とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト) 作:nozomu7
『吸血殺し』の原石、姫神秋沙が錬金術師、アウレオルス=イザードにとらわれている。そのアウレオルスがいるのが三沢塾。
その姫神秋沙とは他ならない、ファーストフード店の巫女だったことを聞いた当麻は愕然としていた。
”俺が、あの時電車賃を貸していれば、こんなことにはならなかった。俺がそのくらいの金を貸さなかったせいで”
(そういえば、あいつが姫神だったのか……あいつはあと100円さえあれば『三沢塾』から逃げ切ることができた。そのたったの100円を貸さなかった馬鹿はどこのどいつでもねぇ、俺自身だ)
当麻は先ほど姫神の事を見逃した自分に怒りを覚えていた。
(だが、誰よりも腹が立つのは姫神だ。あいつは俺を巻き込まないように、助けすら求めなかった。……ふざけんな! 勝手に俺の不幸を背負いやがってッ!)
あの時の姫神の姿が一人の少女――インデックスと重なった気がした。
「くそったれが……ッ!!」
そうこう考え事をしているうちにようやく三人は目的地である三沢塾へと辿り着いた。
「ここが『三沢塾』か……」
「いいか、我々の主たる目的は、
「そういえば、なんで姫神を監禁しているんだ?」
「吸血殺しは吸血鬼を呼び寄せる。吸血鬼は未だ確認されていない存在だが、永遠の命を持つと考えられている。錬金術師は呪文の詠唱に時間がかかるからね、永遠の命はさぞ魅力的なんだろうさ」
ようやく落ち着いたステイルは周囲の建物と見比べる。
「どうやら、魔力が隠蔽されている。何が隠されているかは、この中に入らなければわからない。それに気配を隠蔽する術式を使っても、この中では魔術を使った形跡ですぐに居場所がばれてしまう。目的を果たす為には正々堂々と正面から行くしかないようだね」
「それなら、さっさと行こうぜ」
三人は三沢塾の中へと入って行った。
「確かに結界の中であるからか、変な感じがするな……異様な力を感じる。これが魔力で作られた領域か」
俺は状況を整理していく。その時強い臭いがした。視界に入ってきたのは、血塗れの鎧騎士。
すぐに騎士の傍に駆け寄る。
「おい! 何が――」
しかし、すぐに気づく。その騎士が、絶命していることに。その後、すぐに周囲の状況に気がつく。その向こうで、何人もの騎士が無残な姿で散らばる、その光景に。
俺たちはその光景に嘔吐を我慢する事ができなかった。
落ち着いた俺たちはすぐに、他の塾生たちのその残酷な光景に何も気づかないといった様子に気づく。
「ふん。この結界はコインの裏表のようなものでね。そこらにいる学生などの『コインの表』の住人には『コインの裏』にいる魔術師の姿に気づくことができず、一切の干渉を受けない。だから、僕達には人をどかすことも、そこにあるエレベータのボタンすら押すこともできない。つまり、内側からではどうする事も出来ない。まいった、まいった」
ステイルはこの結界の攻略法を思いつくことができず、おどけたように降参してしまう。
「じゃあ、この結界をどうにかすればいいんだな?」
「それができるものなら、の話だけれどね」
「安心しろ。この程度の結界なんて俺と当麻の二人で十分だ」
俺が挑発するとステイルの表情から余裕の笑みが消え、頭に血管が浮かび上がる。
「ほお、そこまで言うなら、見せてもらおうか。言っとくが、そこにいる馬鹿の右手で破壊したとしても、核を破壊しない限りすぐに修復する」
「それは裏を返せば、核さえ破壊できればいい、ということだ」
ステイルは目の前の光景に、ただ驚いていた。
「よし。今回も不完全であるが、この周辺の、
「おう、これか?」
「よし、この辺りはこれで大丈夫だろ。進もうぜ」
俺が解析して核を探す。そしてそこに、当麻が右手で触れる。
それだけでも、建物を覆う魔力の流れに揺らぎが出ているのをステイルは感じていた。
(さっきから結界の核を正確に破壊している。核の場所をあそこまで正確に特定するなんて、ただの素人ができることではない。相変わらずの非常識ぶりだな。)
「よし! このまま……っておい」
視線を感じたと思ったら、廊下にいる学生達全員が俺たちをガン見していた。
「あのさ、『コインの表』側の人間が『コインの裏』側の人間を見ることはできないんじゃあなかったっけ?」
「第一チェックポイント通過ってところなんだろうね」
学生達は無表情のまま、一斉に口を開ける。それは……呪文。
「おい! こいつらも能力開発は受けているはずだろ! それなのになんで魔術を……っ!」
学生たちの体に傷がつき始める。しかし、それでも詠唱を続ける。
「操られている以上は体なんて無視ってことか……! だが、解析完了だ! 当麻! そこの眼鏡をかけた、三つ編みの女の子だ!」
「おう!」
詠唱が終わる前に解析を済ませ、当麻に核となる人物を伝えてそれを破壊してもらう。すると、核となる学生はそのまま倒れ、当麻に抱きとめられる。それに続いて、他の生徒達も同じように一斉に倒れた。