エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~   作:RipoD

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31話 2023.5.14、15、16 覚醒の子

2023.5.14 Sunday

 

2週間前の大通りでの演習の直後、軍は一時的になりを潜めていたが、それも長くは続かず、エンドワールドとも生産職の営業圏や街道の歩行での道の譲りトラブルでニアミスの衝突事例が数件発生していた。

 

軍のプレイヤーは露店の商品にケチをつけて値引きを要求してくることからシンカーに対して本部が再三にわたって抗議を入れていた。軍との力関係はエンドワールドの方がレベルが高く、軍の方から手出しできない反面、軍の圧倒的な人数、消費がエンドワールドの物販営業にも大きな影響があることから袂を完全に分かつことができない状態だった。

 

 

バァン!

「ヴァイリー、教会のボランティア行こー!」

「えー、久々の非番なんだ。休ませてくれ」

「なに休日の働き疲れたおっさんみたいなこと言ってるの、ほらいこいこ」

非番を持て余して宿屋のソファにいたヴァイリに宿屋のドアを勢いよく開けてアジュールが叫ぶ。ヴァイリは乗り気ではなかったがアジュールに手を引かれるまま教会に行くこととなった。

 

 

 

教会の礼拝堂では日曜礼拝が行われていた。

教会で保護されている子供たちがミリシオンのお話を前列の席で聞き、他のプレイヤーたちが後ろの席に座っていた。彼らもまた死と隣り合わせの世界で救いを求め、すがる思いで礼拝に来ていた。

ノエル、アネット、ルチア、レイン、フブキ、ベティ、メリー、ニーナなどエンドワールドのメンバーも参加している。

 

礼拝が終わってからは参加者で昼食会が開かれた。

 

「私たちはみんなを連れて散歩してきますね。」

眼鏡をかけた大学生くらいのサーシャさんとカチューシャをつけた修道女服のプリエルが子供たちを連れて街へと出て行った。

 

 

教会で出された食事は1コルパンとスープ、一掴み分のサラダだった。

 

「うーん、なんかものたりない。」

「ノエル、教会ではこの食事が普通なんだから文句言わない。」

ノエルのボヤキをヴァイリが止める。教会の昼食料金は300コルと屋台やレストランなどと比較すると安い。テーブル囲んで食事は取れるがどこかでコストを削らなければ教会の運営も難しいものであった。

 

 

「どうもみなさん、こんにちは。いつも来てくださってありがとうございます。」

エンドワールドメンバーの集まっているテーブルにミリシオンが挨拶しに来る。

 

「みんなミリシオンさんと面識あるんだ」

あまり教会に来ていないヴァイリが尋ねる。

 

「ええ、ノエルさん達は毎週来ていただいて子供たちと遊んでいただいているんですよ。人手が足りないところを子供たちを笑顔にしてくださって感謝しています。その間に私も戦闘に行けますし」

 

「ミリシオンさんも戦えるんですね。教会の運営で子供たちの生活賄えるのか心配なところだったんですが」

 

「はい、エンドワールドの皆さんのパーティーに参加させていただいて私も地下ダンジョンでモンスターを天に召していますが限界があります。サーシャとプリエルには冒険者ギルド集会場まで行って街中でもできるクエストを探してきてもらっているのです。」

 

「なるほど、お使いクエストとかですね。それならモンスターと戦うことなくコルが稼げる。」

 

「そうですね。今では貴重な教会の財源です。それでも子供たちの生活はギリギリになるのが現状ですね。」

 

───

食後のティータイムで歓談しているところをミリシオンのところにメッセのビープ音が鳴る。

「あら、これは少し困ったことが起こりましたね」

ミリシオンがウィンドウのポップを読み笑顔が消えた。

 

「どうしたんですか?」

「サーシャさんたちが軍のプレイヤーに絡まれているようです。」

ヴァイリが尋ねるとミリシオンはサーシャからのメッセを可視化した。

 

シャーサさんとプリエルが子供たちを引き連れて街を散歩をしに行ったところ軍の連中が因縁をつけて来ていることがメッセに書かれていた。

 

「助けに行きましょう、ヴァイリ。」

アネットがヴァイリに提案する。その他のメンバーも頷いている。

 

「子供たちをいじめるなんて許せない!みんな、行くよ」

アジュールの言葉にエンドワールドのメンバーは教会を出てメッセに書いてあった現場に向かった。

 

 

始まりの街 路地裏

 

サーシャとプリエル、そして二人が引き連れている子供たちを軍のプレイヤーが15人ほどで囲んでいた。

サーシャが前に出て軍のプレイヤーと話し、プリエルはおびえている子供たちを庇うようにしていた。

 

「誰のおかげでこの1層で安全に暮らせると思ってるんだ。俺たちは戦えないプレイヤー達に代わって命をかけてモンスターを倒してるんだぞ。俺たちの功績に少しは報いたらどうだ!」

 

「何を言ってるんですか。私達は街のクエストをクリアして、そのお金で生活をしているんです。それに街の中はアンチクリミナルコードでモンスターは入ってこないじゃないですか。あなたたちのおかげではありません。」

 

「プレイヤーを襲うのはモンスターだけじゃないぜ?俺達がいるからオレンジプレイヤーがここらにはいないんだ。ボディーガードしてやってんだから税金ぐらい収めろや保母さんよぉ。」

 

「あなたたちのような攻略から逃げ出してきたような人たちに収めるお金などありません」

 

「こいつぅ!こっちが下手にでてやってるのに言いたいこと言いやがって!子供だろうが関係ねぇ!保護者気取りならその分ちゃんと金払え!」

軍のプレイヤーがサーシャに刃を突きつける

 

 

「みんなをいじめちゃダメェ!」

エヴェイユが駆け出し、振ったメイスが軍のプレイヤーにぶつかる。圏内でありダメージは無いが勢いで前に立っていた軍のプレイヤーが吹っ飛んだ。

 

「ぐはっ!やりやがったなこのガキィ!」

軍のプレイヤーは剣を抜き、エヴェイユに斬りかかる。

 

ガキィン!

「そこまでだ、エンドワールドの者だがその子らを保護する。これ以上は我々との対立も考えろ。」

 

「あんたらこんなことリアルでしてたら恐喝で犯罪よ。」

「弱いものイジメするなんて私たちが許さないんだから!」

「大の大人が追い剥ぎの真似事とは恥を知れ」

駆け付けたヴァイリが刀で剣を受け止める。アジュール、ルチア、フブキ達も軍と子供たちの間に入る。

 

 

「レベル差を利用して圧力かけるとかどうかしているわ」

「ふざけんな!お前らだって同じようなことしているじゃないか」

アジュールの非難に軍のプレイヤーは反論する。軍のプレイヤーも先々週の演習のことを根に持っていた。

 

「覚えていろよ。このことはうちの上層部に報告してやるからな」

より強いプレイヤーが来たことで彼らは身を引いた。

 

 

「ありがとうございます。助かりました。」

プリエルがエンドワールドのメンバーに頭を下げる。

 

「いーの、いーの!困ったときはお互い様ってことで。」

アジュールが腰に手を当てて胸を張る。

 

 

「随分と教会から離れたところまで来ていたが何か集会所以外で用があったのか?」

ヴァイリがプリエルに質問する。

 

「そうでした、明日エヴェイユちゃんの誕生日でしてプレゼント選びをみんなでしているところだったんです。エヴェイユちゃん何か欲しいもの見つかった?」

 

「みんなとお兄ちゃん、お姉ちゃん達と一緒にパーティーやりたいなあ。みんなで楽しくパーティーしようよ!」

 

 

翌日、教会の宿舎でエヴェイユの誕生日会が開かれた。エンドワールドのメンバーも同席して誕生日ケーキがプレゼントされた。

 

 

2023.5.16

 軍からエヴェイユを引き渡すよう教会に催促があった。軍からのメッセは正義の兵士たちに仇なす悪質プレイヤーを再教育しなければならないという名分であった。

 

「どうしようか」

「軍はエヴェイユを引き渡さないと実力行使に出ると行っているようですし」

ヴァイリとサーシャが教会の執務室で悩んでいた。

 

「良い解決策を思いつきました」

ミリシオンが両手をパチンと叩くとヴァイリを向いた。

 

「エヴェイユをエンドワールドに入れてもらいましょう」

ミリシオンはにっこり笑って提案をした。

 

「エヴェイユはまだ小学生くらいですよ。俺たちの所に来るとモンスターとの戦闘などのリスクがあります。」

 

「残念ながら軍は今回の件で教会に対してより一層圧力を与える事になるでしょう。しかし、エンドワールドのような軍より強力なギルドの後ろ盾があると分かれば彼らも無下には扱えません。エヴェイユはモンスターを怖がりませんし、低層であれば問題なく戦闘もできます。」

 

ヴァイリが状況を本部へ連絡すると、本部からもエヴェイユの受け入れが受諾された。

 

 

教会 通用門

支度を整えてエンドワールドからの迎えの人員が到着し、エヴェイユは他の子供達と別れの挨拶をしていた。

 

「エヴェイユちゃん大丈夫?寂しくない?」

 

「優しいお姉ちゃん達がいるから平気だよ!ノエルおねえちゃんよろしくね!」

 

「ノエル、お姉ちゃん......?ねえ、エヴェイユちゃん、もう一回あたしのこと呼んでくれる?」

 

「ノエルお姉ちゃんっ!!」

 

「ぐはっ!こ、これは...味わったことのない強力な一撃だよ......」

ノエルは胸に銃弾を受けたように演技をしてうつむく。

 

「ノエルお姉ちゃん?どうしたの?状態異常になっちゃった?」

エヴェイユは不可解な行動をするノエルに近づいて下から顔を覗き込む。

 

「そうだね、状態異常の一種かもしれないね・・・エヴェイユちゃん、食べたいものある?何でも奢っちゃうよ!」

 

「本当!?わーい!ありがとう、ノエルお姉ちゃん楽しみにしてるね!」

 

 

 

「エヴェイユのことよろしくお願いしますね。彼女はあなた達の希望となるでしょう。」

ミリシオンが迎えのメンバー達に頭を下げる。

 

「事情は伺っています。エヴェイユさんは私たちが責任を持って守ります。」

迎えで来ていたエリスが胸に手をあてた。

 

帰り際にプリエルがヴァイリに近づいてきた。

「今回、私は無力でした。みんなを守れるようになりたいです。状況が落ち着いたら私にも戦うことを教えていただければと思っています。」

 

「分かった。都合がつくようになったら教えてくれ。」

 

「ありがとうございます!足を引っ張らないように頑張ります。エヴェイユちゃん、みんなと少し離れちゃうけどお兄さん、お姉さんの言うことよく聞いてね。」

プリエルはしゃがんでエヴェイユと同じ高さになるとエヴェイユを抱きしめた。

 

「うん、分かった。プリエルちゃん、みんなー、またね!」

 

「ええ、あなた達に神のご加護があらんことを」

プリエルは十字をきってから手を振っていた。

 

こうしてエヴェイユはエンドワールド本部で過ごすことになった。プリエルもエヴェイユの様子を伺うのと、レベリングのためにエンドワールドに所属することになり、教会とギルドを行き来することになる。

 

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