fate/lostmoon   作:茜谷

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プロローグ・セイバー

「マスター、失礼致します。」

 ドアを二回ノックし、返事がないということは、入っていいということ。

 そう教わった少女は、古い、木で出来たドアを引いて入室した。

 中には、踏むのも躊躇う程上等な赤い絨毯、そして奥には巨大な窓がある。

 日の光を遮断するように分厚い黒幕が引かれ、その近くにはキングサイズのベッドが一台。

 その天蓋の下で気だるそうに寝転がる女性、彼女は鎖骨のタトゥー――のように見える令呪を見せびらかすようにパジャマのボタンを外した。

 

「何のようなわけ、セイバー?」

 こっちに来ないで向こうで待機しててよ、と言いたい視線に、セイバーと呼ばれた少女は少しだけうつむいた。

 しかし、また前を真っ直ぐに見つめ、自分の主人たる女性に意見を述べる。

「マスター、つい先ほどキャスターが駅近くのオフィス街に宝具を放ったようです。民間人の犠牲も多数出ており、その場にはアーチャーとライダー、そしてランサーと思わしきサーヴァントも見受けられましたが……いかが致しましょう?」

 先ほどまでオフィス街でマスターから頼まれた「おつかい」を済ませていたセイバー、その近くで爆発音が聞こえた。

 慌ててその場に向かうと、サーヴァントと思わしき数人と、そのマスターがキャスターのサーヴァントと対峙しているのを見かけたのだ。

 キャスターの放った宝具は極めて強力なうえ、ここで3騎の助太刀をするか迷ったセイバーは、主人である「香蓮・エーデルグランツ」に確認を取りに帰ったのだ。

「……好きにすれば?あと、例のブツは机の上に置いといて。あたしはあんたのマスターだけど、あんたの行動は好きにしとけばいいじゃない。何?令呪でも使われたい?」

 香蓮はそう言って、ひらひらと手を振った。

 これは、出ていけ、という合図である。

「了解致しました。ではマスター、帰還までの間、くれぐれもこの本陣から動かぬようにお願いします。」

 返事はない。

 セイバーは丁寧に退室前に一礼し、そのまま後ろ手でドアを閉めた。

 ギシギシと軋む廊下を走り抜け、ドアから霊体化して一気に加速する。

 昼の太陽は一番高い位置にあった。

 セイバーは全速力で走り抜ける。

(あの3人、うまく持ちこたえていればよいのですが……)

 そう祈りながら、セイバーは飛び出した。

 

 

 セイバーが召喚されたとき、召喚したはずの人間はひどく退屈そうな瞳でこちらを見ていた。

 挑発するような視線と、真っ赤なボサボサ頭。

 寝巻も同然のラフな格好で、「これでいいんでしょう?」と聞かれたときに、セイバーはどう返していいのか全く分からなかった。

 まるで面倒な課題でもこなしているような顔で、つまらなそうに令呪を見つめている。

 そんな異様な光景が数十秒間続き、しびれを切らしたように女性が口に出した言葉は、

「勝手にやっといて。」

 であった。

 

 セイバーは執事風の老人に、この厄介そうなマスターの名前が、「香蓮・エーデルグランツ」である事と、魔術師の家系に生まれ、嫡子でありながらも、他の子供が全員死亡したためにこの聖杯戦争に参加しなければいけないこと、そして、それを本人が死ぬほど嫌っていること、などを聞かされ。

 最後に念を押すように、

「お嬢様には必要最低限の言葉しか話さないで下さい。そして、機嫌をなるべくそこねず、大事な魔術回路をお持ちなので、決して死なせないようにお願いします。」

 と言われた。

 聖杯にかける望みもなく、ただ参加させられただけ。

 そんなマスターに、セイバーである彼女は忠誠心を抱くことなどできなかった。

 しかし、召喚されたからには戦うしかない。

 最低限、魔力のバックアップはあるのだから、宝具を打たねばならない状況でない限り、傍にいてもらわなくてもいい。

 そう考えたのである。

 幸い、それなりに魔力の質と量はいい。

 そして、無駄な命令を出してこないので、セイバーにとっては無茶で横暴な主より「まし」だと考えた。

 触らぬ神には祟りなし。

 そう考えようと思ったのだ。

 

「……これは!」

 セイバーが現場に到着し、真っ先に視界に移ったのは、巨大なタコのような化け物。そして、それを呆然と見上げる群衆たちであった。

(いけない、こんなところを見られては――!)

 真昼間から戦いを仕掛けてくるとは、よほどキャスターも図太いのだろう。

(この人たちに、記憶操作の魔術を……、いや、間に合わないわ。)

「貴殿は、サーヴァントと見受けられる!我らに助太刀をしてはくれぬか!」

 槍を構えたランサーらしきサーヴァントが、唸るような声で呼びかけてくる。

「勿論、その為に参りましたので――私は、この剣を振るうのみ!」

 魔力によって編み出した剣と、装飾が自分の肉体を包む。

 全身に血がたぎるような興奮を感じ、セイバーは、真っ直ぐに飛び込んだ。




 三大騎士クラス、全員揃いましたね(やったぜ)
 セイバーの真名は、あえて明かしていません。話が進むにつれ、わかるようになると思います(多分)
 まあ、プロローグの時点で明かしている方が異質ですよね。普通だったら途中で宝具ぶっぱなすときに格好良く真名開放する方が格好いいですから。
 まあ、他の英霊もすぐ名前ばらしちゃうかもしれませんね。完全に祝詞勢いだけでプロット組み立ててませんし。
 明日から、しばらく旅行と帰省でインターネットが使えない状況におかれるので、しばらくの更新は無理だと思います。


おまけ 女性のセイバーって、アルトリア顔以外あまりいないイメージがあります。
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