エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
Side 3人称
2024.9.27
圏内消失から数日が経過していた。攻略組を中心として各層の主街区に防衛線が引かれ、小さい街に住んでいたプレイヤー達には主街区へ引っ越すよう避難誘導がされた。防衛できる人手には限りがあるため、安全地帯を絞るために必要な措置だった。エンドワールドも防衛に参加していた。
当初の混乱からだいぶ落ち着きを取り戻していて、96層ボスへの攻略の準備が各々進められていた。
96層 ウィルトス
エリス達は96層主街区の警備にあたっていた。
「必要な門以外はタンスやブロック塀など大型設置物で封鎖されました。夜間は開放している門もエンドワールドが所有していた馬車が塞ぐのでモンスターの侵入を防ぐことができています。」
エリスが現状を話す。
「今のところオレンジの犯罪も無しか。早めに治安回復できたのが良かったな」
ヴァイリは防衛計画の区分け表の書類をめくって確認する。
各階層に攻略組が睨みをきかせた結果、オレンジプレイヤーは圏内消失前よりも更に犯罪がしにくくなっていた。
「へぇ、少人数でも街を守れるように一応の対策は取られているわけね」
カーラが感心する。
「主街区以外の小さな街に住んでいたプレイヤーも既に避難誘導が終わっています。それでも現状96ヶ所の街を守るだけで手一杯です。どこかの街でモンスターの大規模襲撃がある場合は撤退する手筈になっています。」
「撤退って……主街区を放棄するってこと?危険じゃないの?」
カーラは不思議に思う。
「その襲撃自体が何らかのイベント扱いとなる場合もありますからね。その場合は攻略組で連合を組んで奪還します。」
エリスは解説する。
「ふぅん、分かったわ。」
カーラはとりあえず納得しておいた。
「それでも、5人だけで最前線の街を守るのは人手不足にしては度が過ぎる気もするけど」
ヴァイリの視線の先ではエクレールとアネットが網に引っかかっていた虫モンスターを1匹ずつ倒していた。
「まったく、こんなことに付き合わされるなんて・・・」
「今は一人でも高レベルプレイヤーが必要なときなのよ。皆が生き残るためにね」
文句を言うエクレールにアネットが説き伏せていた。
エクレールはスケープゴート隊ではなかったが、単独行動で前線に出張っているところを街の警備に巻き込まれる形で加わっていた。
「街を守るだけではゲームは進みませんからね。攻略組本隊は迷宮区探索中です。ローテーションで空いている私たちだけで対応するしかありませんからね。ノエル達も回復アイテムの素材集めに行っていますし。いまごろ47層の花畑で、ポーションの素材となる赤花果を採取していることでしょう」
エリスはノエルからの定期連絡のメッセを確認した。ノエルからは47層についていることが書いてあった。
47層 フローリア外縁フィールド 花畑
スケープゴート隊の別動隊、年少組は階層の低い所で素材収集をしていた。中層のあたりのモンスターはレベルの上がった彼女らの敵ではもうなくなっていた。
「さぁ、今からポーション用のアイテムを収集するわよ 。ここには強いモンスターは出ないけど、念のため固まって収集しましょう 」
リーダーを務めるルチアが指示する。アネットからも年少組の皆をまとめるようお願いされて張り切っていた。
「「はーい!」」
ベティとエヴェイユが合わせて返事をする。
「って……ベティとエヴェイユだけ?ノエルとシャサは?」
ルチアはキョロキョロと見回す
「ノエルさんとシャサールさんならあちらで一緒にお花を集めていますわ 」
ベティが指差す方向で二人が赤い果実ではなく、黄色い花を集めていた。
「収集アイテムじゃなくて甘いお菓子を作る素材があったから集めてるみたい」
エヴェイユがノエルから聞いたことを伝える。
「もぉ! あの二人ったら、勝手に行動して! 二人とも、何やってるのよー! ちゃんとみんなで一緒に動きなさい! 」
ルチアは二人のもとへ走っていった。
「ルチアちゃん、ノエルお姉ちゃんたちのところへ怒っていっちゃったねぇ」
「真面目な方ですものね。自由奔放なお二人を心配してのことでしょう。向こうではクラスの代表だったなんて話もシャサールさんから伺っていますわ。さて、わたくしたちも参りましょうか。収集アイテムをしっかり集めますわよ」
「うん! エリスお姉ちゃんたちの分もしっかり集めるよぉ!」
ルチアがノエルとシャサールを連れ戻している間、ベティとエヴェイユは周囲の小さな花をつけた赤い果実、赤花果を採取し始めた
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96層 ウィルトス
「はあっ!」
ザシュッ
カーラの放ったソードスキルで柵に引っかかっていたモンスターが倒される。
「ふー、この辺りのモンスターは片付け終わったかしら 」
カーラは汗を拭う。
「はい。リポップするまでしばらくは襲ってこないでしょう」
エリスも一息つく。
「それにしても、ここ1時間で急にモンスターの数が増えたわね」
「ええ……普段はここまで襲撃が増えることはないんですけどね… 」
エリスは首をかしげる。
「カタカタカラン…… 」
カーラの近くに6体のスケルトンが現れた
「もう!言ったそばからまた出るとか。リポップが早くない?ん……? 」
カーラは嘆くと同時におかしな点に気付く。
「どうしましたか、カーラさん? 」
「エリス、今気づいたんだけど、あの骸骨のモンスターって、この辺りに出る奴だっけ?」
「え?…うーん、記憶にはありませんね 」
「あの骸骨……この間の鉱山にいた奴らに似てない?」
カーラは目を凝らす。
「というか、リリエラがよく下僕と言って従えているタイプのやつだな」
離れた場所でモンスターの掃除をしていたヴァイリが戻ってきて口を挟む。
「……まさか、ここにリリエラが?まだ反応はありませんが…… 」
エリスは気配察知を発動するが、目の前にいるスケルトン以外でマーカーはマップに現れなかった。
「あいつのタゲになってるのは俺たちだけじゃないぞ。ここに現れてないということは・・・」
「もしかして、ノエルたちのところに……? 」
エリスの顔が青ざめる
「あの骸骨はあたしが蹴散らしてくるわ。そのあと、念のため反対側にいるアネットたちと合流しましょう」
カーラは剣を構えなおす。
「カーラさん、お願いします。ノエルたちにもメッセージを送ってみます。 警告が間に合うといいのですが…… 」
エリスは急ぎ、メッセを打ち始めた
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47層 フィールド
赤花果を目標の数集め終わっていた年少組はノエルの持ってきていたテーブルチェアセットを花畑の上に広げて休憩を取っていた。
「ぐあっ!やられたー」
ノエルは大量にたまった手札を宙へ投げた。
「はぁ……ノエル。あなた本当に弱いのね。トランプで負けるの、これで何回目よ」
ルチアは呆れていた。
「いやー何回負けたんだろうね。あたしってば顔に考えが出ちゃうからなー (ピピッ)って、あれ? メッセージ来た。エリスからだ。なになに? 」
ノエルはメッセのアラートに気づき、文面を開く。
『モンスターの襲撃が始まってます。周囲に警戒してください』
「うーん?」
「ノエル、エリスさんはなんて? 」
ルチアがノエルに確認する。
「モンスターの襲撃があるみたい。こっちは平和なのにねー」
ノエルはさほど重要そうには受け止めず流していた。
「そうじゃないでしょ!姉さん達が危ないなら戻るわよ。みんな、休憩は終わり。街に戻るわ」
ルチアは折りたたみ椅子をしまい出す。
「ちえー」
ノエルは不満ながらも片付けを始めようとする。
「──あら?もう遊戯は終わり?楽しそうだったのに」
「そうだよ。みんなでやると楽しいけどちょっとトラブル発生・・・って、!!!」
ノエルは聞こえてきた声に反射的に答えたが、ここにいるはずのない聞き覚えのある声に驚く。他の少女たちも声の主に視線が集まる。
「あら、どうしたの子羊ちゃんたち」
突如現れたリリエラはくつくつと笑っていた。
「リリエラ!」
ノエルが指を指して叫ぶ
リリエラからは既に何度も襲撃を仕掛けていた。危険なモンスターであることはノエルたちも身にしみていた。
「また現れたわね、悪魔 」
ルチアは皆を庇うようにして前に出る。
「あら、装備を変えたのだけど、よく気づいたわね。再会できて嬉しいわ、とてもね」
リリエラは新調したドレスをひらひらとさせる
「こいつっ! 」
ルチアは険しい顔になり、すぐさまハルバードを構える。
「血気盛んな子は嫌いじゃないけど少し落ち着いたら?今日はいきなり壊しにきたわけじゃないから。私にも紅茶をもらえる?仲良くお話をしましょう」
リリエラは空いていた席に座る
「ルチアさん、落ち着いてください。今はヴァイリさんもエリスさんもいません。まずは時間を稼ぎましょう」
ベティがルチアを止める。
「・・・わかったわ」
ルチアはしぶしぶ下がる。
冒険で何度かリリエラと対峙していたが、普段攻撃の受け手となっているエリス達年長者が不在だった。ルチア達には最悪のタイミングでの遭遇だった。
「今紅茶を入れますわ」
ベティはそつなく紅茶を入れていたが、リリエラの前に持っていくティーソーサラーはカタカタと小刻みに震えていた。周りも心配そうに見ている。
「ありがと」
リリエラは運ばれた紅茶を口に付ける
「おいしい紅茶ね。金色の子羊ちゃん、あなたが淹れたの?」
「…あなたはどうしてここにいますの? あなたのいた階層はここではありませんわよ」
ベティは一歩下がると訊ねる。表情は緊張を隠せないでいた。
「ふふ、私の質問に答える余裕はないみたいね。いいわ、紅茶のお礼よ。先に答えてあげる 。この連なる世界を行き来する方法は何も塔を登って守護者を倒すだけではないわ 人間には使えないルートを私は知ってるの」
リリエラは律儀にも説明した。
「…下層にいたエルフと似たような方法で階層を行き来できるというのですね」
ベティは推察する
「小さいのに察しがよくて助かるわ。それを使ってあなたたちを追ってきたのよ」
そう言ってリリエラはまた一口飲む。
「そうまでしてわざわざ上層から追っかけてきて、あたしたちに何の用だ!」
リリエラを刺激しないよう口を閉ざしていたが、しびれを切らしたシャサールが叫ぶ
「あなたたちも塔の守護者を倒して、上へと進んでいるのでしょう? そして、もうすぐ最上層に辿り着く……それをやめてもらえないかしら」
リリエラはにこやかに答える。
「はぁっ!?攻略をやめろってのか!残りあと5層だけなのにここまできて引き下がる訳無いだろ」
リリエラの提案をシャサールは真っ向から否定する。
「100層まで辿り着くとこの世界が壊れるという言い伝えがあるのよ だからやめてほしいの。あなたたちだってこの世界が壊れたら困るでしょう? 」
「……どういう意味ですの?」
リリエラの言葉にベティは探りを入れる
「あなたたちがどうなるかは知らないけど、今のあなたたちの関係のままではいられなくなるわ 。今は一緒だけど、離れ離れになってもう二度と会えないかもしれない。違う?」
「それは…… 」
ベティは言い淀む。横目でノエルたちを見ると、皆もリリエラの言い分が正しいことが分かってしまい目をそらしたり、俯いていた。
「さっきまでのあなたたち、とても楽しそうに見えたわ。その楽しさを壊したくないでしょう?居心地よく、ずっと仲間で、一緒に過ごしていたいでしょう? 」
リリエラは更に甘い言葉を投げかける。
『………… 』
その場にいた誰も反論出来なかった。
「この世界を壊さなければ、ずっと一緒にいられるわ。だからやめましょう。攻略なんて」
リリエラは甘い言葉を続ける。
「お断りしますわ 」
途中で俯いてたベティだったがリリエラの誘いをきっぱりと断った。
「確かにこの世界が終わったら皆さんと会えなくなるかもしれない…けれど、皆さんとの絆は変わりません 。たとえ会える時間が減っても向こうに戻ったときには、より強固な絆で結ばれていると信じていますわ」
ベティの目には強い意志が込められていた。
「ベティちゃん……」
傍らで見ていたノエルが呟く。
「残念ね。人であるなら、時として、甘美な堕落に溺れてみるものよ。でないと、その小さな体に入った心が壊れてしまうわ 」
「昔のわたくしならそうでしょうね。けれど今は、皆さんに強くしていただきましたから」
ベティはそう言って皆を見回す。
「強気な子羊ちゃん。まあ、その顔を見られただけでも話せてよかったと思うことにしましょう 。紅茶おいしかったわ。ありがとう」
リリエラは落胆した顔を浮かべる。そして振り上げた右手が赤い光に包まれる。
「…………! 」
リリエラの態度が豹変したことにベティは恐怖を感じる。
「残念……本当に残念だわ おいしい紅茶が、もう飲めなくなるなんて」
リリエラは不気味に見えるくらい口角を上げて笑うと、赤い光から出てきた剣をベティに向けて振りかざした
(ああ、ごめんなさいお兄様。ナーブギアを勝手に使用したことは謝れそうにありません)
ベティは死を感じた