とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト) 作:nozomu7
第15話 ファーストフード店の巫女
「ん~、どれがいいか……?」
冷房の利いた書店の中、上条当麻は参考書の品定めをしていた。
参考書。それは劣等生である当麻にとっては珍しいとも言える物で、彼の場合は漫画とか雑誌などの方に金を費やすのが似合っている。実際、彼の部屋にある書物は漫画が大半である。
だが、今、彼が購入しようとしているのは参考書だ。主な理由としては、自分が夏休みであるにも関わらず毎日のように補習に出ている一方で、隣の親友が毎日夏休みを満喫していることによる。(実際は幻想御手やら、インデックスやら、夏休みの宿題とやらに追われて過ごす毎日であったのだが)
しかし、上条当麻は“不幸”である。
『アイツを側に置いとけば、“不幸”が全部あっちに行く』という避雷針ばりの扱いでクラスメイトから重宝されるほどの。
それは今回もしっかりと(?)発揮され、前日までの夏の受験勉強フェアとかで目ぼしい参考書は全部売り切れていた。
おかげで使いこなせるかも分からない参考書に所持金の半分以上を費やす羽目になった。
「不幸だ……」
お決まりの台詞を当麻はつぶやいた。
汗を垂らしながら店から出ると、この街には不自然な修道服を身に着けた少女がいた。もちろんインデックスである。
「とうまー、お腹空いたよー。そろそろ昼ごはんにしよう」
インデックスが、お腹を押さえしょんぼりした顔で当麻に訴える。
「……おまえなぁ、まだ12時前で朝さんざん食べただろう?」
当麻は呆れた顔を浮かべる。
「だって今日の朝食、とうまが作ってくれたのは、パンと目玉焼きとサラダだけだったんだよ。あれならはやとのほうが、ずっといい料理つくってくれるはずなんだよ」
今朝の朝食についてインデックスは当麻に文句を言う。
結局、インデックスにせがまれて近くのハンバーガーのチェーン店へ昼食を食べに向かった。
「インデックスの奴あんなに頼みやがって、クーポン券がなければ金欠だったぞ」
当麻はハンバーガーを10個ほどインデックスに買い与えた後、座る席を探していた。夏休みということもあってか、席はどこも満席で、相席したり順番を待つ客も見られる。
いや、一つだけ空いている席があった。
四人掛けの席なのに、たった一人で食事をしている少女がいた。
長く美しい黒髪に日本人形のような整った顔立ち。まさに大和撫子という言葉が似合う。しかしその少女はどういう訳か、神社でもないのに巫女服を着ていた。まあ、似合ってはいるのだが。
だが少女は目の前にある山ほどのハンバーガーを次々と食しているため、かなり店の中で浮いていた。
「……調子にのって、頼みすぎた」
少女は咳き込んだ後、抑揚のない声で呟くとハンバーガーの山に頭を突っ込んだ。
(関わらない方がいい気がする……)
そう当麻の不幸センサーが反応し、避けようとするが、腹ペコのインデックスが勝手に隣に座り食事を始めてしまい、当麻は少女と相席する事になってしまった。
「相席失礼しますよー」
席に着けたはいいが、少女はハンバーガーの山に頭を突っ込んだまま無反応なのでどうも食べづらい。結局、当麻は少女に声をかけることにする。
「おーい、具合は大丈夫か?」
肩を軽く揺すりながら問いかけると、
「…………く、食い倒れた」
まさかのそのままの言葉に当麻はどう反応すればいいか分からないが、隣でひたすらに食事に没頭するインデックスは当てにできないため、再び一人で少女と向かい合う。
「えっと、なんで食い倒れてたりしてたんだ?」
すると少女は起き上がり、ぼんやりとした顔で当麻を見つめた。大和撫子のような女性に見つめられ、当麻の頬が緊張で強ばる。
「お得なクーポンがたくさんあったから。とりあえず100円のハンバーガー30個ほど頼んでみた」
「そいつは、インデックスでもないのに頼みすぎたな」
名前を呼ばれて反応したのかインデックスは、多少は腹を満たせたこともあって一旦食事を中断し、ようやく少女に問いかける。
「ねえ、あなたは何でそんなに食事を頼んだの? 必要以上の暴食は大罪なのに」
自分のことをを棚に上げるなよ、と当麻はこのシスターに心の中でツッコんだ。
「帰りの電車賃。400円必要だった。でも全財産が300円。だからやけ食い」
少女は帰るに帰れないのでこのような暴挙に出たらしい。
「歩いて帰ろうとは思わなかったの?」
「……暑いから。無理。溶けてなくなる」
巫女の格好をしているくせに、精神修行が足りてないようだ。
「だったら、とうまにお金でも借りたら?」
インデックスはここで当麻に言葉のキラーパスをする。
(インデックスさん、いきなりここで俺ですか!?)
少女はじっと当麻の顔を期待に満ちた目で見つめる。
「いや、無理だって。当麻さん、財布の中には野口さん一人しかいないし。むしろ恵んでほしい立場だから。駿斗ならまだしもな」
当麻が断ると、少女は小さく舌打ちした。
「……甲斐性なしが」
「初対面の人間に、自分のことを棚に上げといて罵倒された! おまえだって帰りの電車賃が100円足りねーだろ!? つーか、何だよ、その格好は! 巫女さんなのか!?」
当麻は興奮しながら気になっていた巫女の格好について問い詰める。
「私。巫女さんではない」
当麻は予想外の返事にきょとんと目の前の少女を見つめる。
「私。魔法使い」
その一言はインデックスの魔術師というプライドを大いに刺激した。
「魔法使いって、本当なの? こういう時は専門と学派と魔法名と結社名を名乗るのが礼儀なのに」
むっとした表情で矢継ぎ早に質問する。
しかし、少女は全ての質問に『だから私。魔法使い』の繰り返しだった。
すると、インデックスはますますヒートアップしていき論争を過熱させていく。
当麻は止めに入るために声をかける。すると、
「自分の時とは違う。裸にされなきゃわかってくれなかった」
いきなりの暴露だ。
「インデックス、何言ってん――――ッ!?」
当麻が慌てたその時。
妙な視線を感じ、当麻が後ろを振り向くと、ファーストフード店では目の前の少女の格好のように異様としか言いようのない、スーツの大人たちが、いつの間にかすぐ側で自分たちを取り囲んでいた。
(いつのまに!? それに何だこいつら?)
しかし、当麻の心配も杞憂だったのか、彼らはどうやら少女の関係者らしく、少女に足りない
100円を渡すと、共に店を出て行った。
当麻は少女の後ろ姿を呆然と見送った。