とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第116話 デルタフォース

 そんな風に当麻と親友になってから、2年と4か月の時間が過ぎた。

 

 俺たちは今日、高校の入学式である。

 

「今日から俺たちも高校生だな、当麻」

「おう」

 

 俺は隣を歩いて共に高校に向かっている当麻に言う。

 

 つい先日学生寮に入寮したのだが、なんとその部屋もお隣どうしであった。嬉しい偶然だ。

 

「クラスも同じだといいな」

「ああ。結局、中学の時は同じクラスになれなかったんだよなー」

 

 当麻が言う。

 

 まあ、確率から考えても同じクラスになれなかったことはおかしくないのだが、それでも気の合う親友とは同じクラスになれた方が嬉しいに決まっている。

 

「えっと……体育館で入学式があった後に、クラス名簿が張り出されてそれぞれの教室に移動するんだったよな」

「まあ、いたって普通か」

 

 この高校は、変則的な造りの学校が多々ある学園都市においても、あくまでスタンダードを極めようとしているらしい。余りに平凡すぎて逆に個性がなさすぎるくらいである。

 学校が経営する料金が馬鹿高いスクールバスの利用を推奨し、電車通学は校則で禁止されているが、俺たちは徒歩通学なのでその問題はなかった。

 

 入学式は例によって校長先生の長ったらしい話であったが、誰もが適当にやりすごす。

 

 それよりも、俺には気になることがあった。

 

「(あの女の子、高校見学の時にもいたけれど……)」

 

 そこには、身長が130センチ半ばくらいで、ランドセルが似合いそうな容姿をした少女がいた。

 

 しかし、

 

「(どうして“教師”たちと一緒にいるんだ?)」

 

 彼女は、逆三角形型の眼鏡をかけた鋭い視線の女教師や、迫力のある筋肉に包まれた肉体をしている、恐らくは体育教師であろう男教師たちの間にチョコンと座っていた。

 

 その幼女はパイプ椅子に座っているが、明らかに足が緑色のシートが敷かれた床についていない。

 

 その様子に何人かの1年生たちが気付いており、そして俺と同じように校長先生の挨拶などそっちのけでその幼女を注視していた。

 

 そして、とうとうクラスが発表される。

 

「えっと、神谷神谷……と、あった」

 

 『1年7組』と書かれているそのリストの中に、俺の名前があった。さらに、『上条当麻』の名前もその真上にある。

 

「当麻!」

「おう、駿斗。これからもよろしくな!」

 

 俺たちはハイタッチを交わすと、人ごみをかき分けて目的の教室に進む。

 

 7組の教室に入ると、そこにはすでに何人もの生徒がいた。

 

「俺たちの席ってどこだ?」

「えっと……」

 

 黒板に貼られている席順を確認する。

 

「俺があそこ。で、当麻がその前だな」

「近いな……って、苗字の頭2文字が同じなんだから、当たり前か」

 

 俺はそこに席を降ろした。

 

「2人は同じ中学なのかにゃー?」

 

 話しかけられたことと、その独特の話し方に驚き、俺たちはすぐにその声の主を見る。

 

 そこには、金髪にサングラスをかけていて、学ランのボタンを全て開けている上にその中にやはりボタンのほとんどを開けているアロハシャツを着て、ネックレスまでつけている男がいた。その後ろには、180センチを超えている長身の、青い髪をした男がいる。

 

 確かに校則で許されてはいるが、入学早々はちゃけすぎだろ。高校デビューというやつか?

 

「ああ、悪い悪い。俺は土御門元春だぜよ。よろしくたのむぜい」

 

 土佐弁? を話す土御門が自己紹介をする。

 

「神谷駿斗だ。よろしくな、土御門」

「俺は上条当麻。察しの通り、駿斗とは同じ中学だよ」

 

 こちらも自己紹介をした。

 

「んで、ボクは」

「青ピって呼べばいいにゃー。青い髪にピアスだし」

 

 そいつの言葉を遮って、土御門が言った。

 

「青ピか、悪くないな」

「よろしくな、青ピ」

 

 俺たちはそれに便乗して言った。本名を知る前に青ピのあだ名が決定した。

 

「……よろしゅう頼むわ。あだ名付けてもええか?」

 

 その様子に彼は少し苦笑いをしたが、すぐに話を振ってきた。

 

 こちらが先にあだ名をつけた手前、断るわけにはいかないだろう。

 

「おう、いいぜ」

「んじゃあ『かみやん』ってのはどうや?」

 

 かみやん、か。

 

 確か当麻は、中学の時にはあだ名で呼ばれていたことはなかったはずだ。

 

「それだと、神谷にかぶっちゃうけどにゃー」

「ああ、そうやった!?」

 

 土御門の指摘に、青ピが慌てる。俺はその様子に苦笑いしながら言った。

 

「別にいいだろ。俺にもあだ名をつけてくれれば」

「そうやなあ……下の名前が駿斗だから、えっと」

 

 青ピが考える。

 

「駿斗……はやと……」

「はやとん、でいいんじゃないのかにゃー」

 

 青ピが言うよりも先に土御門が提案した。

 

「呼びやすいわな。よろしゅう頼むわ、かみやん、はやとん」

「おう、よろしく」

 

 そう言った瞬間、教室に例の幼女が入ってきた。

 

「はーい、HRを始めるのですよー。皆さんは全員席についてくださいねー」

 

 彼女はそう言って、手に持っていた“出席簿”を教卓の上に置く。

 

「私はこのクラスの“担任”の月詠小萌です。小萌先生と呼んでくださいねー」

 

 小萌先生はそう言って微笑む。

 

「先、生……」

 

 誰かの呟きが教室に響いた。

 

「はい。専攻は『発火能力(パイロキネシス)』なのですよー」

 

 小萌先生は笑顔で答えた。

 

 そして、しばし教室内に沈黙が流れた後。

 

「「「「ええええええええええええっーーーー!?」」」」

 

 叫びが高校を揺るがした。

 

「先生って……」

「身長……どうなってんだ?」

「っていうか、私たちよりも肌綺麗……」

「学園都市の七不思議……?」

 

 教室の至る所でささやき声が聞こえる。

 

 当麻と言えば、口をぽかんと開けたまま呆然とその容姿を見つめていた。俺も、突然の非常識さに頭が混乱している。

 

 何かのドッキリ企画? ……こんな名のない高校で?

 

 あるいは不老不死の実験体? ……えげつない科学技術を持っている学園都市だったらあり得るかもしれないが。

 

 そんなことを考えるが、納得のいく答えが出てこない。

 

「じゃあ、順番に自己紹介していきましょう! 名前と出身中学、能力を言ってくださいねー」

 

 先生は教室に動揺が広がっているのを尻眼に、そのまま次に進めた。

 

 出席番号順に、自己紹介が始まる。

 

 分かってはいたことだけれど、大半が無能力者(レベル0)だな。

 

「土御門元春だぜよ。無能力者だにゃー。出身中学は……」

 

 土御門や青髪ピアスが自己紹介をしていく。

 

「上条当麻。無能力者だ。出身中学は……」

 

 当麻が自己紹介を終えたので、俺も立ち上がった。

 

「神谷駿斗。無能力者で、出身中学は……」

 

 自己紹介が終わり、その後は校内を案内されることとなった。各教室を、適当にグループに分かれて回っていくのだ。

 

「じゃ、行こうぜ、当麻。土御門と青ピもどうだ?」

 

 そう誘い、4人で雑談をしながら、一緒に校内を回っていく。

 

「つーか、あの人教師だったんだな」

「ああ、俺も驚いた……」

 

 話題は先ほどの驚愕の真実、小萌先生のことだった。

 

「ええやないか、ロリ教師最高や!」

 

 青ピは嬉しそうに言う。ぶれそうにないな、こいつは。色々な意味で。

 

 先ほど話をしたところ、この春からはパン屋に下宿をしているらしい。ただ……パン屋で働いているお姉さんが目当てらしいが。

 

 さらに、本人曰く女性の好みは。

 

『ボクぁ落下型ヒロインのみならず、義姉義妹義母義娘双子未亡人先輩後輩同級生女教師幼なじみお嬢様金髪黒髪茶髪銀髪ロングヘアセミロングショートヘアボブ縦ロールストレートツインテールポニーテールお下げ三つ編み二つ縛りウェーブくせっ毛アホ毛セーラーブレザー体操服柔道着弓道着保母さん看護婦さんメイドさん婦警さん巫女さんシスターさん軍人さん秘書さんロリショタツンデレチアガールスチュワーデスウェイトレス白ゴス黒ゴスチャイナドレス病弱アルビノ電波系妄想癖二重人格女王様お姫様ニーソックスガーターベルト男装の麗人メガネ目隠し眼帯包帯スクール水着ワンピース水着ビキニ水着スリングショット水着バカ水着人外幽霊獣耳娘まであらゆる女性を迎え入れる包容力を持ってるんよ?』

 

 ちょっと待て。

 

 と、さすがに多すぎるその趣向に加え、さらにもう1つ。

 

『1つ女性を表してないものがあるだろ!』

 

 ショタってただの変態の領域すら超えているだろ、おい。

 

 その一方で、土御門は妹LOVE、それも、義理の妹であるらしい。なかなか優秀であるらしく、エリートメイドを育成する、繚乱家政女学校でもトップクラスの成績を持っているのだとか。

 

 俺もかつては妹分がいたのだが、最後の方で急きょ施設を移ってからは全く会えていないんだよな。まあ、どこかで元気に生活しているとは思うのだが……。

 

 まともじゃない……! とも考えるのだが、同時に一緒にいて楽しいやつ、というのがこの2人の感想だ。まあ、いささか元気すぎて暴走しそうではあるが。

 

 そんな風に会話をしていきながら、校内を散策する。しばらくすると、一度トイレ休憩をとることにした。

 

 俺と当麻が先に出て、2人を待つ。

 

 すると、1人の少女が話しかけてきた。どうやら、雰囲気からして上級生のようである。

 

「そこの1年。何か困っているのなら、手を貸すけど」

 

 その長い黒髪はおでこが出るようにカチューシャでまとめ上げられており、冬服を着ているのだがサイズが小さいのか、さらにはその……自己主張の激しい胸元の膨らみに裾が引っ張られて、時々チラリとおへそが見える。

 

 飄々としていて、どことなくミステリアスな雰囲気を漂わせているこの美人先輩。同じ高校の生徒のはずなのだが……。

 

 正直言って、似合わない。

 

 こうして対峙しているだけでも、その奥底に秘められた実力が醸し出されている気がするのだ。

 

「えっと……」

「あ、はい。大丈夫ですよ。友達を待っているだけなので。ありがとうございます」

 

 当麻が少しうろたえたが、俺はすぐに言った。

 

 どこか、苦手なタイプであるような気がしたのだ。

 

「そう。ならいいけど」

 

 その少女――雲川芹亜先輩は、それだけ言うと俺たちに笑いかけ、去って行った。

 

「何だったんだろうな、あの先輩?」

「さあ?」

 

 当麻の疑問に、俺はそう返す。

 

 なんだか、ものすごく大物な感じがする先輩だったな、と俺は思った。

 

 その時、後ろから声がした……。

 

「かみやん、はやとん……」

 

 後ろを振り向くと、青ピが男子トイレから出てきていた。

 

「どうした?」

「どうした? じゃないやろうがっ。俺たちが少し目を離している間に、あんな美人の先輩とフラグを立てておったんかー!」

 

 デデーン、とでも効果音が付きそうなテンションで、青ピが叫ぶ。

 

「何がフラグだ、そんなもの立ってない! ただ少し話しかけられただけだっつうの!」

「話しかけられた、だと! それを世間ではフラグというんだにゃー」

「よし、女性と話しただけでフラグが立つというんだったら、まずはその幻想をぶち殺す!」

 

 3人が仲良く喧嘩を始めたので、俺は少しその場から距離を取った。本当にこいつら、今日が初対面なんだよな?

 

 これがのちに『デルタフォース』と呼ばれる彼らの、初めての騒動だった。




神の右席編ですが、今までと書き方を大きく変える予定なので、続編という形で新たに投稿することにしました。

作者ページから「神の右席編」を選んで、読み続けていただけたらと思います。
どうぞ、これからもよろしくお願いします
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