エピソード0「僕の話をしよう」
さて、僕の話をしようか。え?聞きたくない?そもそもお前は誰だって?
ふむ、それもそうだね。まずは自己紹介といこうか。
“僕”はマーリン。人間の母と夢魔の父との間に産まれたハーフだよ。
夢魔の父は人間じゃないけど女が大好きで、魔術師だった母を孕ませたんだ。そこに愛はなかったと母は言っていた。
だから僕は父が嫌いだし、そもそも顔は知らないよ。何故なら、父親は母さんに殺されたからね。まあ、殺されても仕方ないんじゃない?クズで畜生だったみたいだし。
僕の世界は母だけだった。生まれてからずっと母が一緒に居たし、愛された・・・・・・と思う。何故か?それは僕の半分が夢魔だからさ。
人間じゃないから、人間と同じ感性を持てない。人間の感情が分からないんだ。でも、理解はできる。違いが分からないって?感じるのと理解できるとでは大違いさ。
実を言うとね、僕は“転生者”なんだ。
一つ言っておくけど、僕には前世の記憶なんてもの無いに等しい。
ここは前世の僕が生きた時代よりも遥かに過去で、平成と呼ばれる時代の知識が少しあるってくらいかな。
知識と言っても、自動車や飛行機、寿司やラーメンやカレーライス。後は適当は漫画や小説やアニメ位しか残ってなかった。
前世の家族の記憶も無いし、死んだときの記憶も無い。更に言えば、自分が何者だったのかすらわからないんだ。
ま、どうでもいいけどね。今の僕が生きるのに必要な事ではないからね。
でも、これが原因で僕の精神は幼い赤子の状態で成熟してしまった。全然子供らしくなかったんだ。
それでも、母さんは僕を愛してくれた。うん、酷いくらい愛してくれたね。
さてと、僕の幼少時代はそれくらいでいいだろう?正直言うと恥ずかしいんだ。
人間のような感情は無いんじゃなかったのかって?あはは、まあね。
恥ずかしい感情は無いけど、恥ずかしいと理解しているが正解かな。言っておくけど、これでもかなり改善された方なんだ
なんだいマスター?僕の昔話に興味が出てきたから聞きたいって?幾らなんでも物好きじゃない?
で、何が聞きたいんだい?
僕の母さんについて?あーうん。母さんかぁ・・・・・・。
さっきも言ったけど、僕の糞親父は夢魔だ。何故母さんが夢魔の父とで僕を産んだかだけど・・・・・・母さんが魔術師だったからだ。
元々、夢魔の父は母さんが手違いで召喚してしまったのが原因だ。最初はとある計画で竜の使い魔を呼ぼうとしたらしいけどね。
で、召喚に大半以上の魔力を使ってしまい、隙を付かれて孕まされたそうだ。
母さんも言っていたけど、アレは人生で一番の屈辱だそうだよ。それでも、孕んだ子には罪は無いと僕を産んだ。
彼女は生粋の魔術師でありながら、実に“人間”らしかった。
君も知ってるとは思うけど、魔術師に碌な人間はいない。いやまあ、例外はいるけど大半は外道や非道、クズが多い。
母さんも分類から言えば外道で非道かもしれないね。でも、決してクズでは無かったよ。
母さんは、いろんな意味ですごい女性だった。僕にとっては魔術の師でもあり、剣術の師であり、僕に感情を理解させてくれた偉大な魔術師だ。
ウーサー王の直属魔術師でもあり、正直なんで母さんじゃなくて僕が冠位を得てしまったのか謎だよね。母さんが本気になれば、星ひとつ消せるね。間違いなく。
そんな母さんの指導の下、僕は辛い修行の日々に落とされることになったんだ。
ああ、言っておくけどここは語る気はない。思い出したくないからね。
それから、僕は二人の友人を得た。そう、かけがえのない友人だ。
一人は僕の永遠のライバルにして大親友のケイ。小さい頃かの修行仲間でもあったね。
もう一人はモルガン。歴史上では裏切りの魔女だとか、ブリテンを滅ぼした元凶とも言われてしまっている。実際は優しい女の子なんだけどねぇ。
正直、僕はブリテンという国とはかかわり合いたくなかった。
当時の国王であるウーサー王は正真正銘極悪非道な王だった。人としても王としても、僕は大嫌いだったね。っていうか、アレを好きになる人はいないと思う。国民全員から嫌われる王っていうのも珍しいしね。
だから僕は田舎の村に引きこもることにしたんだ。のんびり農業して、平凡に暮らす。それはとても尊くて儚い願いだったんだ。
ついでにケイとモルガンも僕に付いてきてくれた。って言うか、国に居たくないって逃げて来たんだけどね。
二人との同居生活はとても楽しかった。うん、本当に楽しかった。何時までもこの時間が続けばと思った。
そんなある時、僕は一人の赤ん坊に出会った。後のアーサー王ことアルトリアだ。
僕は彼女の赤ん坊のころから知っている。いわば、妹のように感じている。昔の彼女は本当に可愛かったし愛くるしかったよ。この時代のカメラがあったら間違いなく、写真と動画に保存してるね!
え?お前が王の血と竜の心臓でアルトリアを生んだんじゃないのかって?ハッハッハ、無理無理。僕は何もしてないさ。だって、それをやったのは母さんだよ?チートオブチートの母さんだよ?僕にどんな人体錬成が出来るわけないじゃん。
正確には、糞野郎のウーサー王が自分の世継ぎを人工的に生み出すために母さんに依頼して作った改造人間だね。
本当、虫唾が走るよ。
―――っと、もうこんな時間か。話が長かったかな。ごめんねマスター、それじゃ少し休息を入れようか。
僕が作ったお菓子でも食べるかい?今日のシュークリームは会心の出来だと思うんだ。序に紅茶もどうぞ。これはストレートで飲むのがおススメだ。
おいしい?そりゃよかった。僕は昔から料理が趣味でね。いろんな世界と時代の料理を作るのが好きなんだ。何せ、アヴァロンに引きこもってと暇でね。千里眼で世界を見て、食文化を学んだものさ。
いやぁ懐かしいなぁ。昔、円卓の騎士たちにも僕の料理を御馳走したなー。ああ、そういえば一個だけ激辛入りを混ぜたんだ。ちょっとした悪戯気分で。
で、見事に当てたのがアルトリアなんだよ!いや~、あの時の彼女は本当に傑作で・・・・・え、何?後ろ?
あ、アルトリア!?なぜここに!?君はレイシフトで資材を集めに行ったんじゃ!?
「マーリン、貴方は昔からそうでしたね?王になる前から兄であるケイと共に私をからかって遊んで!何度貴方に泣かされたと思ってるんですか!何度、モルガンに慰めてもらったと思ってるんですか!」
「何度だろうね?でも君の泣き顔は可愛かったよ」
「なっ!?も、もう許しません!約束された―――!」
「ちょっ!?ここで宝具を使う気か!?て、いつの間にかマスターが既に逃げていない!?酷いよ!?」
「―――勝利の剣ァーーーー!」
「」ちーん
「ふん!人の気も知らないくせに!そんなだから、モルガンに告白する前に失恋するんですよ!このヘタレ!」