エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
2023.2.18
side:ヴァイリ
本部から『緊急の呼び出し』とメッセを受け取り、ギルドホールへ入る。
「おはよう、カスミ」
「おはようございます!ヴァイリさん。執務室に入ってくださいね」
受付に座っていたカスミに挨拶をすると部屋を案内してくれた。部屋をノックすると「入れ」と返事があったので入室した。
本部の執務室は普段島形のテーブル配置のはずであるのに、今日は一つ単独のテーブルが置いてあるところをコの字型に囲んで配置されていた。
右の長テーブルには総務担当のキーナと外務担当のベティ
左の長テーブルには経理担当のアルシエと情報班長のアーチェ
正面の長テーブルにはリリオ、アンジェラ、そしてミルローゼが座っていた。
バタンと後ろの扉が閉じる音がしたので振り向くとリーネとトトナが武器を持ちながら扉を塞ぐようにして立っていた。
「本部のみなさんお揃いで、情報班長もご機嫌麗しゅう「御託はいい。そこの証言台へつけ。」ハイ!魔王様」
ミルローゼが、孤立して置いてあるテーブルを指差し命令する。俺は率直に従った。証言台という単語でこれから本部が何をする気なのか分かった。なんかまずい雰囲気だぞこれ
「各方面の証言をまとめたところ、お前は血盟騎士団の出現、25層の解放隊の全滅を予言していた。」
「アネットがヴァイリの言ったことが実際に起こったと証言がある。」
ラーチェが手元の書類を見ながら言う。
まずったかなー、10層あたりでアネットがこれからの事が心配っていうものだからつい血盟騎士団っていう救世軍みたいなギルドが誕生してどんどん攻略していくとうっかり漏らしてしまっていた。
「一体お前は何者だ。」
ギルマスの問いに一同がこちらに視線を向ける。
全員注目したのは一瞬だけでその後、ベティはインベントリからティーセットを取り出し、アルシェも欠伸を噛み殺してるあたり尋問にやる気はない。この二人は今回不干渉らしい。となると後の5人をどうにかすればいい。
「別にちょっとした世迷いごとを言うだけです。信じるかどうかはみなさん次第ですよ。前世でこのゲームを題材にした小説を読んだのです。」
「ほう」
「前から言動に疑問点があったけど彼は空想上のことを話して煙に巻こうとしているようにしか思えない。このような者を所属させるわけにはいかないわ、ミルローゼ。」
アンジェラがミルローゼに具申する。
「あなたの盾の戦闘指導は一応感謝してるけどあまり奇抜な発言は慎んでほしいわね」
リリオは呆れ顔で言う。
サブマス二人の懐疑の視線とは異なり、ギルマスの視線は好奇を示していた。
「面白い戯言だ。ではこれからどのような事が起こるか言ってみろ」
「もともと小説での主人公は、あのビーターのキリトと血盟騎士団閃光のアスナの二人となっています。直近の描写となりますと、キリトが月夜の黒猫団という中層ギルドに入り、ダンジョントラップで彼以外全滅というシナリオになります。」
「いつ起こるのだ」
「4月頃入団で6月頃全滅のはずですが、小説より若干シナリオペースが早くなってるのでもう少し早めになるかもしれません。」
「ほかには何がある?」
「殺人ギルドが出来ますね。名前はラフィンコフィン、正月にギルド結成の景気づけにちょっと大量殺人をします。授業でも名前だしたプーがギルド長になりますね。しばらくして攻略組が討伐しますが。あとは75層でお話が分岐するんです。茅場を殺してゲームクリアになるか、ゲームルールどおりに100層まで続くか、どちらになるかは今のところ断定できません。」
「世界線が一つではないのか。」
「小説作品に異聞録はつきものでしょう。本来2層ボス攻略も攻略組が倒すのが小説の流れだったので既にアイテムの流通、経験値の分配など私の知ってる歴史と剥離してる部分があります。あまり剥離しすぎると私としても予測がつかなくなるので避けたいと思っています。なので情報開示は過大な剥離が起こらないレベルでその都度させていただきます」
「我々はどうなるのだ?」
「知りません。皆さんは小説やアニメでは全く取り上げられない人物だったので」
「お前のその知識を使えば我々の安全は確保できるか?」
「100パーセントは無理ですがかなりの生存率上昇に貢献できると保証します」
「今回の件に関しては経過観察とする。帰ってよい」
「はい、失礼いたします。」
とりあえず乗り切れたようだ。そそくさと退出する。
出入り口で受付席から苦笑いで「お疲れ様です」とカスミが言ってきたのでこちらも「どうも、おつかれー」と言う。ギルマス補佐官だから実質ギルドのナンバー2だが圧迫できないからの受付担当だったのだろう。
中高生相手ながらつい場の空気に飲まれて原作のことを暴露してしまったがこれで黒猫団のエピソード起こらなかったら今度こそ斬首刑かもしれないな。
──────
side:本部
こんこんこんとノックがされ、カスミが部屋に入ってくる。
「まおーさま、ヴァイリさんは帰りましたよ」
「ご苦労。さて、奴はどう思える。ラーミル」
ミルローゼが目線を壁の方へ移す。
「波長は安定していたわ。嘘をついてるわけではなく本心からの言葉よ」
カーテンの影から出てきたラーミルが言う。
「本心で言っているなら尚更タチが悪いわ!ミルローゼ、彼はパラノイア持ちよ。あのような不穏分子を組織に抱えるのは問題があります。」
アンジェラがミルローゼに向き、いらだちを含みながら言う。
「本当にそう思うかね」
ミルローゼは横目に見て言う。
「とても現実離れしたことしか話していない、これからの未来が予知できるなどあり得ない。非現実的過ぎるわ」
「別にヴァイリさんは悪い人には思えませんけど。ちょっとやりすぎな部分もありますが実際にギルドの利益を考えての行動が多いですし」
ベティが人数分のティーカップにポッドの紅茶を注ぎ分けながら言う。
「アンジェラ、我々がゲームの世界にこのようにいるのはどう説明できる?5年前、いや、1年前であれば空想で描かれただけの世界に生きるなど予想もしなかっただろう。奴がどのように未来予知しているのか過程は不明だが実際に結果が出ている。人の運命は算段によって決まるのではない。大いなる力が時間と空間を超越して我々に行動を課すのだ。」
「その大きな力が彼ということね。私もギルマスの方針で賛成ね。彼が本当に予知能力者あるいはこの世の歴史を知っているなら私たちとしては使えるものは使うべきだわ」
キーナがベティからティーカップを受け取りながら言う。
アンジェラは口をつぐむしかなかった。
「そうね、あいつのおかげで私たちかなり儲けられてるわけだし。あー重い空気演じるの疲れた」
アルシエが机にへばりつきながら言う。
「慣れないことってするもんじゃないわねー」
そう言ってリリオは首をコキコキならしながら椅子の背もたれに寄りかかる。
「今回の件に関してはここにいた全員ゲームクリアまで内密にしろ。それまで生きてればの話だがな。ラーチェは月夜の黒猫団というギルドを監視せよ。必要あれば他班の者を動員しても良い。」
「了解した、団長。すぐ取り掛かるので失礼する」
「あら、せっかく紅茶を淹れましたのに。残念ですわ」
「すまんな、また今度頂くことにする」
ラーチェが立ってお辞儀をして退室する。
「彼の言うことを信じるの?魔王様は」
リリオが問う。
「ビーターがそのような弱き者達に手を差し伸べるなど誰が予測できよう。答えはすぐに出る。現実になったら奴はビーター以上の者だな。手元に置くには充分価値が有る。」
ミルローゼもティーカップを受け取り紅茶を飲みだした。
どっかの回の後書きのとおりヴァイリは小説、アニメ、コンシューマーの中の知識しかない。というよりヴァイリの前世の世界ではソシャゲタイトルが無い現実世界なのでギルメンに関してはレイン、フィリア等のことしか知らないワケです。
軍事法廷の映画となると英雄の条件、クリムゾンタイドのラストシーンとかでしょうか。あとは捜査物で戦火の勇気
アンジェラの立ち位置はレルゲン大佐です