とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト) 作:nozomu7
「よし。これで一階の制圧完了!」
当麻が俺に指示された場所を右手で触れた瞬間、辺りに充満していた魔力が消え去った。
「さてと。結界が解かれた以上は一階が大パニックだろう。エントランスホールにいる生徒は騎士達を発見するだろうからな。まあ、それで生徒たちは一斉に三沢塾の中から出ようとする。そうすると、この好ましくない状況を打破するためにアウレオルス、ご本人登場ってところだろうな」
俺の言葉にステイルは頷く。
「確かにね。無効にこちらの居場所はばれていることなんだし」
「え、なんで?」
「お前の右手だよ」
当麻は驚いて自分の右手を見る。どうやら、まだしっかりと分かってないらしい。
「僕は魔力を使わない限り、位置を特定されることはない。だけどそのバカの右手は常に魔力を打ち消しているだろうからね。常に発信機をつけているようなものだ」
アウレオルスは常に当麻の位置を特定していることだろう。
「で、それからだが。簡単に言えばだな。今頃、アウレオルスさんは自慢の結界が破られてビックリ仰天。このまま『三沢塾』を制圧される前に元凶は消しちゃおうぜ☆……って感じに殺しに来る。そんなところだろうな」
「はあぁっ!?」
「まあ、そうだね。僕なら、直接殺しに行く。アウレオルスもそうするだろうね」
まさか魔術師のステイルからお墨付きをもらえるとは思えなかった。まあ、俺の言い方には呆れているようだが。
「それでこれからどうするんだい? そこにいる馬鹿を囮にでもするのかい」
ステイルが聞く。
「そんなことはしないさ。いずれはそうなるのだから迎え撃つしかない。その前に、相手の戦力でも減らしておくか」
アウレオルス=イザードは一階の結界が破られていることに気づいていた。
わざと自身の場所を知らせているのかは分からないが、その侵入者の位置は特定できており、そいつが特定の核を破壊している。こうも容易く術式を破壊していく。その上、自分を恐れていないのか居場所を隠そうともしない。
「憮然。このままでは術式に支障をきたす」
早く侵入者を撃退したいところだが、まずは修繕だ。
『偽グレゴリオの聖歌隊』は結界内にいる人間を大勢操ることができ、十数人程度なら結界の外でも操ることができる術式。これによってアウレオルスは今まで幾人もの魔術師たちを葬り去ってきた。
しかし、迎撃術式を発動するには結界の中にいる何十人もの学生達、切り札には二千人が必要である。だが、結界が破られたため、一階にいる学生達は突然の血塗れの騎士たちの出現に混乱が生じている。そして、アウレオルスの都合が悪いように、三沢塾から避難しようとする学生もでてきている。
「む!?」
さらに、追い打ちをかけるように建物に備え付けられていた火災警報機が鳴り響く。それに合わせて、避難を先導している侵入者が確認できた。このままでは、東棟にいる学生達は出ていってしまい塾内の学生数が二千人を切るのも、時間の問題だった。
「このタイミングで火災警報機……悄然。まさか、侵入者は駒の数を減らそうとしているのか?」
アウレオルスは侵入者の目的が術式に必要な学生達の排除であると推測する。
駿斗が『三沢塾』にかけた術式の構造をステイルの助けを借りながら
「間然。甘いな。駒達は別棟へと移動させればいいことだ。しかし、計画のために、少し私自身で侵入者をおいやっておくか」
そう言って、侵入者の顔を確認することもかねて会いに行くことにした。
「さてと、絶好調だしこのまま……いや、わざわざ向こうからおいでのようだ」
照明のついていない廊下の奥、闇の中から白いスーツの男が姿を表した。
「当然。その二人、なかなか面白い力を持つようだな」
「アウレオルス……!」
俺たち三人は、強く相手を睨む。
「わざわざ、何の用だい」
「邪魔者を排除に来た……と言えばいいか」
アウレオルスはそう言って笑う。
「侵入者よ。……ここであったことは全て忘れろ!」