エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
2023.7.7 10:00
エンドワールド ギルドホールエントランス
Side ヴァイリ
本部での雑務と今日の企画の準備のために俺はギルドホールまで来ていた
1層は軍の実効支配下になっているが転移門から大通り、ギルドホールまでの経路は不自由なく行き来できる状態になっていた。
赤い絨毯の敷かれている屋敷内を歩いていると探索班のアニエスと総務のキーナが口論していた。
「どうしてダメなのよ。安全マージンは取れてるんだから攻略に参加してもいいじゃない」
「いいえ、ダメよ。情報班の検証から40層はトラップ多すぎて非効率だから39層でレベリングすること。41層なら問題ないから次まで待ちなさい。」
「だから!私たちなら40層でも問題ないでしょ。私のチームならみんな看破と開錠スキル高いからいけるわ」
39層の階層ボスが倒され、40層が解放されたが、いつホープフルチャントの事件に巻き込まれるか分からないので俺と本部との相談の結果、40層へ入ることはギルド内で全面禁止となった。
そんな彼女らの横を禁止提案した張本人たる俺が通ると厄介に巻き込まれそうなので、通路を迂回して会議室へ向かう。2日に1回のペースになっている授業の資料作りや、ギルドで営業している店の物販品目の更新などそれぞれの担当と相談しながらタスクを処理していった。
16:00
今日分の仕事が終わりエントランスのソファで会議の参加者たちと紅茶を飲みながら休憩する。
「22層の主街区から南に行ったところにある村にプレイヤーのレストランがあってね、そこの料理がNPCのレストランなんて比べ物にならないくらいおいしいんだよ」
「確かにあそこの料理は美味しかった。さらに食事後にバフがつくからダンジョン探索前にも活用できそうだ。」
「我の家も料理屋を営んでいる。一度は行ってみたいものであるな」
「金平糖とか和菓子も作ってもらえるでしょうか?今度私も連れてってください」
「私もバフシステムを検証しているので是非その料理を作っているプレイヤーと話をしてみたいですね。紹介して欲しいものです。」
俺とクロンが一緒に行ったレストランの話をすると、パウ、アプリル、イナーシャもそのレストランに興味を持ったようだ。あそこのレストランの店主、一人称がアタイとか変わっていたな。
そんな話をしていると、ギルドホールの扉を勢いよく開けてエリスが駆け込んできた。
「ヴァイリさん、七夕限定のクエストが見つかったんですよ。皆さんで行ってみませんか?」
エリスが駆け寄ってきて街で配られている七夕のビラを見せてくる。いつもよりテンションが高めだった。
「ああ、そのことなんだが今日は冒険よりも大切なことがあるんだ」
「え?なんでしょうか」
パァン、パァン
柱や家具の物陰からメンバーが顔を出してきてクラッカーを鳴らす。
『ハッピーバースデー、エリス』
「誕生日おめでとー」 「いつもお疲れ様―」
スタンバイしていたメンバーがそれぞれエリスに祝いの言葉をかける。
「あーはは、そういえば私の誕生日でしたね。すっかり忘れてましたよ・・・」
エリスは自分の誕生日を忘れていたようで頭を掻きながら照れ笑いをする。
「俺も含めてみんなお世話になっているからね。ずっとあちこち動き回って貢献してもらっているんだから今日くらいはゆっくりしよう。」
「みなさん、私のためにこんなに盛大に祝ってもらえるなんて。ううっ・・・ぐすっ・・・ひっく・・・うぇぇぇぇんっ!ありがとうございます!」
「エリスが泣きながらお礼を言っている!?」
エリスがいきなり泣き出してしまってノエルが驚いてしまう。
「私は・・・私は・・・皆さんに厳しく指導しているのに、こんな暖かくお祝いされるとは思ってもいなかったのでつい、嬉しくて・・・」
「泣かないでよ、エリス。あとこれは私たちのお礼の気持ちだよ!」
ノエルがジャーンと言いながら向いた先にはウェディングケーキのように巨大なケーキが用意されていた。
ケーキが切り分けられ、テーブルをいくつか設置して立食パーティーのようになった。
「今日は私のために祝っていただいてありがとうございます!これからも、ナビゲーターとしてしっかりみなさんを支えていきますからね!」
エリスの決意表明にグラスが一斉に揚がり乾杯された。
エントランスに笹が立てられて、〈レベル早くあがりますように〉〈レアドロ落ちますように〉〈早く現実に帰れますように〉など、メンバーそれぞれ短冊に願い事が書かれていった。
デス・ゲームの中での憂さ晴らしもつかの間、自分たちがどのような境遇にいるかを思い知らされる事件が直後に起こるとも知らずに
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21:00 七夕イベント フィールド クエスト発生地点
七夕限定クエストの情報を聞きつけたプレイヤーが20人くらい集まってきていた。限定アイテムに期待してやってきたパーティーや七夕というロマン求めて来たカップルのプレイヤーなどがいた。
そんな中、フードを被った20人くらいの集団が新たにやってくる。既に来ていたプレイヤーはどこかの大手ギルドが身元を隠して攻略しに来たものではないかと訝しげに見る。
フードの集団がクエスト地点のところへ到着するとその中の一人が呟いた。
「イッツ・ショウ・タイム」
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Side ヴァイリ
2023.7.8 ギルドホール 執務室
〈血の七夕 イベント地点をPK集団が襲撃〉
翌日朝刊に衝撃の事件が伝達される。ウィークリーアルゴの号外として各層の市街区に拡散されていた。
「七夕の天の川見物を外でやってたプレイヤーがPK集団に襲撃され20人死んだ。それを垂れ込みしたのは殺人犯本人達、ラフィンコフィンと名乗ったそうだ。」
見出しを読み上げた後、席に座っているミルローゼがオフィスデスクに新聞を乱雑に落とす。
「このタイミングでくるとは正直俺も驚いています。予定より5ヶ月も早く事を起こすとは」
「お前の予測では年末の犯行ではなかったのか。」
「攻略も早めのペースで進んでいるので、彼らも強い装備を手に入れやすくなって決行したものと考えられます。少人数でのフィールド活動は避けるようギルド内で徹底させるべきです。」
「分かっている。それよりもエリスはどうしている?」
「彼女は宿の部屋に引きこもっていますね。まだ出てくる様子はありません。」
「早めに引きずり出せ。彼女があのザマではギルド内の士気も下がる」
「承知しました。手は打ってありますのでもうしばらくお待ちください」
俺は一礼すると執務室を出て宿に向かった。
25層 宿屋
コンコンコン
「エリスー、大丈夫―?サンドウィッチ作ってきたよー。激辛素材は抜いてあるからー」
俺が宿屋に戻るとノエルがエリスの部屋の前にいた。
「ごめんなさい、ノエル。今は一人にさせてください」
ノエルがエリスの泊まっている部屋をノックして声をかけるが出てくる様子はない。
「どうしよう、エリスが部屋から出てこないよ」
俺に気づいたノエルはそわそわした様子だった。
「ノエル、今はそっとしといてあげよう。あとはリーナさんに任せて」
エリスは自らが参加しようとしていた七夕イベントで死者が出たことですぐ身近に死があることを感じてしまい、ふさぎ込んでしまった。
宿の階段を降りるとリーナさんが果物の入ったバスケットを持ってきていた。俺がお願いしてお見舞いに来てもらうよう頼んでいた。
「こんにちはヴァイリ君、ノエルちゃん。エリスちゃんはいる?」
「こんにちは、リーナさん。声かけると反応はありますが部屋からは出てきませんね。」
「あら、そうなの。せっかく果物持ってきたからちょっと寄ってくるね。」
「お願いします。リーナさん」
「いいのよ、困ったときはお互い様ってことで」
俺が頭を下げた後、リーナさんは階段を登っていった。
Side エリス
私はベッドの上でタオルケットを頭から被ったままうずくまっていた。
座っているベッドの傍らにはPK事件の一面記事が置いてある。私の見つけてきた七夕イベントの場所で殺人事件が起きた。もし、皆さんが誕生日パーティーを開催せずに私と一緒に七夕イベントに参加していたら・・・
ただ自分の不注意さと情けなさばかりが募っていっていた。今はヴァイリさんやノエルにも顔向けできない。
この世界でのプレイヤーキル、いわば殺人。ゲームなのに人が死んでいくなんてどうかしている。次に死ぬのは私かも知れない。
「エリスちゃん、起きてる?」
ドアからリーナさんの声が聞こえてきた。ソードアートオンライン以前からお世話になっている方なので私は部屋のドアを開けた。
「リーナさん・・・」
「こんにちは、エリスちゃん。よかった、ドア開けてくれて。フルーツ持ってきたから一緒に食べましょう。」
リーナさんは持って来ていただいた果物をテーブルの上に置き、包丁で皮をむいていく。私はリーナさんの反対側の椅子に腰掛ける。
「危うく皆さんを命の危険にさらすところになってしまいました」
「誰もこんな事件が起こるなんて知らなかったわ。殺された人たちのことは可愛そうだけれどエリスちゃんが気に病むことじゃないのは確かだから」
「私、皆さんを危ない目に合わせるところでした・・・」
「大丈夫よ。今のエリスちゃんはみんなの頼れるお姉さんなんだから。皆んなエリスちゃんのことが好きだから誕生日会だって開いたのよ?私としては“灼熱の旋風”としてやんちゃしてたエリスちゃんも好きだけど」
「リーナさん、ストップ!やめてください。あのころの未熟な私を蒸し返さないでください!」
私の黒歴史を蒸し返されてしまって思いがけず止めにかかる。
「ふふふ、良かった。エリスちゃんがまた元気になってくれて」
「え、あ」
私のとぼけた声に微笑みながらリーナさんは皮をむいた果物に楊枝を刺して私に差し出してくれる。
「やっぱりエリスちゃんは元気なほうが合っているわ、ほら食べてみて。」
リーナさんが切り分けてくれた果物を受け取り、ひとかじりする。口の中に甘酸っぱさが広がりなんだか元気が出てくる。
「私、100層攻略します。リーナさんもヴァイリさん達も全員生きて現実に帰りますから」
「頑張ってね、エリスちゃん。私たちもできる限り手助けするから」
「ありがとうございます、リーナさん。皆さんが待っているので行ってきます。」
リーナさんの応援を背に私はマントを羽織り、宿の部屋の扉を飛び出した。