ストライク・ザ・ブラッド―混沌の龍姫―   作:アヴ=ローラ

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某青年貴族の正体(オリ設定)が明かされます。


戦王の使者 参

 その日の夜。姫乃は那月達に『ちょっと出掛けてくる』と言って、港湾地区(アイランド・イースト)の大桟橋に一人で来ていた。目的は当然、絃神島に訪れてきた最愛の彼に会うためだ。

 アルデアル公ディミトリエ・ヴァトラー。その彼が、姫乃が数ヶ月ぶりの再会を果たしたい、愛しい者の名である。………まあ、この名は第一真祖がつけたものだが。

 姫乃がつけた彼の名前は別にあるのだが、それはのちに分かることなので今は伏せておくとしよう。

 姫乃はヴァトラーのクルーズ船〝オシアナス・グレイヴ〟の中へと乗り込む。その際、大勢の招待客がジロジロと見てきた。彼女の恰好がメイド服だったからだろう。

 だが姫乃にはそんなのは関係ない。彼らの視線などどうでもいい。ワタシが会いたいのは()()()だけ。

 

「………ん?」

 

 しかしヴァトラーに早く会いたい彼女でも、彼らだけは特例だった。その彼らとは、普段は着なれないであろうスリーピースのタキシード姿の少年―――暁古城と。白地に紺色のパーティドレスを着た少女―――姫柊雪菜のことだ。

 今朝、姫乃の特訓を受けていた彼らが此処に来ている理由。それは言うまでもなく、ヴァトラーに招待されたからだろう。ヴァトラーにとって第四真祖は愛しい好敵手(ライバル)なのだから。

 彼らが来ているのなら接触しておこうかな、と思った姫乃は、早速話しかけに行こうと行動に移る。が、雪菜の手を握り返そうとした古城の腕に、栗色の髪にチャイナドレス風の衣装を着た少女が殺気を伴った銀色の光―――フォークを振り下ろしているのを確認するや否やで飛び出し、その一閃を人差し指で受け止めた。

 え?と驚く古城と、跳び退くフォーク少女。いきなり現れた者の正体が那月のメイドラゴン―――姫乃であることを理解して、古城は驚きの声を上げる。

 

「か、空無!?何であんたがこんなとこにいんだ!?」

 

「………ワタシもこの船に用事があるからいる。それより平気、古城?」

 

「え?あ、ああ………空無のお陰で大丈夫だよ。ありがとな」

 

「ん」

 

 古城は姫乃の頭に手を置いて撫でる。お礼のつもりでやった行為だったが、彼女は嫌がらずに受け入れ、寧ろ喜んでいるような気がした。

 そんな光景をフォーク少女は、あり得ないものを見ているかのような表情で呟く。

 

「な、〝混沌の龍姫〟が………変態真祖に手懐けられてる!?」

 

「誰が変態だ!?空無を手懐けた覚えもねえよ!」

 

 失礼極まりないフォーク少女を睨んで怒る古城。姫乃もフォーク少女を無感動な瞳で見返して言った。

 

「古城に手懐けられた覚えはない。ワタシの御主人様は、南宮那月だけ」

 

「南宮那月………!?そう、あの噂は本当だったようね。世界最強の龍神(ドラゴン)が、〝空隙の魔女〟のメイドをしているっていう噂は」

 

 冷や汗を背中に感じ取りながらも、姫乃から目を逸らさないフォーク少女。フォーク少女と姫乃が睨み合って(正確には姫乃はただ見返してるだけ)いると、雪菜が戻ってきて驚きの声を上げた。

 

「―――紗矢華さん!?それに、空無さんまで!?」

 

「あ、雪菜」

 

 姫乃が雪菜に視線を向けた刹那、紗矢華と呼ばれた栗髪少女が勢いよく雪菜に抱きついた。ポニーテールに纏めた後ろ髪が喜ぶ犬の尻尾のように揺れている。

 

「雪菜!久しぶりね、元気だった!?」

 

「は、はい」

 

 紗矢華との突然の再会に、雪菜は軽く戸惑っているようだ。しかしそんな雪菜の反応などお構い無しに、紗矢華は自分の頬を、雪菜の首筋にぐりぐりと押しつける。

 

「ああ、雪菜、雪菜、雪菜っ………!私がいない間に、第四真祖なんかの監視任務を押しつけられて可哀想に!獅子王機関執行部も私の雪菜になんてむごい仕打ちをするのかしら!」

 

「あ、あの………紗矢華さん………!?」

 

「でも、もう大丈夫よ。この変質者があなたに指一本でも触れようとしたら、私が即座に抹殺―――」

 

「それは駄目」

 

 紗矢華の言葉を遮るように姫乃が拒否した。姫乃は古城の袖を摘まんで紗矢華を睨み言った。

 

「古城はワタシの特訓を受けて強くなることを約束してくれた。だから、ワタシが満足出来るほど強くなるまでは、彼の抹殺を許可しない」

 

「ちょっと待てェ!」

 

 姫乃のとんでもない発言を聞いて、古城はすぐさま待ったをかけた。

 

「ん?」

 

「何言ってんだよあんたは!それじゃあまるで、空無を満足させられるほど強くなったら俺を抹殺していいみたいじゃねえか!」

 

「うん」

 

「うん、っておまえなあ!確かに第四真祖(オレ)は簡単には死なねえけど、痛い思いをするのは御免だ!」

 

 痛い頭を抱えて唸る古城。姫乃は、なるほど、と古城の気持ちを理解して頷く。

 一方、いまだに雪菜に張り付いていた紗矢華は、古城を嘲るような表情で眺め、いい気味ね、と呟く。

 それからすぐに紗矢華は雪菜に視線を戻して、むしゃぶりついた。

 

「ちょっ………さ、紗矢華さん………流石にそれは………やっ」

 

「おい」

 

 立ち直った古城は、そんな隙だらけな紗矢華の後頭部に手刀(チョップ)を叩き込む。きゃっ、と悲痛な声を上げて紗矢華が怯えたように跳びずさった。

 ようやく紗矢華から解放された雪菜は、ホッと安堵の息を吐き、古城の背後に回り込む。

 紗矢華は殴られた後頭部を押さえて、キッと古城を睨んだ。

 

「何するの。触らないでよ、変態真祖!」

 

「だから俺は変態じゃねえ!つか、姫柊にむしゃぶりついてるおまえの方がよっぽど変態だろ!」

 

「はあ!?誰が変態よ!ド変態真祖のあなたなんかと一緒にしないでくれる!?」

 

 歯を剥いて怒鳴り、睨み合う古城と紗矢華。姫乃はそんな彼らを無感動な瞳で眺めて言った。

 

「………どっちも変態だと思う」

 

「そうですね。どちらも変態です」

 

 姫乃に同意する雪菜。雪菜に変態扱いされて、ガーン!とあまりのショックで顎が外れんばかりに大きな口を開けた状態のまま石化する紗矢華。

 古城は、紗矢華と同類にされて納得がいかないような顔をした。確かに雪菜に〝いやらしい〟と言われることは多々あったが、大抵不可抗力によるものだ。だから俺は変態じゃない!

 古城はそんなことを思いながら、石化している紗矢華を一瞥したあと、雪菜に向き直り訊いた。

 

「紗矢華って、たしか姫柊がさっき言ってた元ルームメイトだっけか?」

 

「………はい」

 

 どこか申し訳なさそうに古城を見上げて頷く雪菜。そんな古城達の会話を遮るように、いつの間にか復活した紗矢華が横から割り込んできて言った。

 

「煌坂紗矢華。獅子王機関の舞威媛よ、あほつき古城」

 

「あ、か、つ、き、だ。わざとらしく言い間違えんな!」

 

 古城は怒鳴り返して紗矢華を睨む。これだけの騒ぎを起こしていても、パーティ会場にいる客達はそれを気にしている様子はない。そういえば姫乃が接触してきた時には既に客達はこちらに関心がなかったような気がした。

 

「舞威媛ってなんだ?剣巫とは違うのか?」

 

 古城がもう一度雪菜に質問すると、彼女は小さく首を振った。

 

「どちらも同じ攻魔師ですけど、修めている業が違うんです」

 

「業?」

 

 眉を顰めた古城を見て、紗矢華が得意げに言い放つ。

 

「舞威媛の真髄は呪詛と暗殺。つまり、あなたのような雪菜につきまとう変態を抹殺するのが、私の使命よ」

 

「つきまとってねえよ!どっちかと言うと、つきまとわれてるのは俺の方だ!」

 

「何勝ち誇ってるのよ!?別に羨ましくなんかないんだけど!」

 

「羨ましがらせようと思って言ってんじゃねえよ!」

 

 互いに激昂しながら古城と紗矢華が睨み合う。雪菜は目を覆いながら弱々しく首を振った。

 

「でも、どうして紗矢華さんが?外事課で多国籍魔導犯罪を担当していたんですよね?」

 

「今もそうよ。この島には任務で来たの」

 

 別人のように優しげな口調で紗矢華が答える。雪菜(好き)古城(嫌い)の激しい少女だ。雪菜が驚いて瞳を細める。

 

「任務?」

 

「あなたと同じよ、雪菜。吸血鬼の監視役。アルデアル公が絃神市の住民に危険に曝さないよう、監視するのが私の任務。今は彼に依頼されて―――ッ!!?」

 

 紗矢華は途中で言葉を切って咄嗟に跳び退く。突如凄まじい殺気が彼女を襲ったからだ。

 雪菜と古城も、背後から感じ取ったゾッとするような殺気に、冷や汗を流しながらゆっくりと振り向く。

 二人の目に映ったのは、相も変わらず無表情な姫乃。しかし彼女の瞳には明確な〝怒〟が刻まれており、それは紗矢華に向けられていた。

 さっきまで紗矢華に対して関心の〝か〟の字も示さなかった姫乃。が、今は恐ろしいほどの怒りが全身から滲み出ている。

 古城がそんな彼女に声をかけようとした瞬間、その彼女が不快そうに眉を寄せて紗矢華に言った。

 

「ふうん。オマエ如き下等生物(ニンゲン)が、ヴァ君の監視者?笑えない冗談を言うのはやめて欲しい」

 

「え?ヴァ君………?」

 

 雪菜がそう呟くと、何故か鋭い視線で姫乃に睨まれた。その瞳は、ワタシ以外がその愛称を呼ぶことは許さない、と訴えてきているようだった。

 紗矢華は幼女(ロリ)とはとても思えない姫乃の凄味に、今すぐにでも逃げ出したくなるような衝動に駆られる。が、何とか姫乃を見返して言った。

 

「じ、冗談ではないわ〝混沌の龍姫〟。私は日本政府から、アルデアル公の監視の命を受けてるもの」

 

「そう。じゃあ、日本政府のゴミ共は今夜中に始末しに行かないといけないかな。ワタシの可愛いヴァ君に手を出した愚かなゴミ共に罰を与えないと」

 

「―――ッ!!?」

 

 姫乃のその言葉を聞いて紗矢華は、この子は此処で始末しないとまずい、と思いキーボード用の黒い楽器ケースに手を―――

 

「(………!?しまった!〝煌華麟〟は今は携帯していないじゃない!)」

 

 そう。紗矢華は今〝煌華麟〟と呼ばれた六式重装降魔弓(デア・フライシュッツ)を持って来ていない。そも姫乃が来ていること自体がイレギュラーだったため、武器は携帯してこなかったのは仕方がなかった。

 紗矢華が悔いるように唇を噛み締める。一方の古城は、姫乃の言葉を聞いて慌てて止めに入った。

 

「ちょっと待て空無!それだけはやめろ!………つかまるで話が見えないけど、どうしてあんたがディミトリエ・ヴァトラーを気にかけてるんだ?」

 

「それは第四真祖でも教えられない。ワタシとヴァ君の関係を知っている人物は、世界に三人しか存在してない。それほどとても秘密な関係だから」

 

「世界に三人しか………!?それってもしかして、三名の真祖のことですか!?」

 

「うん」

 

 即答する姫乃。それは隠す気はないらしい。よくそれで秘密が知られずに守られていたものだ。

 それはさておき、と姫乃が日本政府を殲滅しに行こうと転移用の魔法陣を展開した瞬間………銀色の閃光が煌めき、魔法陣を切り裂いた。

 姫乃は魔法陣を切り裂いた〝雪霞狼〟の持ち主である雪菜を睨んだ。

 

「何の真似?雪菜」

 

「すみません空無さん。あなたを行かせるわけにはいきません。もし、日本政府を消しに行くつもりなら―――わたしはあなたを殺してでも止めます!」

 

 雪菜は〝雪霞狼〟を姫乃に突きつけて宣言する。しかし姫乃はつまらなそうな瞳で雪菜を見返した。

 

「雪菜、〝雪霞狼〟じゃワタシを殺せない。無意味な行為は感心しない」

 

「………っ!」

 

 雪菜は悔しげに顔を歪める。魔法陣には有効でも、姫乃本体には通用しないことは分かっていた。けど、此処で引くわけにはいかない、と〝雪霞狼〟を下ろさずに姫乃の胸元に切っ先を向ける。

 すると姫乃の態度は打って変わって余裕がなくなり、両手を振って雪菜に言った。

 

「嘘。その槍で心臓刺されたら消滅しちゃうから、下ろして欲しい」

 

「「「え?」」」

 

 姫乃の言葉に、雪菜だけでなく古城と紗矢華も驚いた。龍神(ウロボロス)の分身体とはいえ、獅子王機関の武器で滅ぼせるとは思いもしなかったのだ。紗矢華に至っては、姫乃を龍神本体だと誤解しているため、雪菜や古城以上に驚いているわけだが。

 雪菜達は知らないが、〝雪霞狼〟の真の効果は魔力無効化やあらゆる結界を切り裂く程度で留まるモノではない。

『世界を本来在るべき姿に戻す』―――その効果は、龍神本体ではない分身体の姫乃を消滅させられるだけの力がある。何せ姫乃は本体が生み出した分身体で、本来存在しないはずの(ドラゴン)なのだから。

 雪菜は驚きつつも、罠かもしれない、と警戒して姫乃に問いただした。

 

「それは本当ですか?わたしを油断させるために吐いた嘘ではないんですか?」

 

「本当。………試しに刺してみる?消滅したらワタシとは金輪際会えなくなるけど」

 

「え!?」

 

「それにワタシが死んだって知ったら、御主人様が怒って雪菜を殺しに来るかもしれない」

 

「―――ッ!!」

 

 ハッと雪菜は思い出す。そうだ。姫乃をメイドとして雇っている那月(主人)がいるじゃないか。それなのに姫乃を殺したりしたら那月が復讐しにくるのは目に見えてる。

 ならば此処は穏便に事を済ませなければ、と雪菜は思い、姫乃に突きつけていた〝雪霞狼〟を下ろした。

 

「分かりました。今回は両者痛み分けにしましょう。わたしは空無さんを抹殺しません。ですからあなたも日本政府には手を出さないでください」

 

「分かった。日本政府には手を出さない。煌坂紗矢華もヴァ君の監視者として認める。でも、一つだけ忠告させてもらう」

 

 姫乃はフッと完全に感情を殺すと、雪菜と紗矢華を〝無〟の表情で見回して告げた。

 

「ヴァ君に刃を向けたらその時は―――この世界ごとオマエたちを沈めるから、覚悟しとく」

 

「「「―――――ッ!!!?」」」

 

 姫乃の〝無〟表情で告げた『世界滅ぼす宣言』に、三人はぎょっと目を剥いた。其処までしてヴァトラーを守ろうとする姫乃………ますますその関係が知りたくなる三人。

 いや、それも気になるが、姫乃が自分を滅ぼせる武器を向けられただけで大人しく言うことを聞いたのは不可解だ。彼女ならば雪菜の攻撃を容易く避けられるはずだというのに。

 姫乃が此処まで慎重な理由。それはもしかしたら、この場所だからなのかもしれない。彼女はヴァトラーの船を壊してしまわぬように、下手に動こうとしないのだろう。それなら納得がいく。

 その姫乃は、無感動な声音で古城達に言った。

 

「………じゃあ、早くヴァ君の所に行こ。特に古城には会いたがってるから」

 

「………俺に?」

 

 古城が自分を指差しながら訊くと、姫乃はコクリと頷いた。それから姫乃が足で床を軽くトンと叩くと、古城達は一瞬で船の上甲板に移動した。空間転移である。

 この現象に古城と雪菜は何度も経験しているため、別段驚きはしない。が、紗矢華は初めての経験だったのか、唖然としていた。

 古城は、漆黒の海と夜空を背景にして、広大なデッキの隅に立っていた一人の男を発見する。金髪に純白のコートを纏った美しい青年だ。

 その彼は、古城達の気配に気づいて振り返る。そして彼は碧眼で古城を見るや否やで、純白の閃光を撃ち放った。

 

「―――先輩!」

 

 真っ先に反応した雪菜は、〝雪霞狼〟を構えて古城を庇おうとする。その雪菜を紗矢華がハッと我に返って庇う。しかしそれでは純白の閃光は防げない。

 彼が放った光の正体は、光り輝く灼熱を纏った炎の蛇………吸血鬼の眷獣だ。流星の如き速度で撃ち放たれたその眷獣に、古城は反応するのが遅れた。

 まずい、眷獣を召喚する暇がない!古城がそう思って身構えた瞬間、漆黒の長髪が彼の眼前に現れた。自分を庇ったその人物は確認するまでもなかった。真祖すら容易く凌駕する強大な魔力を纏える者など一人しかいないのだから。

 

「―――〝難陀(なー君)〟、止まる」

 

 メイドラゴン、姫乃の言葉に純白の炎蛇〝難陀(なー君)〟と呼ばれた眷獣がピタリと彼女の目の前で止まった。

 

「「「は?」」」

 

 その光景に素っ頓狂な声を洩らす古城達。炎蛇の眷獣〝難陀(ナンダ)〟の召喚者である純白コートの彼は苦笑いを浮かべていた。

 姫乃は言うことを聞いた〝難陀〟に、優しげな表情を浮かべると、〝難陀〟の蛇頭を優しく撫で始めた。

 

「ふふ、いい子。〝難陀(なー君)〟、()()()()()()()()()()

 

 姫乃がそう言うと、〝難陀〟はコクンと頷いた。そんな〝難陀〟に、姫乃が口づけした刹那、〝難陀〟は魔力の塊に変化してやがて完全に消滅した。

 

「「「……………」」」

 

 一部始終を見ていた古城達は、ポカンと口を開けて呆けていた。姫乃がまるで自分のペットのように召喚者の意思も関係なく異界へ送り返したこと。

『ワタシの楽園へお帰り』という姫乃の不可解な言葉。なー君と呼んでいたあの眷獣は、彼女の楽園出身のモノなのだろうか。

 一方、純白コートの彼は、やれやれと首を横に振って姫乃を見つめる。

 

「邪魔をしないで欲しかったかな………ボクは彼を試そうとしていただけなんだ」

 

「そう。ごめんヴァ君。でも、古城なら心配しないで。ヴァ君の好敵手(ライバル)と呼べるほどの者になるまで、ワタシがみっちり鍛えるから」

 

「へえ。貴女が直々に彼を強くしてくれるんだ。それはとても嬉しいネ。どれほどボク好みの強者に育ってくれるか、楽しみだよ」

 

「うん、期待してて。でも、ヴァ君の不意打ちに反応遅れてたからまだまだかな。〝不意〟の攻撃にキチンと対応出来るように特訓しよう」

 

 うんうん、と一人で納得して頷く姫乃。仲睦まじく話をする二人を、古城達は呆然と眺めていた。純白コートの彼と話している時の姫乃の表情が、無表情ではなく優しげな表情で驚きを隠せない。

 純白コートの彼は、姫乃の横を通りすぎて古城の前に歩み寄った。

 

「初めまして、と言っておこうか、暁古城。我が名はディミトリエ・ヴァトラー、第一真祖〝忘却の戦王(ロストウォーロード)〟よりアルデアル公位を賜りし者」

 

「あんたが、ディミトリエ・ヴァトラー………?俺を呼びつけた張本人?」

 

 古城が訊くと、ヴァトラーはニヤリと微笑んだ。

 

「そうだよ、暁古城。いや、〝焔光の夜伯(カレイドブラッド)〟―――我が愛しの第四真祖よ!」

 

 そう言って、ヴァトラーは古城を愛おしげに見つめ、大きく両腕を広げて古城を迎え入れんとする。やはりこうなるのか、と首を振る紗矢華と、唖然とする雪菜。

 

「………はい?」

 

 告げられた言葉の意味を理解出来ずに、古城は弱々しい呟きを洩らす。

 ヴァトラーはニヤリと笑うと、姫乃の隣まで戻り、彼女の肩を抱き寄せて告げた。

 

「それから古城にも紹介してあげるね。この御方こそが、ボクを創った我が愛しき〝創造主(マザー)〟―――ボクの愛する御母様だヨ!」

 

「「「え?」」」

 

 暫く古城達はきょとんとした顔で姫乃とヴァトラーをゆっくり見比べた。

 

「「「えええぇぇぇぇ―――!!!?」」」

 

 そのあとすぐに、彼らの絶叫が夜の絃神市に響き渡った。

 これが天部が創りし人造吸血鬼〝第四真祖(カレイドブラッド)〟の力を受け継ぎし少年・暁古城と。

 姫乃(ウロボロス)が創りし龍造吸血鬼〝蛇王(ナーガラージャ)〟ディミトリエ・ヴァトラーもといアーディ・シェーシャの邂逅だった。




シェーシャはアナンタ竜王の別名または同一視される。

ヴァトラーの真名をシェーシャにしたのは、原作で原初の蛇アナンタが彼の切り札だったので、オリ設定での彼の真名はアナンタの別名にしよう!と決めた作者であります。

ちなみにこのSSのヴァトラーは、合成眷獣以外の特殊能力を追加しています。何なのかは本編にて。
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