半欠けの月の最後の夢 作:ティフアナ・フェアガンゲンハイト
それは何時もと違う一つの事から始まった。
◇
薪を拾いに森に入っていた。その時、ほんの少しだけ目を離しただけだった。ふと気付くと村が煙がかっていた。
持っていた薪を落とし、急いで村に向かった。
でもそんな行為をしても遅かった。村は火の海に飲まれていた。泣き叫ぶ声すら終わっていた。
生きている者はもう居なかった。周りを見渡しても死体死体死体…。
死体は焼け焦げた者もいれば、鋭いモノで刺し殺された者も居た。
私はその場で泣いた。泣き続けた。怒りも恨みも忘れて泣いた。
涙が枯れるまで……
気が付くと私は半壊の城に居た。周りには体の一部が潰れた死体が散らかっていた。私以外に生きている者は居ない。
そこには玉座だった物があった。本来は王が居るべき所には巨大な剣が刺さっていた。
壊れた部分から外の景色を見てみると炎に呑まれた街が見えた。
立ち上がるとそこは………………何も無かった。
◇
「……っ!」
ガバッという音が付きそうなくらいの勢いで私は起き上がった。周りを見ると男が此方に気付いた。
「おお!…やっと起きましたかお頭」
男は読んでいた書類を横に無造作に置き、立ち上がって私の方に近寄ってきた。
「……どれくらい寝てた?」
「えーと、約3日程ですかね」
成る程、それだけか。普通なら3日も寝てたら異常だろう。まあ、私にとって寝るのは3日で十分な時間だ。
「なら良しだ」
「…その良しの意味が良く分からないのですが。それと、余り無茶しないでくださいね。前なんか、
そいやあ、そんな事もあった気がする。
「…分かった気を付ける」
「どうしたんですかお頭?何か悪い夢でも見たんですか?」
悪い夢か…。まあ、良い夢でも無かったからな。
「そんなところかな。ところで上と下はどんな状況?」
「あ、えーと、下は二番地区の強度が弛くなっている以外は何時も通りです。上は勇者様御一行が到着予定です」
此処で言う下とは地下の事、逆に上は地上の事を表している。所謂隠語である。
下はともかく、上の方で勇者が来るのか。ちょっとだけ、顔を見てくる事にするかな。
「二番か…、そこは暇してる爺さん達に任せとく。上は様子見してこようと思うよ」
「分かりました!それでは仮面とローブを─」
出掛ける場合、仮面とローブが必需品だ。私は街で顔がバレるとちょっとヤバイ感じなのだ…。
顔と外見が分からないようにすれば良いだけ。
◇
何処にでも在りそうな家の中。ただ、そこは誰も住んでいない家で、木の扉は軋んで開きづらいながらも音をたてずに開く。
その家の屋根に乗ると、そのまま隣の屋根に飛び乗る。それを繰り返して、街を移動していく。
今、立ち止まった場所が今回の目的地だ。見下ろすとそこは大通り。何かお祭りごとがあるように人がごった返していた。
少し待っていると、一つの集団が歩いてくるのが見えた。先頭の少年は大体の女が見たら惚れそうなカッコいい見た目をしている。
その少年の斜め後ろを歩いている少女は、大きめのローブに身を包んでいた。まるで何かを隠すかのように…。
また、その後ろには男女合わせて五人。よってこの集団は合計7人いることになる。
少なくなく多くもない、適度な人数だな。
ん?先頭の少年が私の方を見た?
何でだろう。まあいいや、少年が一人になったところで近付かば確かめられるし。
さてと、其処らをウロウロするかな。