今日も新双黒は美味しいです 作:新双黒親衛隊
腐女子ちゃん中心の物語なので、普通に腐表現があります。それが苦手な方はバック推奨。
ヨコハマの日常とは、他の日常とは全く差のつかない、極めて普通の日常である。物騒なものさえなければ、今頃は指名手配犯とかに怯えずに、そしてマフィアとかいう昔さながらの古臭いものに怯えずに、ただ楽観的で意気揚々と過ごせるのに。
と、ここまでが
絹糸のような黒髪を腰まで伸ばし、手で払えば舞う花びらのように可憐に揺れる。それを映えさせるのは膝丈の純白のワンピース。そして純白のカーディガンである。踵を痛めないように白いパンプスを身につけ、そしてちょっとしたワンポイントでクローバーのネックレスを付けている。
彼女は指名手配犯の手配書を数分ジックリと眺めて、そして次の瞬間スキップをしそうな勢いで歩き始める。
頬にはほんのりと赤みのある色が灯る。ついには鼻歌までし出した彼女を、当然誰も咎めない。
やがて彼女が向かいだしたのは、ある路地裏の一角だった。そこまで進むと、彼女はキョロキョロと辺りを見渡し、誰もいないことを確認すると。
ーーートンッ、と
足を痛める素振りも見せず、しかも登れたことを当然のように受け入れる彼女は、持っていた肩掛けの鞄からあるものを取り出した。
ーーーそれは、双眼鏡である。
何故ここで双眼鏡と疑問に思う人もいるだろう。だが彼女にとっては、この場面での双眼鏡は必須であった。何故なら、
鞄をかけ直し、そして双眼鏡を持って、座り込んでじっと待つ。路地裏の一角をじっと見続ける彼女の姿には少し異常さを感じるが、勿論それを思うものは今は誰一人としていない。
やがて、路地裏の一角にある四人がやってきた。橙の髪の男と、黒髪の女の子、そして金髪の女性にーーー白銀の、少年。
その少年を見つけた途端、バッ!と彼女は音速の如く双眼鏡を構える。
双眼鏡に映し出されるのは、先程の白銀の少年のみ。他の者は、彼ともう一人がいなければちょっと
だが、まだ別腹という存在がある。何か騒いでいるようだが、彼女はそれが何なのか
胃に穴が開きそうな程に見つめていれば、やがて金髪の女性を押し切ってある男がやってくる。黒髪にモミアゲが白いーーー間違いなく、指名手配犯だ。
彼女はその男にも双眼鏡で見て……ガチリ、と硬直する。そして次第に震え始め、ゆっくりと双眼鏡を下ろし始める。
ああ、やっと恐怖に気がつけたか、早く帰ってさっさと寝なさい……という天の声すらも耳に入っていない彼女。
そして、天の声は既に間違っていた。
彼女は指名手配犯を見て怯えていたのではない。
彼女はーーー
これ程なく、ここで寝っ転がって大声で叫んでもいいくらいに。だがそれは本能的に許してくれない。
震える手で双眼鏡をかけ直し、また彼らを見てーーー崩れ落ちた。
天に仰ぐようなポーズを取った彼女は、まるでそのまま天に昇るかのような雰囲気で、こう告げる。
「ーーーー芥川君と念願の生敦君やっぱめっさ可愛い……!!!」
彼女はモブでありモブでもありモブしかないただの一般人。
そして世に言うーーーー転生者であり。
そしてある推しを信仰する、
第一話 *転生したのは腐女子でした*
皆ーーーCPというものは、もちろんご存知であろう。ああ、勘違いしないでくれ。私の言っているCPは君達の考えているCPではない。
そう、世にいう『カップリング』ーーーそして私が言っているのは、その汚れきったカップリング……つまり、BのLがついたもののことを言っている。だが私は、それを汚いと思ったことなど一度もない。寧ろ神に捧げてもいい神秘で清らかな純一無雑だ。
さて、ほぼほぼ理解してもらったところで、そろそろ本筋に近づけていこうか。このまま私の推しのところまで行って語れれば最高なのだが、如何せんそれでは興味が無い君達は呆れてしまう。まぁ、独り言だと思って聞いていてくれ。
当然だが、私は一度死んでいる。それは与謝野姉さんの異能力『君死にたまふことなかれ』でも治せない一瞬のグロテスクな致命傷。それで私は死んだのだ。
そしてふと目が覚めれば、私は何処にいたと思う?ーーー水の中さ。つまり私はなんと入水をしていたのだ。
二度死ぬのはゴメンだったものだから、慌てて上がって周りを見たよ。見たこともない風景だったし、自分が知っている風景でもない。しかも髪が長くなって女性になっている。
この情報だけで、私は一瞬で察した。いや、もう察するしかなかった。
ーーーあ、これ転生して女になっちまった展開だな、と。
もうそう考えなければ生きていけないと思った。後悔はしていない。
さて、そんな思いもあってか、どうやら私は本当に転生し、女性になっていた。しかも声をかけられる程度の美人さんに。コミケじゃあ何人も声かけられていっぱい友達ができたから、これくらい造作もないよね!的な笑顔を向けたら何故か声をかけてきた男達が去っていった。未だに疑問である。
おっと、そんなことを話している暇はない。どこまで喋ったか……ああ、転生を改めて自覚したところだな。ふむ、そこから何を話そうか……ではどの世界に転生したのがわかったところから話そう。
『文豪ストレイドッグス』という漫画がある。原作者は朝霧カフカ。文豪の名前であしらわれた異能バトル漫画だ。アニメにもなっている。その文豪ストレイドッグス……超が付くほどの大ファンではないが、私はその漫画が好きである。ちなみにアニメから入った勢だ。
最初は『あれ?なんか聞き覚えがある名前だな。太宰治?異能力?なにこれおもしろそー!』というハイテンションでアニメを見ていた。面白かったのは事実。
そう、ここまで、
だがーーーある登場人物が出た時、私の運命は左右されたのである。
「
ああ、路地裏でも彼の人が名を言っている。
そう、私の運命が変わったのはーーー芥川龍之介という、主人公の壁として立ちはだかる登場人物だった。
その名、その容姿、その声、主人公に対する声色を見て、私は確信した。
ーーーこれは、新たなる扉!?
雷でも降りたかのような衝撃が、私の体で駆け巡る。
遅くなったが、私はそういう類のものは大好物である。なので芥川君が出てきた時はまじでジーザスしたし、芥川君と敦君が喋ったらまじで声出してジーザスってしたし、もう自分で描きだしちゃったし……失礼。
いや、私が腐女子というのは今は置いておこう。
とにかく、私は敦君と芥川君のおかげで文豪ストレイドッグスに出てくる登場人物や街並み、そして単語などを熱心に見続けることが出来た。
だから確信できたのだーーーここは、文豪ストレイドッグスの世界だと。
そう即座に認めた時は、思わず「ファイッ!」とファイティングポーズを取ったものだ。マジで嬉しかった。しかも目の前を太宰治が通った時はマジで目がカッとなってヒャッホーイ!ってなった。ちなみにその時の太宰治はマフィア時代の格好だった。つまりその時はまだ織田作之助は生きていたのだろう。
……おや、どうやら結構喋っていたようだ。ここからこれからの方針、そして私の異能力について話そうと思ったが……何分、私にも事情があるのでな。ここは一旦話を止めてしまおう。
さてさて、では目的に移ろうか。敦君と芥川君の異能力を
私の異能についてはおいおい明かすことにして、今は彼らの異能だ。
(ーーーー
今一度、彼らが使っている異能を、私の記憶に
仕方がない、私の異能力もちょっと明かしておこう。いや、ここは産業で行こうではないか。
他人の異能を模写して
それを一つだけ何でも使える
わーなんてべんりー
……すまない、産業なんて初めてだからなんか変になってしまった。
まぁ簡単に言ってしまえば、『自分の目で見た異能力をどれか一つだけ使える異能力』ということだ。原理を説明すると、まず目の前に芥川君がいたとします。そしてその芥川君が異能力『羅生門』を使います。当然私はその異能力を見るだろ?その異能力を頭の中に無理矢理とは行かないが、ほぼ強制的に捻りこませてその異能力を記憶に残す。するとあら不思議、私も異能力『羅生門』が使えるではありませんか!
……まぁ、つまりそういうことだ。しかし何個か同時に使える訳では無い。同時に使ったら私の頭がオーバーヒートして前世の記憶ごと吹っ飛ぶ危険性があるので、私は一つしか異能力が使えない。まぁ危険性あるけどジャンジャン異能力覚えていってるけどね!
後、私が模写をする条件はこれともう一つ、それは双眼鏡で見なければならないこと。これも本当に面倒臭い。つまり双眼鏡が無くなったら、私は模写することは出来ないのだ。本当に面倒臭い。
何故私がこんな異能力を授けられたのかはわからない。神の贈り物かどうかもわからない。だが私はこの世界でーーーーいや、リアルCPを見るために、生きるためにこの異能力を使うせざるおえないのだ……!!
まぁ大部分的にはこんな感じだ。もう少し細かい説明は後にして……あら、敦君虎になって暴れてるじゃん。模写模写ーっと……しようとしたが、まだ敦君は『月下獸』の操作に慣れていない。いや、まだ異能力を制御出来ていないと言った方が正しいか。
これではまだ敦君の異能は模写出来ないな……もしかしたら私も暴走してしまう恐れがあるし、月下獸は模写だけしといて暫く封印しておくか。せめて
さて、この話もいよいよ大詰め。敦君が虎になったということは、もうすぐ太宰治が爽快に「そこまでだ」と言って止めるシーンもそろそろだ。そう、私の目的はリアル芥敦、敦芥を見るだけではなく、彼らの異能力ーーー当然、太宰治の『人間失格』も模写することだ。
対で言えば正直8:2なんだが、異能無効化は持っていて損は無い。マフィアにいた頃はさすが太宰治と言ったところか、まずそんな現場にすら行けなかったし、すれ違ったとしても当然異能力など発動しなかった。だからいつでも来るがよい、太宰治!!
「あれ、先客さんがいたのか。これは予想外」
ーーーその、撫でるような声を聞いた時、私の思考は氷点下まで達した。
双眼鏡で覗き込んだまま機械のようにギギギッと後ろを振り返れば、不敵に笑う口元が映る。
……落ち着け、幻覚だ。まさか本人がここにいるわけがないジャマイカ。うん、絶対そうだ。この双眼鏡を下ろせば……と、ゆっくりと双眼鏡を下ろせばーーーー。
「ーーーやぁ、麗しのお嬢さん。こんな所で、何をしているんだい?」
……………………\(^o^)/
*
太宰治は困惑していた。
敦と芥川の戦いの仲立をする為に建物の屋上にやってきた時、そこには既に先客がいたのだ。しかも双眼鏡で覗き込んで、ニヤニヤと笑いながら。
明らかに警戒すべき対象である。ここまで聞こえる戦いの騒音も耳にしながら、太宰はゆっくりと、気配を殺して彼女に忍び寄る。
彼女は気づかない。ほぼほぼ彼女の真後ろにいるというのに、彼女は二人に夢中で気づいていない。
「……敦君可愛いなぁ……あ、羅生門やん。模写っとかないと……うへへ……」
何やら意味不明なことを呟いている。これで太宰の彼女に対する警戒度は一気に跳ね上がった。
そもそも何故彼女は、ここで、しかも態々双眼鏡まで持ち込んでやって来ているのだろう。この高さなら別に双眼鏡で見なくとも大丈夫な距離だ。
彼らの戦闘の余波がこちらまで及び、太宰の外套と彼女のワンピースを揺らす。だが彼女は頻りに「芥敦……これは芥敦だな……」と言っている。正直、太宰にはこれは理解出来なかった。
敦の右足が吹っ飛ばされたところで、太宰は彼女に声をかけることにした。敦のことも気になるが、今はこの思いっきり怪しい彼女から減らしていこう。
「あれ、先客さんがいたのか。これは予想外」
太宰は、まるで今来たのかという素振りを態と見せる。
太宰が声をかけると、ウキウキしていた彼女の肩がビクリ!と面白く震えた。そこから双眼鏡で覗きながらこちらを振り向き、また暫く固まる。
「えっ、嘘やん、オワタやん」とボソボソと言いながら双眼鏡を下ろした彼女を、太宰は冷ややかな目で見下した。
「ーーーやぁ、麗しのお嬢さん。
敢えて「こんな所で」を強調させ、相手の焦りを招く。大体はこちらがわかったような気で聞くと、焦って何か言い訳を考え始めるのだ。彼女も、その類のものである。
敵か味方か、それさえ分かれば後はどうでもいい。敵ならここで一気に潰し、味方……というか、無いとは思うが一般人ならここでスルーすればいいだけのこと。
彼女の返答をじっと待ち、虎の咆哮も聞こえる中、やっと彼女が口を開いた。
太宰の目が細められ、彼女の口元に注目する。これから彼女は何を喋るのか、何故彼女がここにいるのか、その一言で全てを炙り出してやる、と太宰が意気込む。
そして彼女は、発した。
「……………………太敦も、太芥もいいかもしれない……」
「…………………………………………………………………………は?」
たっぷり、十秒フリーズして、やっと太宰が声を出せたのはその一言だけだった。
*
背後にいた太宰治に声をかけられた私の思考は、一気に天変地異と化した。頭の中がグルグルと台風のように渦巻き、思考させることを無理矢理止めさせられる。
やばい、やばい。これ絶対警戒されてる。ここで変な事言ったら絶対八つ裂きにされるよ。ここから落とされて無理矢理敦君と芥川君の戦いに巻き込まれるよ。
どうすればいい。ここからどう抜け出す。待て、まずは落ち着くんだ。落ち着くことを考えるんだ。そこからゆっくりと考えるんだ。
そこで私が真っ先に思い浮かんだのがーーーーー敦君と芥川君でサンドイッチされる、太宰治の姿だった。
これは太宰治の総受け?否、違う。これはーーーー太宰治が二人を手懐けるんだ!!そうに違いない!!
そこからは早かった。子猫のように太宰治に甘える二人を想像し、そこからホテルに連れ込んであれよこれよと自主規制のところまで及んだところで、私はカッと目を見開く。
ーーー「太敦も、太芥もいいかもしれない……!」
「………………は?」
あ、やべぇ声に出してた。いや別に、本当に良いかもしれないと思っただけであっやめて、そんな蔑む目で見ないで。私泣いちゃう。
だがこの意味を知らないというのが唯一の救い。よかったよ、太宰治がここまで博識じゃなくて。私の寿命が三年も延びたよ。
「…………君、一体何を……」
「ほ、ほほほほほほら!あれ!あれ止めなくていいのかい!?そ、そろそろやばくないかい!?」
太宰治にこれ以上言及されるのを恐れ、私は咄嗟に下で戦っている二人を指さした。
太宰治は訝しそうにチラリとそちらを一瞥した瞬間を狙い、私は鞄を持って走り出す。
「っちょっと」
太宰治の手が肩につく、その直前で私は体を捻り、前転して反対側の手すりまで駆ける。
そして手すりに足をつけーーー私はそこから跳躍した。
太宰治の静止の声を背後で聞きながらも、私は隣にあった建物の屋上へ着地し、そこから建物内に入って階段を駆け下りる。
危なかった。めっちゃ心臓バクバクした。まさか背後から来るとは思わなかった。
というかちょっと待て、太宰治があそこにいたということは、太宰治はあそこから飛び降りて二人を止めたのか。それ程高さがないといっても危険だろう。……まぁ太宰治だから仕方ないかという理論で。
「あー……人間失格、欲しかったなぁ」
この際だからもう一度言っておくが、マフィア時代の太宰治を見たというのに、私は未だに彼の能力を模写出来ていない。
なんと言うか、彼との相性が頗る悪いのだ。つまり、彼の現場に居合わせることが出来ない。
マフィアだからという理由もあるが……いや、そこに関しては運がいい。下手にマフィアの現場に居合わせたら、私の命がない。ここは素直に退散するとしよう。
……でも、敦君と芥川君を見れただけで、私はもうお腹いっぱいだ。
これからの展開に胸をふくらませながら、私は建物から出て、路地裏から早々に離れていった。
「…………やっぱり、盗聴器を仕掛けていたか……」
もちろん、いつの間にか鞄に入れられていた盗聴器の処理も忘れずに、だ。太宰治用意周到過ぎだろ。
新双黒が可愛すぎるから書いた。後悔はしていない。だから新双黒親衛隊に入隊したまえ。
腐女子ちゃんが何故背景なども完璧に覚えたのかと言うとあれよ、想像してムフフする為よ。何故かって?私がそうだからさ。
実際太宰さんが何処で現れたのかはわからないんだけどね。この物語だと屋上からにしたけど、絶対足折れてるよ。アシクビヲクジキマシターじゃ済まされないよ。でも太宰さん元マフィアだから大丈夫!というノリで決めた。後悔はしていない。
(実際何処から現れたのだろう)
腐女子ちゃんの異能力は『対象の異能の模写し、模写した中から一つだけ使用する事が出来る』
つまり羅生門を使うことは出来ても、羅生門と月下獸を同時に使うことは不可能。使うと腐女子ちゃんの体が持ちません。でも腐女子ちゃんなら……愛で保つんじゃないかな(白目)
そして模写する時は双眼鏡で見ないと模写できません。つまり双眼鏡壊されたら新しい双眼鏡を買うまで模写する力は使えないということ。やだ、傍から見たら変人じゃない!
取り敢えず初回はこのくらいで。10話くらい書き溜めたら投稿しようかと考えている。今は3話まで書き溜めているので、あと7話くらい……わぁ!長い!
でも気長に待ってくれると嬉しいです。
余談ですけど、私は新双黒なら何でも美味しいです。モブは認めない。