時系列的にはアーチャーの戦闘、カルデアでの幕間ですね。全部書くと終わらない気がしますのでこんな形になりました。
他の部分は頭の中で妄想補完してください
特異点冬木終了
金属と金属が連続でぶつかる剣戟の響きが洞窟に響く。
「ふん」
片方は白と黒の中華刀を使うシャドウサーヴァントのアーチャー。
「あらよっと」
もう片方はその双剣を鉄扇で往なしている青と白の基調とした着物を纏い白い仮面をつけたキャスター。
「ここだ」
「くっ」
最初は双剣を扱うアーチャーが有利かと思われたが二つの剣から繰り出される斬撃の隙間を突き、ところどころで反撃をするキャスターに勝負の行方は未だにわからない。
「ふっ、後衛でサポートをするのではなく、鉄扇で前に出てくるキャスターなど聞いたことはないな」
斬撃に皮肉を込めながら語るアーチャーに対して
「俺も弓じゃなく剣で戦う弓兵なんて……いや、探せばいるか」
キャスターは鉄扇でアーチャーの攻撃を受け止め、思案顔で別に弓兵が剣を持って勝負に挑んできたことそのものがたいしたことではないと口を開く。
「ほう」
「弓自体が近距離で戦うには向いてねえのに、近距離の対策をしてない奴はいないだろ」
「なるほど、それは一理あるな、ではこれはどうだろう?」
手に持っていた双剣をキャスターに投げつけるアーチャー。
「おっと、あぶね」
回転する双剣を躱してアーチャーに詰め寄ろうとするキャスター。だが、アーチャーの手には先ほど投げつけていた双剣がまた握られていた。
「おいおい、予備もあるのかよ」
「ああ、まだまだ出てくる。楽しみにしていてくれ」
「面倒だな、特別労働手当が欲しいぜ」
「ふむ、私が与えられるのは安らかな眠りだけだが?」
「そいつは勘弁だ」
話し合いながらも双方の攻防は止まらない。しかし、キャスターは鉄扇に映った先ほどアーチャーが投げつけていた双剣が自分に向かって飛んできているのを見てしまった。
キャスターは軽く舌打ちして回転しながら飛ぶ双剣を鉄扇で叩き落とし、アーチャーの攻撃も防ごうとするが、流石に一撃だけ貰ってしまった。
「くそ」
「先ほどの攻撃で決めにいくつもりだったのだが、流石にやるな。だが、そろそろ勝ちを譲って貰おう」
「そりゃ、どうも。だが、まだ負けてやるわけにはいかねえよ」
今度はキャスターが鉄扇をアーチャーに投げつける。アーチャーはそれを弾くが、その間にキャスターは腰に下げていた刀を抜いた。
「刀も使うのか。ますます正体がわからないな」
「まぁ、借り物なんでね。一手だけ舞ってやるよ」
キャスターはそう言って、自身が今出せる最大威力の刺突をアーチャーに向ける。アーチャーはその攻撃に対して双剣を二つ使って防御に回る。
強力な刺突によりアーチャーの体は後ろに下がる。しかし、この攻撃を凌ぎきれれば、キャスターは体勢を崩して、アーチャーの一撃を躱すことも防ぐこともできずに敗北するだろう。
刺突の威力がだんだんと弱くなっていきアーチャーは勝利を確信した。
――その時だ。
アーチャーの後ろから物理的な強い衝撃と痛みが走る。
「かはっ!」
肺から空気が吐き出され、アーチャーは思わず何かと後ろを見る。
視線の先にはキャスターが投げた鉄扇がアーチャーの背中に刺さっていた。
「……そういう事か」
キャスターは先ほどアーチャーがした攻撃をやり返したのだ。刀を抜いたのは舞う鉄扇に意識を向けないようにするためだろう。それに、ここまで無様に意識を敵に向けずに気が抜けたように突っ立っているのだ。
今度は前から刺される感触がする。
「悪いな。俺の勝ちだ」
「……フ……すっかり、騙されてしまった」
ニヒルに笑いながらアーチャーの体が少しずつ粒子となって空気に消えていく。
「……確かに、お前はキャスターだよ」
「うっせえ」
キャスターは消えていくアーチャーに対して仏頂面で見送った。
カルデアの食堂、調理場では双剣使いのアーチャー・エミヤが現在進行形でエプロンをつけて料理をしている。
「おお、美味そうだな。これ全部、エミヤが作ったのか?」
揚げたてで湯気が蠱惑的に揺らめいている鶏の唐揚げを見て思わず喉がごくりとなる。
「ああ、そうだが、味見に一つ食べるか、マシロ?」
「お、いいのか? じゃ、遠慮なく」
唐揚げを一つ摘まんで口の中に入れて噛みしめる。
「あっつ!?」
噛む瞬間に唐揚げの熱い肉汁が口の中で広がり、舌や口内を熱で蹂躙し、中々食べる事ができず、ただハホハホと口を開いたまま唐揚げの熱を冷まそうとする。
そんな自分の様をエミヤは悪戯が成功した子供のようにクスリと笑う。こいつ、こうなる事が分かってやがったな。思わずジト目で睨む。
「冬木での戦闘の意趣返しだ。後で唐揚げ数を増やしてやるから勘弁したまえ」
む、こいつ洞窟内の戦いを持ち出しやがった。まぁ、熱も冷めてようやく唐揚げの味を……舌が火傷して味がぼやけているが美味い唐揚げに免じて許してやる。
「二個増やせ、あと酒もだ」
「いいだろう」
唐揚げを食べた後に儀礼的な交渉を終え、コップに水を入れて飲み舌を冷やす。
「あ、マシロずるーい」
声がする方向を見ると自分をサーヴァントとして召喚したマスター・藤丸立香が自分を指さして非難する。おいおい、まだ舌が火傷したまんまなんだが。
「マスターも一つ味見をするかね?」
「うん」
元気よく頷き、片方に垂れた髪が尻尾のように元気に動く。
「この唐揚げがちょうどいい温度だろう」
自分とは違い火傷しないように適温の唐揚げを進めてやがる。まぁ、男から勧められるのは酒だけで十分だが。
「美味しー、エミヤって料理が上手なんだね」
「生前、色々とな」
そいつはすごい、自分の食生活を思い浮かべると缶詰とか菓子類とか買って食べるようなものばかりだったし、作って貰ってばかりだな。
「なぁ、エミヤ」
「どうした?」
「お前って菓子も作れるか?」
「作れるが、どうした?」
やったね。こいつは食後の甘味とか頼むと作ってくれるかもな。
「甘いものに目がなくてな。できれば、食後に甘い物と……」
近くで立香が『ずるい、私も』と喚いているが気にせず言葉を続ける。
「その作り方を教えてくんないか?」
唖然とするエミヤ、自分は何かおかしな事を言ったか?
ただ自分はこのグランドオーダーとやらが終われば元の時代に戻ることになる。その時に色々と菓子の作り方を覚えることができれば旅の楽しみが増えるというやつだ。
「いやなに、物好きなサーヴァントがいるものだと改めて思ってね」
「悪いかよ?」
「いや、全然」
後ろで立香が色々と騒いでいるなか、エミヤと菓子作りについての日程について話し合った。
そんな食堂の様子を離れた場所で見ている者が居た。
マシュ・キリエライト、カルデアでの故意に起こされた事故により致命傷を負うもデミ・サーヴァントとなり奇跡的に九死に一生を得た少女。
彼女の視線を探るとマスターの藤丸立香ではなく、その近くに居る白い仮面をつけたキャスター、マシロと名乗るサーヴァントに向いていた。
マシロは立香が冬木で戦闘の負担がマシュだけにかかってしまうために急遽召喚に応じてくれたキャスターだ。
「なんだ、ここ?」
彼はしばらく自分の陥った状況を把握できずに首を傾げていたが、時間経過によって口を開いてくれた。
「あー、サーヴァント? たぶんキャスターだな。名前はえーと……マシロ。マシロと呼んでくれ」
最初、元所長のオルガマリー・アニムスフィアが胡散臭い彼に対して文句を浴びせかけていたのは割愛する。
戦闘については鉄扇を用いた物理的戦闘方法、たまにサポートとして体力回復(とNP増加)をしてくれる。
そして、彼もマシュと同じく宝具が使えないサーヴァントだ。
マシュは宝具が使えないことをマスター達に申し訳なく思っていた。その事について冬木の聖杯戦争のサーヴァントとして召喚されたキャスター、クー・フーリンの荒療治で何とか使用できる状態になった。
しかし、マシロは宝具を使えないことを何とも思っていない様子で立香に向かって宣言した。
「洞窟にいるアーチャーは俺一人だけで倒すわ。悪いけど手を出さないでくれるか?」
結果はマシロの勝利、彼は本当に宝具を使わないで勝利した。いや、相手のアーチャー、エミヤも宝具を使わなかった……いや、彼も使えなかったらしい、それでもあの戦闘はマシュの中で印象的だった。
「なるほどな。サーヴァントにとって宝具は確かに切り札だ。だが、それを封じられても他のサーヴァントと技術、駆け引き、その他諸々のてめぇの持てるもん全てを使って勝利をもぎ取るのもサーヴァント。俺も焼きが回っちまったか」
とクー・フーリンは苦笑していた。
宝具が使えなくても戦える方法、マシュはその方法が知りたいと思った。だからこそ、カルデアに戻っても、立香と一緒に居たりもするが、視線をマシロに向けて、その戦える術を発見できるのではないかと期待するが
「未だに全然わかりません」
果たして彼女が理解する時が来るのだろうか?
久しぶりに書くと難しいこと難しいこと、頭の中では色々と動くけれど文章にしずらいですね。