ジークフリートの呪いを解くためにくじで二手に分かれた立香達一同、立香の方についていったモーツァルトもそうだが、マシロ達のサーヴァントからもジャンヌ達についていくことになった。マシロとマルタである。
目的は聖人のサーヴァント、マルタは狂化が付与され、聖人であることをやめたためにジークフリートの呪いを解くことはできなかった。
そんなマルタは今、白と青を基調にした着物に似た格好でワイバーンを殴り飛ばしていた。
「ハレルヤ!」
メギョとワイバーンの胸部を陥没させるほどの威力を持った拳にマシロはあの拳がいつまた自分に襲い掛かるかわからず、あのワイバーンの姿が自分に重なって見え、苦虫を噛み潰した顔をしていた。
「うん、見た目に比べて思ったより動きやすいわね」
「そいつは良かった」
マルタの今の服装はマシロがどこかから出したもので、その服装はマシロにとって特別な女性と同じ青と白を基調にした着物のような服である。
マシロがマルタに服を渡した理由は竜の魔女の配下としてマルタの姿や恰好が伝わり、主にフランスに住む人々に警戒されないようにするためと竜の魔女にマルタが死んだと思わせる二つの意味を持っていた。
「しかし、すごいな狂化とやらは、普通、ワイバーンとやらを一撃で倒せないだろ」
ピクピクと泡をふいて地面に倒れ伏しているワイバーンを見下ろして思わずマシロは呟いていた。
「さぁ?」
マルタの返事に少し脱力しかけるが、気を取り直してマシロはロマンと連絡をする。
「立香達の方は外れみたいだ」
「なら、本命はこっち?」
「だろうな、それと竜の魔女が接近してるらしい、俺はジャンヌ達のサポートに行くがどうする?」
「私はここにいる人たちを先に避難させるわ。自分の事を優先させる権利は今の私にはないもの」
マルタのその目には迷いはなかった。命令されて殺戮に興じ血肉を啜ろうとも聖女の名誉を穢されたとしても、聖女でなくなったとしても彼女は人々を守り救いたいのだ。
「そうか、任せた。いいタイミングが来たら教えてやるよ」
「ええ、首を長くして待つことにするわ」
その場で二人は別々に行動した。
マシロはマリーと共にバーサークアサシン、シャルル・アンリサンソンを倒した後、竜の魔女と対峙した。
マリーは竜の魔女の主張に対して、自分の意見をきっちりと述べて、逆に疑問を口にする。
「あなたは誰なの?」
マリーのその言葉は竜の魔女の心に棘のようにささる。
「いや、こいつはジャンヌだろう」
竜の魔女が激昂する前にマシロは口を開いた。
「こいつがジャンヌ本人からは出てきてはないさ。ただ、望まれたから生まれただけだろう」
「望まれた?」
マリーは首を傾げる。
「アマデウスの言葉を借りるが、フランスが姫さんに恋してたなら、目の前にいるこいつは、我々が処刑したのは神の使いでも女神でもない、神の名を勝手に語った自分たちと同じ人だから心から恨んで憎んでいるはずだと、そういう自分たちが行ったことは正しいことだという願望からきてるんだろう」
マシロの言葉に竜の魔女は一瞬呆然としてから腹を抱えて笑いだした。
「なにそれ、私がここにいるってことは、あいつら全員罰せられたいってことなの? どんなマゾ豚よ。ええいいわ。なら、叶えてあげましょう。私は望んだからではなく望まれたからここにいる。私は確かに人類の敵、あんた達の敵よ!!」
竜の魔女から迷いのようなものが消えてしまった。
「あの、マシロ。これって大丈夫かしら?」
「……立香達には秘密で頼む」
どうしたものかとマシロは頭を掻くが、十分に時間は稼げただろうととりあえず良しということにした。それを証明するかのように遠くから音が聞こえた。
住民の避難はあらかた終わりジャンヌとゲオルギウスに任せて、マルタは街の方へ駆ける。その速度はアタランテと互角である。
「本気を出して走るのはいつ以来かしら」
聖女による立ち振る舞いという拘束が解け、狂化によって理性よりも感情的で自由な動きができるようになったマルタからしてみれば、駆けるという行動はとても心地が良く感じられた。更に友のために走るのだからもう気分は充実しているだろう。
街の上空にはワイバーンが旋回している姿が視認するとマルタはある程度、街まで近づいてから跳躍した。いや、跳躍というよりは飛翔である。それでもワイバーンには届かないために建物の壁を蹴ってもう一度飛翔。
「せいっ!」
そのまま昇る竜がごとくのアッパーをワイバーンの腹部にぶち当てる。深くささる拳にワイバーンは飛んでいるのにもんどりをうちながら落ちていった。しかし、マルタはその様子を見ずに民家の屋根に下りると周囲を見て、敵の数と目的地を確認する。
「あそこね」
マシロとマリーがいる場所、ちかくにぶん殴りたい竜の魔女やファヴニールもいる。しかし、マルタを邪魔するようにワイバーン達が群れで襲ってくる。
「邪魔すんなっての!」
拳でワイバーンを一撃で黙らせる。
「せいっ! たぁ! 邪魔ァ!!」
移動しながらもマルタが振るう拳は一撃でワイバーンを次々に地面に落とす。その姿はまさしくドラゴンスレイヤーである。瞬く間にワイバーンの数を減らし、目的の場所へ近づいて跳躍。マシロの近くへ着地する。
「待てなくて来ちゃった」
「気にすんな。こっちもぼちぼち呼ぼうと思ってたところだ」
マルタの軽口に応答するマシロ。
「マリーも無事?」
「ええ、大丈夫よ」
マリーが無事だったことにマルタはほっと胸をなでおろす。
「あんた死んだんじゃなかったの? それに、その恰好」
突然現れたマルタに竜の魔女は怪訝な表情で見る。
「あんたをぶん殴るために聖女をやめてやったわ」
「愉快な事になってるけど、そう簡単にいくと思わないでね、ファヴニール!」
コキコキと拳を鳴らすマルタに軽く舌打ちをしながら竜の魔女はファヴニールをけしかける。
ワイバーンとは格が違うほどの巨体を持った竜が大きな咆哮を上げながらマルタ達を見る。
「悪いけど、魔力もってくわよ!」
「は? おい、ちょっと待て!」
マシロの制止を聞かずにマルタはファヴニールに突っ込む。
ファヴニールは一匹の小さなとるに足らない虫けらが近づいたとしか思ってなかっただろう。
この時までは……。
衝撃が体の中心を貫き、呼吸さえ止まったと錯覚するほどの一撃にファヴニールは混乱する。しかし、それは始まりに過ぎない。その一撃は連続で体の中を通過する。堪らず前足の爪で引っ掻こうとするが拳で自慢の爪を砕かれる。口を開いてブレスを吐こうとするが、下あごから強い衝撃がきて、無理やり口を閉じさせられた感覚がきてからファヴニールの意識は少し朦朧としていた。
そんなファヴニールの状況を少し離れた場所でマシロとマリーは見ていた。
「連続のマシンガンブローのコンボに、爪を拳で粉砕、ブレスをアッパーで止めるかよ、普通」
「マルタって凄いのね」
「あ、まだ追撃しようとしてるな」
マシロの視線の先でマルタがファヴニールの巨体を足場に駆け上がり、真上へ跳躍した。
「来なさい、タラスク。流星のように!」
回転しながらタラスクがマルタの下へ飛んでいき、マルタの拳が回転しているタラスクの中心を殴り、回転したままタラスクは凄まじい速度でファヴニールをすりつぶすかの如くぶつかり、その衝撃が地震のように街を揺らす。ファヴニールは死んではいないがぐったりと気絶していた。
「……一人で倒しちまったぞ」
しかし、それだけでは止まらない。ファヴニールに駆け寄ろうとする竜の魔女の顔面にマルタは渾身の右ストレートを叩き込み、十数メートルほど、途中地面でバウンドさせるほど吹っ飛ばした。
「………………」
マシロの中でこのまま特異点修復できそうだなと思ってしまった。
『マシロ、すぐにその場から離れてくれ。そこに敵サーヴァントが4体、接近している!!』
しかし、そううまくはいかないらしい。
「ふぅ、すっきりした」
いつの間にかマシロ達の傍まで来ていたマルタがいい汗を掻いたとばかりにすがすがしい笑顔を浮かべている。
「とどめはささなかったのか?」
「ジャンヌの分がなくなるでしょ」
「律儀なやつ、このまま立香達のところまで逃げるぞ!」
マシロ達はその場を後にして、立香達のところまで無事に逃げ切った。
ドラゴンスレイヤーマルタ降臨。
マルタは霊衣的にクオンの恰好をしています。
ジャンヌ・オルタの設定は変わっていないですが、マシロの発言によりプラシーボ効果で強くなってしまいました。後、マリー生存です。
宝具にいたっては、ライダーでもルーラーでもないので変えたので、間違ってはいないです。魔力消費は足りない分は未来にいるマシロ本体からサーヴァント体経由で賄っております。
この話蛇足じゃないのかと思ってしまったそこのあなた。間違ってないです。
目的がマルタをクオンの恰好にさせることとドラゴンスレイヤー化、竜の魔女を殴るを消化させるためのものです。ついでにマリー生存ルート。