とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト) 作:nozomu7
世界最高の錬金術師、アウレオルス=イザードは上条当麻に対して得体の知れない恐怖を感じている。俺にはそれが、なんとなく感じられた。まあ、黄金錬成をあっさり無効化したのだから当然なのかもしれないな。
「駿斗」
当麻はまず、その右手で俺に触れた。それによって、体を縛り付けていた戒めが解ける。
「サンキュ。じゃあ、一気に大逆転勝利と行きますか」
「おう」
当麻は俺をいつでも右手で触れられるように、俺の左へ移動する。そして、俺たちはゆっくりとアウレオルスに近づいていく。
俺は勝利への道筋を組み立て始める。
「――“倒れ伏せ、侵入者”」
俺たちは倒れない。
「――“吹き飛べ、侵入者”」
俺たちは吹き飛ばない。
「――し、“死ね、侵入者”!」
俺たちは死なない。
(やっぱりな……)
幻想殺しに触れるとその力が打ち消される。
「く、その右手に防ぎきれない攻撃なら通用するはずだ。ならばこそ、“銃をこの手に。弾丸は魔弾。用途は射出。数は一つで十二分”」
アウレオルスは鍼を首に突き刺す。突如、彼の右手にフリントロック銃が現れた。
「“人間の動体視力を超える速度にて、射出を開始せよ”」
瞬間、轟音が鳴り響く。しかし、
「なッ!!?」
目で追えない速度で迫りくる魔弾を、当麻の右手は防いだ。
「お前では絶対に」「俺たちには勝てねえよ」
俺たちは宣言する。アウレオルスが抱く、その疑念は幻想から現実になる。
(わ、我が黄金練成が通用しないだと……!?)
アウレオルスには、はっきりと動揺が見られた。俺はそこに、さらに追い打ちをかけるための演技をする。
「“宙に槌を。材質は結晶。用途は打撃。数は一つで十二分”」
空中に結晶の槌が発生する。
「“この塾の持ち主の頭上より降り注げ!”」
「なに! “消えよ!”」
槌が当たるその前に、それは消される。しかし、狙い通りだ。
「貴様、なぜ黄金錬成を!」
「さあな」
今のはもちろん、
アウレオルスは先ほどから鍼を多用している。恐らくは、鍼治療であろう。そして、先ほどから刺しているのはすべて同じ場所――不安を和らげ、精神を安定させるものだ。ちなみに、どうして俺が鍼に詳しいかというと、この親友が何かと怪我をするから簡単な麻酔でも身に着けようと思ったから、という事情がある。
ではなぜ、アウレオルスはあのような力を持ちながら不安があるというのか。そこから俺が立てた予想。
黄金錬成は恐らく、『言葉が現実になる』のではなく『考えたことが現実になる』というものだ。
思えば、言葉にしたことが現実となるのなら当麻以外は簡単に殺すことができたはずだ。「この部屋の中にいる私以外の者は死ね」とでも言えば、簡単なのだから。
いや、そもそも吸血鬼の力など借りずとも、インデックスを救い出すのもできたはずだ。
それができないのは、アウレオルスがそうなると確信できないからだ。
「どうした。先ほどまで言葉通りに現実を歪めていたではないか」
ステイルが言った。
「当然。黄金錬成は究極の錬金術」
「だったらなぜ、僕たちを言葉一つで殺さない。先ほど彼女にやったように」
「っ!」
ステイルの言葉にアウレオルスが動揺する。
「“宙を舞え、ロンドンの神父!”」
ステイルの体が持ち上げられる。
「言葉通りに現実を歪められるのだったら――」
「“はじけろ、ルーンの魔術師!”」
ステイルの体がはじけ、皮膚の下、その肉が露わになる。俺たちはとっさに口を抑えて吐き気をこらえた。
しかし、これではっきりとした。
「当麻、あの力は――」
「ああ。『考えたことが現実になる』ってことだな」
先ほどの俺の予想と同じ。俺は確信する。
「まずはその右手からだ。“魔弾を斬撃に変更”」
銃の先に剣が発生する。
「“暗器銃。その刀身を回転射出せよ!”」
剣が放たれる。その瞬間に俺は軌道を曲げる。
しかし、アウレオルスは――笑う?
「“刀身よ、その軌道を元に戻せ”」
血飛沫が飛び散った。
「ふふ、ふはははははは……」
アウレオルスは笑っている。自分の望み通り、厄介な当麻の右手がなくなったのだから。
「これで厄介なものは消えた。せっかくだからお前は最後までとっておいてやろう」
「てめえ……」
アウレオルスはそう言うと俺のほうを向く。
「“息絶えよ!”」
「これで最後はお前だけだ」
アウレオルスは当麻を見る。
しかし、
「ははははははは……」
当麻は笑っていた。そして、前に進む。
「あ、“暗器銃。先の刀身を複製。その刀身を回転射出せよ!”」
当麻の様子に気味の悪いものを感じたアウレオルスは攻撃を加える。しかし、その刀身は当麻をかわすように曲がる。
「“銃を量産。その刀身を一斉射出せよ!”」
当麻には当たらない。
「ば、ばかな……」
「おい、錬金術師。まさか右手を切り落とした程度で、俺の幻想殺しがなくなるとか思っているのかよ」
瞬間、当麻の右腕の切断面から得体の知れない透明なナニカがズルリと流れ出る。
「ッ!!?」
それは巨大な『竜王の顎』。
その後ろに、さらに駿斗の体から透明なものが出てきた。
その形は鎧。その表面はまるで……『竜の鱗』であった。
「な、何が起こって」
『竜の鱗』はそのまま巨大化し、『竜王の顎』と合わさり……『竜』となった。
「竜だと。ば、ばかげている。“暗器銃。先の刀身を複製。その刀身を一斉射出せよ!”」
無数の刃が『竜』に当たる。しかし、当たった瞬間、消えた。
口を開けた『竜』はアウレオルスを頭から呑み込んだ。