ラブガイル!   作:いろはにほへと✍︎

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石の上にも三年という。

しかし、三年を一年で習得する努力を

怠ってはならない。

―松下幸之助―



大天使とつかたん

 キンコーンとチャイムの音が鳴り響き、六限目の数学が終わる。

 数学はもとから色んな意味で終わってるから寝て過ごした。

 ホームルームが終わると、部活に向かう者や駄弁る者、すぐに帰宅する者など行き先はそれぞれだ。

 勿論、俺は一刻も早く帰宅するために教室を出る。

 スクールアイドル部? 何の話だ。

 

 「比企谷くーん!」

 

 あぁ……、聞こえないな。こんな馬鹿みたいに大声で人の名前呼ぶ常識ないやつとか知り合いにいないから。

 瞬間、俺は走りだす。

 背後から聞こえた声は少しずつ小さくなっていく。

 自分の勝利を確信した俺はペースを緩め、何度も振り返りながら進む。

 すれ違う女子からは奇異な目線が注がれたが、マイスイートホームに戻るためならその程度のことは気にしない。

 だが上を向いて空ばかり見ていると、地面の穴に気づかないように、後ろばかり見ていた俺は気がつかなかった。

 

 目の前には、こちらに向けて弓を構えた園田海未が立っていた。

 とてもいい笑顔だ。

 ……早すぎない? ホームルーム終わったばかりだよ?

 

 「こんにちは、比企谷くん」

 

 ……こんにちは。

 

 × × ×

 

 俺は園田に即座に捕えられ、高坂たちのいる教室まで連行された。

 てか、園田って女子だよね? 何この腕の力……。

 

 「比企谷くん! 何で無視したのさ!」

 

 高坂は怒っているようだ。

 今すぐ逃げたいがその選択肢は背後にいる園田に潰されているので戦うかモンスターボールを投げるしかなさそうだ。

 ハチマンは、はなしをそらすを選んだ。

 

 「それより矢澤先輩のことはどうなったんだ?」

 

 聞くと高坂が胸を張った。由比ヶ浜にかなり似ていると思ったがここは全く似てないのね。

 

 「比企谷くん?」

 

 あははは! 南さんがニコッとしてるよ! あはは!

 

 「それを言いたかったんだよ!」

 

 南の様子に少しも気づいた雰囲気のない高坂は話を続けた。

 

 「うまくいきました!」

 「へえ、予想外だな」

 「戸塚くんのおかげでもあります!」

 「おお……! さすが戸塚!」

 

 戸塚はどこだ! 戸塚を出せ! あの天使は可愛い上に有能なのか。

 嫁に欲しい。

 

 とりあえずまあ、戸塚が俺の知らぬ間に馴染んだようでほっとした。

 

 「実はもう一つ報告があります」

 

  もう一つ……。矢澤にこの件しか無かったはずだが。何かあったのか?

 

 「比企谷くんきっと驚くよ!」

 

 高坂が嬉しそうに言う。

 

 「メンバーが三人増えました!」

 

 「へ?」

 

 俺は驚いて素っ頓狂な声を出してしまう。

 正直、俺はあれだけ反対されてたスクールアイドルなんて集まるわけない、と思っていた。

 それが、三人も増えたのだ。

 驚いても仕方が無いだろう。

 

 「そうか……凄いな」

 

 俺が口から洩らした言葉に南が反応する。

 

 「本当だよねー。まさか三人も! しかもいきなりだったからびっくりしちゃった!」

 

 「実は三人を呼んであります。まあ部活に入ったので当然なのですが」

 

 え? 嘘でしょ? このまま挨拶の流れ? ぼっちにはきついんですけど……。

 そんな状態の俺に園田は気付くことなく、三人とも入ってきてください、というと「失礼しまーす!」とかなり元気な少女がまず入ってきた。

 続いて小動物っぽい女の子、ツンツンした少女。

 てか、二番目の子絶対天使だろ。天使何人いるんだよ。

 小町、戸塚、南……、はさっき本性見た気がする……。

 俺の思考回路がショート寸前というところで、オレンジ色っぽい髪色の元気な少女が口を開いた。

 

 「誰にゃ? この目のこわいひと」

 

 まあ、予想はしていた。していたが、なまじ美少女なだけあって古傷が……。

 

 「り、凛ちゃん失礼だよ!」

 

 天使(仮)が失礼極まりない凛ちゃんを叱る。

 天使がいるぞ。天使だ。ああ、天使様!

 

 「あの、大丈夫ですか」

 

 天使様が心配してくれるだと……?

 

 「ああ」

 

 恥ずかしくて短く返すと、天使は安心したようにほっとため息を漏らした。

 そうだよね。目がやばいし怒らせたら怖そうだよね。

 

 「えっと、私は小泉花陽っていいます。こちらは友達の凛ちゃん。星空凛ちゃんです」

 

 天使 小泉はそう言うと隣の活発そうな少女を見た。

 

 「よろしくにゃ! それでこっちにいるのは真姫ちゃんにゃ」

 

 星空に紹介された真姫、という少女がこちらを一瞥した。同時に目が合った。そんなに見て俺のこと好きなの?

 だが彼女はすぐに目を逸らした。

 瞬間、俺は察してしまった。

 

 「どうも、西木野真姫……、です。よろしく……」

 

 少し恥ずかしそうに自己紹介する西木野を見て、俺は更に確信を強めた。

 さっきから一言も喋らなかったことに加え、必要最低限の挨拶。そして、実は強気で信念が強そうな瞳。

 ……こいつ、絶対ぼっちだろ。

 

 「ぼっちだろ……」

 

 気がついた時には、時すでに遅しというやつだった。

 俺は口から漏らしてしまったのだ。

 恐る恐る西木野を見ると、顔を赤く染め、いかにも怒っているという様子だった。

 

 「な、なに言ってんのよ! この人、意味わかんない!」

 

 そう叫ぶと彼女は高坂のもとへ向かった。

 

 「ねえ! 誰なんですか? あの目の死んでる人!」

 

 はい、随分ストレートに言いますね。ご立腹なのですね。

 

 「比企谷くんだよ、スクールアイドル部のマネージャー、なのかな?」

 

 高坂が首を傾ける。

 

 「本当だよな。俺ってなんなんだろうな」

 

 「この人が言うと病んでるようにしか見えないにゃ」

 

 星空がストレート過ぎて辛いです。

 俺が立ち直れなそうになっていると園田が手をパンパンと二回叩いた。

 

 「三人の挨拶はだいたい終わりましたね。では、比企谷くんも」

 

 まあ、俺がするのは当然だ。一人だけ男子で目が腐ってるし、通報されかねない。

 しかも指示したのは園田なので逆らえない。

 

 「比企谷八幡 二年だ」

 「え? これで終わりですか?」

 

 俺がぼっち流の自己紹介を終えると小泉が驚き、西木野も何かに心底驚いたようだった。

 

 「先輩だったのね、この目のやばい人」

 

 まだ怒ってるだろお前。

 西木野の怒りを鎮めようと思索するが、特に思い浮かぶ案はない。

 俺が逡巡するように視線をさまよわせると、不意に高坂と目が合った。

 すると高坂は「あ!」と声を出す。

 

 「戸塚くんもいるんだよ! 戸塚彩加くん! えっと……、戸塚くんは正式なマネージャー……、だよね?」

 

 高坂の視線の先には俺ガイル。

 

 「おう。戸塚は天使だ。マネージャーか天使なのか聞かれると天使なマネージャーだ」

 

 「は? 何言ってんのこの人」

 

 うーん。まだ分かんないかー。

 論理的な思考でロジカルシンキングしたら分かると思うだけどなー……。

 

 「まあ、比企谷くんは戸塚くんの話になると急に気持ち悪くなりますからね。あ、急にじゃなかったです」

 

 見ると、園田はなんか幸せそうだ。

 俺の周りドエスが多すぎるんですけど?

 

 俺はコンセンサスを得るのを諦めると、こっそり教室を後にする。

 

 戸塚と逢瀬でもするか――。 

 

 ……まだ部活中か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戸塚たんとそろそろ一緒に活動させたい、
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