エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
そろそろ原作空白期が終わって原作ストーリーに戻ってこれそうです
2023.10.31
Side ヴァイリ
25層の解放隊の失敗を教訓に攻略組は50層攻略を慎重に行っていた。迷宮区までは辿り着いているがトラップが多く、死者も既に出ているという。転移門開放は10月の始めだったのでそろそろ1ヶ月近く経過する。ヒースクリフ先生どうせ死なないんだからさっさとボス倒してくればいいのに。プレイヤーの成長を待っているからあまり干渉しないつもりなんだろうけど。
エンドワールドは攻略組へ装備を売ったり、情報を売ったりしているので攻略には貢献している。階層ボス戦という最大の死のリスクはゲーム廃人たちに押し付けるに限る。
49層 ミュージェン
19:00
ハロウィンシーズンなこともあってか街灯はジャックランタンのデザインの電球に変わり、コウモリのジョイントバナーが建物の屋根から通りを挟んで吊るされている。
ハロウィンの季節装備が並ぶ露店の集まる転移門広場の頭上には立派な満月が昇っていた。
広場で一段高くなった円形ステージに1人の黒ずくめの少女と2人の魔女が駆け上がる。
『ハッピーハロウィーン!』
3人が声を揃える。
「私たちが魔の世界へご招待するわ!」
黒いドレスを着たチェルナが芝居がかった口調で宣言する。
「アタシ達の魔王さまも今日という日が迎えられてご満悦だぞ。階層もあと半分、ゲームクリアが見えてきたぞ」
自称魔女のリリアも高らかにステージ上で宣言する。ミルローゼの自称魔王もギルド内外問わず浸透してきていた。あのいつも堂々としている姿勢が組織を取りまとめるのにも他のギルドとの交渉事にも重宝している。現実離れした死と隣り合わせの恐怖にまみれた世界での縋るべき指導者の存在は大きい。最近ではギルドの外部でも魔王様と呼ばれる声もある。
「今日はみんなを応援するために《En-Chant》来てまーす!曲は〈きゅんっ!ヴァンパイアガール〉!」
シュリーの紹介に広報班とレインで結成されたアイドルユニットの《En-Chant》(エンチャント)が壇上に上がる。それと同時に軽快な音楽が流れ始める。ステージの裏では楽器を持ったメンバーが演奏していた。楽譜を提供したのは俺とナギサだ。
「いっえーい、みんな待ってたー?」
センターに立ったイーリスがウインクをして
「プリヴィエート!」
レインが両手で手を振る。《En-Chant》メンバーは需品班の作ったマイディアヴァンパイア似の衣装を着ている。
『わあぁぁぁ!』
集まってたファンがサインライトに似たカラフルな光る棒をを振って応える。オタク受けしそうな選曲とパフォーマンスの甲斐あってかどんどんユニットのファンの人数が増えている。
曲が歌い終わると《チャント》スキルが発動して聴衆にバフ効果が付く。STR,VIT,DEX,AGIアップ、リジェネ(小)、毒耐性と六重にかかる。《En-Chant》がそれぞれ違ったチャントの派生スキルを使用するためバフが重ね掛けされる仕組みになっている。
「よーし、せっかくバフ付いてるしひと狩りしてこようか」
バフがついたことをいいことにフィールドに出て行くプレイヤーたちもいる。
「はーい、エンチャントのシングル記録結晶、1個1000コルだよー」
アルシエがエンチャントの歌をダビングした記録結晶を立売箱に入れてライブの終わった会場を歩き回る。なんでも商売に繋げる彼女の手腕はギルドの財源確保によく貢献している。
広場でライブが開かれるのはもちろんただの慈善事業ではなく露店の客寄せの為だ。事前にライブを開催することを告知していたので集まりは良い。
仮装はカボチャやコウモリの柄がついただけの服を着るカジュアルなものから魔女、ゾンビ、ヴァンパイア、マミー、デビル、狼、猫、天狗、キョンシーなど凝った仮装まで準備してきていた人もいた。
「ヴァイリ、その格好は・・・」
ライブが終わって、事前に合流を予定していたクロンと会う。
「怖いだろう?結構メイクに力入れてみたんだ」
「怖い見た目だが・・・それはお化けなのか?」
クロンはジト目になり冷静に突っ込んでくる。俺の仮装はピエロだった。赤いアフロの鬘に目元を黒く、口周りは真っ赤なオーバーマウスのホラー映画で出てくるタイプのキツメのメイクをしていた。
「確かに怖いというよりは不気味さが強く出ているかも。」
対してクロンは狐面をつけて白い着物の和風コスを着ていた。できれば狐耳のカチューシャあたりつけて欲しかったな。
「おー、みんな盛り上がってるな、もぐもぐ」
テレサは白いゴーストのポンチョを頭からかぶってお菓子を早速食べていた。ゴーストの口には牙が生えていて下が飛び出していた。
「それってマリオのテレサをデザインしている?」
「さすがヴァイリだな。名前つながりでやってみた、もぐもぐ」
テレサは喋っている間も集めたお菓子を手提げのキャンディバッグからつまんで食べている。彼女の場合クッキーモンスターに仮装するほうがあっているかもしれない。
「テレサの作物のおかげで露店の食べ物レパートリーも増えたから他の生産職の店より客数稼げてるぞ。」
テレサの22層の畑でも収穫期を迎えて、今日のパーティーでも作物が料理に使われていた。エンドワールドの店にはかぼちゃジュースやカエル型のチョコなど並んでいる。
「わたしが食べたいものを作っただけだぞ。てなわけでヴァイリの配ってるお菓子も欲しいからヴァイリ、トリック・オア・トリート」
テレサが手の空いた左手を差し出してきた。
「ではイタズラされたくないのでこのお菓子を」
テレサの左手に透明な包み紙に包まれたホワイトチョコレートを4つ乗せる。
「うん?ホワイトチョコか」
テレサは首をかしげる。
「ギルドの露店にも並んでる新商品のお菓子だ。」
テレサに渡したお菓子の正体は口に入れるとパチパチ弾ける爆発ボンボン(ノエル・リリア合作)。元ネタはハリーポッターシリーズの魔法のお菓子だろう。お菓子をあげる側がイタズラとして仕掛けるには調度いい物だ。
「まあいいや。後で食べてみよう。もっとまわってお菓子を集めてくる」
そう言ってテレサは俺たちから離れてお菓子をもらえるNPC達のほうへ向かっていった。
「クロンも爆発ボンボン食べる?」
「・・・遠慮しておく。まともなお菓子は無いのか?」
「うーん、じゃあこの羽ペン型のキャンディ、普通のフルーツ味の飴だから」
俺は別のお菓子を取り出す。ハロウィン用に型どったタネも仕掛けもないキャンディだ。
「それならもらっておこう」
クロンに羽ペンキャンディを各色5種類渡す。
「ヴァイリさん、トリックオアトリート!」
「ヴァイリ、トリックオアトリート…あ、でも悪戯はしないから、」
ルチアとアネットはお揃いでヴァンパイアの格好をしていた。付け八重歯に衣装の背中からはコウモリの羽が生えている。
「では二人にもホワイトチョコを」
アネットとルチアの手にそれぞれ4個ずつ爆発ボンボンを乗せていく。クロン、またか…みたいな顔しないでくれ。ささやかなイタズラするのが俺の楽しみなんだから。
───
Side 三人称
「ついにこの季節がやってきた!イタズラし放題の素晴らしい日、ハロウィン!この日のために温めておいたとびっきりのイタズラを披露するよ!トリックオアトリート!激辛クッキーを食べてくれなきゃイタズラしちゃうぞ?」
ノエルは自らの畑の区画で育ったおばけかぼちゃでカゴや帽子を作り、今日の衣装を身に纏っていた。
「お菓子を欲しがらないで、激辛クッキーを食べてって……どっちもイタズラじゃないですか!」
クッキーを手渡されたエリスはジャックランタンをイメージした仮装をしていた。
「イエス!だからあたしの場合はトリックオアトリックだね!さあエリス!イタズラさせてよ!」
「お断りします」
エリスは笑顔で即答した。
「がーん!じゃあ適当にクッキーを配っちゃうぞ!」
ノエルは街を歩いているプレイヤーに向かっていった。
「クッキーどうぞ♪」
ノエルは黒いコートを着た少年にクッキーを渡す。
「ノエル!何やってるんですか迷惑行為はいけませ・・・・!」
ノエルを追いかけていたエリスはクッキーを渡されたプレイヤーを見て驚く。
「ああ、ありがとう・・・美味いな」
クッキーを受け取った少年はやつれた顔をしていたがひとかじりするとノエルにお礼を言い、そのままもうひとかじりしていた。
「んー?渡すクッキー間違えちゃったかな?確認しなきゃ(パクッ)辛~!水、水、水!」
ノエルは自ら作った激辛クッキーを食べてのたうちまわっている間にクッキーをもらったプレイヤーは魂の抜けたような足取りでフラフラと歩いて行ってしまった。彼こそが本物の幽霊のように。
「馬鹿なことしているからですよ。はい」
エリスがノエルに水筒を渡す。
「ひー、ひー、ごくごく、ぷはー、生き返ったー」
ノエルは勢いよく水筒を飲み干した。
「さっきの黒いコート、あの人は・・・」
エリスは去っていった少年のほうへ振り向く。既に姿は消えていたが彼のことはぽつりぽつりと噂が流れているのを耳にする。一層ボス戦で同じパーティを組んでからは接する機会は無かったが悪名つきながらも最前線で戦っている彼と今の自分を比較すると、果たしてこのままギルドの強化だけ専念していればいいのかと疑問に思ってしまった。
ゲームは折り返し地点を迎えるとともに開始から1年が過ぎようとしていた。
エリスの仮装はメモデフのハロウィンアリスをイメージ