エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
2024.9.19
Side ヴァイリ
90層探索中にホロウエリアの探索も終わったようでフィリアはアインクラッドへ帰ってきていた。ただし、しばらくキリトのところで過ごすとか
探索班では「フィリアを取られた」とか「愛人チャレンジ」とか騒ぎ立てていたが落ち着きを取り戻している。
スケープゴート隊での探索中にリリエラが度々現れていてちょっかいを出してきているが今のところは追い返すことができていた。
そして、今日、95層のボス戦攻略が実施された。
95層ボスモンスターは天井からぶら下がるミイラ型のモンスター、ザ・ディケイド・グリーフ。
布を自在に操り、遠距離攻撃を仕掛けてくる敵だったが、地上に降りてきたところを集中攻撃して倒された。
そして、ボス戦直後、キリトがヒースクリフに剣を突き刺すところだったが、Immotal Objectの障壁で一歩手前で塞がれていた。原作の小説版でいうところのスカルリーパー戦直後の展開だ。
95層 階層ボス部屋
Side 3人称
「──確かに私は茅場晶彦だ。付け加えれば、最上階で君たちを待つはずだった最終ボスでもある」
キリトから追求されたヒースクリフはあっさりと素性を明かした。
(知ってた)(知ってましたわ)
攻略組が驚く中、ヴァイリとベティは反応薄かった。
「趣味がいいとは言えないぜ。最強のプレイヤーが一転最悪のラスボスか」
キリトは冷や汗を垂らしながらヒースクリフを睨む。
「なかなかいいシナリオだろう?この攻略戦後に正体を明かす予定だったが最後の最後で自力で見破られるとはな。一番はじめに正体を看破していれば何らか
ヒースクリフは笑みを崩さず説明する。
(一番はじめ?他にも気付いたプレイヤーがいたのか)
キリトはヒースクリフの言葉に引っかかる。
「今ここであんたを倒せばゲームクリアなんだろ?」
「そう逸る必要はない。デュエルの決着は100層で果たすとしよう。君ならば私の前に立てるだろう。その時が来るのを楽しみにしているよ。ラスボス公開に伴い、ゲームの仕様も一部変更している。最後まで楽しんでくれたまえ」
ヒースクリフは言葉を残すとシステム権限で転移した。
(ゲームの仕様変更?まさか・・・面倒になるな)
攻略組の後ろで聞いていたヴァイリは前世の記憶を巡らせて嫌な予感が浮かぶ。
「ぐっ……逃げられたか!!」
キリトはヒースクリフのいたところをつかもうとするが、その手は空を切る。
「そんな……ヒースクリフが茅場晶彦だったなんて……」
「バカな……! あいつが、俺達の忠誠を──希望をよくも……よくも……!」
攻略組のプレイヤーたちには衝撃が大きい事実だった。特に血盟騎士団の団員は信じていたリーダーの裏切りに打ちのめされていた。
「・・・ヴァイリ、あんたヒースクリフのこと知ってたんでしょ」
カーラがヴァイリの様子に気がついてこそっと話す。
「んー?何のことかなー」
ヴァイリはわざとらしくニヤニヤしている。
「あー、もう手のひらで踊らされてるようで癪だわ」
ヴァイリの顔を見てカーラは額に手を当て、不機嫌さを増していた。
「《攻略組》の皆さん、《血盟騎士団》副団長のアスナです。」
戦意を喪失しているプレイヤーの前にアスナが立つ。
「先程《血盟騎士団》の団長、ヒースクリフの告白を聞き衝撃を受けたことだと思います。しかし、わたしたちは上層を目指さなければなりません。そうしなければわたしたちはこの世界に永遠に閉じこめられてしまいます。ヒースクリフの離脱は戦力的にも、また精神的にも大きな痛手です。でも、ここで諦めるわけにはいきません。もうゲームクリアは目の前まで来ているのです。皆さん、もう一度わたしに力を貸してください」
アスナは気丈に演説をする。
「そうだな、もうゲームも終盤だ」
「ここまできて止まったら全て無駄になる」
完全に立ち直れないまでも座り込んでたプレイヤーの何人かはまた立ち上がり、往還階段へ足を進めていた。
「私たちもまた頑張りましょう。ゲームクリアはもう目の前まで来てます。」
エリスも自らのパーティーを先導する。
「うん!みんなで現実に帰ろう」
ノエルは元気よく答える
「あたしも頑張るぅ」
エヴェイユは元気よく答える。
「私ももう簡単には諦めないから」
アネットは強い眼差しで言う。
「姉さんだけを危険な目に合わせないわ。私もまだやります!」
ルチアは威勢良く言う。
「皆さんがついてきてくれて私も励みになります。あと5層頑張りましょう!」
エリスたちも往還階段を上りだした。
「そんで、ヴァイリ。ヒースクリフの言う仕様変更ってあんたなら察しついてるんでしょ?」
パーティーの後部で並んで歩くカーラがヴァイリに問う。
「良いことじゃないのだけは確かだよ」
ヴァイリは語りたくなさそうにはぐらかした。
96層 主街区 ウィルトス
ウィルトスは赤紫の屋根が続く洋風の街並みが広がる。街の中央に墜落した浮遊島の上に転移門は設置されていた。
「階段の出口から近くに主街区があって助かりましたわ」
あまり長歩きしたくないベティはほっとする。
「ええ、でもなんか普段と違和感がありませんか?」
エリスは神妙な顔をする。
「違和感ですか?確かに何か足りないものがあるような・・・」
ピリリリッ
ルチアが答えた直後に隊内全員へメッセの着信が入る。
〈 《緊急》5分前にアンチクリミナルコード消失。点呼、安全確認のため全員一時ギルドホール集合〉
メッセには優先度の高い《緊急》のタグがついていた。
「えーっ!街の《アンチクリミナルコード》が消失?」
ノエルがメッセを読んで思わず叫ぶ。
「そういえば、いつも表示される《INNER AREA》(圏内)を見てないわ」
アネットがウィンドウを表示して確認する。街に入っている間は表示される圏内の表示が出ていなかった。
「本部から全員に帰還命令が出ています。一度グランザムに戻りましょう」
エリス達はすぐ転移した。
55層 グランザム 魔王城 大会議室
滅多に使われることのない大会議室にはエンドワールドのメンバー全員が招集されていた。
「状況は悪い。既にモンスターが街に侵入している情報もある。」
ミルローゼが説明する。
「1層が心配です。あそこには子どもたちやレベルの低いプレイヤーが多いです。」
神官服のプリエルが発言する。
「黒鉄宮の地下迷宮からモンスターが出てくれば軍が解散したあとのMTDでも対応しきれないだろう。聖竜連合に連絡を取ったら『戦うことを放棄している雑魚の自業自得だ』と返答されている。彼らも上層の街の防衛には参加はする。我々は昔使っていたギルドホールの所有権は残してあるから、そこを拠点に一部人員を1層に割く。」
ミルローゼは続いて街の防衛用の編成割り当て表を読み上げた。
1層 はじまりの街 黒鉄宮周辺
「グォォォォッ」
ミノタウロス型のモンスターが市街地の通りを駆け抜けていた。黒鉄宮の地下迷宮でポップするモンスターだが圏内の消失した今、ダンジョンの境界を越えて街中へ侵入することができた。
「なんであんなのが街中に出てくるんだ!」
「レベル60って50レベル差もあるじゃないか!」
はじまりの街にこれまで篭っていたプレイヤー達は高レベルモンスターのいきなりの登場に逃げ惑っていた。
「うわあぁぁ、こっちくるな!」
ミノタウロスの突進の勢いに気圧されてプレイヤーが尻餅をつく。
ドゥンッ
ミノタウロスの突進を赤い鎧のプレイヤーがスキルで止める。
「動きを止めたぞ」
赤い鎧を装備しているエルミラが言うと、横から槍と大鎌が突き出される。
「はああぁっ!」
「やああぁっ!」
ザシュッ ザシュッ
槍を持ったリーネと大鎌のリナリアがミノタウロスを滅多斬りにして倒す。
「大丈夫ですか?」
長棒を構えたトトナが、腰を抜かしたプレイヤーに声をかける。
「ああ、助かったよ」
「トトナ、このあたりのモンスターは全て排除できてるわ。」
レイピアを持つティールが報告する。
「分かりました。次の地区へ向かいましょう。そこのあなた、建物の破壊不可オブジェクト機能は残っています。屋内に退避してください」
「ありがとう。恩にきる」
(なんだか可愛い子達に助けられた。ラッキー)
腰を抜かしていたプレイヤーは立ち上がると建物の中へよろよろと入っていった。
「まったく、60レベル程度のモンスターにも逃げ回ってるなんて・・・」
シエルが愚痴を漏らす。
「情けない連中」
リーネも本心では嫌気が差していた。
「文句を言っても仕方ありません。彼らはここに篭っていれば安全と楽観視していた者たちです。今は街中のモンスターを掃討することに集中しましょう」
トトナの班は次の地区へ移動を開始した。
圏内消失後にはじまりの街の治安を回復したのは皮肉にも軍から街を追い出されたあともレベリングを続けていたエンドワールドが貢献していた。