とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第29話 姉と妹

 俺は目を覚ますと、そこは病室だった。まだ朦朧としている意識の中で、自分がベットに寝かされていることに気づく。

 

「ええと……」

 

 確か一方通行に勝負を挑んで、有利に勝負を進めて、でも風を操られて逆転されて。それから御坂妹達の助けで、最後に当麻がとどめをさして……。

 

「そうだ! 実験は!?」

「実験は中止になりました。と、ミサカはあなたの質問に即答します」

 

 その声に振り向くと、そこに御坂妹がいた。

 

 ただし、俺の手を自分の胸に当てた状態で。

 

「おおいっ!? お前は何をやっているんだ!? というかお前は何号だ?」

 

 混乱した状態のまま、俺は叫ぶ。

 

「ミサカは10033号です。と、ミサカは生体電流から脳波と心拍数の計測をしながら答えます」

 

 横を見ると、当麻も1人の御坂妹と同じようにしながら寝ていることに気が付いた。

 

「と、とりあえず手を放そうな? な?」

 

 電撃と窒素の拳が来ないうちに。

 

 

 

 その後、病室に御坂と最愛が来た。

 

「おう、二人とも」

「お前らケガは大丈夫なのか?」

 

 俺たちは声をかける。

 

「別に大丈夫よ。あんたたちのおかげでね」

「私も窒素装甲(オフェンスアーマー)があったので、超大丈夫ですよ。ちなみに、二人ともさほどケガはないので、明日くらいには超退院できるみたいです」

 

 俺と当麻はホッ、と胸をなでおろした。

 

 

 

「………そう言う事でせうか。いやーよかった」

「おう! 良かったな」

 

 その後、四人から実験の顛末について聞いた。

 

 目的通り、実験は廃止。妹達は延命措置のため調整を受けることになっている。

 

「さらに今朝暗部関係の人が超来て、私にクビにしたとか超伝えてきました。でも、特には超何もしないそうですが」

「ということは、暗部からは抜け出すことができたと? 良かったな、最愛」

「ええ。こんなにもあっさりしているのは超驚きましたが」

 

 俺たちが一方通行を倒したことも関係があるのかな、と俺は勝手に推測した。

 

「あと今朝御坂に頼みましたが、黒夜海鳥の場所が超分かりましたよ」

「なに、本当か!?」

 

 これから探そうと思っていた情報を持ってきてくれるとは。

 

「まあ、あんたたちには大きな借りができちゃったからね。このくらいのことはやってあげるわよ」

「お姉さまとわたしたち9969人が力を合わせれば調べ上げることくらい造作もありません、とミサカは胸を張って自慢をします」

 

 いずれにせよ、ありがたい話だ。

 

「じゃあ、俺も早く退院しないとな」

 

 俺は万象再現(リプロダクション)で治療を始めた。

 

 

 

 御坂美琴はクローンの妹と病院の外に出た。

 

 御坂はついさっきに上条当麻に言われた言葉をかみしめる。

 

『お前がDNAマップを提供しなかったら、妹達は生まれてくる事もできなかったんだ。あの実験は色々と間違っていたけどさ。妹達が生まれてきた事だけは、きっとお前は誇るべきなんだと思う。生まれてこなければ、喜ぶ事も悲しむ事も出来なかったんだから』

 

 あいつには負けてばっかりだな、と呟いて病院の外にある公園に入った。

 

「あの……さ、私の顔なんて見たくないだろうし、許せないと思うけど、今後、世間の理解を得るのに、たくさんの障害があると思うの」

 

 妹達は実験のために生み出された実験動物であり、その存在は本来、表の世界に表れて良いものとは言えない。そもそも、クローンをつくること自体が違法なのだから。

 

 そんな妹達が表の世界に生きていく事は彼女達自身の力だけでは困難である。

 

「私にも何かできる事があったら……」

 

 御坂は妹達を支える。その決意を妹達へ表明するために振り向いた。

 

 が、肝心の御坂妹が後ろにいなかった。

 

「これが立ちこぎです、とミサカは学習装置(テスタメント)で得た知識を実践し風とひとつになります」

 

 後ろにいたはずの御坂妹は、何故か、いつの間にブランコで立ちこぎをしていた。どうやら、公園にいた双子の女の子に立ちこぎのやり方を教えているらしい。

 

(というか、学習装置は一体どんな事を教えているんだろう……)

 

「これ以上継続するのは危険なのでこのくらいにしておきましょう、とミサカは汗を拭います――おや、どうしましたか?」

「うん……ごめんしばらく放っておいて」

 

 出鼻を挫かれた御坂は、とりあえず、色々とツッコミたい言葉を呑み込むことにする。

 

 その間に10032号は公園にいる姉妹に、

 

「ダメですよ。姉と言うのは妹のわがままを聞く義務があるのです、とミサカは若い芽の内から洗脳を施します」

「こらーッ!」

 

 何やら勝手なことをしているので、慌てて止める御坂。  

 

「どっちがおねーちゃんで、どっちがいもーと?」

「へ?」

 

 すると、御坂姉と御坂妹を双子かと勘違いしたのか、質問してくる。だが、御坂妹が答える前に自分で答えを言ってしまう。

 

「こっち! こっちのおねーちゃんがいもーとでしょ!! ゲコタもってるもんっ!」

「ええっ!?」

 

 ゲコタグッズを持っているのを見られたのか、美琴の方が妹だと言われてしまう。

 

「いえ」

 

 流石に見かねたのか、御坂妹がフォローに入る

 

「確かに彼女は年齢にそぐわない幼稚な趣味で、ガサツで、短気で、喧嘩っ早くて、そのくせ好きなものも好きと言えない天邪鬼ですが―――」

 

と見せかけて、御坂にザクザクと止めを刺していく。

 

 しかし、

 

「――ミサカのために命を捨てようとした困った姉です」

 

 しかし、最後の最後でしっかりと――それこそ、やんちゃでも心優しい妹のように――フォローする。

 

 再び少女たちが行ってしまうと、御坂妹は口を開いた。

 

「実験がなくなりましたので、実験動物という私達の価値がなくなりました。リストラです。無職です。絶賛路頭に迷い中です。しかし、私たちを助けてくれたあの少年と少女たち、そしてお姉さまはわたしたちにも生きてほしいと言ってくれました」

 

 言葉を切ると少しすっきりしたような顔を向ける。

 

「だから、これから私たちが生きていく価値を見つける手伝いをしてください。と、ミサカは精一杯わがままを言ってみます」

 

 その言葉を聞いた御坂は、青い夏空を見上げた。

 

「うん、よろしく」

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