とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第26話 取り戻すための戦い

 『暗闇の五月計画』

 

 『置き去り(チャイルドエラー)』を使い、学園都市最強の超能力者である一方通行の演算パターンを参考に、各能力者の自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を最適化することで、能力者の性能を向上させようというプロジェクト。 そしてその実態は、「一方通行の精神性・演算方法の一部を意図的に植え付ける」という、個人の人格を他者の都合で蹂躙するものだった。

 

 その中で、攻撃性を付与した黒夜海鳥(くろよるうみどり)には『窒素爆槍(ボンバーランス)』が、防護性を付与した絹旗最愛には『窒素装甲(オフェンスアーマー)』がそれぞれ発現した。

 

 しかし凶暴化した黒夜によって研究者が皆殺しにされたために、目標としていた超能力者(レベル5)には届かないまま計画は破綻した。そして、二人の少女はそのまま闇の中で生きていくことを強いられたのだった。

 

「そんなことが……」

 

 俺はその事実に愕然となる。

 

「私は『アイテム』に所属していますが、黒夜がどこにいるのかは超分かりませんね。そもそも、仕事を任されるようになってからは簡単に行動なんて超できませんでしたから……」

 

 さっちゃんは、泣いてるとも笑っているとも言えないような表情になった。

 

「だから、もう私は駿斗兄ちゃんとは超一緒にはいれないような人間なんですよ。『アイテム』の主な業務は、学園都市内の不穏分子の削除及び抹消……わたしの手はすでに超血で染められているのですから」

 

 あきらめのようにつぶやく。

 

「だったら、せめて黒夜だけでも超救ってあげてくださいよ。黒夜は『劣等生』などと超言われていたので、まだ何かの実験にでも超付き合わされているのでしょうから。私よりはまだ超間に合うと思いますよ……駿斗兄ちゃん」

 

 それが答えなのか。それが暗部に身を落とし、手を血に染められ、そして幼馴染と最悪の再会を果たして負けてしまった者の出した答えなのだろうか。

 

 確かに、さっちゃんが暗部を抜けるとなると大変だ。さすがに統括理事会とかが、わざわざ大能力者(レベル4)のために何か行動を起こすとは思えない。しかし『アイテム』を抜けるとなると、少なくともあのレーザー女に勝利しなければならないだろう。最大でも大能力者(レベル4)の出力しか持たない、この俺が。

 

 ……いや、逆に言ってしまえばそれだけか。

 

 俺が1人であの女を倒す。それでさっちゃんは表の世界に来る。実に単純明快だ。

 

「よし」

「超どうしたんですか?」

 

 俺が何を考えたのか分からないさっちゃんは俺に聞いてくる。

 

「なあに。あのレーザー女を叩きのめすってだけだよ。それでさっちゃんは表に戻ってもらう」

 

 

 

「ってわけで、さっさと倒されてもらおうか? 第四位」

「なめてんのかてめえは!」

 

 あの後病理解析研究所に戻った俺は、事情を話すと第四位『原子崩し(メルトダウナー)』、麦野沈利との勝負を始めた。御坂からはすでに、サーバーを破壊して脱出したとここに来る途中で連絡があったのだが、先に帰ってもらった。

 

 怒声とともに飛ばしてきた原子崩しに対し、俺はその軌道を捻じ曲げる。

 

「くそが!」

 

 再び攻撃が来るが、結果は同じだ。

 

「あいつは暗部の人間だ! 今更日の当たる場所に戻ろうなんて甘いんだよ!」

「それはお前が勝手に決めつけたことだろうが! あいつの幻想(りそう)は俺がこの手で現実(ここ)に創り上げる。そう決めたんだよ!」

 

 そう言い放つと俺はペンライトで赤外線レーザーを撃ち、攻撃に転じる。しかしそれも躱される。さっちゃんといい、この女といい、暗部の人間ってのはどいつも身のこなしが軽いな。厄介極まりない。

 

「ぐっ」

 

 それでも、連続で打ち続けていると右足にかすらせることができた。少しだけ、相手の動きが鈍る。

 

 そして、さらに気が付いたことがあった。

 

「お前、狙いを定めるのに時間がかかるんだろ? その能力」

「なっ」

 

 相手の目が大きく開かれる。

 

「原子崩しは粒子でも波でもないあいまいな状態に電子を固定して操るというもの……。あらゆるものに簡単に穴をあけることができるが、その反面強力過ぎて下手をしたら自分自身を巻き込みかねないってところか」

 

 ちっ、と麦野は舌打ちをした。

 

「くそっ。人の能力の秘密をポンポンとしゃべりやがって。余計に生かしておくわけにはいかねえな!」

 

 すると、麦野はポケットからカードのようなものを数枚取り出した。

 

拡散支援半導体(シリコンバーン)。こいつからはかわせるのか?」

 

 麦野はそのカードを宙に投げると、それに向けて原子崩しを放つ。すると、そこから大量に原子崩しが放たれた。

 

「なに!」

 

 俺は波動干渉(ウェーブインターフェア)で周辺の電子機器から出ている電磁波を増幅させることで、無数のそれを捻じ曲げて防いだ。

 

「どうしたんだよ、さっきまでの調子はよ!」

 

 片手で追撃しつつもう片方の手で拡散支援半導体を用意し、俺が離れようとするタイミングを狙って俺の動きを妨害してくる麦野に俺は防戦一方となる。

 

相対変換(レラティブ)……は使える小さなものを持っていない。軌道修正(オービットアドジャスト)では数が多すぎてさばききれない。重力操作(グラビティ)は発動までに時間がかかる、発動自体は難しくないが相手を抑えるまで出力を上げるには時間的に不十分。その他物質系の攻撃は相手に通用しない……どうするべきか)

 

 俺は口笛を吹き、それの振幅と周波数を変えることで一瞬だけキャパシティダウンと同じ効果を生み出した。頭に痛みが走る。

 

「くっ、なるほどね。自分にも返ってくるリスクを冒してでも実行に出たか。まあ……」

 

 俺は相手の言葉が言い終わるのを待たずに、相手に向けて突進した。

 

「なっ、自棄にでもなったか? だったら、おとなしく肉塊になれ!」

 

 それは俺に向けて放たれたようだが、俺は光に干渉して自分の場所が本来の位置と1メートル以上ずらして見えるようにしているので当たらない。

 

 そしてその直後、光を捻じ曲げることにより一時的に空間がぐにゃりと曲がったように見せた。原子崩しを撃とうとしていた相手は、一瞬その動きが止まる。そのタイミングで俺は姿を消す。

 

「くそ!」

 

 相手がそれでも撃ってくるが、俺は明後日の方向に撃たれたそれを無視して相手の後ろに回り込む。そして、構成変換(コンスチチュートチェンジ)で天井を崩す。それもまた原子崩しで消えるが、これで大きな隙ができた。

 

 俺は全力で重力操作を使用し、相手を壁に叩き付けた後に他の物体を一気にぶつける。

 

 ようやく相手は気を失った。

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