エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~   作:RipoD

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戦闘BGM

ポケモンコロシアムより 君は戦いに何を見るのか

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75話 2024.11.7 運命の日

2024.11.7

 

100層 紅玉宮前

 

Side  3人称

 

「この城に囚われて2年だ。不条理な虜囚とされた我々の怒りを全て思い知らせてやれ。」

『おぉぉぉ!』

ミルローゼの鬨の声に集合したメンバーが歓声を上げる。選抜された48人が集まっていた。

「行くぞ」

 

「闘いの歌、合唱するよー♪」

~~♪♪

イーリス達広報班の多重バフ効果付きのチャントが背を押す中、ミルローゼを先頭に紅玉宮の階段を駆け登っていった。

 

ボス部屋前に攻略組からの選抜48人を合わせて2レイド、96人が集まる。そのうちの半分、エンドワールドはミルローゼ以外黒装束で統一されていた。

 

「やっほー!みんな。最後の戦いがんばろーねー!」

フィリアが攻略組のレイドの方から手を振る。

 

紅玉宮の謁見の間と言ってもいいボス部屋に入ると赤い鎧の男が玉座に座っていた。

 

「待っていたよ。攻略組の諸君。君たちならば必ずやたどり着けると信じていた。ヴァイリ君たちには特別な客人が来ているよ。向こうだ」

 

ヒースクリフの言葉と同時に部屋の横の扉がバァンと勢いよく開かれる。

「来てくれていると信じていたわ。子羊ちゃんたちも勢揃いで本当に愉快ね」

黒いドレスを纏い、灰色の肌をしたリリエラが部屋に入ってきた。

 

「ああ、みんなさっさとお前を倒して現実に帰りたがってるよ。今日でこの世界も終わりだ。」

ヴァイリが口を開く。彼の装備はタンク役として大盾、片手剣持ちの集団戦仕様だった。

 

「あら、怖い。じゃああなたたちを殺し尽くせば世界は破滅から救われるのね。さぁ、楽しい宴の始まりよ。ああ、愛しいヴァイリ。やっとここまで来てくれたのね。今までつれない態度でごめんなさい。今日はいっぱい遊びましょう。」

リリエラが元いた部屋に引っ込むと、エンドワールドは追いかけて部屋に押し入る。

 

「これだけいてヴァイリ以外は無視っていい度胸してるじゃない。羽女」

エクレールがキレる。

 

「エクレール、あくまでも定石どおりに戦うのよ。作戦通りに動けば勝てない相手じゃないんだから」

カーラがエクレールを静める。

 

「ふん、言われなくてもわかってるわよ」

 

 

「ヴァイリ、あなたを滅ぼすために精鋭たちの技能を取り込んだの。たっぷり味わって頂戴!」

リリエラがヴァイリ目掛けて一気に間合いを詰めて剣を振るう。ヴァイリは大盾で受け止める。

 

「やはり動きが速いですね。手筈通り包囲を」

エリスの号令でレイドはリリエラを囲む。

 

「邪魔よ。そんなに死にたいなら取り巻きから片付けてあげるわ!」

指示を出していたエリスにリリエラは狙いを定め、斬りかかる。エリスは受け止めるが勢いで後ろに仰け反る。

 

「くぅっ、重いですね。流石に100層ボスなだけはあります」

 

「へぇ、耐えるのね。」

 

「このぉ!」

横からノエルがハルバードを振り下ろす。

 

「そんな鈍いものあたらないわ。お返しは、これでどう?」

リリエラは遊ぶように躱し、ノエルに反撃する。

 

「うわっと、でも今だよ!」

リリエラの剣がノエルのハルバードにつっかえている隙に側面から槍の穂先が突き刺される。気づいたリリエラが躱すも避けきれなかった分のダメージが与えられる。

 

「・・・効果、不十分」

槍隊を任されているリーネが呟く。

 

「ちっ、目障りなのが多いわね」

 

「よし、リリエラはレイド単位の戦闘には慣れてない。勝てるぞ」

ヴァイリが広めるように言う。実際リリエラは彼らと幾度となく戦闘をしていたが、1パーティー、多くても10人以下を相手取る戦い方だった。リリエラのラーニング能力で慣れる前に倒しきるのがエンドワールドの作戦だった。

 

 

「こう包囲されては動けない。なら、1箇所に集中して突破すればいい」

リリエラは正面のエクレールを狙い。突進する。

 

「ぐっ!こっち来んな!」

エクレールの防御が崩れる。

 

「ダメージは通らなくても邪魔者をどかせるわ」

リリエラは追撃をする。

 

「それならこういう攻撃はどうかしら!」

横からカーラは廻し蹴りを入れる。

 

「曲芸みたいな動きね。でも残念。あなたの攻撃は絶望的に軽いわ」

リリエラは左手でカーラの足を止める。

 

「私にもすぐにマネできる。こういうふうにね!」

お返しとばかりにリリエラはヒールでカーラへ腹蹴りを加える。

 

「なっ……かふっ!」

大きく吹っ飛ばされたカーラは背中から壁に衝突する。

 

「武道家!」

エクレールはカーラへと注意が引かれる

 

「あんやろう!あたしの体術まで真似しやがってぇ!」

カーラはよろけながらも立ち上がる。

 

「お仲間さんの心配してる暇があるのかしら?」

余所見をしていたエクレールにリリエラが斬りかかる

 

「ぐわっ!このやろぉ!」

エクレールの防御が甘くなっているところを狙ったリリエラの一閃は、HPを3割ほど削った。

 

「他人の心配ができるほどの強さがあるわけでもないのに粋がるからよ」

 

 

ガシャン ガシャン

「「はあっ!」」

しかし、ガラスの砕ける音が耳に入ると同時にエクレールとカーラは同時にリリエラへとスキルをぶつけて来た。片方は抑えられたが、もう片方のスキルがリリエラの体に刺さる。

 

「くっ、こいつら!あれだけ痛めつけて退かない?」

リリエラは攻撃した相手がすぐ反撃したことに驚く。二人は肩から背中にかけて赤い液体が飛び散っていた。後ろに控えていたメンバーがポーションを投げつけて降りかけたものだった。HPは安全域まで回復する。

 

「あんたこそ無駄口叩けるほど余裕あるつもり?ぼっちと違ってあたし達には仲間がいるのよ」

カーラが挑発する。

 

「趣味の悪い羽女っ!今まで散々迷惑かけてくれたお返しをここでしてあげるわ!」

エクレールは剣を向けた。

 

───

 

 

前線より後ろに下がったところに本部が陣取っていた。彼女らも戦闘に少し参加しながら、全体の状況分析で後方に控えていた。

 

「嬲り殺しとはこういったものかしら?」

アンジェラがメガネをくいっと直す。

 

目線の先にはリリエラを壁際に包囲して攻撃を捌く盾持ち、その間からソードスキルを当てるダメージディーラー。後ろにはローテーションで休止しながらポーションで回復していたり、リリエラの召喚したスケルトンを湧き潰している班があった。手が空いてるメンバーはピックや投げナイフをリリエラに当てて、じわじわと削りながらボスのタゲ取りを乱している。

リリエラ戦は完全にパターンに嵌っていた。

 

「はぁー、やだやだ。一撃くらうだけでHPが数割削られるとか」

前線のローテーションから外れたヴァイリが後方に下がってポーションを飲み始める。

 

「ヴァイリ、だらだらしてないで早く換装を済ませなさい」

キーナが指示する。

 

「はいはい」

ヴァイリはインベントリを操作する。リリエラと剣をぶつけ合う度に装備の耐久値が減っていた。そのために結婚システムを利用して戦闘に参加していないメンバーのストレージ内から予備の装備と交換する。さらに消耗されたポーションも補給していた。

 

「後でわたくしも袋叩きに参加させてくださいな。あの悪魔さんにはいろいろお礼、(・・)をしなくてはなりませんので」

ベティは悪い顔を浮かべていた。洞窟、48層の襲撃と散々な目に遭った意趣返しを企んでいた。

 

「それにしてもヴァイリはモテモテですなあ、リリエラそっち見てるよ」

アルシエが言うとおり、リリエラは包囲攻撃に対応しながらヴァイリを何度も見ていた。彼女のタゲ自体はヴァイリが最優先となっているためだった。

 

「ひぇ、ヤンデレはゴメンだ」

ヴァイリの背筋にゾクリと嫌な冷たさが走る。

 

「心配するな。ヴァイリは我々のモノだ。今後利用する上で今死なれては困る。」

ミルローゼは自信ありげに言う。

 

「その扱いもまた複雑に感じるんだけど」

 

「ヴァイリ、交代して」

HPが半減したリリオが本部の陣へと戻ってくる。

 

パシンッ

二人が片手でハイタッチした後、ヴァイリは盾役として前線へ戻る。

 

「さて、人の上に立つものとして我も戦わなければな」

ミルローゼはマントを取っ払う。舞ったマントをキーナがキャッチする。

 

「油断して倒されないようにね。」

アンジェラが忠告する。

 

「心配いらん。我とてこの舞台に立つため力を持った。」

本部もまたレベルを上げ、十分戦力として戦えるようにしてきていた。全員110レベルを超えていた。

 

「それに、慢心せずしてなにが王か」

ミルローゼは振り向いてニヤッと笑った。そして駆け出す。

 

「ヴァイリ、我に続け」

「あんまり無理しないでくださいよ。魔王様」

ミルローゼはヴァイリを追い抜き、リリエラへ向かう。

 

 

「お前のような破壊活動以外何も出来ないAI風情にヴァイリをやるのはもったいない。ボスモンスターらしく倒されろ。」

ミルローゼはリリエラの隙を狙ってソードスキルを打った。

 

 

 

───

 

リリエラは四方八方から切り刻まれ羽根を散らせながらダメージを重ねていった。HPも半分をきりだす。

 

「おのれっ!」

リリエラは取り付く包囲を離さんと、剣をブンブン左右へ振り回す。攻撃を避けるために後退して包囲が緩む。

 

「私は強くなった……単純な力も、技術も手に入れて完璧な守護者になったはず!それなのに……!供物にしかならない脆弱な子羊共に苦汁を飲まされる!認めない。 全部全部っ、力で捻じ曲げてやる!」

リリエラは剣を体の中央に構える。

 

「リリエラの設定に変更が出たわ。なにか攻撃パターン変わるわよ」

ラーミルはリリエラの変化に気付く。

 

 

「どいつこいつも邪魔なのよ!そこを退きなさい!」

リリエラが叫ぶと彼女の体が光り、衝撃波が広がる。近くにいたレイドメンバーは吹っ飛ばされる。

 

「辛酸をなめさせられた分、たっぷり償いを受けてもらう!」

光が収まると、リリエラは金髪、人のような白い肌、白赤のドレスへと変色していた。

 

 

 

 

 

 


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