ストライク・ザ・ブラッド―混沌の龍姫―   作:アヴ=ローラ

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早速オリジナル設定入ります。
リメイク前より、オリ主の設定が変わってます。
あと、名前も変更してます。
名前変更の理由は、咎神の騎士篇で登場する安座真という名前が達巳(たつみ)だったので、紛らわしいから変更しました。


一章 聖書の神篇
聖者の右腕 壱


 神々の神話から外れた、とある異世界の話。

原初の龍(ウロボロス)〟。それは龍族(ドラゴン)蛇族(ナーガ)の始祖であり、異界の神々が最も恐れている世界最強の龍神(ドラゴン)だ。

 その無敗の龍神は、全ての始まりの神―――〝原初の混沌(カオス)〟が創造した、至高の殺戮兵器(ドラゴン)である。

原初の混沌(カオス)〟によって、世界が誕生する前に生み出された〝原初の龍(ウロボロス)〟は、ギリシャ神話の大地母神(ガイア)のように、九体の龍神及び蛇神を自力で生み出した。

 それから〝原初の龍(ウロボロス)〟と彼女の眷族()たちで、龍蛇たちのための〝楽園(パラダイス)〟を造り上げていった。

 彼らが創造した〝楽園(パラダイス)〟は、龍蛇たち(彼らの子達も含む)だけが棲まうことを許された、龍蛇(かれら)だけの世界。

 その世界は、決して滅びを迎えることのない完全なる世界―――〝永劫世界(エンドレス・ワールド)〟と呼ばれている。

 

 

 

 

 

 南宮那月の自宅は、人工島西地区(アイランド・ウエスト)にある八階建てのビル。高級マンションである。

 そのマンションの屋上に、結界が張られており、その中では―――絶賛特訓中だった。

 

「―――フッ!」

 

 豪華なドレスを着た那月は、襲いかかってきた無数の蛇たちを、自らの周囲の虚空から銀色の鎖を無数に出現させて撃ち落としていく。彼女の有する天部の遺産―――〝戒めの鎖(レージング)〟だ。

『彼女』の魔力で造られた蛇たちは、那月の銀鎖に為す術もなく蹴散らされていく。が、数が多すぎたため、銀鎖の攻撃は、全ての蛇を仕留め損ねる。

 那月は、冷静に逃げ延びて襲いかかってくる蛇たちを見つめると、空間制御の魔術で不可視の衝撃波を生み出し、纏めて蛇たちを吹き飛ばした。

 全ての蛇たちの一掃を終えた那月は、意識を周囲の空間に集中させて、不可視の能力を行使している『彼女』の居場所を探る。

 『彼女』の姿が見えなくても、透過の能力ではないので、空間に僅かな歪みが生じているはずだ。それを探り当てれば、そこに不可視の『彼女』がいる。

 そして、

 

「―――!そこか!」

 

 空間の歪みを探り当てた那月は、すぐさまそこへ銀鎖を撃ち放つ。

 すると、狙いは見事に的中したようで、那月の銀鎖は何かに衝突し―――バキン、と銀鎖が砕け散った。

 

「………見つかった」

 

 そう言って、『彼女』が不可視の能力を解いて姿を現し、着地した。その『彼女』は、露出度高めのメイド姿をしている。

 『彼女』が着地した瞬間、那月は、再び銀鎖を放って捕らえにかかる。が、『彼女』に触れることなく空を突いた。

 那月が見上げると、上空には『彼女』の姿があった。どうやら『彼女』も、空間跳躍(テレポーテーション)で銀鎖から逃れたようだ。

 那月は、すぐさま新たに銀鎖を放つ。が、やはり『彼女』には当たらない。

 ならば、と一本ではなく、二本に、三本に、四本に………と徐々に銀鎖の数を増やして試みる。が、『彼女』には掠りもしない。

 『彼女』の周りの空間を歪めて、逃げられないように(トラップ)を仕掛けてみるが、『彼女』は異空間跳躍で簡単に抜け出してみせる。

 今度は、那月自らが空間転移で『彼女』の背後に跳ぶ。そこからすぐに無数の銀鎖を撃ち放つ。が、『彼女』は振り返りもせずに全て躱してみせた。

 背中に目でもついてるのか、とでも言いたいくらいの完璧な回避術に、那月は、ちぃ、と舌打ちする。

 本当なら、不可視の衝撃波を『彼女』に叩きつけて、体勢を崩した瞬間を狙って、銀鎖を放ち捕らえる………が理想的だが、如何せん、『彼女』にはそんな小細工は通用しない。

 故に、那月は苦戦を強いられている。天部の遺産である黄金の錨鎖―――〝呪いの縛鎖(ドローミ)〟を使ったとしても、『彼女』を捕らえることはできないだろう。

 

「(………姫乃(ひめの)の眷族の力を借りるか)」

 

 姫乃。それは那月が『彼女』に付けた名前であり、名字は空無(からなし)と名付けた。

 それはさておき、那月はそう決めると、銀鎖を空間の中へ回収する。そして、新たな鎖を『彼女』―――姫乃に向かって撃ち放った。

 その鎖は、銀色の鎖〝戒めの鎖(レージング)〟でも、黄金の錨鎖〝呪いの縛鎖(ドローミ)〟でもない―――漆黒の鎖だった。

 その黒鎖を見た姫乃は、ようやく()()()の力を使った、と薄い笑みを浮かべる。

 黒鎖が姫乃を捕らえようと、まるで意思を持った蛇のようにうねりながら襲いかかった。

 姫乃は、僅かな動作で黒鎖を躱す。が、姫乃の横を通り過ぎたはずの黒鎖が急に方向を変え、彼女を背後から襲った。

 

「……………」

 

 しかし、姫乃は特に焦ることもなく、追撃してきた黒鎖を避ける。

 追尾する黒鎖、それを悉く躱し続ける姫乃。そんな攻防は延々と繰り返されているかに思えたが、それは間もなく決着を迎える。

 

「(………そろそろだな)」

 

 那月は、仕掛け時がきたな、と笑みを浮かべる。いつの間にか、姫乃を包囲するかのように、黒鎖が彼女の周囲の空間を漂っていた。

 そう。ただ姫乃に躱され続けていただけではなく、別の方法で彼女を捕らえるために準備していたのだ。

 那月の策に気づいた姫乃だが、もう遅い。那月は右手を前に出してグッと握る。すると、姫乃の周囲を漂っていた黒鎖は収束していき、彼女の身体を縛り上げた。

 

「………捕まった」

 

「ああ。捕まえたぞ」

 

 無感動な声音で言葉を紡ぐ姫乃を、満足げに見上げる那月。

 

「とはいえ、おまえが本気を出せば、容易く逃れられたのだろう?」

 

「うん。本気を出さなくてもいける」

 

 当然、と特に誇ることもなく答える姫乃。その余裕にイラッとくる那月だが、実際に数日前のあの戦いも姫乃は本気の一片すら見せてないので、認めざるを得ない。

 いや。一つだけ、姫乃のおぞましい能力を那月は目の当たりにしていた。〝闇〟そのものを身体から放出させ、ありとあらゆるものを呑み込み、消滅させるあの力を。

 那月がその〝闇〟について問いただしたところ、その正体は―――『全てを無へと還す混沌』だと姫乃は答えた。

 それは、たとえ〝神〟であっても抗う術がない『絶対』の力。勿論、姫乃も龍神(カミ)である以上、〝混沌()〟には敵わない。即ち―――創造主(カオス)には勝てないということだ。

 姫乃がこの〝闇〟を操れるのは、創造主(カオス)が最初に生み出した存在であるからであり、〝神〟が姫乃に勝てないのは、これが理由なのだ。

 

「複数の敵の撃退、不可視の索敵、空間跳躍封じは完璧。流石はワタシの()()()()

 

「ふん。最後のは姫乃の眷族の力を借りたからな。私の技術(スキル)だけではない」

 

 那月は、黒鎖を撫でながら不服そうに言う。

 黒鎖。それは姫乃の九体の眷族のうち、一体の能力が宿っている特殊な鎖だ。その能力は二つある。

 一つ目は、使用者の魔力を糧に敵をどこまでも追いかける追尾能力。

 二つ目は、魔力を奪い取る吸収能力。しかも、捕らえた相手だけでなく、包囲しただけで相手が放出している魔力を奪い取ることも可能だ。

 姫乃が、黒鎖に包囲された時に空間跳躍を行わなかったのは、使用すれば魔力を奪われてしまうからだった。

 欠点があるとすれば、追尾能力は使用者の魔力を糧に発動する機能なため、使うたびに魔力消費が馬鹿にならない。

 そして、神力もとい霊力を奪えない。魔族相手ならば完封できる代物だが、〝神〟や〝天使〟といった霊力を使うものには役立たずということだ。

 

「………それでも、勝手に追尾するだけの黒鎖を制御して、敵を追い詰める策は凄い」

 

「………ふん」

 

 姫乃に褒められても、那月は表情を変えない。が、本当は嬉しかったりする。何せ、目の前のメイドは神々が最も恐れている世界最強の龍神(ドラゴン)なのだから。

 ちなみに、龍神の姫乃がメイドラゴンとして那月家で共に暮らすようになったのは、最初に遭遇した翌日の朝のことだ。

 那月が目を覚めるや否やで、視界に映ったのが姫乃。そして、姫乃はこう告げた。

 

 

『―――オマエの願い、ワタシが叶える』

 

 

『その代わり、オマエはワタシを楽しませる存在になる―――これが契約の条件』

 

 

 この契約に那月は承諾し、特訓を受ける代わりに、姫乃をメイドラゴンにする夢が叶った。

 そして現在に至るのだ。

 

「………それじゃあ、本格的に戦お(遊ぼ)う、御主人様」

 

「そうだな。今日こそは、姫乃に一撃与えてやる」

 

 黒鎖を消して、構える那月。さっきの前哨戦(ウォーミングアップ)で消費した魔力は、会話をしている際に、黒鎖を通して姫乃の無尽蔵の魔力からたっぷりと奪っ(頂い)ている。

 姫乃は、那月から大量に魔力を奪われても気にしない。無尽蔵ゆえに決して尽きることがないからだ。

 無尽蔵の魔力と霊力の両方を併せ持ち、〝無〟の能力さえ行使できるこの龍神に勝てる〝神〟や生物は存在しない。空無姫乃を唯一滅ぼせるのは、〝無〟そのものである彼女の創造主(父親)だけなのだから。

 

 

「―――――」

 

 

 今日も龍神と魔女の戦いは始まる。時間が静止した結界(せかい)の中で。

 結果は、那月の惨敗。今日も龍神に一撃も与えることは敵わなかったのだった。

 

 

 

 

 

 真祖。それは闇の血族を統べる帝王であり、最も古くて最も強大な魔力を備えた〝始まりの吸血鬼〟だ。

 彼らは、自らの同族である数千数万もの軍勢を従え、三つの大陸にそれぞれが自治領である夜の帝国(ドミニオン)を築いている。

 そして、その夜の帝国(ドミニオン)を築いている、三人の真祖が存在する。

 第一真祖〝忘却の戦王(ロストウォーロード)〟。

 東欧の夜の帝国(ドミニオン)〝戦王領域〟を支配する真祖で、七十二体の眷獣を従える吸血鬼の覇王。

 自らの血族の吸血鬼は『D種』―――〝龍の息子(ドラキュラ)〟と呼ばれた、一般人が持つ吸血鬼(ヴァンパイア)のイメージに最も近い血族。

 第二真祖〝滅びの瞳(フォーゲイザー)〟。

 中東の夜の帝国(ドミニオン)〝滅びの王朝〟の皇帝の真祖で、十九体の眷獣を従える。公的に知られる三名の真祖の中でも最も謎が多く、自らの血族の貴族であっても正体を知るものはほとんどいない。

 自らの血族の吸血鬼は『G種』―――〝屍食鬼(グール)〟と呼ばれ、体色と姿を変えられる悪魔であり、特にハイエナ(ジャコウネコ科に最も近縁)を装う。女性はグーラと呼ばれ、美女の姿をしてフェロモンを放出させる〝魅了〟の能力を持つ。

 第三真祖〝混沌の皇女(ケイオスブライド)〟。

 中央アメリカの夜の帝国(ドミニオン)〝混沌界域〟を統べる、二十七体の眷獣を従える。

 自らの血族の吸血鬼は『T種』―――〝山羊の血を吸う者(チュパカブラ)〟と呼ばれ、獣人のように全身が毛に覆われている姿をする。

 槍や鞭などの姿をした〝意思を持つ武器(インテリジェント・ウェポン)〟の眷獣を従えていることが多い。

 そんな三名の真祖と違い、夜の帝国(ドミニオン)を持たない真祖が存在している。

 その者こそが、第四真祖〝焔光の夜伯(カレイドブラッド)〟と呼ばれた世界最強の吸血鬼。姫乃がこの絃神島に帰ってきた理由の、()()()なのだ。

 

「……………」

 

 時刻は夕方。姫乃は、微弱だが眷獣の魔力を感じ取って絃神島西地区(アイランド・ウエスト)のショッピングモールに来ていた。

 そこには、〝若い世代〟の吸血鬼と、〝灼蹄(シャクテイ)〟と呼ばれた妖馬の眷獣がいた。

 眷獣。それは不老不死の吸血鬼だけが従える、異界からの召喚獣。意思を持った魔力の塊だ。

 そんな彼と眷獣に対峙するのは、銀色の槍を持つ人間の少女。見るからに吸血鬼の方が勝つと思われるが、

 

獅子王機関(あいつら)の開発した対魔族用の秘奥兵器―――七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)だね。銘は〝雪霞狼〟と呼ばれている奴かな』

 

「白い蔓薔薇(つるばら)………雪の舞踏(シュネーヴァルツァー)?ふうん。興味ない。それよりも―――」

 

 陽気な少年の声―――創造主(カオス)の説明を軽く流して、姫乃はある少年の方へ視線を向けた。

 白いパーカーを着た高校生ぐらいの男。緊迫した表情で、銀槍を持つ少女を見守っている『彼』の顔に、姫乃は心当たりがあった。

 何故なら『彼』こそが、姫乃の捜し人なのだから。

 

「見つけた」

 

 姫乃は、漆黒の翼を広げると、早速『彼』の下へ一直線に飛翔して向かった。

 

「………!?なんだ!?」

 

「え!?」

 

 突如横切ってきた小さな漆黒の影に驚く吸血鬼の男と銀槍の少女。そして、最も驚いたのが、

 

「うおっ!?」

 

 漆黒の影が降り立ったすぐ眼前にいる『彼』だった。

 そんな『彼』に漆黒の影―――姫乃が口を開き言ってきた。

 

「見つけた、暁古城」

 

「は?」

 

 見知らぬ姫乃(少女)に声をかけられて戸惑う『彼』―――暁古城。

 姫乃は、少し寂しそうな表情で古城を見つめて、

 

「………やっぱりワタシのこと、覚えてない?」

 

「………いや、覚えてないとか言われてもな。黒い翼を広げたロリメイドの知り合いは、心当たりがないんだが」

 

 古城は、見知らぬ姫乃(少女)の寂しそうな表情を見て、困った顔をする。

 姫乃を慰めるように、創造主(カオス)が陽気な少年の声で言った。

 

『そう落ち込まないでよ愛娘ちゃん。いずれ思い出してくれるんだから、それまで待とう?』

 

「うん、そうする」

 

 創造主(カオス)の声に頷く姫乃。その彼の声を、間近にいた古城も聞いていたようで、驚いた顔をした。

 

「は?だ、誰だよおまえ!?つか、どこにいやがる!?」

 

『ん?それは企業秘密って奴だよ、暁古城()()

 

「うん。ワタシのパパの居場所は、ワタシにしかわからない」

 

「そうか………って、パパ!?おまえが、この子にメイド服を着せて喜ぶ特殊な性癖の持ち主か!?」

 

 古城が、姫乃(少女)の恰好について絶叫に似た大声で問いかける。

 その質問に姫乃は首を横に振り否定した。

 

「違う。この恰好はパパの趣味じゃない」

 

「え?じゃあ、そのメイド服をおまえに着せてる奴って―――」

 

 誰だ、と古城が訊こうとしたところ、吸血鬼の男に遮られた。

 

「嬢ちゃん、あんたは攻魔師………じゃねえな、魔族(同類)か!?」

 

 吸血鬼の男の問いかけに、姫乃は、振り返ると無感動な声音で答えた。

 

「魔族、違う。ワタシは龍神」

 

「―――――は?」

 

 姫乃の返答を聞いて、間の抜けた声を洩らす古城と吸血鬼の男。

 一方、銀槍の少女は、姫乃の言葉と容姿に戦慄していた。

 

「(龍神!?それにあの容姿は―――ッ!?………ま、まさか、こんな街中で『彼女』に遭遇するなんて………!)」

 

 なんてツイてない、と滝のように冷や汗を流す銀槍の少女。

 獅子王機関の長老たち〝三聖〟ですら手も足もでなかったと言われる、最強の天敵(ドラゴン)

 そんな怪物が、自分の目の前に悠然と立っている。おぞましいことこの上ない。

 だが、姫乃の正体に気づいていない〝若い世代〟の吸血鬼は、小馬鹿にしたように嗤った。

 

「おいおい嬢ちゃん、そんな冗談を言って、お兄さんをからかってるのか?」

 

「………冗談じゃない。ワタシは本物の龍神。異界の楽園に棲まうドラゴン」

 

 は?と一瞬言葉を失う吸血鬼の男。異界の楽園なら、彼も噂で聞いたことがある。そこは一言で表すならば―――〝龍蛇の楽園〟だと。

 

「おい、ガキ。冗談には言って良いことと、悪いことがあるぜ」

 

「冗談じゃない。オマエこそ、弱者風情がワタシを餓鬼扱いしたらどうなるか、わかっていない」

 

 吸血鬼の男が姫乃を睨み、姫乃は吸血鬼の男を冷ややかに見下す。

 吸血鬼の男は、牙を剥き出しにして吼えた。

 

「テメェごときのクソガキが龍神を騙るのは―――一億年()えェんだよッ!!」

 

 激昂した吸血鬼の男は、標的を銀槍の少女から、姫乃に変更して、

 

「あのクソガキをぶっ殺せ!〝灼蹄(シャクテイ)〟ッ!!」

 

 吸血鬼の男の命令を受け、標的を姫乃に変えて、妖馬の眷獣が襲いかかってきた。

 

「な、危ない!」

 

 古城が姫乃(少女)を庇おうとした。が、姫乃は彼を右手で制し、

 

 

「―――下らない」

 

 

 突進してきた妖馬の眷獣を―――デコピンの要領で消し飛ばした。

 

 

「……………は!?」

 

 

 その有り得ない光景に素っ頓狂な声を上げる古城たち三人。

 そして、自らの眷獣を失った吸血鬼の男は、放心してしまった。

 そんな動けない彼へと、姫乃はゆっくり近づいていく。止めを刺すつもりなのだろうか。

 それを古城は、慌てて止めに入った。

 

「ちょっと待ったァ!」

 

「………なに?暁古城」

 

 落ち着いた声音で訊き返す姫乃。古城は姫乃の前に立ち、通せんぼした。

 

「舐められたからって、殺そうとしちゃ駄目だろ!」

 

「………ワタシを殺しにきた愚者は、ワタシに殺されても文句は言えない」

 

「いや、たしかにそうだけど」

 

「もし邪魔するなら、先にオマエから殺す」

 

「っ!!?」

 

 にべもなく死刑宣告する姫乃に、古城は臨戦態勢を取ろうとして、

 

「―――というのは冗談」

 

「は?」

 

「オマエを殺したら、楽しみが減る。だから、オマエの顔に免じて、その弱者を見逃す」

 

「あ、ああ」

 

 なんとか引いてくれた姫乃に、古城は、ホッと息を吐く。

 それから、古城は、吸血鬼の男へと振り返り、

 

「おい、あんた。今のうちに仲間を連れて逃げろ。あいつの気が変わらない前にな」

 

「………!す、すまん………恩に着るぜ」

 

 吸血鬼の男は、古城に礼を言うと、気絶した仲間の身体を担いで去ろうとした。

 それを銀槍の少女が呼び止めた。

 

「待ってください」

 

「な、なんだよ!まだなにかあんのか!?」

 

 銀槍の少女を、吸血鬼の男が睨みながら返事する。しかし、銀槍の少女は落ち着いた声音で告げた。

 

「あなたが喧嘩を売った、その『彼女』は―――〝原初の龍(ウロボロス)〟です。龍族(ドラゴン)蛇族(ナーガ)の始祖だと言われています」

 

「え!?」

 

獅子王機関(わたしたち)は〝原初の混沌(カオス)〟の娘である『彼女』を〝混沌の龍姫〟と呼んでいます」

 

 銀槍の少女が語り終えると、唖然とする古城と、顔面蒼白で言葉を失う吸血鬼の男。そして、

 

「す―――すみませんでしたぁあああああ!!!」

 

 吸血鬼の男は、姫乃に謝罪しながら全速力で走り去っていった。

 そんな彼の背を一瞥した姫乃は、視線を銀槍の少女に向けて、

 

獅子王機関(オマエたち)は、ワタシの情報、どこまで知ってる?」

 

「え?………あ、はい。たしかな情報ではありませんが、第一真祖、第二真祖、第三真祖の三名の真祖は―――龍蛇(あなたがた)の世界の住人ではないかと睨んでいます」

 

 吸血鬼の真祖の不老不死は、龍蛇の象徴としてのものではないか、と獅子王機関は解釈している。

 銀槍の少女の言葉に、なるほど、と相槌を打つ姫乃。が、姫乃は首を横に振り、

 

「不正解。龍蛇(ワタシたち)の世界と真祖(カレら)は無縁。だけど」

 

「………だけど?」

 

「この世界に、龍蛇(ワタシたち)の世界の住人もいる。誰かは、教えない」

 

「え!?」

 

 驚愕の事実を知った銀槍の少女は、開いた口が塞がらない状態で暫し固まる。

 龍蛇(かれら)の世界の住人は、神話級の怪物がたくさん棲息していると聞いている。

 そんな怪物級がこの世界に移り住んでいるのは、考えるだけで恐ろしい。

 

「………そういや、あんたは俺のことを知ってるんだったな」

 

「うん」

 

「おまえの世界(シマ)は、絃神島(ここ)とは違う異界なんだろ?」

 

「うん」

 

「そんな異界からわざわざこの絃神島(まち)に来て、俺に会って、なにが目的なんだ?」

 

 古城が真剣な表情で問いただすと、姫乃はクスリと笑って答えたのだった。

 

 

「それはもちろん―――第四真祖(オマエ)戦う(遊ぶ)ため」

 

 

「……………は?」

 

 




D種=ドラキュラという解釈は、第一真祖の眷獣はソロモン七十二柱っぽいので、悪魔=龍。即ち、D種は龍(悪魔)の息子、ドラキュラ。

G種=グールという解釈は、グールはアラビアの吸血鬼なので、エジプト=第二真祖。滅びの瞳=ホルスの目=古代エジプト。能力についてはwiki参照。原作では固有能力不明。

T種=チュパカブラという解釈は、チュパカブラは南米の吸血鬼(吸血UMA)なので、メソアメリカ=第三真祖。ククルカン=ケツァルコアトル=アステカ。

オリジナル設定の姫乃の九体の眷族の詳細は、本編にて紹介していきます。
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