エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~   作:RipoD

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インテグラルファクターのギルド内で騒ぐ時の花火は楽しいですね
集合するときの目印にもなるし



54話 2024.4.25 75層ボス偵察

2024.4.25

11:00 75層 階層迷宮区

 

Side ヴァイリ

 

「やっと誰も踏み込んでない未知のエリアに入れるってわけね。燃えてきたー!」

叫んでいるのはアニエス。彼女の率いる探索班がボス部屋までのルートのMOBを排除していく。本部から75層偵察の募集がかけられた途端、アニエスから強い希望があり、班総出で参加している。

 

「今のうちに通りますよ」

トトナの班はボス偵察部隊のメンバーを護衛するように囲んで進んでいた。

 

アニエス、トトナの両班はどちらもレベル80超えのメンバーで揃っていた。

俺自身もレベルは82まで上げている。しかし、どちらにしろボス攻略の安全マージンを満たせてはいなかった。偵察だって危険すぎる。クオーターポイントなら尚更だ。

 

「はふっ、戦う手間が省けて退屈ね~」

 

「そう思うなら雑魚狩りに混ざってくればいいじゃないか」

 

「私はレベル低めだから遠慮しとくわ」

俺の隣ではレベル78のリリオが欠伸をしていた。HPバーは満タンだ。

 

護衛されているのは《チャント》スキル持ち、偵察用のアイテムを運ぶメンバーだ。

 

「ボス部屋見つけたよー!」

先行していたフィリアが遠くから叫んで手を振っていた。

 

 

ボス部屋前のセーフティゾーンまでたどり着いて、偵察の記録準備を皆始める。

ボス部屋の扉は両側の燭台の炎に不気味に照らされていた。

 

偵察の作戦内容はチャントのスキルでスカルリーパーをアクティブにして天井から釣ることができないかを試す。そのためにイディアやピコといった普段前線に出てこないメンバーも連れてきている。

 

「ボスが出てきて攻撃してくるようだったら俺とクロンが応戦する。その間に全員部屋の外で転移結晶を使って街に逃げる。クロン、練習通りで頼む」

 

「分かっている。必要になるとは思えないが」

クロンはいつもどおりの仏頂面である。

 

「まずは記録の準備だ。部屋の外から撮影する人は、映像記録結晶を起動してくれ。」

 

「はい、これでいい?」

リリオが結晶を一つ起動する。続いて記録係のカシューとイナーシャも一つずつ結晶を起動させる。

 

「よし、始めよう。4月25日、11時26分。75層ボス部屋前。これより偵察記録を始める。」

結晶に話しかけるように俺はレコードする。

 

 

ギィィィ

ボス部屋の扉を開けると部屋の中は光ひとつない真っ暗闇だった。

 

「花火の準備は?」

 

「できてるよ~」

ノエルが持ってきた花火を出す。

 

「部屋に撃ち込んでみて」

 

「ラジャー!」

ノエルはビシッと敬礼すると2つの花火に火をつけた。

 

ヒュルルルル ヒュルルルルル  パーン パーン バチバチバチ

 

打ち込まれた花火が破裂し、部屋を照らす。

 

「ボス部屋は円形のスペース。部屋の広さは野球グラウンドくらい。ボスの姿は今のところ確認できない。」

部屋の外から結晶で撮影しながらコメントを入れていく。

 

「起動した映像記録結晶をばら撒く。部屋の中央に行き過ぎると扉が閉まるから絶対行くなよ」

映像記録結晶を起動して80個くらい部屋に投げ入れる。これでスカルリーパーの動きが記録できればいいが・・・

 

「記録係は部屋の外で待機。記録は続けて。《チャント》係は〈死霊の呪詛〉唱う準備を」

〈死霊の呪詛〉はアンデッド系モンスターのヘイトを稼ぐ効果のあるスキルだ。スカルリーパーを釣ることができないか試すつもりだ。

 

数人で部屋の中に一歩入ってみる。ボス部屋の扉が閉じる前に部屋から避難するまでが計画だった。

 

「リノ、転位結晶試してみて」

 

「はいはーい。転位、コリニア!・・・やっぱりダメかー」

リノが転位結晶を試してみるが起動しなかった。原作通り結晶無効化エリアらしい。

 

「ヴァイリ、ボスモンスターはどこですか」

ボス部屋に入ってきたトトナが尋ねる

 

「天井に張り付いているはずだ。なんか照らすアイテム持ってないか?」

 

「はーい、ドドーンと特大花火あるよ。」

ノエルが両手で頭上に特大の打ち上げ花見を掲げていた

 

「じゃあ居眠りしているムカデの姿でも見てみるか。リリオ、部屋の外からなんとかしゃがんで天井映せないか」

 

「できるだけやってみるわ」

リリオはうつぶせになって映像記録結晶のレンズを上に向ける

 

「よーし、いっくよー」

ノエルが花火の導火線に点火する。

ジジジジジジ シュッ

ヒューーゥ   ドン!

花火が炸裂して天井に息を潜めていた骸骨のムカデが照らされる。花火の火の粉もパラパラとオブジェのように動いてない部屋の主に当たる。

 

「ガアアアアアアア!」

花火に照らされて、スカルリーパーの4つの目が光り、雄叫びをあげた。眠りを妨げた侵入者たちへ怒るように。

5本のHPバーが表示され、真っ黒なエネミーアイコンとボスの名前も可視化される。

 

「あっ、花火だけで釣れちゃうんですね・・・」

予想外の事態に俺自身も呆気に取られる。しらねーよ、ボスがアクティブに変わるギミックなんて・・・花火で釣れるのかよ

 

ズドドドドドド

スカルリーパーは無数の骨の足を天井から外しながら自然落下で落ちてきた。

 

ギイイイィィ

同時にボス部屋の扉が閉まり出す。

 

「逃げろ!部屋から出ろ!」

俺が叫ぶと、まだ扉のそばにいたメンバーが慌てて部屋の外へ向かう。

しかし骸骨の百足はその名のとおりおびただしい数の足を動かして急接近してくる。

 

「一撃は凌がないといけないな。クロン、タイミングよくパリィしないと二人共お陀仏だ。1拍子先に俺が受け止める。」

 

「心配ない、貴方のタイミングに合わせる。」

 

キシャアアア

スカルリーパーは右の大鎌を振りかぶる。

 

「行くぞ」

「うむ」

 

俺は一足先に盾のソードスキルを準備する。

 

シュッ

骸骨の大ムカデは鎌を横薙ぎに振り払ってきた。

 

ガギィン キギィン

 

「うわっ!」

「ぐっ!」 

 

スカルリーパーの鎌を二人で受け止めたが、俺もクロンもその勢いに体が弾き飛ばされる。

しかし、飛ばされた方向は運良くも部屋の出入り口だった。

 

クロンと共にボス部屋外にズザザザザッと地面と摩擦しながら着地する。

 

ガァアァァァアアアァァァ

スカルリーパーのターゲティングは続いていてボス部屋入口まで迫る。

 

ガァン!

しかし、両手鎌の恐ろしい速さの縦振りは閉じていく扉に遮られた。

扉はイモータルオブジェクトで攻撃は貫通しなかった。

 

「助かった・・・」

ギギギと鈍い音をしながら扉は完全に閉まった。

俺は頭だけ上げて扉が問題なく閉じたのを確認するとまたぐでーっと地面に寝転がった。

 

「クロン、無事か?」

 

「ああ、なんとか。まさか練習してた同時パリィを本当に使うとは思ってなかったが」

クロンはスカートをパン、パンとはたきながら立ち上がる

彼女は87レベルだが、紙装甲なので一撃でHPバーは1/3のイエローゾーンまでしか残ってない。もう少しでレッドゾーンに入るところだ。

 

俺も盾持ちのタンクだが盾のスキルで受け止めたにも拘らずHPバーは半減してイエローゾーンだった。

 

直撃なら言わずもがな、単独でパリィしても一撃死する危険がある。

まず、俺の盾で受け止めた後、減衰した攻撃をクロンがタイミング良く受け止める。ダメージ量は何とか計算に近い数字でおさまった。

 

「はぁ、盾はもうダメか」

俺の装備していた盾は真っ二つ寸前の切り傷が付いていて、修復不可のウィンドウが出た直後にパリンと光の粒子になって霧散した。

 

ガガン!ガガン!

ガアアアァァアアア!

 

 

扉の向こうからはまだスカルリーパーの咆哮と、鎌のぶつかる音が響いていた。

その場にいた多くのメンバーは恐ろしいボスの存在に顔が青ざめていて声ひとつ出せてなかった。通常モンスターに毛が生えたような2層の牛ボス達の比ではない。

 

街へすぐ逃げる手筈だったのに、皆顔面蒼白になって、へたりこんでいたり怯えて動けなくなっている。スカルリーパーが扉吹っ飛ばして部屋から出てこれる仕様だったらみんな死んでいる。

 

「はは、なんなのよあいつ」

流石のアニエスも額から冷や汗が流れ、乾いた笑いが出ていた。

 

「うえーん、怖かったぁ。ヴァイリとクロンが死んじゃうと思ったじゃない」

前線にあまり出てこないイディア達は泣き出していた。

 

 

「扉は開かないし、部屋の中にはまだあのムカデがいるようだけど・・・どうやって部屋の中の記録結晶を回収するの?」

リリオから質問される。

 

「所有アイテム全オブジェクト化すれば取れるさ」

ウィンドウ操作をして《所有アイテム全オブジェクト化》を選ぶ

 

ドサドサドサッ

結晶以外の物も積み上がっていくが、またストレージへ戻していく。残った結晶は30個くらいだった。

 

 

「あーあ、半分以上アイツに踏み潰されたな。というか結晶無効化って記録結晶も無効になるのかよ」

残念なことに投げ入れた記録結晶はボス部屋に入る直前までの映像までしか残っていなかった。部屋の中に転がっていた時の映像は記録できていない。

 

「結局、ボスの姿を映せてるのは部屋の外で記録してたこの3つの結晶だけね。」

 

「それでも、ボス攻略には貴重な情報だ」

 

「で、アレを倒すにはどうすればいいんだ?」

『『『えぇ・・・』』』

クロンが真顔で聞いてくる。下手すれば死んでいたのにまだ倒そうとする気でいやがる。周りも何言っているんだこいつといった視線を向けて若干引いている。

 

「まだアレと戦う気あんのか・・・もう一合しただけで十分だろ。85レベル以上でプレイヤー揃えてからタンクが複数人で鎌をパリィして、アタッカーが側面からダメージ与えるしかないな」

 

「ソロ攻略は?」

 

「無茶言うな!デスゲームじゃないときにやれ!」

クロンの場合冗談ではなくて本気で考えているからタチが悪い。

 

 

 

魔王城に帰ってから、録画された映像は別の結晶にもダビングされ、本部を通して血盟騎士団に提出された。

 

俺たちが持ち帰った映像を見た攻略組はボスの攻撃力の高さに驚き、複数人数で大鎌を同時にパリィする訓練を始めだした。新しい戦術習得のために75層ボス攻略に1週間以上の準備期間を設けることになった。

 

ついでにボス部屋前に座標をロックしたコリドークリスタルも血盟騎士団に売りつけた。

 




扉先輩渾身のガード
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