エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
2024.4.14
Side ヴァイリ
75層 コリニア
開通したばかりの75層、主街区、コリニアは古代ローマ風の街並みが広がっていた。
転移するやいなや転移門広場には大勢のプレイヤーが集まっているのが見えた。
74層クリア後、血盟騎士団団長ヒースクリフと黒のソロ、キリトがデュエルをするとウィークリーアルゴで号外が配られ、攻略組の見世物見たさに下層からもプレイヤーたちが押し寄せていた。
「おお、やってるやってる」
「攻略組同士の決闘となると人も集まるな」
左隣からクロンが辺りを見回しながら言う。
「どっちもユニークスキル持ちだしね。
後半は周りに聞こえないよう小声で囁く
「ん。」
クロンは短く返事をする。実はクロンも既にユニークスキルの一つ、《抜刀術》を取得していた。もともとリアルで居合術もしているから順当というところだろう。他のユニークスキル使いの事も気になるらしく、俺が誘う前にクロンから観戦を誘われた。
「まったく、こんなくだらないことに付き合わせるんじゃないよ」
俺の右隣で栗色の髪をツーサイドアップにした少女、エクレールは両手を頭の後ろで組み、文句を言っていた。いつもの鎧は外してカジュアルな服を着てた。
「エクレール、戦闘には滅多に出てこない神聖剣を間近で見ることができる絶好の機会なんだ。決して無駄にはならないと思うぞ。」
髪を紫色に染めて、一つ結びにしているエルミラが諌める。彼女も普段のごてごてした鎧はインベントリにしまって黒い普段着を着ている。
「聖騎士が勝たないとアスナ様があのゴキ○リに盗られてしまいます!これほど大事なデュエルなんてありませんわ!」
アスナの騎士団服を真似たセレンが声を荒らげる。アスナファンの彼女としては、面識もないキリトのことを邪険に扱っていた。普段の清廉さから考えられない単語が飛び出ている。
「うぅ、人が多くて酔ってしまいそうです・・・」
カチューシャをかけたボブカットのミーアは人の多さにくらくらして足元もふらついていた。
「うーん、わたしも人が多すぎるところはちょっと疲れちゃうな。早く座れるところに行って欲しいね」
ゴシック服をきたラーミルも疲れた顔をする。大勢のプレイヤー感情のデータ酔いがありそうだ。熱狂にあてられている。
「トッププレイヤーを見ても戦闘の参考にできるか微妙だなー」
ショートヘアのアミナは場違いじゃないかといった表情を浮かべていた。
「いつもギルド内だけで模擬戦してるからたまには外部のを見るのも勉強になるわよ」
アミナの隣にいたリリオが言う。俺が盾持ちのメンバーを中心に今回の観戦を誘った顔ぶれだった。
転移門広場にも接しているコロシアムには露店も並んで出ていた。もちろん、うちのギルドの系列の店も混ざっている。
コロシアム前まで来ると、入場チケット売り場には生ける伝説ヒースクリフVS二刀流の悪魔キリトと横断幕が垂れ下がっていた。
「席のチケットはここで売ってるよ!」
腹の出ている太った中年のおっさんがキャッシャーしながら声掛けをしていた。
「ボックス席2つで」
6人用のボックス席があったので2つチケットを購入する。
「おお!兄さん羽振りいいね!毎度おおきに~」
中年の騎士団員、ダイゼンがチケットを2枚渡す。
「兄さん、実は今回の試合は賭博もあるんだけど、どうでっか?」
ダイゼンは耳打ちしてから、テーブルの下からボードを取り出す。
ボードにはヒースクリフとキリトのオッズ比が書かれていた。ヒースクリフは1.2だったが迷うことなく選んだ。
「もちろんヒースクリフだ。」
ヒースクリフに俺自身の全資産の9割を投入する。悪いが強い方の味方だ。
「ほえ~、兄さんギャンブラーですなぁ。個人のベットでは一番大きい額でっせ。」
ダイゼンも引いていたが上限額をつけられる事なく賭けることができた。
「この賭け買ったも同然だな。よし、みんな食べたいものじゃんじゃん頼め」
「遠慮なんてしないわ。ブルーブルーケーキホール8号」
エクレールはこれみよがしに大サイズのケーキを注文する。
「じゃあ、ボクは火噴きコーン」
アミナもフードコートの売り場で注文していた
「あらかじめ言っておくが賭けを磨っても私は立替えない。コック・レーチカのうな重《松》」
クロンは俺に釘を刺しながらも、フードコートのメニュー表を指差す。エクレールのケーキより高いんですけど・・・
───コロシアム ボックス席
隣のボックス席ではエクレールが頼んだブルーブルーケーキが切り分けられていた。
「アスナ様はどこでしょうか」
競技場側の席を取ったセレンはキョロキョロとアスナを探していた。控え室の通路あたりにいるだろうから客席側からは見えないだろうが
俺のいるボックス席にはクロン、リリオ、ラーミルが同席していた。原作バレしている面子を選んでおいた。
「今回のデュエルでヒースクリフがボロを出すと?」
リリオがジュースを飲みながら闘技場を覗く。
「ああ、キリトの剣を捌ききれなくなったヒースクリフがゲームに干渉して動きにテコ入れするんだ。」
俺は双眼鏡を準備する。
「だから私も呼ばれたのね。変なシステムが働いてないか感知するために」
ラーミルはバケットに入っているポップコーンを掬って口に運ぶ。
『ご来場の皆様、お待たせしました。《神聖剣》を持つ聖騎士ヒースクリフ、《二刀流》の悪魔キリト。ユニークスキルを持った二人のプレイヤーのデュエルがただ今始まります』
アナウンスされたあと、赤い鎧をまとった騎士と黒ずくめの少年が闘技場に入ってくる。
おおおおおおおおおっ
闘技場を囲む客席から歓声が轟く。
ヒースクリフとキリトは闘技場の中央でふたつみっつ話を交えた後、デュエルのウィンドウが可視化されてカウントが始まる。
「よーし!やっちまえ、ヒースクリフ!ってクロン、黒エールは俺のだぞ」
ジョッキを3杯空にしたところで新しいのを掴もうとしたところ、クロンが4杯目の黒エールを取り上げる。
「ヴァイリ、前世の死因の一つはアルコール中毒だって自ら言ってたじゃないか。試合終わるまでにどれだけ飲むつもりだ」
「VR内はノーカン!人体には影響でないから」
俺はクロンが遠ざけたジョッキを必死に取り返そうと手を伸ばす。
「仮想なはずなのに・・・ヴァイリのは良くない波長ね・・・」
「まるで駄目な男の典型ってものね」
ラーミルとリリオがなんか言っているが酔いのデバフではっきりとは聞き取れなかった。
「アスナ様を独り占めしようとする間男をやっておしまいなさい、聖騎士!」
「セレンさん、落ち着いてください!」
「ちょっと、下段差あるから落ちちゃうって!」
隣のボックスでグラスの黒エールを半分位飲んだセレンが顔を赤くして席の仕切りから身を乗り出して叫んでいた。そんな彼女をミーアとアミナが左右から腕を掴んで抑えていた。
ピッ、ピッ、ピッ ビィー
カウントが0になると、キリトが二刀流を活かして連続で突いていく。しかし、ヒースクリフは全て盾で防ぎきる。この前の交流戦の時の見るローゼとの接待デュエルと違ってヒースクリフも真剣だ。
ヒースクリフも反撃で右手の剣でキリトを切り上げる。キリトの体が浮き上がり、着地点に合わせて盾で突く。
お互い連続技の応酬が続き、相手の身体を掠って少しずつHPバーが減っていく。決定打となる一撃はまだ出ていない。
「すごいわね・・・」
あまり戦闘に出てこないリリオも目の前の決闘に見入っている。
「らああああ!!」
キリトが吠えるとソードスキルの初動画見えた。二刀流のソードスキルの《スターバースト・ストリーム》だ。原作ではここで捌ききれずに仰け反ったヒースクリフがシステムのオーバーアシストを使う。
激しい連撃にヒースクリフも押されていく。
ふっ
ヒースクリフの口元が僅かに笑みをこぼしていたように見えた。
そして、キリトの剣がヒースクリフの盾を弾く。ヒースクリフは仰け反ることなく体を左回転にひねった。
次の振りが縦切りだったキリトのエリュシデータは空を切り、ガラ空きになった背中にヒースクリフは十字剣で一撃を入れる。
「えっ?」
予想だにしない展開に俺は酔いが一気に覚める。
「ちっきしょ!」
地に着いたキリトのほうもただ悔しそうな顔をしてるだけだった。
「ラーミル、なんか変なプログラムとか働いた形跡はないか?」
つい、俺はラーミルに確認する。
「無いわよ。ヒースクリフは実力で勝ってたわ」
ラーミルは首を振っていた。
地についていたキリトの元に閃光が駆け寄っていっていた。
「ムキーッ!あの黒ずくめ、アスナ様に気安く触っているなんて」
セレンが嫉妬していたがそれどころではない
ヒースクリフは勝ち誇った顔で観客席に手を振っていた。その後闘技場を後にして控え室の通路へと踵を返していった。
「有り金を溶かさずに済んで良かったな」
クロンは冗談交じりに言う。
「ああ、そうだが・・・原作と試合の流れが違う。」
「また原作か。黒の剣士が血盟騎士団に入ることに変わりないんだ。大した違いではないだろう。些細なことをあまり気にしすぎると禿げるぞ」
クロンは俺の原作論にまたかといったように呆れていた。
「禿げるのは困るが・・・ってそうじゃなくて!うーん」
物語はそこまで大きく違いはないはずなのにこの試合の展開の違いは俺の中になにか引っ掛かりを感じた。
原作、アニメ、ゲームとまた違ったシナリオの出現は大きな不安を生み出していた。
試合オッズは最終値がヒースクリフ1.14での払い戻しだった。まあそれなりに稼がせてもらった。