一筋で生きてきた瑠希にとって剣の世界はとても魅力的なものに見えたようだ。彼女のテレビに向いた眼差しが輝いている。
「いやー、1000人だけの募集じゃ当たらないと思うけどなー」
こんな死亡率高すぎるゲームなんかに近づいてはいけないだろう。
2022.8.20 成應塾大学附属中学校
転生する際には神にも存在Xにも会うことなくただ生まれ変わっただけだった。それでも神が操作したのか天命なのか分からんが俺も瑠希もβテストの抽選に当たってしまっていた。奇しくもベータテスト初日の午前中は夏休みの中でも学校の登校日であった。
「では9月にまたみんなの顔が見れるのを楽しみにしてるぞ。宿題は終わらせておくように」
担任のホームルームが終わり、生徒たちが各々帰路につく。
「Cクラスの神成さんがさー」
「あー、あの帰国子女の」
他の生徒たちの立ち話を横目に俺は帰りを急ぐ。
・・・
自宅に着くと時計は1時を指す直前だった。瑠希からFINEでメッセージが送られてきていてサービス開始と同時に落ち合いたいと書いてあった。すぐ自分の部屋に入ってナーブギアを被った。
まさかこの言葉を言う日がくるなんて
「リンク・スタート」
始まりの街、近くの噴水の水を覗くと巨人をどんどん切り刻んでいきそうな兵長殿の顔が映る。まだ百数十人程度しかいない人ごみの中をかき分けていったところ目的の人を見つけた。鈍色の髪を後ろにひと結びしたサムライヘアーの男に声をかける。
「ルークかな?」
「リバか、なぜ分かった?」
「アバターで外見が変わっても歩き方までは変わらないからな。」
人はそれぞれ歩き方が変わってくる。これを歩紋などと呼び、指紋のように個人を特定するのに使われることもある。
「まずは何をしたい?」
「手合わせ願う。」
ルークとデュエルをし、ボス戦攻略に参加し、街の中を食べ歩き、クエストを達成し、現実だと実感できない新鮮な刺激が得られた。この真新しい感覚も寂しいことにたった2ヶ月で終わってしまった。
βテスト最終日にログアウトするとゲームではない画面が視界に広がった。SAOに関するアンケートだ。
〈その他何かご要望がありましたらお書きください〉
2年もゲームの中で過ごす事になるからな。実際にあの小説の中で中高生のサバイバーは専用の学校に収容されていたし。そう思うとひとつ案が出てきて早速書いた。
〈学生の長期滞在に備えて教科書などを読めるようにしてください〉
2022.11.5 剣道場
「瑠希、本当にあのゲームはやらないほうがいい。あのゲームにこだわらなくてもこれから似たようなゲームがいくつもでてくるんだし」
「私はあの世界で高みを目指したい。あの城の頂に足を踏み入れたいと思っている。あなたもあの世界へまた行きたいのではないのか?」
彼女の言ってる事は最もだった。俺もあの世界に魅入られてしまった。前世ではフルダイブVRなんて存在しなかったし、コンクリートの世界ではないあの空に浮かぶ城でしか感じられないものがたくさんあった。デスゲームだから必ずしも有害と言い切れない。生き残れればいいわけだ。あの小説全て読んでいるから何に気をつけなければならないのか知ってるんだ、トラップとかPKとか。この3ヶ月自問自答していて出た結果が本サービスへの参加だった。俺の答えは既に出ていたことを瑠希の言葉で確信してしまった。
「・・・わかった。俺もいく、」
「ありがとう。あなたが一緒なら心強い。」
初日のゲーム内での待ち合わせ場所など簡単な事を話し合う。
「ログインは俺の家でやろう。ナーブギアは無理やり外そうとしたり、壊されるようなことがあっても電子レンジ機能がすぐ起動してしまうんだ。瑠希のおじいさんだときっとニュースで見次第、真剣持ち出して割ろうとするから。」
「分かった。」
「ああ、あともうひとつ。本サービスではプレイヤー名を変えよう」
「何故だ?」
「βテスター達が名前を覚えてるかもしれないからね。トラブルを避けるためだ。」
「分かった。では私は明日からクロンと名乗る。」
「俺はヴァイリっていうプレイヤーネームにする。待ち合わせは行きつけのカフェにしよう。」
明日から日常が無くなり、ファンタジーの世界へ入る。自分は黒の剣士のような物語の主人公ではない。ただ、自身を守り、瑠希を無事に連れて帰る。そう誓った。
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