ラブガイル!   作:いろはにほへと✍︎

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何が起こるかわからない世の中です。最近漢検2級受かりました。4級落ちて以来久方ぶりに受けてみると一発合格。普段からSS読んでたからですね笑(割と本当に)


There is no telling what will happen.

 

 六月も半分ほど過ぎると、毎日の湿度の高い嫌な空気に体が慣れ始めていた。

 放課後、俺は寄り道することなく部室に向かっていた。理由は簡単。テストが明けて一週間経ち、今日で全教科返された。部費の支給や活動が決まる各自のテスト結果を聞かないわけにも行くまい。

 ノックもせず、無遠慮に戸を開く。後ろ手で戸を閉めると高坂と目が合った。

 

 「あ、比企谷くん! テストどうだった?!」

 「うお、お、おう……まあ」

 

 高坂の快活さに気圧され、しどろもどろになりながらも悪くはなかった結果を伝える。

 心配で室内をぐるりと見渡すと、星空が俯いていることに気がついた。

 

 「ほ、星空?」

 

 声をかけると星空が俯いていた顔を上げた。その瞳はしっとり湿っていた。

 ダメだったかー、そう思って慰めの言葉をかけようとするが、うまく言葉が浮かばない。こういう時に普段から人とコミュニケーションを取らなかったことを後悔する。

 

 「ヒッキー先輩……」

 「ヒッキーはやめろ」

 「凛、頑張ったのに……」

 

 星空がぎゅっと拳を握りしめる。

 ああ確かに頑張った。でも、頑張った結果なら甘んじて受け入れるしかない。努力と結果は必ずしも比例の関係とは限らない。努力が人を裏切ることだってあるし、結果が追いつかないことだって、往々にして、ある。

 

 「凛、凛……」

 

 星空がまた俯いて、自分を責めるように何度も復唱する。

 しかし突然顔を上げた。

 

 「五十五点しか取れなかった!」

 

 星空はにこぱっと笑いながらピースを添える。他の奴らは最初から知っていたのか、確かに驚いていなかった。

 

 「おいおいマジかよ。お兄ちゃん信じちゃったよ……」

 「はーい大成功!」

 

 見れば矢澤先輩が笑っていた。

 

 「とりあえず問題児は解決か」

 「ええ、そうね」

 

 矢澤先輩はまた人好きしそうな笑みを浮かべる。べ、べつに俺はロリとか興味無いんだからねっ! って矢澤先輩俺より年上だった。

 あ、大事なことを忘れていた。

 

 「というかどう考えても一番の問題児、先輩ですよね。さっきの雰囲気に乗って実は赤点とかじゃないですよね? 俺マジそういうの無理なんで。あと小さい子は好きだけど中身ロリとか無理なんで」

 「辛辣?! ていうか途中から意味わかんないし……」

 「まあ要するに矢澤先輩が信用に足らないってことです」

 「あんた私にだけ辛辣よね」

 

 ひとまず全員セーフで安心してへらへら笑っていると、パソコンを見ていた小泉が「た、助けてえ!」なんて叫び始めた。

 何事かと皆一斉に視線を送る。普段なら注目されると恥ずかしがるくせに今日は違った。俺たちは急いで駆け寄った。視線の先の画面には『ラブライブ開催』と書いてあった。

 皆が口々に「ラブライブ?」とまるで不思議なものでも見つけたかのように問い合う。しかし答えは見つからず、小泉の返事を待つ。小泉はメガネをくいっと上げた。

 

 「ラブライブは……」

 

 「分かった! スクールアイドルの祭典だね! だって書いてあるもん」

 

 高坂が話を遮り、画面に表示されたものを読み上げた。

 

 「あ、ホントね。全国のスクールアイドルを集めて一番を決める……少し面白そうね」

 

 「よし! じゃあこれを目標にしよう!」

 

 とんとん拍子に話を進めていく高坂に、最愛のアイドル話をとぎられて失意のそこにあった小泉が、これだけはと言わんばかりに声を大にした。

 

 「そ、そんな恐れ多い!」

 「かよちん、震えてるにゃ!」

 

 しかし、一度決めたリーダーは聞く耳を持たない。それは俺だけでなく、小泉も、そしてここにいた互いがそれを理解していた。

 

 「大丈夫! 全国から選び抜かれたスクールアイドルが集まるなんて素敵過ぎるよ!」

 「そうよ花陽! これは出るしかないわ!」

 「かよちん?」

 「花陽ちゃん?」

 「花陽?」

 

 対して事情なんて知らないくせに、口々に小泉を懐柔しようとしていた。俺はぽかんと開けていた口を閉じる。あまりにスピーディで少しぼーっとしてしまっていた。しかし、俺が口を出すところでもないだろう。

 

 「うう……」

 

 小泉の唸り声がちょっと可愛い。やっぱり戸塚と小泉は天使。まあ小町は大天使。

 

 「大丈夫大丈夫。きっと出れるよ!」

 

 相変わらず同じ言葉しか繰り返していない高坂だったが、次の言葉に俺は固まることになった。

 

 「会長さんもダンス教えてくれるんだし!」

 

 「……へ?」

 

 八人もいる中で、俺だけが素っ頓狂な声を漏らした。

 視界の端では懐柔された小泉が見えた。


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