カタカタカタとキーボードがリズミカルに叩かれ、モニター上には文字が入力されていく。
「うーん」
ずっとPCの前で作業をしていたロマニ・アーキマンは指の動きを止めて唸っていた。
「どうしたんだい、ロマニ?」
彼の背後からコーヒーが入ったマグカップを差し出され、ロマニはそれを受け取った。入れられたばかりのコーヒーは白い湯気がゆらゆらと漂っている。
「コーヒー、ありがとう」
「なに、構わないさ」
某有名な絵画の姿に前衛的な服装をしたサーヴァント、ダ・ヴィンチちゃんは自分の分のコーヒーが入ったマグカップを手に持って興味深そうにPCのモニターを眺めている。
「今、サーヴァントのプロフィールを作成してるんだけどね、彼のプロフィールだけがどうしても埋まらないんだよ」
弱弱しい笑みを浮かべながらコーヒーを飲んで顔を顰めるロマニ、コーヒーの熱と苦みで目が覚めるようチビチビ飲んでいる。
「ああ、彼か……」
マシロと名乗ったキャスター。彼はエミヤと同じく詳細が不明のサーヴァントだ。エミヤの場合は自己申告をしてくれたから助かったが、マシロの場合は自己申告でも要領が得られないので未だにどんなサーヴァントなのか不明なのである。
なので、現在埋められているプロフィールは以下のようになる。
クラス:キャスター
真名:マシロ
保有スキル
蘇生扇舞:味方単体のHPと状態異常の回復、NPの増加
クラススキル
陣地作成:自身のArtsの性能アップ
宝具:?
「1ページ目はこんな感じだね」
「まぁ、序盤も序盤だし、こんなものじゃないかな?」
「今はまだ発動してないみたいだけど、スキルに起死回生、戦術指揮、士気向上があるね」
「色々と使えそうなスキルがあるみたいで私としてはうらやましいよ」
「あはは、次にいくよ」
パラメーター:
筋力D 耐久C 敏捷C
魔力A 幸運D 宝具?
キャラクター詳細:
他の英霊たちとは違い彼に至っては詳細不明、それでも語るというのであれば、彼の服装は極東にあるアイヌ民族を思わせるような恰好であり、名前もそれに近い。彼のつけている白い面はイタコのように口寄せ、自身に憑依させ力を得て戦う戦士なのではないかと思われる。
※注意:この詳細は完全な偏見とこじつけでできているため鵜呑みにするものではない
地域:日本?
属性:中立・中庸
性別:男性
『特別労働手当が欲しいね』
「アイヌ? ロマニ、これって完全な偏見とこじつけではないかな? 君にしてはめずらしい」
「仕方ないでしょ、マシロに聞いても『俺は自分が英霊だと思ったことはないぞ、俺の力は全部、借り物だからな』ってはぐらかされるばかりだし、本当に予測がつかないし」
ため息を吐くロマンは相当追い詰められているみたいだ。
「しかし、パラメーターはエミヤと似ているね、その中で魔力と運だけ少し上ってところか」
「もしかしたら彼もエミヤみたく特殊なサーヴァントと言えるかもしれないね」
「人類側の抑止力として?」
「そうそう。とりあえず、あの子にはマシロ以外のサーヴァントの情報を渡すよ。この情報でサーヴァントについて知識を深めてくれたら嬉しいな」
そう言ってロマンはすっかり冷え切ったコーヒーを一気に喉の奥へと流し込んだ。
カルデア、最後のマスターのマイルーム。
人が泊まるには必要最低限な物しか置かれていないこの部屋で最後のマスターである藤丸立香がシャワーを浴びてリフレッシュしたり、ベッドで横になって眠りについて疲れを取ったり、その他にも色々な事をして彼女はこの部屋で過ごしている。
そして、その他の色々な事の中には立香がサーヴァントを部屋に呼んで雑談をするというものがある。これによって、彼女は呼び出したサーヴァントがどういった性格で何が好みで何が嫌いかとか色々と聞き出して、今後のレイシフトや戦闘の参考にするのだ。
今回、呼び出されたサーヴァントはキャスターであるマシロ。
彼は藤丸立香が冬木で初めて召喚した最初のサーヴァントだ。ちなみに初めて契約したサーヴァントはマシュである。
「んー、どうしたんだ、立香?」
「ちょっとマシロの話を色々と聞いてみたいなと思って」
少し眠たげにあくびをするサーヴァントに立香は偉人のそんな姿にやっぱり彼も元は人なんだなと少し安心する。
「俺の話か? 何回も言ってるが俺は自分を英霊だなんて思ってないぞ」
「違う違う、ただマシロの好みとか知りたいなって」
面倒臭そうなマシロに対して、思わず彼女は笑みを浮かべてしまう。マシロも『ああ、そっちか』と納得して、立香の目を見ている。話してくれるようだ。
「好きなものは?」
「そうだな、甘い菓子に、それから酒とつまみかな」
「おじさんっぽい」
出てきた答えは平凡なもので思わず立香は笑ってしまう。
「まぁ、おじさんだからな。エミヤがいてくれて助かった。これで俺の好きなものは酒以外そろったってことだ」
気分を害したわけでもなく受け入れて嬉しそうに自身が下したエミヤが来てくれたことを喜ぶマシロにどこか少しだけ首を傾げそうになるが言っていることは間違ってないので流す。
「じゃあ、嫌いなものは?」
「うーん、そうだなー。……働くことだな。だから、あんまり俺を使わないでくれると助かる」
「うん、無理」
「無理って、おいおい」
笑顔でマスターに頼みを拒否されてジト目で見つめるマシロに対し、立香は口を開く。
「だって、マシロの蘇生扇舞の使い勝手が良すぎて外せないし、何よりマシロがいると戦いやすいんだもん」
実際戦闘するのはサーヴァント達なので指揮を執ることや礼装によるサポートのことだろう。
「はぁ。せめて、特別労働手当を支給してくれよ」
大きいため息を吐いてから、せめて自身が頑張れるように飴が欲しいとマシロは要求した。
「次は聖杯について」
「聖杯ってあの願いが叶うってやつか?」
「そう、マシロは叶えたい願いってある?」
「そうだな、色々とあるが……やっぱり、やめとくわ。俺にはその望みを言う資格がない」
色々と物思いにふけっていたマシロは首を横にふってから儚げな笑みを浮かべて聖杯に叶えてもらう願いはないと口にした。
「それは、どうして?」
「秘密だ。大雑把に言うなら、そうだな。……過去を否定したくないってやつかな?」
それでも、どこか自分の言葉に納得いかなそう表情をマシロは浮かべた。
「さてと、色々と理不尽なことを押し付けられているみたいだが、まぁ、なるようになるさ」
マシロはそう言いながら、クシャクシャと立香の頭を撫でる。
アナウンスがマイルームで流れる。どうやら第一特異点が見つかったようだ。
「はぁ、面倒だな。でも、やるか、立香」
マイルームから出て、レイシフトをするために管制室に二人は向かうとそこにはすでに全員準備していた。
立香はロマニとダ・ヴィンチちゃん、そして、マシュと会話をしている。
マシロの方はこれから一緒に第一特異点に向かうサーヴァント達の方へと向かった。
「ふむ、マスターと一緒だったのか、マシロ」
一人はアーチャーのエミヤ。
「よーし、初めてだけど頑張っちゃうぞー」
もう一人はセイバーの新免武蔵。彼女はここカルデアで召喚されたサーヴァントだ。呼び出された理由はエミヤ、マシロ、マシュの三人のサーヴァントで行くと、前衛がまだまだ成長段階であるデミ・サーヴァントであるマシュだけになってしまうため、もう一人前衛が欲しいということで呼び出されたのが前衛の最もたるクラス、セイバーの武蔵である。
まぁ、エミヤもマシロも後衛のサポートクラスであるはずなのに思いっきり前衛で戦うのであるが……双剣と鉄扇をもって。
「どうやら、行くみたいだな」
アナウンスがレイシフトの開始を告げる。
「面倒なことにならなきゃいいが……」
この先、待ち受けている戦いに覚悟を決めて立ち向かう。
幕間の物語のような短編集がこの作品です。
サーヴァント詳細については、PS2の『大神』を参考にしています。
色々と詳しい方がいらっしゃったら申し訳ないです。
サーヴァントのパラメーターについてはエミヤを参考にしています。
普通の人が力を得たらということを考えるとエミヤに近いんじゃないかなと仮面の力を考えると筋力、耐久、敏捷が底上げされそうですが……
スキルについてはお察しですね。
起死回生のガッツ+全回復……チートですね