エンドワールド ~転生者は最強剣道少女達と共にVR世界を席巻す~ 作:RipoD
Side 3人称
2024.12.5 9:30
東都医科歯科大学付属病院 病室
SAOサバイバー達のリハビリは順調に進み、来週あたりには退院予定となる人が多かった。興平達も同じく、日常生活にはなんの支障もなく過ごせるまでに回復していた。
「コウ、ここ見に行きたい」
瑠希は自らのタブレットの画面を興平に見せる。彼女は若干染まった頬を隠すように上目遣いで彼の返答を伺う。
「ん、何だ?」
興平はタブレットの画面を覗き込む
《東都大学総合研究博物館
刀剣特別展
全国各地の神剣、名剣が期間限定で集結!》
「東大か、御茶ノ水からバス一本で行けるな」
「あたしも暇だからいきムグッ!」
「暇だけど残念だよね~、流星はお腹壊してて外出どころじゃないもんね。しょうがないからわたしが看病しないと。お二人さんはどうぞいってらっしゃい」
流星は二人のお出かけについていこうとしたが蘭華が口を塞いで阻止する。蘭華は昨夜、瑠希から興平と二人で展示に行きたいことをあらかじめ口裏合わせしていたため、瑠希に協力していた。
「むぐ~」
流星は蘭華の口塞ぎから必死に逃れようとするが、体術技もかけられて逃れられない
「そうかー、じゃあ二人で行くか」
興平もなんとなく察して流星を残して外出する支度をする。
―ありがとう
―たのしんできなさい
瑠希の口パクに蘭華も口パクで答えた。
病院を出た二人は東都大学行きのバスに乗る
「同じ東京でも私たちの住んでいる杉並とはまた雰囲気が違う」
窓側に座った瑠希は車窓からビルの立ち並ぶ文京区の街並みを眺めて言う
「まあな、住宅地ばかりの杉並とは違ってここは日本一の大学のお膝元だし」
となりに座った興平が言う。
龍岡門前で降りた二人は大学の総合研究博物館に足を進める。
「ちょうど開くのと時間ぴったしだ」
興平は腕時計を確認し、二人で開館時間の10時と同時に館内へ入る。
博物館展示室には各地の博物館から運ばれてきた刀がガラスケースに並べて展示されていた。
「おぉ」
「ほんと瑠希は刀に目がないな」
丁重に掛けられた名刀を目の前にして瑠希は目を輝かせる。そんな彼女を見て興平は苦笑する。
「コウ、これ欲しい」
「国宝はプライスレス。買えても億単位以上です。相続税もかかるし国に持たせとくものだよ」
瑠希は展示されている刀を指差していた。興平が説明板を覗き込むと国宝と記載されいるのを確認した。個人で所有するにはとても大きく負担になるものばかりであった。そのために個人所有されていた国宝も国が買い取るケースが多い。
「持つことが難しいならせめて目に焼き付けていく」
瑠希は展示されている刀1本1本をじっくりと見ていき、興平は彼女に付き添っていた。
「剣を振りたくなってきた。ここに剣道場は無いのか?」
ひととおりの展示を閲覧した瑠希は久しぶりに見た真剣に血が騒ぐのを感じていた。
「剣道場はここの構内だと七徳堂というところだな」
興平はスマホで地図を出す。
「よし、行こう」
「なあ、お昼どきだし食ってからでもいいじゃないか」
興平が腕時計をみると既に短針は1を越えていた。
「早く行きたい」
ぐぅぅぅ
瑠希の心は折れなかったが身体からは本音が漏れていた。
「やはり何か食べよう。腹が減ってはなんとやら」
「構内だと食堂以外にもイタリアン、ラウンジカフェ、隣接してるホテルのフレンチがあるな」
「ホテルのフレンチは敷居が高い気がする。」
「じゃあそこの棟のイタリアンかな」
二人は医学部棟のレストランでランチを食した。
「体の支度は整った。行こう」
「そんな、引っ張っていかなくても歩けるって」
レストランを出てから瑠希は興平に腕をからめて、ぐいぐいと剣道場へ向かっていった。
14:40
─大学構内 七徳堂
「誰もいない・・・」
「稽古16時からだってよ。まあ今の時間講義中だろうし」
二人が入った剣道場にはまだ部員は来ていなかった。
「あそこに木刀が転がっている」
瑠希が指さしたところには片付けられていなかった木刀が数本散乱していた。
「コウ、打ち合わないか?」
「いいぞ。リアルで竹刀振るのはもう2年ぶりか」
防具をつけてない二人は打ち合いでお互い寸止めのところで上手く止めていた。
「あれえ、見学者来てるのかい?」
二人が打ち合って時間を潰してると部員達が集まり出していた。
「たのもー」
「道場破りしにきたんじゃないんだから」
素で言う瑠希に興平は突っ込みを入れる。
「あはは、挑戦者かー。俺たちでいいなら相手になるけど?」
防具を借りた瑠希と稽古の準備が終わった大学生の部員たちは試合を始めだした。
瑠希は2年間のブランクがありながらも大学生を圧倒していた。長年彼女の動きを見ている興平の目からすると彼女は体がまだ追いついてきてないが、VRでのステータスに近い動きを意識していることが伺えた。
「君、すごいね」
「なんで今のが見切れたんだ?」
負けた部員は各々瑠希に尋ねる。
「筋肉の動きから70度で打ち込まれることは予測できていた。」
瑠希は当然のように言う
「え、どゆこと?」
学生部員は訳が分からず聞く。
「見れば計算できるはずだが?」
瑠希はキョトンとする
「「「目で見てできるか!」」」
「はぁ、なんだか別次元の戦いされてるな」
年下の少女に負けた剣道部員達は落ち込んでいる。
「あの少女の空間把握能力、天賦の才能か」
「ぜひDNAマップを提供してもらいたいな」
興平の耳に剣道部の顧問らしい人たちの声が聞こえる
(教員たちの目が新しい研究対象みたいに見てて少し怖いが)
「生身の体であそこまで動くことができるとはなかなか興味深い。」
あごひげを生やし、メガネをかけた中年ほどの男性が剣道場に入ってきていた。
「げぇ!」
興平はその人物を見て声をあげる。
「ん?君とはどこかで会ったかな」
男性は見覚えのない興平の態度を訝しげに見る。
「い、いえ。昔よく怒鳴られた数学の先生に似ていたのでつい変な声が出ただけです。」
「そうか、当人が聞いたらさぞ怒るだろうが他人の空似でそういう声をだすのは控えたほうがいい」
「ハイ」
興平は頬をヒクつかせながら返事をする。
「ああ、試合の邪魔して済まなかった。私は重村という。今日はちょっとここの運動工学部門に用事があったのでね。普段は東都工業大学で教鞭をとっている」
「ど、どうも・・・」
(なんでこんなとこで危険人物と会わないといけないんだ!)
オーディナルスケールの黒幕が現れて興平は冷や汗だらだらになっていた。
─
「なんか疲れた。帰りはタクシー拾って帰ろ」
「私も筋肉痛で歩きづらい・・・」
剣道場を騒がせさせたあと、へとへとになってる二人の背にそびえる安田講堂には冬の西日が掛かっていた
「しかしすごいな瑠希、東工大の教授の目に留まるなんて。原作で黒幕のおっさんだけど」
(今回みたいに要注意人物に鉢合わせない対策を取らないと)
興平は今後の安全面について考えながら言う。
「私は東大がいい。ここを受験する」
対して瑠希は悩むことなく言う。
「うん?うーん、まあどこの大学を目指すのも自由だけど」
「大丈夫だ。祖父も父も東大だったから受かる」
「そういう問題じゃ・・・いや、東大の子は東大、あながち間違ってない?」
妙に自信有りげの瑠希に興平は首をかしげながら帰路についた。