清姫との関係性
「私はあなたを認めるわけにはいきません」
マシロが一人で居たときに、そんな言葉をかけられた。視線を向けると立香達が出会ったサーヴァントの一人、清姫が親の仇のようにマシロを睨んでいた。
「認めないって、立香のサーヴァントであることか?」
出会って間もないマシロにしては思いつくのはその程度だが、清姫は首を横に振る。
「いいえ、違います。私はあなたのサーヴァントとしての成り立ちを認められないと言っているのです」
マシロは思わず、清姫が自分のことを知っているのだろうかと彼女の恰好を見る。確かに自分の周囲には彼女のような角が生えている種族はいるが、彼女に会った記憶がない。
じーっと観察されるようなマシロの視線に、清姫は呆れたようにため息を吐いてから言葉を続ける。
「何を勘違いなさっているかわかりませんが、私には逃げた大ウソつきを焼き殺したという逸話があります。それゆえに私は嘘がわかるのです」
マシロは過去に出会ったことがあるのではという予想は外れたが、嘘がわかるというのはどこか実感できなかった。
「あなたは嘘を最後まで貫き通したサーヴァント」
「!?」
清姫の言葉にマシロは驚愕に目を見開き、オシュトルの死から始まった数々の出来事が思い浮かんで消えていく。
「どんな嘘をついたのかは私にはわかりませんが、サーヴァントになるという事は素晴らしい事をしてきたのでしょう。でも、その嘘をつかれた者には哀しみや嘆き、憎しみがあったことは嘘をつかれたことのある私には共感できてしまいます」
悲し気な表情で清姫は俯く。
「なぜ、私がこんな話をしたかと言うと、共闘する私としてはあなたとはどうやったとしても私の本質があなたという存在を受け入れることができないということを理解して欲しかったのです」
清姫は次回、マシロと共闘することになったとしても上手く連携がとれないし、もしかしたらマシロに対して危害を加えるかもしれないという忠告に来たのだった。
「その事を誰かに話したのか?」
「いえ、今のところには誰にも」
「なら、そのまま秘密にしておいてくれると助かる。あまり、聞かれたくない類の話なんでな」
「まぁ良いでしょう。私としてもあなたのことについて言及したいとは思いませんし、でもこれだけは言っておきます。これから私に嘘はつかないでくださいね」
清姫はため息を吐いてから、話はここまでという様子でそそくさとマシロから離れていった。
マリーとの関係性
「よう姫さん」
「あら、ごきげんよう、マシロ」
軽く挨拶を交わすマシロとマリー。マリーはマシロが抱えている紙袋に少し首を傾げる。
「その紙袋は立香に渡すのかしら?」
「違うよ。姫さんの好みがブリオッシュだって聞いたから、エミヤのヤツに作って貰ったんだ」
紙袋ごと渡されたことにマリーは思わず面食らってしまったが、すぐに「ありがとう」とお礼を言って紙袋を受け取った。
紙袋の口を開くと美味しそうなバターの香りが漂っていた。
「これをエミヤが?」
「ああ、パンまで焼けるとは凄いよな」
あのニヒルで皮肉屋なエミヤが美味しい料理を立香達に振舞っていたのは知ってはいたが、まさかパンまで作ってしまうとは二人は思っていなかった。
「せっかくだから一ついただくわね」
マリーは立ったまま、紙袋の中に右腕を突っ込んで、ブリオッシュを一口ほどちぎってから「行儀が悪いって怒られてしまうわ」と悪戯っ子な笑みを浮かべながら口に入れた。
「……今まで食べたブリオッシュよりおいしいわ」
素直に美味しいという感想を口にしたマリーに、マシロは懐から小瓶を取り出す。
「あら、その瓶は?」
「これはレンニュウ、こっちで言うとコンデンスミルクだったか」
瓶のふたを開けて中身をみせると中にはカスタードクリームより色の薄いクリームが入っていた。
「舐めてみるか?」
「いいの?」
マシロが頷いて許可を出し、マリーは瓶の中に右手人差し指を突っ込んで、指についたクリームを口に含む。
「甘くて美味しいわね」
「ああ、だけど、俺が居た時代ではこんな味は出せなかった」
マシロの言葉にマリーは先ほどまでレンニュウのついていた人差し指を見る。
「確かに、これは美味い。なんというか俺の時代の作られていたものよりもこっちの方が上だろう。だけど、なんというか、自分が食べたかったものと違うんだ。俺は俺が居た時代のレンニュウが食べたかったんだと」
悲し気に笑うマシロにマリーは何故、マシロがレンニュウを自分に食べさせたのか理解した。
「気付いていたの?」
「俺もこれを作って味を確かめて、昔食べたものは、これとは違うとなったからな、もしかしてくらいにしか思ってなかったさ」
マリーがエミヤ作のブリオッシュを食べて感想をいうまでの数秒間、その時、マリーの記憶の中にあるブリオッシュの味の違いにふと寂しい思いをしていたことをマシロは目についてしまった。ただ、それだけである。
「これはこれで美味しい、だけど思い出の味とは別ってくらいでいいんじゃないか。それくらい許されるだろ」
別に郷愁で顔を顰めても問題ないとマシロは口にしていた。
「人によっちゃ、それこそ自分の時代の国が一番好きだってやつもいるだろうし」
「ええ、そうよね」
マシロの言葉にマリーは肯定する。
「ところでマシロ」
「どうした、姫さん?」
「このブリオッシュに、そのレンニュウをつけて食べるというのはどうかしら?」
「そいつは盲点だった。さっそくやってみよう」
マリーの提案にマシロは笑みを浮かべる。
「でも、全部食べたことがばれたら怒られてしまうわ」
「なら、二人の秘密にしよう」
「ええ、そうしましょう」
悪戯を思い浮かべて実行する子供のような笑みを二人は浮かべながら、ブリオッシュにレンニュウを塗って頬張った。それは悪魔のように甘い秘密の味がした。
清姫ってマシロとは仲良くできないだろうなと思って書いてみました。
オウギが地獄の底まで貫き通せば嘘じゃないとは言ってはいたけども、清姫には関係なさそうだなと、第一特異点が終わっても、マシロがいる限り清姫は仲間になりません。溶岩水泳部存続の危機?
マリーの話は実際にリアルで牛乳にメープルシロップ煮詰めてレンニュウ作ってみたはいいものの、多分、マシロの世界のレンニュウとは違うんだろうなと思いながら出来上がった物語。
昔の方が美味しいという人と食が発展して今が美味しいという人、多分、それぞれが美味しいんだろうなと自分は思います。
ブリオッシュ? 作れないから買ったよ。悪魔のような甘さ? ブリオッシュの材料を検索してね。メープルシロップもやばいのに……