エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
2023.8.18
25層 主街区 ギルトシュタイン
9:00
朝早くから街の中央の転移門前広場には慌ただしさがあった。NPCの大工が木材を運び、櫓状に組み立てていく。トントントンと金槌で釘を打つ音が響く。
プレイヤー達も広場に集まり、鍋や鉄板を運び込んでいく。
「うわぁ、街にたくさん人がいる。なんだか活気あるね。何があるのかな?」
「聞いたところによると今日はお祭りがあるらしいです」
モンスター狩りの為に転移門前広場で待ち合わせをしていたノエルとエリスが広場の光景について話す。
「お祭り?お祭りって屋台がたくさん出るあのお祭りのこと?」
「期間限定でNPCがお祭りのような特別なお店を開く、という情報が流れてたんですよ。NPCがお祭りをやるならと大手ギルドと生産職プレイヤーの組合も人を募って、お祭りをやることになったんです。私たちのギルドも参加しますよ。」
エリスが指さした先には屋台を組み立てているメンバーの姿があった。
「機材よーし、食材よーし。今日のみんなの頑張り次第で装備の更新予算もできるからどんどん稼いでいこう!エンドワールド、ファイトー!」
『オー!』
アルシエが屋台で売り子をするメンバーを集めて発破をかけていた。
「なるほどぉ、それでみんな忙しそうに、お祭りの準備をしてるんだね」
「あ、エリスちゃんたち、ここにいたのね。見つかってよかったわ」
そこに、祭りの出店の準備をしていたリーナが来る。
「リーナさん、こんにちは。どうしたんですか?」
「エリスちゃんたちに頼みごとがあって、探していたのよ。このお祭りにね、金魚すくいのお店も出店されるらしいの。その金魚がどうしても欲しいって言う子がいてね。今日限定で街の周りのモンスターが落とすポイが必要なの」
「モンスターが落とすポイで金魚すくいですか」
「やろうよ、エリス!あたし、金魚すくいやってみたい」
ノエルは早速、やる気になっていた。
「そうですね。せっかくのイベントですし、みなさんに連絡してみますね」
リーナからの依頼にエリスとノエルはメンバーを募ってギルトシュタイン周辺のモンスター狩りを始めた。
17:00
転移門広場中央には祭りやぐらが建てられ、数人のNPC達が締め太鼓、鳴り子などの楽器で祭り囃子が奏でられていた。
やぐらから放射状に、そして広場に繋がっている通りに沿って提灯が連なって灯されていた。
屋台エリア
屋台設置可能エリアには生産職がこぞって自らの自信作を並べていたり、お祭り定番の食べ物の店を出していた。お祭りにやってきていたプレイヤー達は掘り出し物を探し出したり、リアルと同じ祭りの空気を味わうために買い食いしていた。
セツカとアプリルとエリナが浴衣に着替えて夏の風物詩である浴衣、うちわを販売する。
「お祭りにぴったりの浴衣いかがですか?防御、耐久性も優れた実用的な装備です。」
「刺繍にこだわった一点ものもあります、是非見ていってくださーい」
セツカとアプリルは売り物の浴衣に着替えて実演することで客引きをする。
「あなただったらこのうちわの絵柄なんていかがかしら?」
エリナはうちわに興味を示しているお客に風鈴の絵柄のうちわをおすすめする。
プレイヤーが集まって試着してみたり、うちわを手にとって絵柄を眺めたりしていた。
人だかりは食品の屋台にも出来ていた。
「たこやき、からしマヨネーズですね、承りました。少々お待ちくださいませ」
アグライアがたこ焼き屋の屋台でマヨネーズの希望を聞く。
「注文承りやしたー!もう少し待っててねー」
鉄板ではヒビキが器用にたこ焼きをクルクル転がしながら作っていく。
「焼きそば3つで1500コルです」
アーチがウィンドウを操作して売買取引を成立する。
「かき氷メロンお待ちのお客様、おまたせしましたー!」
ソラナがカップに入った緑色のかき氷を手渡す。
エンドワールドは需品班と企画班を中心に料理スキルを上げているメンバーによって様々な露店を建てていた。
「光る結晶ソーダどうぞー」
サンタ姿のメリーが虹色に光る液体の入った容器を渡す。
フラスコの中に採掘アイテムのレア度コモンの〈光る石〉を入れたソーダだった。ストローはハート型や星型に折り曲げられ、中の〈光る石〉は夜であることもあり、よく光って見える。
「いやー、稼げるねえ。あっはっは!採掘繰り返しても何の効果もない石ころばっかり出てたけど使い道あるじゃない」
屋台のバックヤードでは現金箱をインベントリから実体化していたアルシエがご満悦になっていた。
カラン、コロン
下駄を鳴らしながら銀髪の二人が屋台通りを歩いていた。
「ルチアとお揃いの浴衣が着られてよかったわ」
「ふふ、姉さんとこうやって楽しく一緒にお祭り歩けるなんて珍しいね」
姉妹はどちらも銀を基調とした布地に、アネットはコスモス柄、ルチアはパンジー柄の浴衣を着ていた。
「向こうだと浴衣はすぐに汚れていたからね。VRなら転んでも汚れないのは良いことね」
「姉さんの場合、お祭りに浴衣着てくるとすぐにジュースをこぼされたり、近くのかき氷が飛び散ってきたり、お好み焼きが吹っ飛んできたりしてたわよね」
「うう・・・あんまりそういうことは思い出さないで。わたしだって人ごみは苦手だけどお祭りは楽しみにしているわ」
「あっ、姉さん。あのわたあめ欲しい!」
姉妹は屋台のわたあめを買う。
「え、何このわたあめ。全然ちぎれてくれないんだけど。こういうところはリアルじゃないのね。」
ルチアはわたあめにかぶりつく。わたあめは何故かゴムのように弾力があり、歯を立てても噛み切れなかった。
「ルチア、わたあめは逃げないわ。落ち着いて食べなさい。このあと花火も打ち上がるみたいね。見に行きましょうか」
「うん!綺麗に見たいからなるべく一番前のほうの場所取りしよう。いこう、姉さん」
姉妹は花火会場へと向かっていった。
───射的場───
パァン、パァン
バタン、バタン
カウカウやラグーラビットの書かれている的が次々と倒れていく。
「流石に射撃は上手いな。元警官なだけある」
銃の置いてある台の上にもたれかかりながらクロンは感心する。
「前世携帯してたのは拳銃だよ。高校の頃、ビームライフルもやってたから感覚はそっちに近いかも」
ヴァイリはライフル型の射的銃を台の上に置く。
「わたしのほうが多くアイテムを取れたじゃない。この勝負はわたしの勝ちよ」
「そんな小さいアイテムなんて誰でも輪を入れられるわよ。私のほうが値段高いアイテムを取れたのよ」
「ふぬぬ」
「ぐぬぬ」
ヴァイリ達と反対側の屋台ではカーラとエクレールが輪投げ屋の前でお互い火花を散らしていた。
「あの二人はなにしているんだ」
ヴァイリはジト目になっていがみ合っている二人を見る。
「屋台のゲームで勝負事をしているようだが決着がつかないらしい」
クロンが解説する。
「全く仲が悪いんだかいいんだか。」
ヒュルルルルルル パーン
ギルトシュタインの空に打ち上げ花火が上がり出す。ヴァイリとクロンも花火の上がる空を見上げる。
「たーまやー」
ヴァイリは右手を口元に当てて掛け声を出す。
「リアルに劣らぬ出来だな」
「もう花火が上がる時間になってたんだな。夕飯まだだし屋台でも行ってみるか」
「貴方のおごりなら大歓迎だ」
「そこはちゃっかりしてんなぁ。まあいいよ、何でも奢るぞ」
ヴァイリとクロンは食べ物屋台へと向かっていった。