エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
アニメ ビーストウォーズ2よりGet my Future
h ttps://www.youtube.com/watch?v=fWoAjoWBffs
エリスやティールに合っていそうな曲
ヴァイリの転生、原作バレしているメンバーおさらい
本部
ミルローゼ カスミ アンジェラ リリオ キーナ ベティ アルシエ ラーミル
その他
トトナ リーネ ラーチェ クロン
計12名
2024.5.6
10:00
side 3人称
魔王城 会議室
攻略組が翌日に75層ボス攻略を予定している頃、エンドワールドでは密室での会議が開かれていた。
会議室の外には縦書きで[途中入退室禁止]の張り紙が貼られ、扉の前にはリーネが槍を地面に突き立てながら警備をしていた。
会議室内にはヴァイリから『原作』のことを聞いているメンバーが揃っていた。
「明日でうまくいけば終わりなんだな?」
中央の椅子に座るミルローゼがヴァイリに確認する。
「75層でキリトがヒースクリフの正体に気づいて、デュエルをする。そしてキリトが勝ってゲームクリアになるのが原作のシナリオです。」
「その原作通りいかなかったら?」
眼鏡の位置を直しながらアンジェラが聞く。
「手元の資料どおり、ゲーム版では100層まで行ってヒースクリフを倒すシナリオだったんで。もし75層以降も続くとしたら、明日は76層からは下層に降りれなくなるバグが起こって、探索班のフィリアが失踪するという流れです。」
ヴァイリは書類をめくって説明する。
「・・・どうかな。この通りになると思うか」
ミルローゼは左右に目配せする。
「ヴァイリの予想通りにはならないでしょうね」
リリオが首を横に振る。
「おいおい、リリオさんや。スカルリーパーの偵察は原作知識が役立っただろ。わざわざついてきてちゃんとその目で見たじゃないか」
ヴァイリが抗議する。
「確かにあなたの言う通りのボスだったけれど、本来75層ボスは11月頃に討伐される予定でしょ?今は5月。流れは原作からは外れたわ」
「時間は早いかもしれないが、流れ自体はそこまで変わってないぞ。ラーチェ、黒の剣士と閃光は小さい子連れたあと22層で新婚生活していたんだろう?」
「ああ、サーシャと教会の子がまた軍の恐喝にあったようだな。地下ダンジョンから帰ってきたミリシオンが、謝罪しに来たユリエールをギロチンにかけようとした事以外はお前の言う通りの流れだ。事件が起きた直後にプリエルが様子を見に行ってミリシオンを止めに入ってなければどうなっていたことやら」
恐喝事件直後に教会に一度戻ったプリエルのレポートをラーチェは持ち上げる。
「・・・ほら、ほぼシナリオ通りです。」(教会の地下になんで拷問室があるんだよ)
ヴァイリは冷や汗を垂らしながら言う。
「たわけが。我々が既に75層偵察をしてしまったではないか。」
ミルローゼは呆れていた。
「75層の偵察隊は全滅せずに攻略本隊に情報を提供した。明日はあまり人的被害は出ないでしょうね。これじゃ、黒の剣士はヒースクリフの不死システムにも疑問を抱かないんじゃないかしら」
アンジェラがメガネを右手で位置を修正しながら言う。
「どっちにしろ100層ボスがヒースクリフなことは変化ないんですから。あと、心配事としては75層で終わろうが続こうが要注意人物がひとり。」
ヴァイリはさらにページをめくり、金髪の男の絵が書かれたところで止める。
「須郷伸之。彼は電子機器メーカーで有名なレクト社の子会社、レクトプログレスでSAOのサーバー管理を担当です。しかし、本当の目的はVR内での脳科学実験。今後彼がSAOあるいはALOで何かしでかす可能性が高いです。ちなみに彼は茅場の大学研究室の後輩です」
「その研究室出身者は揃って碌でもないな」
ミルローゼがため息をつく。
(まあ、その研究室の教授からして碌でもないんだけどな)
「もしアルベリヒなるプレイヤーが現れたら要警戒です。ゲームでは金髪で高級そうな装備を持っていました。それの取り巻きもGM権限ほどではないですがプレイヤーに干渉する権限を持ってログインしてくるかもしれないので。」
「ゲーム版の76層ボスはガストレイゲイズ。大きな目玉に触手がうじゃうじゃした奴。目の光線を躱しながら目玉を切りつけていくのが攻略法でした。」
解散して各々が会議室から出ていく。
「リーネが原作について他の誰かに喋ってたりは?」
席を立ち上がって、ヴァイリは近くにいたトトナに聞く。
「彼女なら大丈夫です。私たちの中でも、最も現実に帰りたいと思っていますから。あなたには協力してくれます。」
会議室を出る方向に歩いていくヴァイリの隣に並んできたトトナが答える。
「ゲームをさっさとクリアできるなら、わたしはなんだってするわ」
二人が会議室の入口付近まで来ると、外で警備していたリーネが真剣な顔でヴァイリの前を塞ぐようにして立ち、言い放つ。ヴァイリとトトナの会話はリーネにも聞こえていた。リーネの言葉はヴァイリの疑いを払拭するための宣言であり、疑いを持たれていたことに多少腹が立って出た抗議だった。
「そう・・・それなら安心だ」
普段口を開かないリーネからの強い口調にヴァイリはたじろぎながらも答える。
トトナは、あまり自分の意見を言ったりしないリーネが主張してヴァイリに一泡吹かせている姿を見ることができて誇らしげに笑っていた。
2024.5.7 15:00
翌日、また会議室に集まって75層ボス攻略の報告を待っていた。
「15時を過ぎたが、なんのアナウンスも無いな」
ミルロ-ゼは壁にかかる柱時計を見やる。
【フーリ:75層ボス部屋開放。攻略組はそのまま往還階段を登っている。】
ギルド内回線でボス部屋前で監視していたフーリからメッセが届く。
「まだ続くかー」 「何よ、ダメじゃない」 「あと4分の1か」 「はぁ」
フーリからのメッセに会議の参加者が落胆する。
その後もフーリから75層のボスの戦闘結果はパリィ連携のミスによる死者4人であることなど詳細が伝えられる。
「ラーチェ、フーリを戻らせろ。転移結晶で城にだ。76層には行かせるなよ」
ミルローゼが指示する。
「分かりました。」
ラーチェがウィンドウ操作をする。
「ホロウ・フラグメントなのか?」
ミルローゼはヴァイリに聞く。
「分からないですが・・・これで76層へ行ったプレイヤーが戻って来れないならゲームと同じシナリオです」
ヴァイリは歯切れ悪く答える。
【アニエス:緊急!フィリアが突然いなくなった。だれかメッセ届く人いない?】
更にアニエスから割り込みのメッセが届く。
「1つは的中したな。」
はっきりしないヴァイリにミルローゼは皮肉混じりに伝えた。
───
???
「うーん、いたた。ここどこー?」
フィリアはついさっきまでダンジョンの通路を歩いてたはずだが、なんの予兆もなく、別の場所に飛ばされてしまった。トラップにかかったエフェクトも無かったので状況を掴めないでいた。
「アニエスー?シュリー?はぐれちゃったのかな・・・」
パーティーを組んでいた仲間の姿も見当たらない。試しに呼んでみたが周りには誰もいないようだった
「そうか、メッセを送ればいいのか」
フィリアはウィンドウを操作するが、誰からも返事が返ってこない。
「えー、だめなのか。どうしよう・・・マップも機能しないし」
見渡す限りの樹海。初めて見るフィールドだった。
「まさかここ死後の世界とか・・・ないない!だってさっきまでモンスターもいなかったんだから、HPだってほら、満タンだし」
段々と不安が強まっていく。
ガサガサッ
「誰っ!?」
フィリアの目の前に青い服を着たプレイヤーが現れた。相手も驚いたような顔をする。
「えっ、わたし・・・?」
フィリアは自分と瓜二つのプレイヤーが目の前に現れたことに動揺し、一瞬めまいを感じてしまう。
「くっ!」
膝をついて、くらくらとする頭を振り払うかのように手当たり次第にソードブレイカーを振り回す。
「はぁっ!はぁっ!」
異常な現象を目の当たりにしてしまったフィリアは冷静でいられず、額から大量の汗が流れる。息が乱れて過呼吸気味になる。
(VRの世界でドッペルゲンガーなんてありえない。)
「はぁ・・・誰とも会えないから変な幻覚が見え出しちゃったのかな?」
パリンッ
何かが砕ける音がした。瞑っていた目を開くと、さっきまで人がいた場所にポリゴン片がパラパラと舞っていた。
ヴィンッ
それと同時に視界の中に自らのカソールがオレンジ表示に変わっていることがウィンドウに表示される。
「えっ、そんな馬鹿な」
フィリアは慌てて近くにあった水溜まりを覗く。水面に映った頭上に菱形のオレンジマーカーが浮いていた。
「オレンジ・・・わたしがオレンジ?え、何で?」
先程まで目の前にいた自分、剣を振り回した後に砕け散ったようなポリゴン片、オレンジの表示、そこから導き出された答えは
「わたし・・・自分を殺したの?」
その結果に唖然とする。
―――人殺し!
―――フィリア、あなた何をしたか分かってるの?
―――フィリアはもう仲間じゃない!
―――レッドはギルドから出て行って!
―――やだ、怖い、こっち来ないで
自らが人殺しと理解したのと同時に、仲間からの反応を想像してしまう。非難、失望、敵意、拒絶、恐怖
知っている。ギルドでのオレンジプレイヤーへの対応がどうだったのか。ましてや人殺しのレッドはどうだったのか。
あの棺桶にいたルクスという少女がギルドの中でどのような処遇を受けていたのか。
「違っ、わたしは人殺しなんて、何かの間違い・・・うわああぁぁぁ!」
首を何度も横に振り、パニックに陥ったフィリアは誰もいない樹海の中を何かから逃げるかのように一目散に走り出した。
───
東京都 レクト・プログレス オフィス
一室でアラーム音が何台ものパソコンから重なって鳴っていた。
ガンッ、ガンッ
「くそっ、なんで介入に失敗した挙句、こちらが特定されて逆にクラッキングされているんだ!あの男はどこまでも僕をこけにしやがって」
メガネをかけた男が机を拳で何度も叩いていた。
「主任、我々の脳制御計画が外部に流出しています!SAOから送られてきたプログラムのせいで勝手に操作されています。」
「はぁ?ふざけるな、あんなのバレたら警察沙汰だろ。もうおしまいだあ。お前らが馬鹿なトラップに引っかかったせいだぞ!僕はここから去る。後はあんたたちに任せた」
メガネを掛けていた男はオフィスから逃げるように去っていった。
「えええぇっ!主任、ちょっと待ってくださいよー」
クラッキングされたパソコンの各モニターには黒いヘキサゴナルパターンで埋め尽くされ、六角形の中には同じ白い文字が出ていた。
〈 The guardian:Liliera 〉
歴史が大きくかわるとき、ラズグリーズはその姿を現す。