とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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閑話
第30話 黒夜海鳥


 黒夜海鳥はある実験施設にいた。

 

 『暗闇の五月計画』において『劣等生』である彼女は、自らサイボーグとなることでその能力を強引に強化。それは強度(レベル)という順序付けでは表現できないものになっていた。

 

 だが、それらの精密機器は3年ともたない。そのためにこの日は手術を受けることになっていたのだ。

 

 しかし。

 

「侵入者だ! 急いで撃退にあたれ!」

 

 手術を受ける直前に、そのような騒ぎが起きた。

 

(全く、どこのバカがやってきたんだか)

 

 そう思いながら、黒夜はイルカのビニール人形から複数の『腕』を取り出す。彼女の能力、窒素爆槍(ボンバーランス)は掌から窒素の槍を発射する能力だが、機械の腕を体に着けることで槍を放つ『噴射点』を増やしているのだ。

 

 取り付けを終えて椅子から立ち上がろうとしたとき、ふと足に着けているミサンガが目に入った。以前は手首に着けていたのだが、サイボーグ化に伴ってその場所は移動した。

 

(なんでだろうな。もう表に戻ることを諦めたというのにまだこれ(・・)を着けているのは)

 

 一瞬そう思ったが、首を振ってその考えを頭から追い払うと立ち上がった。

 

 

 

「消え散れ!」

 

 俺のその声に合わせて、研究者たちが持っていた拳銃や駆動鎧(バワードスーツ)が砂のように崩れる。

 

 そして雷撃が辺りの研究員を薙ぎ払い、窒素の拳が叩き付けられる。

 

「今のところは順調ね。電磁波を飛ばしてもこのあたりに人はいないみたい」

「サンキュ。じゃあ、進むか」

 

 俺と最愛、御坂はさらに奥へと進んだ。うみちゃんを探すために。

 

 御坂のハッキングによって俺たちは扉を開け、次の部屋に入る。

 

「ここには超いないんでしょうか……人の気配がありませんが」

「待って、そこの陰に誰かいる!」

 

 御坂がそう言った瞬間、俺は何かで腹を刺されてその場に倒れた。

 

「ぐはっ……!」

 

 これは……槍か? だけど透明のようだが。

 

 そう思った時に、最愛から聞いた情報を思い出す。一方通行の攻撃性を植え付けられてもたらされた能力は、窒素の槍を発射する能力であると。

 

 まさか。

 

「うみちゃん……?」

「駿斗兄ちゃん……?」

 

 暗闇の中から出てきた、フードをかぶった黒髪のその少女は間違いなく黒夜海鳥であった。足に着けられたミサンガがそれを証明している。

 

 俺は血が出ている脇腹を抑えながら話しかける。

 

「久しぶり。さあ、ここから脱出するよ」

 

 俺は彼女に向かって手を伸ばす。しかし、

 

「そんなことできるわけねえだろ……! わたしが今、どんな状態になっているのか分かってンのか!」

 

 そして彼女は羽織っていたその上着を脱ぎ捨てる。すると、

 

「黒夜……? なんなんですかその腕は……!」

「そうだ。これが今のわたしだよ!」

 

 うみちゃんの体は人間のそれではなかった。サイボーグ、と言えばいいのだろうか。

 

「絹旗最愛! テメエと違って私は『劣等生』だったけどなア! 今の私は強度(レベル)なんてものでは表現できない強さになっているンだよ!」

「ぐふっ!」

 

 窒素の槍が放たれる。それは窒素の鎧を貫き、最愛は肩と腿を赤黒く染めて倒れた。

 

「うみちゃん……もうやめろ!」

「やめると思っていンのか! もう私は昔の私とは違うンだよ!」

 

 再びその腕を動かそうとするが、途中でその動きが不自然に止まった。

 

「それ以上動かないで」

 

 御坂は俺たちの前に立ち、体から電気を発生させながらコインを片手にうみちゃんと向かい合う。

 

「くっ……」

「残念だったわね。それは確かに強力になったのかもしれないけれど、一方で発電能力者(エレクトロマスター)との相性は最悪よ?」

 

 機械の腕がだらり、と下がる。

 

「くそがっ……」

「まあ、悪いとは思うけど――」

 

 御坂はそう言いかけるが、

 

「いや、御坂。最愛を連れて下がってくれ。うみちゃんとは俺がやる」

 

 治療を終えた俺は、そう言って御坂よりも前に立つ。

 

「でも!」

「俺はあいつの幼馴染だ。幼馴染の『お兄ちゃん』なんだ。『妹』を説教するのは俺の役目だ」

 

 俺は解析した結果をもとに、今までに解析してきた他の能力も混ぜながら新たな『疑似的な自分だけの現実(パラ・パーソナルリアリティ)』を組み立て上げる。

 

「超頼みましたよ、駿斗兄ちゃん」

「これで負けて帰ったら容赦しないからね」

 

 そう言って御坂は最愛を抱えて出て行った。後で最愛の治療もしないとな。

 

「よかったのかァ? 1人だけになってよ」

 

 うみちゃんは俺に言う。

 

「いいんだよ。俺のやることは変わらないから。君を表の世界に連れていく」

 

 俺は新しい能力を発動する。

 

「表の世界だと? わたしが今更そんなところに行くと思ってンのか!」

「思ってる」

 

 俺は一歩づつ近づいていく。

 

「は! 何を言って……」

「だって、まだあの時のミサンガをしているからさ」

 

 さっき、倒れた時に見えたのだ。足首につけられたそれを。

 

 だから、信じられる。本当は表に戻ってきたいと思っているんだって。

 

「っ!これは……」

「だから悪いけれど、ちょっと『お仕置き』させてもらうよ? 『お兄ちゃん』として、ね。」

 

 俺は念動力を体にまとう。

 

 念動力(テレキネシス)窒素装甲(オフェンスアーマー)窒素爆槍(ボンバーランス)。それらを組み合わせた能力。

 

 念動鎧(フォースアーマー)

 

 念動力の『力』を磁場などと同じ『力場』という形でとらえ、体にまとわせる。

 

 俺は窒素の槍をものともせずに一気に近づいて手刀を首に打ち込み、その意識を奪った。

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